○村井参考人 皆さん、おはようございます。全国知事会会長の村井でございます。
それでは、意見を申し上げます。
まず、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における特例についてお話しいたします。
第一に、国と地方は対等、協力の関係にある、分権改革によって実現したこの国、地方の関係を決して崩してはならない、このことをまず申し上げておきたいと思います。地方自治の本旨や地方分権改革により実現した国と地方の対等な関係は、今後とも守っていただくよう強く求めたいと思います。
一方で、新型コロナウイルス感染症は、まさにこれまで経験したことのない未曽有の有事でございました。
地域の実情に応じて自治体で対応を行い、成果を上げた取組は多々あります。例えば宮城県では、全国に先駆け、医療機関に義務づけられている発生届の対象を六十五歳以上の高齢者等に限定する発生届の限定化を行い、保健所等の負担軽減を図りました。また、クラスターが発生した学校に専門家を派遣し、感染リスクが高まる教育活動における予防対策を検証し周知することで感染拡大防止に努めました。全国知事会としても、四十七都道府県知事が参加する新型コロナウイルス緊急対策本部を立ち上げ、各県の事例を踏まえ、有効な対策の検討、都道府県との共有に取り組んでまいりました。
しかしながら、それぞれの自治体の取組ではどうにもならないこともあり、新型コロナに係る取組の制度の根幹は国において定められていることから、知事会としても、国の役割、責任として対応していただくよう政府に提言を行ってきました。例えば、緊急事態宣言の発出前に感染症対策に取り組むことができるよう、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正を提言し、まん延防止等重点措置が創設されました。
今振り返ってみれば、確かに、今回の事態は国と地方の役割分担に関する課題を浮き彫りにした側面はあるのではないかなと感じております。国民の命や暮らしを守るために国、地方が一体となって取り組む必要があり、分権改革の成果を守りながら国と地方の役割分担の在り方について改めて考えるということは意義のあることだと考えています。
本法律案は第三十三次地方制度調査会の答申に基づくものでありますが、調査会においては全国知事会として、新型コロナ対応を踏まえ、国と地方の役割分担について改めて明確化すべき部分があるのではないか、感染症有事などへの対応の際には生活圏、経済圏の一体性に配慮し都道府県境を越えた広域的な対策を前提とすべきではないか、市町村域を越えて感染症が拡大している場合などには都道府県主導で必要な措置を講じられるよう市町村との役割分担の在り方などを見直すべきではないか等の意見を提出してまいりました。このような意見も踏まえ議論が行われたものと承知をしております。
国から地方への指示については、地方の側からすると、自主性、自立性という観点から望ましいものではありません。しかしながら、議論されている国民の安全に重大な影響を及ぼす事態において、地方の事務処理であっても国が広域的な立場から役割、責任を果たすべき場面があるということは、広く国民の命を守るという観点からそのとおりであると思います。
新型コロナの感染初期にはダイヤモンド・プリンセス号の一件がありました。当初は、個別法、感染症法に基づき横浜市が接岸した船にいる人たちの入院の措置を行ってきましたが、横浜市のみでは広域的な調整ができず、神奈川県、東京都を始めとする他の自治体やDMATが入って対応しました。
これは完全に法律の規定を超えてしまっております。感染初期には個別法で想定したことを超える事態が起こるのです。これをどのように収めるかというルールのないままでは、国は対策本部を立ち上げて緊急事態宣言を発するまで何もできないということになってしまいます。このようなことを踏まえますと、分権の立場からは、指示として行うべきものについて、法律上、要件、手続を明確にしておくことが無用の混乱を生じさせないためにも重要であります。このため、想定外の事態への対応に万全を期す観点から、国の自治体に対する補充的な指示を含め、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国と地方の関係について法律上明確化することは必要であろうと考えます。
他方で、地域の実情や現場対応を行っている自治体の意見を踏まえていただくことは譲れません。このため、知事会としては、国の補充的な指示については、事前に自治体の十分な協議、調整を行うことや、目的達成のために必要最小限の範囲とすることなどを求めております。
本法律案では、国の補充的な指示について、国と地方との関係の特例と位置づけられ、必要な限度において行使することや、あらかじめ適切な状況把握や講ずべき措置の検討のために自治体に意見等を求めるなど適切な措置を講じるよう努めなければならないことが規定されており、一定の配慮がなされたものと評価をしております。
基本的には現行の法律の下で地方との協議、調整により解決することが望ましく、多くのケースではそれで対応できるだろうと思います。しかしながら、現行の法制の下では想定できず、国としての役割、責任を果たすために対応が困難な状況もないとも限りません。そのような場合において国の補充的な指示が行われるものと考えておりますが、その場合にあっても事前に自治体と十分に協議、調整を行っていただきたい、また、その権限の行使は必要最小限の範囲としていただきたいと考えています。
我が国は、二〇〇〇年以降だけでも、東日本大震災、新型コロナウイルス感染症、そして今、能登半島地震という大きな危機を経験しています。そして、このような危機は南海トラフ地震を始め今後も生じ得るものであります。国と地方がそれぞれの役割を十分に果たして乗り越えていかなければなりません。
次に、DXの進展を踏まえた対応について意見を申し上げます。
現在、地方のDXの最大の課題は二十業務についての標準準拠システムへの移行であり、期限や経費の課題に対処しながら、国には着実に取り組める環境をつくっていただきたいと思います。さらに、新たな国、地方の共通基盤を検討していくこととされておりますが、これまでの標準化や自治体の取組を検証し、規模が様々な自治体のニーズや課題をしっかりと把握した上で、国、地方が協力しながら進めていく必要があると思います。
そうした中、今回の改正案では、事務の種類、内容に応じて他の自治体や国と協力し、情報システムの利用を最適化すべきとしております。方向性は十分理解できますし、都道府県においても様々な共同利用の取組を行っておりますので、こうした取組も是非生かしながら進めるべきものと考えます。
ネットワークで自治体や国がつながる中、住民の大切な情報を預かる自治体として、セキュリティーの確保も全ての自治体が対応すべき重要な課題であり、法律に基づいた取組を進めることは必要と考えます。国には専門的な知見の提供に十分配慮していただきたいと思います。
eLTAXを活用した地方税以外の公金収納を可能とする規定も盛り込まれておりますが、住民や企業がキャッシュレスで納付できるだけでなく、金融機関や自治体において収納事務が効率化されるというメリットも大きいため、できるだけ早く実現していただくとともに、自治体側の準備に対してもしっかりと支援をしていただきたいと思います。
最後に、地域の多様な主体の連携及び協働の推進について意見を申し上げます。
人口減少、少子高齢化等により自治体の経営資源が制約される中で複雑多岐にわたる諸課題に対応するためには、地域の多様な主体が連携、協働しつつ生活サービスの提供を行いやすい環境を整備することが重要であります。本改正は、市町村の判断により、地域の多様な主体と連携して生活サービスの提供等を行う団体について、その自主性、自立性を担保しつつ、指定地域共同活動団体として指定し、その活動を支援する制度を創設するものであります。これにより、地域コミュニティー活動の活性化を図るとともに、地域における共助がより一層深化することに資するものと考えております。
私からの意見は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
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