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滝澤美帆 ·学習院大学経済学部経済学科教授

衆議院経済産業委員会(2024-04-23)での発言

第213回国会 ·第第11号号 ·4,180字
○滝澤参考人 学習院大学の滝澤美帆と申します。  本日は、このような機会をいただきまして、大変ありがとうございます。  本日は、新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案に関する意見を申し上げたいと思います。  一ページおめくりください。  私の専門はマクロ経済学という分野でして、一国全体の経済のありようを見ていく、そして、どのようにしたら経済がよくなるのか、ごく簡単に申し上げると、そのようなことを研究しております。  実際に行っておりますのは、企業のデータを用いた実証分析、データ分析、生産性分析などを行っておりますため、マクロ経済学的な立場から、マクロ経済的な見方から、今日、申し上げられればと思っております。  一ページおめくりください。三ページ目になります。  この三ページ目というのは、過去三十年にわたる経済全体のGDPの伸び率というのを、いわゆる経済成長率を、資本の投入の寄与、労働の投入の寄与、生産性の伸びの三つに分解する、いわゆる成長会計の結果をお示ししています。これは、経済を供給サイドから分析するというもので、よく使われる指標です。このスライドは、少し長めにお時間を頂戴して説明をさせていただければと思います。  まず、この図から分かることというのは、一九九五年から、過去約三十年のありようをお示ししておりますけれども、まず第一に、低成長であったということが分かります。この期間、よいときでも、年率一%少ししか経済の成長を実現できなかったということです。リーマン・ショックがあったときは平均してマイナス成長、足下、二〇一五年からの五年間もマイナス成長を記録しているということです。  もう一つ注目すべき点というのは、この図でいいますとグレーの部分でお示ししている資本投入の寄与というのが著しく低くなっているということです。  労働投入の寄与というのが低くなるというのは、人口が減っていたり、労働時間が減っていたり短くなっていたりする中では、ある程度予想されたことなんですけれども、この資本投入の寄与というのがかなり低くなっているというのが特徴です。  この原因なんですけれども、やはり国内投資、国内の設備投資が伸び悩んだことが原因であると思います。国内の投資は、二〇〇八年をピークに資本ストックというのは減少しています。資本ストックが減少するということは、国内の投資が停滞していたということです。  その背景には、いろいろなことがあるかと思いますけれども、一つは、日本企業のバランスシートを改善しよう、バブル崩壊後、改善しようということで、投資を設備投資に行うのではなくて債務の返済に充ててきたとか、二〇〇八年のリーマン・ショック後というのは、内部留保を潤沢にしておきたいという、そうしたマインドが強くなったとか、人口減少で国内の市場が縮小する中で海外への投資が積極的に行われてきたとか、いろいろな理由がここには挙げられるのではないかなと思います。  しかし、足下、かなり設備投資がよい兆しが見られています。今後、投資のよい兆しが本格化するかどうかというのは、恐らく中小企業の動向次第であるというふうに思います。設備投資によって収益率を高めて再投資ができれば、好循環というのがめぐるようになるかなというふうに考えております。そうした意味でも、やはり中小企業の活動動向というのは、私自身は非常に注視すべきものであるというふうに考えております。  一ページおめくりください。  今申し上げたことを繰り返しておりますけれども、やはり、過去三十年間の日本経済の特徴ということで指摘できますのは、投資が停滞していたということ。それから、九〇年代後半から予測されていたことですけれども、人口が減少し、人手不足感が強いということ。経済活動、特に付加価値を維持拡大させるには、やはり設備投資をして資本を増やしたり、生産性を向上させたり、こうした手段しかないように考えられます。  一ページおめくりください。  今回の産業競争力強化法等の一部を改正する法律案ですが、概要を一番、二番ということでお示ししております。  一番、やはり、国内投資の拡大というキーワードがあるかと思います。これに関しましては、戦略分野への投資・生産に対する大規模・長期の税制措置及び研究開発拠点としての立地競争力を強化する税制措置を講じるということで、戦略分野国内生産促進税制やイノベーション拠点税制、イノベーションボックス税制というのが検討されているというふうに思っております。  二番目のキーワードもやはり国内投資というもので、国内投資につながるイノベーション及び新陳代謝の促進に向けて、我が国経済の牽引役である中堅企業、スタートアップへの集中支援等の措置を講じるということで、中堅・中小グループ化税制などが検討されています。  こちらでアンダーラインを引かせていただいた部分、やはり国内投資というところだと思います。私自身、非常に重要なものであるというふうに考えております。  過去三十年の停滞、この停滞は、恐らく、一つの要因としては、設備投資が停滞していたということが挙げられると思います。その結果、設備の年齢、設備自体も高齢化して、資本の年齢、いわゆるビンテージも上昇しています。その結果、新しい技術を体化した、新しい技術が含まれた設備を使用できませんので、その結果、古いマシンで生産活動をするということで、なかなか生産性が上がらない。同時に、人への投資も余り行えてきませんでしたので、なかなか相乗効果で生産性を上げることができていない、そういう状況であると思います。  また、国内投資の停滞ということは、生産活動の海外移転というのを積極的にこの期間は行っていました。海外へ生産拠点が移転しますので、その結果、交易条件が悪化しました。交易条件が悪化しますと、生産性、何とか上げているにもかかわらず、それに比例してなかなか賃金が上がらないというのが日本の特徴であったかと思います。そうした意味でも、やはり投資が重要になってくるというところです。  GX、DX関連の投資が非常に注目を集めておりますけれども、これらの投資だけではなくて、私自身は、やはり市場を獲得できるような、そうしたものに対する投資が重要である、それから、長期で投資が行える環境の整備というのが重要であると思いますし、そうしたときに政府が大規模で長期的な支援を表明するというのは意義があることではないかなというふうに思います。  一ページおめくりください。  今回の産業競争力強化法等の一部の改正ですけれども、その中でも、やはり中堅ということが注目されていると思います。中堅企業の支援も重要であるというふうに考えております。  御承知のとおり、日本における中小企業は、二〇二一年六月時点で三百三十六万者、うち小規模事業者は二百八十五・三万者ということで、企業数でいえば、それぞれ九九・七%、八四・五%も占めるものです。こちらにつきましては、やはり、そうした圧倒的に数でいうと多い中小企業が、いかに活躍、元気になってもらえるかというところが重要であるというふうに私自身も考えます。  ただ、先行研究では、いろいろとこれまで行ってきた中小企業政策が、かえって企業の成長を阻害しているとの指摘がなされています。法定中小企業の要件を満たすために例えば資本金のレベルを維持する、その結果、企業の成長を遅らせる傾向があるといったような研究成果を示している分析もあります。中小企業にとどまってベネフィットを享受しようとするインセンティブはあるように思います。  ただ一方で、企業規模が大きくなることで実現できることというのも増えるというのは事実であろうと思います。売上げ、設備投資、賃金が伸びている、企業規模が大きくなると、そうしたいいことが起きている。中堅企業に企業が成長することで、国内経済、国内投資によい影響がもたらされる可能性もあります。  それから、中堅企業は、海外拠点及び国内拠点、双方で売上げ、設備投資を着実に拡大しているということです。そして、今注目されている人への投資、人材教育投資も積極的に行っていて、国内の投資、ひいては経済に貢献しているということです。それから、そうした企業を支援していくということも非常に重要であるというふうに考えます。  九ページ目なんですけれども、こちらは、日本の競争度合いといいますか、市場の独占度合いに関する研究成果を御紹介しております。経済産業研究所の理事長になられました深尾京司先生らの研究なんですが、経済センサス活動調査を用いた市場集中度の計測結果ということで、二〇一一年から二〇一五年にかけて、市場集中度をいろいろな指標で測られていますけれども、それが下がっている。裏を返せば、競争度合いが上がっているということであろうというふうに思います。  最後のページを御覧ください。  こちらの結果を見ますと、日本の市場における集中度というのは下落しているということです。これは競争度合いが強くなっていることと関連していると思われますけれども、競争というのはイノベーションや成長にとって重要なことは言うまでもないのですが、やはり過度の競争というものによって、かえって効率化、高付加価値化が図れない、イノベーションの芽が摘まれてしまっている分野もあろうかというふうに思います。  ですから、そうした分野においては、企業間で協力する、あるいは連携する、グループ化する、MアンドAなどを通じて規模を拡大するとか、そういったようなことが重要になってくるのではないかなというふうに思います。  今回の産業競争力強化法等の改正によって、そうした活動が促進されて、中小企業が成長して、国内投資の拡大、さらにはイノベーションの実現、結果として生産性の向上が図られるということを期待したいというふうに思います。  私からは以上となります。ありがとうございました。(拍手)

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