○参考人(清水陽平君) ただいま御紹介にあずかりました弁護士の清水と申します。
本日は、貴重な機会をいただき、大変ありがとうございます。
私は、インターネットの誹謗中傷被害遭った方から、中傷記事の削除とか発信者の特定といった依頼を多く受けている弁護士でございます。誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループの構成員も務めておりましたので、私としても今回の改正の方向性について違和感は特にございませんで、好意的に捉えてはおります。ただ、今回の改正の条文案に、内容自体に関与したわけではございませんので、改正案に関して思うところを幾つか述べさせていただければと思っております。
まず、これまでもプロバイダー責任制限法の三条によって送信防止措置についての言及自体はありましたけれども、立て付けとしては、あくまでプロバイダーが免責されるための手続として設けられていたものでした。ここから進んで、今回の改正では、プロバイダー等が自ら削除基準を明らかにして、その自ら立てた基準に基づいて対応するよう促しておりまして、積極的対応を促すものとして評価することができるのではないかと考えております。
ただ、私としては、更にここから進んで送信防止請求権というものについてまで考えていただきたいなというふうに思っております。この点はプラットフォームサービスに関する研究会でも検討が継続されていると認識しておりますけれども、送信防止請求権については次のようなデメリットが指摘されていると認識しております。
まず、抽象的規定にならざるを得ず、期待される効果が生じないのではないかという点が一点目。二点目が、安易な削除請求の乱発を招き、表現の自由に影響を与えるのではないか。三点目は、安易な削除請求の乱発の結果、裁判実務に混乱が生じるのではないか。四点目、著作権法上、著作権法百十二条、不正競争防止法三条の差止め請求権との整合性をどうするのかといったことが指摘されております。
ただ、これらの指摘というのは、デメリットらしいデメリットではないのではないかというふうに考えております。請求権の内容というのは多かれ少なかれ抽象的にならざるを得ず、発信者情報開示請求権についても抽象的規定であると言えるということですね。二点目に関しては、請求権ができたとしても、当然に削除義務が生じるわけではありませんので、デメリットとして指摘される乱発はないと思われる上、現状でも安易な削除請求というのは残念ながら多数ありまして、実際上変わらないのではないかと思われること。どういった権利が根拠となり得るかは、現在の判例を前提に考えるということでよいのではないかと思われること。抽象的規定なのであれば、知財法に関する差止め請求権と競合しても問題ないのではないかと思われることといった指摘ができるかなと考えております。
削除請求権、送信防止請求権を定めることによってどういうメリットが生じるかということなんですが、現状、プロバイダー責任制限法には削除請求についての定めがありませんので、開示命令と削除を一緒に行うことができないというデメリットが生じております。仮にプロバイダー責任制限法に送信防止措置請求権が創設されれば、開示請求に併せて削除請求も行うことができ、一回的解決を図るというメリットが生まれることになると考えております。したがって、送信防止請求権については引き続き検討いただければというふうに考えております。
次に、新設される各条項について少々思ったところを述べさせていただきます。
まず、二十条一項二号に関してなんですけれども、送信防止措置請求権について、防止に必要な限度という限定が付されているということですね。
表現の自由を守るという観点からこのような制限が入っていると理解しておりまして、これ自体は正当であると考えているんですけれども、国外事業者の場合、現状だと、日本のIPアドレスからの接続の場合には当該記事を表示しないというIP規制措置のようなことが行われていることが通常です。この方法ですと、国外にいる方とか航空機のWiFiを使用する場合とかVPNを使用する場合、そういう場合は閲覧ができてしまうという問題があります。
また、サファリというブラウザで提供されているプライベートリレーという機能があるんですけれども、これもIP規制があって、同様に閲覧が可能な状況になっているということがあります。
さらに、投稿自体は見れないとしても、検索結果には、検索エンジンのロボットというのは海外IPで動いているので、検索結果とかスニペットというものに表示されてしまうということがしばしば起きます。
なので、IPを規制するという形での非表示が海外事業者を中心に特に行われているわけなんですけれども、これだと被害が一定程度継続してしまうということになります。このようなケースを条文上手当てするということは難しいとは思っているんですけれども、そうであれば、条文解説などでこのような対応では防止に必要な限度というには不十分だということを明確にしていただきたいと考えております。
次に、二十一条に関してですが、大規模特定電気通信役務提供者の氏名、名称、住所、代表者の氏名等を届け出ることを求めておりますが、この届けられた情報を一覧として総務省などから公開してほしいというふうに考えております。
現状では、裁判手続を取っていく場合、運営が誰かということをフーイズその他の情報で立証するということが求められます。これは裁判所の問題でもあるとは思うんですけれども、誰が見ても一見して分かるというようなケースでも立証をしなさいというケースが出てくることがありますので、こういった情報を公開していただくことで被害者救済の一助になるのではないかと考えております。
次に、二十二条なんですけれども、二十二条では、侵害情報送信防止措置を講じるよう申出を行うための方法を定め、これを公表しなければならないとされています。
現時点でも、各SNS、サイト等は一定程度このような情報は掲載していると認識しているわけなんですけれども、問題は掲載されている場所がどこかということを探すことが難しいということです。同じ運営会社でもサービスによってルールが違ってくると、違っているということもよくあります。そのため、単に公表することを義務とするのではなく、ユーザーにとって分かりやすい位置に公表するということまで求めることが必要なのではないかと考えております。
また、申出を行うための方法を公表するページのリンクなどについても、国がまとめて公開していただくことも検討いただきたいなと考えております。その場合、二十一条一項に届出を求めるという規定があるわけなんですけれども、その中に公表ページの届出というのも追加してはどうかというふうに考えております。
次に、二十二条二項一号には、電子情報処理組織を使用する方法による申出を行うことができるものであることという要件が定められております。
電子情報組織というのはインターネットを通じて行うということかと思うんですけれども、ウェブフォームだけだと事実上手続が進められないというケースがしばしば起きております。これはフォームの作り方によるんだとは思うんですけれども、現状だとプラットフォーム事業者が定める理由にきれいに合致する請求理由がない場合は不適切な削除依頼であるとして処理が進められないというケースがしばしば生じています。結果として、ウェブフォーム上、削除等を依頼する仕組みがないということになってしまって、削除の依頼ができないということが起きています。そのため、申出の方法が適切なものであるかどうかについても検証される必要があるのではないかというふうに考えております。
次に、二十三条についてですけれども、侵害情報送信防止措置依頼をすることができるのは被侵害者であるとされております。
これ自体に問題があるというわけではないのですけれども、例えばヘイトスピーチ等は個別の人を特定せず属性に対して行われる中傷であるため、個人の権利侵害にすることが難しいという側面があります。しかし、ヘイトスピーチなどは、エコーチェンバーとかフィルターバブルといったSNSの特性もあって、一気に広がってしまうおそれがあります。そのため、早期にこういったものが削除されることは重要であると言えます。したがって、一定の場合にはヘイトスピーチのようなものについても送信防止措置依頼ができるような仕組みを考えるということも必要なのではないかと考えております。
次に、二十五条についてです。
同条は送信防止措置依頼をした申出者に対しての通知を定めるものですが、対応期間について、一項において十四日以内の総務省令で定める期間内とされております。実際の期間は総務省令で定めることとなっていますので今後定めることになるかと思うんですけれども、ワーキンググループで述べた七日程度というのが妥当ではないかと考えております。
更に言えば、プロ責法三条二項二号において発信者への免責のための照会期間が七日と定められておりまして、この七日という期間は条文解説によれば郵便の利用も考慮に入れた期間とされていることに鑑みると、もう少々短い五日などでも妥当性があるのではないかと考えております。
ところで、二十五条には申出者に対する通知を定めていますが、その二項は、送信防止措置を講じるかどうかの判断のため発信者への意見照会等を行う場合は、その旨を十四日以内に申出者へ通知することを定めるものというふうに理解いたしましたが、そう理解すると、条文上明確な間違いがあるような気がするので指摘させていただければというふうに思っております。
まず、同項各号に掲げる区分に応じとなっておりますが、これだと条文の読み方として直前に出てくる二十三条を指すことになると思うのですが、二十三条には各号がないので、これは明らかな誤りではないかなと思っております。
次に、当該各号に定める事項を申出者に通知すれば足りるとなっていますが、仮にこれが二十五条一項のことを指すとすれば、通知内容が当該各号に定める事項をとなっており、一項と同じ内容になることになるため、何が足りるのか不明ということになってしまいます。そのため、同項各号の点は二十五条二項各号のことを指すということだろうかなというふうに思いました。仮にこうだとすれば、この場合においてはという部分は前の文章と一部重複することになると思われます。
さらに、発信者への意見聴取等は送信防止措置を講じるかどうかの判断の一助にしたいために行うものと思われますが、現状の条文案だと、送信防止措置を講じるかどうかを判断し終わったことが前提になっているように読めます。そのため、この点は講じるかどうかを判断するに際し等にした方が適切ではないかと考えております。
したがって、整理すると、前項本文の規定にかかわらず、大規模特定電気通信役務提供者は、第二十三条の調査の結果に基づき侵害情報送信防止措置を講じるかどうかを判断するに際し、次の各号のいずれかに該当するときは、遅滞なく、前項の総務省令で定める期間内に、本項各号のいずれかに該当するか、括弧、第三号に該当する場合にあっては、その旨、やむを得ない理由の内容を申出者に通知すれば足りるというふうな形にするのではいかがかなというふうに思っております。
また、この結果としてどういう扱いにしたのかということについての通知が定められていないように思います。したがって、三項を追加して、この通知義務を定める必要があるのではないかと考えております。
次に、二十六条についてです。
これまで、各事業者は、定めたルールに基づいてきちんと対応していると主張をしてはいるのですが、多数事案を扱っている中で十分な対応を取られているとは正直感じておりません。
特に、国外会社においては著作権に関するもの以外はほぼ応じていないと感じておりまして、事業者の自由に任せた基準によったのでは必ずしも適切な基準にならず、二十四条において侵害情報調査専門員を置くとしても、必ずしも適切な判断がされないのではないかという危惧が拭えないところでございます。
そのため、送信防止措置の実施に関する基準作成は各事業者であり、その内容について法律上踏み込むことは難しいとは理解しておりますが、一定のモデル基準や備えるべき内容を列挙したものなど、各事業者が参考になるような指針、基準みたいなものを公表していただけるとよいかなと考える次第です。
三十六条から三十八条に関してですが、これは罰則が定められているところですけれども、大規模プラットフォーム事業者を対象にしている以上、罰則としてはちょっと軽過ぎるのではないかと思っております。この罰則を科したとしても表現の自由に対する直接の制約になるものではないので、より重い責任を課すのがその責任を果たしていただく上で必要ではないかと考えております。
最後に、開示請求についてですけれども、今回の改正の内容には入っていないわけなんですけれども、ログの保存期間が短いということで相手を特定できないというケースが非常に多くあります。ですので、ログの保存期間をより長い期間定めるということを考えていただきたいなと思っております。
また、ログの調査自体をきちんとしないというケースも散見されるところでして、現状では専ら相手の善意に頼った制度設計になっている、ログの調査に関して善意に頼った制度設計になっておりますので、これはもはや限界が来ていると思いますので、きちんとした調査義務を課すということを条文上検討いただく必要が出てきているのかなというふうに思っております。
私からは以上になります。時間超過しまして申し訳ございません。ありがとうございました。
清水陽平 の他の発言
2024-05-07 · 参議院総務委員会
○参考人(清水陽平君) 済みません、私は諸外国の制度がどうなっているかというところについては全然明るくなくて、ちょっとお答えができないかなと思っております。済みません。…
2024-05-07 · 参議院総務委員会
○参考人(清水陽平君) 私としても、バランスが取れた内容になっているのかなと考えております。
私が参加したワーキンググループにおいても、表現の自由の制約にならない形というのを答…
2024-05-07 · 参議院総務委員会
○参考人(清水陽平君) 拡散されたものについての対応というのは、実務上、非常にやはり難しくて、拡散されたら拡散された被害者が個別に削除の依頼をしていく必要がどうしても出てくるという…
2024-05-07 · 参議院総務委員会
○参考人(清水陽平君) そのモラルの教育、リテラシー教育が重要だというのはおっしゃるとおりだと思いますけれども、若年層にとってはこれが問題になると思っていなかったというケースがやは…
2024-05-07 · 参議院総務委員会
○参考人(清水陽平君) 専門員が実際機能するかどうかというお話かとは思うんですけれども、現時点でも、各事業者、海外事業者ですね、きちんとやっていますと、専門の者を備えて対応していま…
2024-05-07 · 参議院総務委員会
○参考人(清水陽平君) ありがとうございます。
条文上、日本の法制度上なかなか権利侵害がないと削除依頼ができないという問題があるので、なかなか法律上どう定めるかというのは難しい…
2024-05-07 · 参議院総務委員会
○参考人(清水陽平君) そうですね、条文としてはこれ以上なかなか踏み込むことが難しいのかなというふうには認識しております。やはり表現の自由の内容規制に入ってしまうのかなと思っており…
2024-05-07 · 参議院総務委員会
○参考人(清水陽平君) まず、侮辱罪が厳罰化されたという点触れていらっしゃったかと思うんですけれども、これに関しては、厳罰化されたことによって公訴時効が長くなった関係で、侮辱罪、実…
API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=清水陽平
MCP: search_diet_speeches(speaker="清水陽平")