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田代正一 ·鹿児島大学名誉教授

衆議院農林水産委員会(2024-04-17)での発言

第213回国会 ·第第10号号 ·4,510字
○田代正一君 鹿児島大学名誉教授の田代正一と申します。本日は、よろしくお願いします。  私の専門は農業経済学です。二年前に大学を定年退職し、現在は、地元の有機JAS認証機関であるNPO法人鹿児島県有機農業協会の理事長もしております。  本日は、衆議院農林水産委員会地方公聴会において意見陳述をする機会をいただき、大変光栄に存じます。また、国の重要法案である食料・農業・農村基本法改正案の審査に係る地方公聴会をここ鹿児島の地において開催していただきましたことを、県民の一人として大変うれしく思います。衆議院農林水産委員会の関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。  それでは、食料・農業・農村基本法の改正案について、大きく五つの項目に分けて私の意見を述べさせていただきます。  ただし、時間の関係もありますので、先日、東京で行われた公聴会における東京大学の鈴木教授、安藤教授が詳しく指摘されたような点につきましては、言及することを差し控えさせていただきます。  余り全国的にも指摘されることが少ないような、ちょっと変わった見方の意見陳述をするかもしれませんけれども、どうぞ御容赦ください。  まず一点目は、食料安全保障の抜本的な強化についてでございます。そして二点目が、環境と調和の取れた産業への転換ということについてです。三点目は、人口減少下における農業生産の維持発展ということですね。そして、四点目と三点目を合わせてなんですが、人口減少下における農村の地域コミュニティーの維持という点について若干コメントしたいと思います。そして、最後に、それ以外のことについて、私がふだん感じていることを述べさせていただきたいと思います。  まず最初の、食料安全保障の抜本的な強化ということが今回の一部改正法案にありますが、そもそも、食料安全保障という概念、フードセキュリティーといいますか、この概念は、幾つかの意味合いがあると思います。  私が研究を始めた若い時代に、一九七九年のことですけれども、ソビエト連邦、ソ連、今はロシアですけれども、ソビエト連邦がアフガニスタンに侵攻しました。それで、それに対する対抗措置として、アメリカがソ連に対して食料を輸出しない、対ソ禁輸措置を取ったんですよね、懲らしめてやるぞと。ということで、一挙に、食料というのは武器、武器としての食料というのが脚光を浴びました。  これで一瞬、輸入が止まるのかと震え上がった国もあったんですけれども、しかしながら、ソビエトはブラジルとかアルゼンチンとかにかけ合って、難なく代替輸入を確保して、アメリカの禁輸措置は実質的な効果を持たなかったという歴史があります。  ただ、そのときをもって、武器としての食料というのが非常に脚光を浴びて、その後、日本政府も、安全保障の一環としての食料確保ということを非常に重視するようになりました。日本政府、特に農林水産省がですね。  毎年の農林水産省、昔の農林省が発表します農業白書、今は食料・農業・農村白書になっていますが、その中にも必ず食料安全保障という言葉が出てくるようになりましたね。国としていかに基幹食料を確保するか、有事の際に確保するかというのが、長年、政府の懸案事項として受け継がれてきたわけです。  しかし、政府の主張することも分からないわけではないんですけれども、いろいろな国際会議で外国人と接する人たちの話を聞いてみますと、何で日本のように豊かで食にあふれている国が食料の危機を心配するんだ、何かおかしいんじゃないか、日本に行ったら物すごい残飯が出ているし、食料廃棄物が出ているし、宴会があれば食べ残しがいっぱいあって、どこに食料不足があるんだ、いつ食料危機が起こったんだと質問されるそうです、外国の研究者から、私が知り合いの研究者から聞いた話では。  ですので、国として何かあったときのために食料安全保障を考えるというのは別に悪いことではないんだけれども、客観的に見ると、日本が食料危機に陥ったことはほとんどないんですね。  一九九三年、平成五年の米の大不作のときは、米が七五%しか取れなかったので、国民みんな慌てふためいて、農水省はいろいろな国に米を買いに行った、食糧庁が買いに行ってかき集めてきてくださったんですけれども、その結果も、日本人は舌が肥えているといいますか、外国の米はまずいとか粘り気がないとか言って食べずに、挙げ句の果てには、公園に山積みして捨てている業者もいたというような話がありましたよね。私が実体験した話です。そういう飽食の日本の国がどうして食料安全保障をそんなに心配するんだというのは、外国からの声としてあるわけです。  そういうこともあって、最近の食料・農業・農村基本法の一部改正では、食料安全保障の概念が多少変えられまして、FAOが主張している概念に変換されたという事情があると思います。FAOは、元々は、貧しい人たちが日々暮らしていける食料、栄養が足りない人たちの問題をどうするかという観点で食料安全保障という概念、フードセキュリティーという概念を使っていましたので、それに近い形で今回は焼き直されたんじゃないかなと私は思っております。  食料・農業・農村基本法は、現行法も改正後も、国内生産を最重視し、輸入と備蓄を組み合わせて国民に安定的な食料を供給していくということですけれども、一方で、それだけでは、日本は人口が減少して需要が減退するので尻すぼみだ、先すぼみだ。どうにかしなきゃいかぬ、農業生産基盤を維持拡大するには、やはり輸出で、どんどん生産を増やして海外に売りまくろうではないか、売って回ろうじゃないかという考え方ですよね。  これは、別にそれを否定するつもりはありません。現に、近年、日本の農産物輸出は着々と増加してきておりますし、一兆円の大台も超えたということですよね。そのうちに二兆円という目標が掲げられています。  ただ、ここで一つ、私がふだんから感じておりますことは、農産物輸出といいましても、実際は、中身を見ると、加工食品輸出なんですね。米や野菜や肉や一次産品を、生鮮食料を輸出している額は僅かです。大半は加工食品であるということです。これは認識しておく必要があります。  私は、別に加工食品を作っている産業界を否定するつもりは全くありませんし、重要な雇用機会を提供してくださっているわけですから、大切な産業ではあるんですけれども、農業振興のために輸出振興というのは、若干ミスリーディングなところはありますよということですね。これは指摘しておきたいと思います。  皆さん御存じかどうか知りませんけれども、主な輸出品は、アルコール飲料、ホタテガイ、牛肉、ソース混合調味料、清涼飲料、ブリ、お菓子、真珠、緑茶、丸太、粉乳、サバと、リンゴ、ナマコ、カツオ・マグロ、ホタテガイ、スープ、小麦粉となっています。金額の多い順にですね。  こういうふうな輸出品の中に、では、お米はどこにあるんだ、牛乳や牛肉はどうなっているんだ、青果物はどうなっているんだと見ていくと、金額は一桁少なくなるんですよね、加工食品に比べると。ですので、それをきちっと国民にも明示して、その上で、なおかつ、農産物の輸出を拡大して農業生産を拡大するんだよということをちゃんと説明する必要があると思います。加工食品の原材料は、多くは輸入原材料が使われていると思いますね。  次に、環境と調和の取れた産業への転換ということですけれども、これは二年前ですかね、みどりの食料システム戦略というのを農林水産省が打ち出されまして、特に私が驚いたのは、有機農業ですね。化学肥料や農薬、それから、遺伝子組み換え技術を使わない有機農業を抜本的に拡大していくんだという新しい戦略を打ち出されまして、本当に、私としては、驚きとともに、ありがたいなと思ったわけですけれども。  ここ鹿児島県は、北海道に次いで、有機JAS認証面積が二番目に大きい県です。有機農業が非常に盛んです、特にお茶ですね。お茶は、輸出するには、有機栽培じゃないとどこも買ってくれません。お茶は、ほかの野菜や果物と違って、皮をむいて食べるわけでもないし、洗って飲むわけでもないし、葉っぱにお湯を注いで、そのまま飲みますからね。もし残留農薬があればそのまま飲むということになりますので、外国人は非常に敏感ですね。これを今、鹿児島県では、輸出したいという農家が認証を取るために、たくさん申請されています。そのおかげで、鹿児島県が全国二位のJAS認証面積を誇るということですね。  それから、環境との関わりで申し上げますと、最近、遺伝子編集食品というのが脚光を浴びていますよね。昔は遺伝子組み換え食品だったんですけれども、遺伝子編集食品はより安全で確実な組み換えができるということで宣伝されて、これからはもう遺伝子編集だという流れになっています。  これは、アメリカなんかではちょっと市民が警戒しているような動きもあるんですけれども、日本では全くその警戒はなくて、このままいけば、遺伝子組み換え食品同様、遺伝子編集食品の世界で最先端の消費国となるのは日本ではないかと私は予想しますね。これはいいことか悪いことか、人によって価値観は違うと思いますけれども。  時間がありませんが、最後に、気候変動に関することですね。  最近は、国連の気候変動枠組み条約の下で、日本も地球温暖化対策推進法を制定して、いろいろ努力していますけれども、私に言わせますと、これは政治的な真理であっても、科学的真理ではありません。  人間が出すCO2が地球を温暖化させているという仮説に対して、反対している学者が世界中にはたくさんいます。そういう人たちがたくさん署名をして、アメリカ政府を動かして、結局、アメリカ政府は京都議定書にも、批准しなかったというようなことがありますよね。  ですので、ヨーロッパを中心とする国連のエリートたちが盛んに喧伝している温暖化対策、IPCCを始めとする温暖化対策は、これは確固たる科学的根拠に基づくものではありませんので、いつ事実によって否定されるか分からないというのが私の見解です。これはいずれ結果は出ると思いますけれども。  多くの学者が、人間が排出するCO2が温暖化の原因ではないと主張している人はたくさんいますので、その辺りはある程度認識した上で、今後の我が国の食料・農業・農村政策も、そういうこともある程度視野に置いた上で対策なり研究なりを進めないと、全て温暖化でオールインして、気がついたら、あれ、違うということになったら取り返しがつかないですから。  私としては、是非ともその辺りは、農林水産省の方でも御検討いただければと思います。今日お配りした資料の最後の方の三ページぐらいを是非お読みください。  時間になりました。よろしくお願いします。  ありがとうございました。

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