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柏木孝夫 ·東京工業大学名誉教授

衆議院経済産業委員会(2024-03-29)での発言

第213回国会 ·第第6号号 ·5,919字
○柏木参考人 御紹介いただきました、東京工業大学の名誉教授をしております柏木でございます。よろしく、どうも。  まず最初に、なぜカーボンニュートラルが出てきたのか。これはやはりパリ協定まで遡ることになります。  パリ協定、最初は二度上昇ぐらい、二度上昇というのは、産業革命から二一〇〇年、今世紀末までに、平均気温が変化するんですけれども、平均気温の上昇が二度と。我々、最初は二度上昇ぐらいでいいだろうと思っておりましたけれども、IPCCの見解であるとか、医師の見解であるとか、医学部系の論文だとか、いろいろなことを読みますと、やはり一・五度上昇ぐらい以下に抑えないと、どうも人体がそれに追随できないと。要するに、マラリアがわっと来るとか、ウイルスがもっとはやってくるとか、やはり非常に大きな問題になるので、人ありきだ、生体ありきだ、人体ありきだということで、じゃ、一・五度上昇でいこうじゃないかと。  そのためには、やはり先進国と発展途上国では格差がありますから、先進国が見本として二〇五〇年カーボンニュートラリティーを達成する、このノウハウをきちっとした上でそれを発展途上国に移していく、こういう考え方が非常に重要になってくるというふうに私は思っております。まずは、一・五度上昇ということが先進国の中でコンセンサスが得られたのが大体二〇一八年、一九年ぐらいでしょうか。  二〇年頃、諸外国はこぞってこのカーボンニュートラルというコンセプトを出しています。それで、じゃ、カーボンニュートラルを達成するためにはどうすればいいかというと、これはもう先生方よく御存じのGX、グリーントランスフォーメーションで化石から非化石の流れをつくり出すことだと。これは、非化石の中にも、再生可能エネルギーはありますし、もちろん原子力もありますし、いろいろなものがあるというふうに考えてよろしいと思います。GXを達成するためには、もちろんDXと一緒にならないと。日本はちょっとDXが遅れていますから、これを頑張らないと、幾ら頑張ってもGXは進まないということになりますから、これを一体化して捉えるということが一つ大事なことなんです。  いずれにしましても、GXを達成するための手法として、私は三ついつも挙げているんですよ。  一つが、即効性のある省エネルギー。省エネルギーをばかにしちゃいけません。省エネルギーは即効性がありますから。  それから、その次が、電力がこれからやはりゼロエミッション型の電力にどんどん移っていくことになりますので、そう考えますと、いろいろなものを電化すればゼロエミッションに近づいてきてカーボンニュートラルに近づけられるということで、電化。これは一番分かりやすく言うと、やはり車でしょうね。燃焼してCO2を出している車を電化にしていく、あるいはFCVにしていく、水素にしていく、こういうことが極めて重要な電化ですね。  三つ目が、やはり再生可能エネルギーは増えていく。もちろん、世界の中でも日本の中でも増えるのは、限界費用がゼロに近い太陽光と風車ですよ。  地熱が今〇・三%しか入っていませんから、これを二〇三〇年で一%、元を三倍まで持ってこれるかということですね。なかなかこれはそう簡単なものじゃなくて、今、太陽光が一割ぐらい入ってきましたでしょうか、一〇%。これを二〇三〇年で一五%まで持っていきたいと我々は思っています。  もちろん、風車は、もう国内で陸地内だとなかなか大きなものができませんので、洋上でうまく造っていけば稼働率もいいし、そういう意味では、風車が大体今〇・九%、一%弱入っているものを五%まで持っていく。これは大変なことです。だから、洋上風力をやるとか、あるいは、太陽光はペロブスカイトの新しい技術開発をやるということが極めて重要。技術開発はもちろん重要。  ただ、日本は、技術開発は重要だということは誰でもオーケーするんですよね。ところが、ビジネスモデルに関してはどうも欧米にやられっ放しで、技術で勝ってビジネスモデルで負けるという場合がありますので、それがないような形に持ってこないと、特に水素に関しては今用意ドンで始まっていますから、ここは非常に重要になってくるというふうに私は思っています。  日本のこの水素の流れについてずっと考えてみますと、まず、日本は技術に関してはすごかったですよ。どういうことをやったかというと、まず、二〇〇九年にエネファーム、設置型の七百ワットの燃料電池、これを商品化ですから。商品化ということは、万が一のことがあってリコールになれば大きなダメージを受けることになりますから、なかなか商品化はできません。リースモデルにするとかという話になってしまいますけれども、商品化をした。それで、二〇一四年にミライでしょう。  そのときにちょうど、経済産業省の中のエネ庁の中に、水素・燃料電池戦略協議会というのをつくっていただいた。たまたまその座長を私がやらせていただいた。これは協議会ですから民間の企業がたくさん入っていまして、それに学、産学でやっている。だから、民間の企業としてはもろに好きなことをばんばんおっしゃいますから、そういう会がないとやはり本格的にいい法律に結びつけられない、こういうふうに思うわけですね。  その後、ずっと考えますと、日本もカーボンニュートラリティーを言ったのが前総理の菅さんですよね。菅前総理が二〇二〇年の十月二十六日の日に、うちもカーボンニュートラルだと。これは大体、世界は二〇〇〇年ぐらいからぶわっとカーボンニュートラルを言い出しましたから。日本は、だから、同じぐらいの時期に菅さんが言っていただいて、その後すぐ予算を取った。これは大変なことだったと思います。  これはすごく速かったんですよ。令和二年の第三次補正予算で二兆円、税金から取ってきましたからね。ですから、国債で取るのもいいんですけれども、これは民間の金ですからいいんですけれども、これは税金を取っていますから、非常に使い方もきちっとしなきゃいけないということも併せながら、随分速く進んできたということは間違いない。  それで、総理が替わって、二〇二二年にGX移行債というのが、国債でお金をつけて、百五十兆ぐらいかかるぞと。大体二〇五〇年の世界の水素マーケットが百五十兆円と言われていますから、そういう意味で、倍々ゲームなんですよ、二〇三〇年は四十兆、二〇四〇年八十兆、二〇五〇年百六十兆。倍々で伸びていきますから、これを逃す手はない。ですから、そういう意味では、スピーディーにやっていくということが非常に重要になってくる、私はそう思っております。今年から移行債も公募が始まって、一・六兆円というのが集められているというふうに聞いております。  日本も、そういう意味では、二〇一四年に我々の水素・燃料電池戦略協議会ができて、そしてどうなったかというと、その中で我々が二〇一七年に水素基本戦略という冊子を出しているわけですよ。これは世界で初めてですから。  そのときには、欧米は余り意識していなかったんですね。うまくやっているな、日本は技術は勝ったし、よくやっている、このぐらいの目でしか見ていなかった。これは一・五度上昇がまだ明確じゃなかったからですよ。それで、一・五度上昇になってから、いや、ちょっと待て、日本に技術では負けた、だけれども、ビジネスモデルは、日本はまだそれはやっていないと。二兆円をつけたり、移行債とかといったのは二二年ですから、二〇二〇年でようやく二兆取っただけですから。そういう意味では、水素が高ければ、それは物は売れませんよね。売れないものを作ってもしようがないだろうという話になりますと、やはり、ビジネスモデルで欧米は日本よりもいいものを早く作っていく。もうスピードアップはすごかったですね。  大体、二〇二〇年の六月に、ドイツがハイドロジェングローバルという、なかなかやり方がうまいんですよ。ODAの金を使ったり、世界の金を、金利安のものをどんどん使ってアフリカの北部を発展させるんですね。そして、ドイツに定額で買ってあげる。定額ということは、フィード・イン・タリフで買ってあげる。固定価格で買ってやる。そうすると、お金はドイツからアフリカの北部に流れていきますから、ある意味では、ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸とのエコノミックサーキュレーションを行うということになりますから、今の時代にぴったし合った話になっている。そして、横目でロシアのガスを見る。おまえのところのガスは要らないと。  もううちは、アフリカの北部に再生可能エネルギーを入れて、そして、パイプライン・アンド・ワイヤー・アンド・ファイバー、自営線と通信線を入れながら、今、電気が必要なときは電気を送れ、電気が要らなければ水素にして送ってくれということをやったのは二〇二〇年六月ですよ。  七月には欧州委員会が何をやったかというと、欧州は、EUの中にパイプライン構想を始めると。水素パイプラインですよ。これは連携しているわけですよね。八月には、今度はフランスがピンク水素、夜余っている原子力の、今全体の電力の中で六四%ぐらい行っていますでしょうかね、その夜間電力で水素を作って、それをこのパイプラインに流し込んでいくということを彼らは連携してやっているわけですね。イギリスは、もちろんのことながら、二〇二二年には値差支援とかいろいろなことをやっているわけですよ。  それで、じゃ、日本は遅れたかというと、日本は全く遅れてはいなくて、技術では勝っているわけですから、あとはビジネスモデルさえうまくやれば。これをスピーディーに。だから、規制改革とビジネスモデル、そのために、二〇二三年の二月から五月ぐらいに、また水素・燃料電池戦略協議会を始めました。  このときはすごかったですよ。もう水素のステーションを造ったりしていましたし。それも、水素ステーションも制約が多くて、すぐ検査しろとか。そういう日本の制約をうまくスピーディーに変えられないというデメリットが出てきてしまって、民間としては、欧米では一年以内でできる緩和を日本に持ってくると三年以上かかる、これじゃ日本では水素はできないぞということを言う企業もたくさんありました。  それで、そういうのをエネ庁が全部受けて今回のこの新法につながったというのがこれまでの流れですね、それは非常に重要な時期に。だから、もたもたしていると駄目なんですよ。それで、技術ではもう勝っているわけですから、商品を出しているわけですから、だから、あとはビジネスモデルさえうまくついていけば、これは、まあまあ。  今度は、この中に値差支援を入れる、これにGX移行債を使う。すると、これはフィード・イン・タリフとは違いますね。だから、フィード・イン・タリフを固定価格と訳すのもおかしいですよね。値差支援の課徴金を、幾らか課徴金が要りますよね、差額に。その差額を電気料金に乗せるのがフィード・イン・タリフですよね。今の自然エネルギー系のものはそうですね。  ところが、今度の、今出されている法案の中の値差支援、これは、企画書が認定を受けると、非常にオールマイティーになってきて値差支援も受けられる。この値差支援は、国債を買った額からその支援が行われるということになりますので、これは水素を使う人たちの水素の料金に転嫁されるわけではない。だから、フィード・イン・タリフではない。ですから、フィード・イン・タリフと今回の値差支援とは全然違うものだということを頭にやはり入れていく必要があるんじゃないか、こういうふうに私は思っています。  これがうまくいきますと、最終的にはやはり、我々としては、日本は技術国家で、かつビジネスモデルまでうまくいくということになりますと、どういうことになるかというと、成長戦略にいかに結びつけられるか。ですから、成長戦略は、技術がもちろんなければ成長戦略はできませんから、だから、ここがやはり難しいところで、大体、狙っているのはASEAN十か国ですよ。あそこにはシンガポールがありますから。シンガポールはDXがベストファイブに入っていますからね。  日本は残念ながら、二、三年ぐらい前からどんどん落ちています。二、三年前は、六十四か国のうち、DX、五十項目ぐらい全部採点して、二十七位だったかもしれませんね。去年が二十九位かな。それで、今年になって三十四位まで落ちていますから。やはり、行政改革ができていない、一気通貫でワンストップサービスができないというところがある。これはGXもできないということになりますから、それをやはりうまく一緒にしながら、そしてビジネスモデルと併せながら持っていけば、日本は成長戦略に結びつけられるだろうと私は思っております。  そうすると、どういう成長戦略になるかというと、メイド・イン・ジャパンの燃料電池であるとか、日本は、SOECという、燃料電池の逆をやらせる電気分解、ただ陽極、陰極を入れて電気を通してぼこぼこぼこぼこやる電気分解とは違って、燃料電池の逆をやらせる。ちょっと高温ですけれども、非常に高効率な電気分解が可能になります。こういうものも日本の特技芸として持っておりますから、まず電気分解装置があって、タンクはもう商品ができているわけですから、上から落としたり、ショットガンで、ピストルで撃っても爆発しないぐらいの保安は持っていますので。そして、燃料電池はいろいろなものが出ています、今。  この三つが非常に大きな、パイプラインもありますし、これをプラットフォームの上に乗せて、そして、一つのプラットフォームを運営する国として、カーボンニュートラルは日本に任せておけば、カーボンニュートラルは日本が請負人になれば、プラットフォーマーとして機能することによって、それぞれの国の、例えばASEAN十か国であれば、その国々の特技とするところを入れてあげながら、決め手となる要所要所のテクノロジーに関しては日本製が必ず入っているというようなことを我々は考えておりまして、日本がカーボンニュートラルのプラットフォーマーになるということが非常に大きな日本の成長戦略につながっていくというふうに私は思っております。  どうもありがとうございました。(拍手)

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