○参考人(齋藤裕君) 弁護士の齋藤裕でございます。
それでは、重要経済安保情報保護法案についての意見を資料一を基に説明させていただきます。
最初に、重要経済安保情報保護法案の主要な問題点と衆議院での修正についてということが資料に書いてございますが、これはお読みいただければと思います。
続きまして、二の秘密指定の適正化が果たされるのかということでございますけれども、本法案修正により指定状況等の国会への報告が規定されましたけれども、これでは秘密保護法と同じであります。秘密保護法でも秘密指定の適正化は図られておりません。
二〇一五年にアメリカで強制秘密解除制度により全体として秘密指定解除されたのは二十四万ページ以上、対して日本では、秘密指定要件を満たしていないということで独立公文書管理監や審査会が秘密指定を解除した事例というのはないわけでございます。重要経済安保情報を情報監視審査会がチェックすることになったことはいいことですけれども、だからといって秘密指定の適正が担保されるわけではありません。
情報監視審査会について、積極的に活動されておられることは理解しております。しかし、メンバーが専従でそれだけをしているわけではないこと、行政庁が必ずしも情報監視審査会にきちんと説明しているわけではないこと、特定秘密の提出要請について過半数で決することになっていることからして、その機能には限界がございます。高市大臣も参議院で、審査会での経験談として、限られた時間中で対処するには扱う情報が多過ぎた、十分に理解できなかった、審査会に提供される情報が不十分であったということを率直におっしゃっていたところでございます。
審査会で行政庁がきちんと説明をしていないことについては、衆議院情報監視審査会令和四年年次報告書に、指定等の適正性を説明するに当たっては、指定の三要件に該当するものを指定するといった説明に終始し、要件の充足性を十分に示さないなど、丁寧な説明とは言い難いケースもあったとされているところです。
特定秘密の提出要請について過半数を求めているというのが現行制度ですが、政府・与党側のメンバーが審査会の過半数を占めているため、政府・与党に批判的な観点から提出要請を活用することにはなりにくいことになってしまいます。結局、行政庁の方で見せてもよい特定秘密しか見ないでチェックするということになりがちだというふうに考えます。国会に報告がされ、仮に情報監視審査会がチェックをするようになったとしても、秘密指定について十分なチェックは不可能であります。
さらに、アメリカと日本における秘密概念の根本的な違いにも留意が必要です。日本においては、秘密指定が抽象的になされ、チェックも同様に抽象的になされるため、独立公文書管理監にしても情報監視審査会にしても十分なチェックが期待できません。アメリカでは、秘密指定は文書レベルでなされ、秘密指定解除も文書レベルでなされます。
ISOOの添付一の資料、添付二の資料を御覧いただければと思いますが、これはその資料一の添付資料ですね、資料一の添付資料ということでお付けしています。添付一と添付二というのをお付けしていますけれども、かいつまんで言いますと、秘密指定解除の請求をする場合には文書等を特定し、それを受けた機関はライン・バイ・ライン、一行ずつ秘密の要件を満たすかどうかチェックするというふうにしております。
他方、日本では秘密と文書とは厳密に区別されております。例えば国家安全保障会議の議事録については、例えば令和四年の国家安全保障会議の議事録の結論部分という形で包括的に秘密指定されるわけであります。何月、一月一日の議事録という単位では秘密指定されません。よって、例えばですが、一月一日の議事録に公知の情報が記載されていて秘密とするようなものでなかったとしても、一月一日の議事録の秘密指定は解除されないことになります。これでは具体的な内容に即して実効的に秘密指定をチェックすることはできません。
参議院情報監視審査会は、この点ですけれども、特定秘密の指定が適切であっても、対象情報の拡大解釈等により過剰に特定秘密文書とされていないかといった懸念があることを踏まえ、独立公文書管理監は検証・監察において、実際に当該特定秘密文書の提示を受け、特定秘密とされる情報が妥当な範囲に収まっているか確認することとの指摘を独立公文書管理監に対して行っておられます。
それに対し独立公文書管理監は、指定の検証・監察は、文書ではなく情報の問題ではあるが、審査会における御指摘も踏まえ、文書の確認を行うことにより特定秘密の指定の適否の判断がより的確になるような場合等には、実地調査を通じた積極的な文書の確認を行うこととしていると回答しています。これは要するに、文書はチェックはするけれども、文書単位で見た場合に秘密として保護すべきでないものが記載されている文書があったとしても、それを秘密解除すべきだということは言わないということであります。
秘密指定の適正化をするためには、大前提として、指定、解除される秘密を文書単位にするなど、具体的に秘密をチェックし、解除するという扱いにする必要があります。この点ですが、参議院の情報監視審査会は非常に鋭い御意見を述べられておられるわけです。ところが、独立公文書管理監はこの情報監視審査会の指摘を全く受け入れていない状況です。それにもかかわらず、この参議院においてこの法案を通すのでしょうか。私は大変懸念を持っているところであります。
さらに、運用基準などで指定範囲が適正化されるからよいという答弁が政府からされておりますけれども、人権に関わることは国会で決めるというのが法治主義であります。運用基準で決めればよいというわけではありません。
三つ目、適性評価による人権侵害を防ぐ対策について述べさせていただきます。
無辜で違法行為を行う危険性があるとも想定されていない、多くの民間人の機微情報を収集する戦後日本で初めての国家機関をつくろうと、この法案を作ろうとしているわけです。それにもかかわらず、どのようにその権限濫用を防ぐのか、全く規定がありません。情報監視審査会も、適性評価の対象人数など概況的な聞き取りはしていますけれども、具体的にどのような調査が適性評価のためになされているのか等について突っ込んだ調査はしていません。そもそも法律上権限がなく、やろうとしてもできないわけであります。
さらに、独立公文書管理監には適性評価についての権限がそもそもありません。法律に基づき適性評価についてチェックする第三者機関を設けて、立入り、報告聴取、資料提出要求権限を与える必要があります。このような権限を与えるには法律に書き込む必要があります。
さらに、適性評価の関係ですけれども、附帯決議四項で労使の意思疎通のためのガイドラインということが言われていますけれども、それでも労使協定などが適性評価導入の前提として法律で位置付けられておりません。労働者の権利を守る措置が不十分であります。参議院でも、労働者は上司から適性評価を受けるよう言われても拒否できないのではないかということがさんざん言われているわけです。
個々の労働者は弱いものであります。だからこそ、憲法は団体交渉権や団体行動権を保障しているわけです。個々の労働者は弱くて、労働組合など集団になることでやっと使用者と対等に近づけるというのが日本国憲法の思想であり、世界共通の認識であります。そこから考えると、適性評価を受ける受けないを単純に個人の選択の問題とするのでは不十分であります。労働協約や労使協定の問題にしなければなりません。そうしないと、労働者の自由な選択などというのは絵に描いた餅でしかありません。
次に、四番目、中小企業など民間にとっての負担感について述べさせていただきます。
現行の法案では、誰が適性評価を受けるのか、範囲が曖昧であります。代表者まで適性評価をしないといけないのかどうか有識者会議で議論していましたが、そこら辺が決して詰められているわけではありません。このまま法律が通ってしまいますと、企業としては予測もしていなかった社長さんの適性評価を求められるなど、不測の事態が生ずる可能性があるというふうに考えます。
そして、企業がこの制度で苦労する割には、企業にとってのメリットが見えにくいということもあります。アメリカでは、ISOOがコンフィデンシャル級の秘密の廃止を勧告し、原機密指定権者は二〇二一年度では三人しかいなくなっています。ほかの秘密区分でいえば数百人いるわけです。それが、コンフィデンシャル、三人しかいないというのは、ほぼコンフィデンシャル級というのは廃止に向かっているということなわけです。アメリカの行政機関もコンフィデンシャル級を廃止しつつある。それにもかかわらず、日本でコンフィデンシャル級に特化した法律を作る意味がどこにあるのか、大変疑問であります。
高市大臣は、ほかの国では秘密の三層構造を持っているということをおっしゃるわけです。しかし、そもそも有識者会議は、アメリカは非常に公開される資料が多いのでアメリカを参考に議論しましょうと言っていて、ほかの国を余り参考にしていないんですね。それを今更、ほかの国が三層構造だと言うのは非常に矛盾した話だというふうに思っております。
さらに、有識者会議では適性評価の参考として六つの国が挙げられているわけでございますけれども、イギリス、フランスは三層構造を廃止している。アメリカも三層構造の廃止に向けて大きく動いている。そして、カナダでございますけれども、カナダ、有識者会議の資料を見ましても、少なくとも人的管理については二層構造なんですね、有識者会議の資料を見ても。そうしますと、純粋な三層構造を持っている国というのは、有識者会議の資料を見てもオーストラリアとドイツだけなんです。
そうすると、なぜ、六か国中アメリカを含む四か国が二層構造に向かっているにもかかわらず、六か国中のドイツ、オーストラリアというマイナーな国の三層構造に合わせた法律を作らなければならないのか、これは全く理解できないところであります。
さらに、アメリカではFOCIという外国による所有権の調査という制度がございますけれども、FOCIが秘密を共有する上で重視されますけれども、今回の法案については附帯決議十五項で検討するということにしかなっておりません。この点からも、法律を作ったら秘密をもらうことができるというのは非常に甘いと言わなくてはならないと思います。アメリカより規制が甘いわけですから、制度をつくったけれども情報がもらえないということは十分あり得るわけでございます。そうすると、企業のメリットはないということになりかねません。
なお、G7では経済安全保障のセキュリティー制度がないのは日本だけとも言われますけれども、政府の説明では秘密保護法は経済安保情報も取り扱うということでございますので、そうであれば、今でもG7で日本だけ経済安全保障のセキュリティー制度がないということにはなりません。
高市大臣は、本法案では秘密の範囲は適合事業者に示されるので、大川原化工機事件のような冤罪は発生しないというふうに言っています。しかし、ちょっと先生方お持ちかどうか分かりませんけど、青表紙の参考資料の二十三ページに図がありまして、それを基に言いますけれども、A社という会社があって、A社という会社がXという技術情報を持っていて、それを政府に提供したとします。で、政府がそれに少しだけ情報を加味して、そのA社が提供したXという情報に少し情報を加味してYという情報にして、それをほかの会社に、B社とかC社に提供したとします。で、A社にも提供したとします、Yという情報をA社にも提供して秘密指定したとします。そのA社は、元々持っていたXという技術情報はどう使うかは縛られないわけですけれども、Yという秘密指定された情報を提供すると犯罪になるわけです。そのA社がXという情報をD社というほかの会社と共同研究するために提供した場合、元々技術情報YというのはXに多少情報を加味したものなのですごく似ているわけです。それで、経済安保の領域で手柄を立てたい警察が、よく調査もしないで、政府からの情報であるYを漏えいしたということで業者を逮捕するということもあり得るというふうに思っています。
経済安保という名目が立つと起訴のハードルが下がるというのは、大川原化工機事件の教訓であります。政府は、国会においても大川原化工機事件について反省を示していません。外事警察の暴走を止める方策も検討していません。同じことが起こる危険性はあります。
なお、大川原化工機事件に比べても、本法案で逮捕などされた事件の方が逮捕された人は大変であります。それは、どのような秘密に関わる件で逮捕等をされたのか、弁護人が知り得ないからであります。まともな弁護はできません。なぜそうなるかというと、捕まった人が弁護人に秘密について話すと、それ自体、本法で懲役五年になってしまうということです。
そのほか、関連する点でございますが、一つは、陸自、海自での特定秘密漏えい事案というものが、令和六年四月、明らかになりました。再発防止検討委員会で検討するということになっています。その結果、秘密保護法の仕組みでは秘密漏えいを防止できないということになったらどうするんでしょうか。法律を作ったばかりでまた改正するんでしょうか。今この法案を成立させる時期ではないと思います。
次に、シームレスなのかどうかということです。
政府は、秘密保護法と本法案がシームレスだというふうに主張します。その上で、重要経済基盤保護情報のうち、漏えいが安全保障に支障を与えるおそれがあるものが重要経済安保情報、著しい支障を与えるものが特定秘密に該当するかのような説明をしますが、誤りです。その理由は、両方において安全保障という言葉の意味が違うからです。
内閣官房のホームページに秘密保護法の注釈がありますが、そこでは、安全保障とは国家及び国民の安全を守ることとされています。そして、国民の安全に関して言うと、国民の生命が守られることが安全保障だというふうにホームページでは言っているんですね、政府の。他方、そうしますと、国民の生命が害されないけれども国民生活や経済活動が害される場合については、秘密保護法では安全保障の問題ではありません。他方、本法案では、どうも国民生活や経済活動が害されるような場面も安全保障の問題と捉えているようであります。
そうしますと、例えば国民の生命に関わらない半導体のサプライチェーンに係るような情報は、本法案では経済活動に関わるものなので対象情報となるかもしれません。しかし、国民の生命には関わらないので、政府のホームページの記載からすると、秘密保護法で言うところの安全保障の問題ではないことになります。
ですから、政府の説明というのは間違っていて、重要経済基盤情報で漏えいが著しいものが特定秘密になるかのような説明は誤りです。そうしますと、法律の穴があることになりますので、この法律をそのまま通していいのかということを非常に心配しているところです。
以上でございます。ありがとうございました。
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本日は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私は、日本弁護士連合会で今回の法案についての検討を担当して…
API / MCP 利用
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REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=齋藤裕
MCP: search_diet_speeches(speaker="齋藤裕")