○長友分科員 ありがとうございます。
この野焼きなんですけれども、全国でなかなか今野焼きが残っているところが少なくなっている中で、阿蘇では日本で最大の野焼きが行われるところでございます。
もう少し野焼きの重要性について述べさせていただきたいと思うんですが、手入れをしなければ草原は荒れまして、雑多な草木が生えるやぶになるわけなんですね。
整然とした草原を維持するために長年行われてきたのが、春に枯れ草を焼き払い、新たな芽吹きを促すこの野焼きなわけです。長いものでは一メートルを超えるほど伸びるカヤなどの枯れ草を一斉に焼き払うわけですが、一説には、千年近く前から野焼きが行われてきたというふうに言われています。
この草原がやぶになると、生態系が崩れ、野生の動植物だけでなく、阿蘇の伏流水にも影響が出ます。整った草原の保水力は大きな木の生い茂った森林以上に保水力があるというふうに、近年はそのメカニズムが解明されてきております。
森を形成するほど大きな木がなかなか育たない土壌の阿蘇では、荒れたやぶにせず、草原を維持することが重要な意味を持つということになっております。草原が蓄える水量を維持することで、阿蘇を源流として九州各地へ流れる六つの一級河川へ供給される水が守られるわけでございます。
この六つの河川というのが、これは熊本だけじゃありません。九州の北部に、各地に注ぐわけですね。大分の別府湾に注ぐ大野川、宮崎の日向灘に注ぐ五ケ瀬川、それから、熊本、大分、福岡、佐賀の四県を流れ有明海に注ぐ筑後川、そして熊本県内を流れ有明海に注ぐ緑川、白川、菊池川、この六つが阿蘇のカルデラを湧水源としているというふうに、源流というふうになっております。
ですから、これらの河川の源流となる阿蘇のカルデラの草原の問題は九州の問題にもなってまいります。また、熊本県内に数多くある豊かな湧水も、阿蘇が水がめの役割を果たすことによって生まれてきています。古くから、阿蘇を始め下流域に当たる熊本の人々が生活用水や農業用水として利用してきた水は広大な草原のたまものだということを、改めて皆さんと共通認識を持ちたいというふうに思います。
野焼きによって守られるものは、牛のための牧草地だけではなくて、草原と畜産と稲作と地下水が高度な循環システムを形成し、世界中を見ても阿蘇だけの特別な持続可能な営みが脈々と今に受け継がれてきた。その要となる野焼きが、実は今、危機的な状況だという話をこれからさせていただきたいと思います。
南阿蘇村では、二〇一六年四月に起きた熊本地震で草原の管理道路などが被災しました。そして、約七百ヘクタールで野焼きが中断をしたわけです。その後に重機により防火帯を設置して、南阿蘇村の村長、吉良清一村長といいますけれども、村長自身が火入れ責任者になるなどして再開を後押ししてまいりました。そして今、約二百ヘクタールまで回復してきております。
これまで火入れ責任者は各地元の区長さんにお願いしていたわけですが、野焼きというものは事故が時々起こります。その責任をなかなか取る立場に二つ返事では引き受けてもらえない状況になってきていた。その中で、吉良村長が、自分が火入れ責任者になりまして、区長は現場の監督者になっていただくということに変更されたんですね。ほかにも、野焼き作業員の方には日当を支給したり、災害保険には村で加入する、また、野焼きのプロ人材を育成したりと独自の対策を行ってきています。
しかし、残りの再開が非常に厳しい状況だと村長から伺いました。再開できない最も大きな理由は、防火帯の設置が困難になったということなんです。
野焼きの際には、森林に燃え移らないように、燃やす場所と燃えてはいけない場所を分ける必要がございまして、幅が約十メートルから十五メートルの防火帯を設置するということになっております。阿蘇管内には総延長およそ四百キロメートルの防火帯があります。防火帯を設置するには、草がまだ青い時期に、幅約十メートル程度を切りまして、草が乾いたら焼却する。こうしておけば、野焼きの際に森林に燃え移ることがないということです。再開ができていない草原は、急斜面が多く、防火帯の設置が重労働であるため、高齢化や担い手不足で防火帯が設置できず、そのため野焼きの再開は困難とのことでした。今後、阿蘇の草原を保全するには、千年以上続いたやり方に戻さないと存続は非常に厳しいと吉良村長は強く訴えられています。
この阿蘇の草原中腹の保安林の解除について検討するべきだと考えますが、政府の見解を伺います。
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