○渡辺創君 立憲民主党の渡辺創です。
所属会派を代表し、政府提出の食料・農業・農村基本法改正案に反対の立場で討論いたします。(拍手)
今回の改正に向けて、立憲民主党は、同法検討ワーキングチームを設置し、有識者や関係団体からのヒアリングを重ねるとともに、昨年七月からは、各地の生産現場を訪問し、当事者との対話を重視した農林水産キャラバンを全国十三道府県で展開してきました。
私たちは、今回の改正に期待を寄せました。戦後農政を俯瞰し、旧農業基本法、そして現行基本法の下で、この国の農政は本当に十分な成果を上げたのか。食料や農業、農村を取り巻く環境が深刻になるからこそ、政府・与党がこれまでの農政を真剣に総括し、政策転換を図る好機になるはずだと願ったからです。そのために、政府案の充実に向けて野党も真摯に努力をしようと、昨年六月に見直しに向けた提言を行い、法案提出後も、審議や修正協議を通して、よりよい基本法となるように合意形成に注力しました。
しかし、政府・与党は、修正を提起した全ての項目に対し、規定済み、あるいは対応不可と返答するばかりで、一顧だにすることはありませんでした。日本の農業を守り、食料安全保障の向上に資するために我々が費やした努力は水泡に帰したため、政府案に反対の立場を取らざるを得ません。
具体的な指摘を始める前に、戦後農政を振り返るとき、各種の貿易交渉の結果が農業者に犠牲を強い、日本の食料生産基盤を脆弱化させてきたことは論をまちません。経済的に優位な立場であれば輸入による食料確保はたやすいとの意識が背景にあったことを、私たちは率直に反省すべきと考えます。もちろん、その時々の国益をてんびんにかけ、苦渋の選択もあったことは否定しませんが、結果に対する責任は政治全体が共有するべきものであるはずです。
その前提に立ち、政府の真摯な総括と批判的な検証が不十分であったことに起因する課題について、以下、三点に絞って指摘します。
まず第一に、三八%に低迷する食料自給率についての認識です。
現行基本法の下において、自給率目標は一度も達成されておりません。坂本農林水産大臣は、今月二日の委員会答弁において、小麦や大豆の国産化推進などは一定の効果を上げたと強調した上で、米消費量の減少などが低迷の原因との認識を示されました。しかし、国内の人口減少や米の消費量減少は見通せた現象です。二十五年間全く実現できなかった政策目標に対しての認識としては、余りに緊張感を欠いていませんか。
しかも、政府案は、基本計画で必ず定めるべき事項であった自給率目標を、食料安全保障の確保に関する事項の目標の中の一つの指標に後退させています。実現できないのでフェードアウトさせるかのような対応は看過できません。私たちは、自給率目標を必要的記載事項とする修正を提案したものの、受け入れられませんでした。
第二は、新自由主義的政策からの転換を明確に打ち出すべきと考えます。
自民党の森山裕総合農政調査会最高顧問は、昨年五月、JA全中、全国農政連の大会において、改正案の方向性を、新自由主義からの転換である、新自由主義が軽視してきた食料自給、環境、地方重視、食料安全保障の強化も含めて、豊かで強固な日本社会、経済をつくり上げることが大事だ、改革や成長は必要であるが、新自由主義的な改革では持続可能性や広く国民のためになるのかということが非常に大事な視点という旨発言されたと報じられています。
まさにそのとおりです。しかし、委員会審議を通してこの点を繰り返し問いましたが、坂本大臣を始め農水省の姿勢は不明瞭なままです。
安倍政権の下、農業でも成長産業化に重きが置かれ、競争力のある経営体を育てることが重要視され、コスト削減などによる体質強化や経営安定に光が当てられました。いわば、農政においても、強いものをより強く、大きいものをより大きくという新自由主義的な考え方が幅を利かせたことが、幅広い農業者の不安を招いているということを重く受け止めなければなりません。安倍農政からの転換を自ら明確に示す気概はないのでしょうか。
第三に、多様な農業を維持するという姿勢を明確に示すべきです。
この国土は、必ずしも効率的な集約がかなう農地ばかりではありません。条件不利地でも、工夫と努力で営まれてきた農業があります。政府は、効率的かつ安定的な経営を行ういわゆる担い手や専業的農家が農業者の大宗となることを前提に政策推進を図っていますが、それ以外の多様な農業者が、付加価値の高い農産物の生産や有機農業などに意欲的に取り組み、地域農業を発展させているケースは幾らでもあります。そのような存在が農地を維持し、国内生産の増大に寄与していることは否定し難い事実です。
私たちは、改正案二十六条第二項に、多様な農業者が果たす役割の重要性を鑑み、その位置づけをより強調するように求めました。修正が受け入れられなかったことは残念ですが、今後も引き続き主張し続けます。
討論の最後に、二〇二二年に死去した佐賀県唐津の反骨の農民作家、山下惣一氏の言葉を紹介します。これまで当たり前だと思ってきた日本の四季折々の風景は、当たり前のこととしてそこにあるのではなく、農業の中の農の営みがつくり出し支えてきた景観であり、景色であったというものです。
農は国の基です。その意味を改めて反すうし、立憲民主党は、農業者の所得確保に資する直接支払いの充実など、この国の食料と農業、農村を守るため、積極的な政策を打ち出していくことをお誓いし、討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
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API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=渡辺創
MCP: search_diet_speeches(speaker="渡辺創")