○参考人(池本美香君) ただいま御紹介いただきました日本総合研究所の池本と申します。
本日は、このような場でお話しさせていただくこと、誠にありがとうございます。
私は、もう三十年近く、主に海外の制度との比較で日本の子育て、子供の政策について見てまいりました。ですので、今日は、今回の法改正でかなりいろいろなことが進むわけですけれども、まだまだ海外の国際水準の制度と比較しますと足りないところが多々ありますので、それについて、大きく四点、御紹介をさせていただきたいと思います。
まず一つ目には、子供コミッショナーのことを書かせていただいております。
子供コミッショナーというのは、子どもの権利条約を批准した国に、全ての国に必要だということが、二〇〇二年、国連の子どもの権利委員会からそういった考え方が示されております。要は、子供の権利が侵害されていないかということをウオッチして、何か改善するべきことがあればそれを政府なりに伝えていくという政府から独立した機関を設ける、そういう人権機関が必要だという考え方になっております。
そして、このことについては、昨年末にできましたこども大綱の審議の過程でも複数の委員からそういった検討が必要だという意見が出ておりましたし、団体からも意見がありましたけれども、最終的には盛り込まれていないという現状について、やはりここは非常に重要なことであり、基本的な土台の部分でありますので、改めて議論が必要だろうと考えております。
と申しますのは、二ページ目ですけれども、海外、多くの国でこういった機関が設置されていまして、実際にそれぞれの国でどういった活動をしているのかというものも全てホームページなどでも公開されていますけれども、まずはその子供にどういう権利があるかということを周知する役割ですとか、あとはコロナ禍の子供は大丈夫なのかとか、病院にいる子供、あと子供のいじめの問題など、子供がなかなか声を上げにくい状況に代弁者となってコミッショナーがその問題を世に示して、改善に向けメディアなどでも積極的に発言するという、そういった活動をしております。
そして、ヨーロッパでも既に一九九七年の時点で、ヨーロッパの中でのその子供コミッショナーのネットワーク組織などもできておりまして、海外でも本当に安定した非常に効果の高い制度として認識されているものであり、国連からも設置が勧告されている中で、今回のこども家庭庁、こども基本法というところまでは進みましたけれども、子供コミッショナーがまだ残される課題として残っていると思っております。
このことについては国連から何度も勧告を受けている中、政府の立場としては、日本には人権擁護委員制度があり、それで十分機能しているというような発言を過去、私も見ましたけれども、その子どもの人権専門委員という制度もいつの間にか廃止になっていたりということで、こういったところについては余り、私も調べるまで、一般にも知られていないですし、海外の国でこれだけ普及しているものであること、また国連で設置が勧告されていることなどはもっと重く受け止めて対応が必要であるというふうにまず考えております。
二つ目につきましては、保育制度のことです。
保育制度についても、今般、先ほどもありましたこども誰でも通園制度が入ったということは、私としては非常に大きな一歩であると思っております。といいますのは、これまで日本の保育は、親が基本的には見る、子供の面倒を見る、でも、それがどうしてもできない場合に保育が対応するという、そういった考え方で制度が成り立ってきていましたけれども、そうではなくて、全ての子供が保育を受ける権利があるという、そういう考え方に、保育を保障していくという考え方にのっとった制度が入ったということは大きな変化であると思います。
いろいろ、その実際には運用面ではいろいろ課題があるにせよ、そういった考え方が入りますと、今、海外ではその幼稚園と保育所の制度を二つ別々で所管するということはほとんどなくなっているわけですけれども、日本も保育所と幼稚園のその利用要件も差がなくなり、保育時間も差がなくなった中で、所管省庁をこども家庭庁と文部科学省で分けておく理由がもうなくなってきているということですので、省庁あるいは指針の一本化ということも更に議論を進める必要があると思っております。
それから、全ての子供への保育保障ということでは、待機児童問題についても減ったとはいえまだ残されているため、自治体に対する保育提供義務なども更に強化すべきだと思いますし、あと、そのインクルーシブ保育ということで、今、障害のある子供が入園を拒否されるとか、別の施設で分離されて利用しているというような状況は、これは、これも国際的に見てインクルーシブ教育、保育に逆行しているというふうな勧告も出ている中、通常の保育で通えるということを保障していくことが必要だと思います。
それから、最近の新しい課題として、今、子供人口が地方などで急激に減っていく中で、保育施設が維持できずになくなることで行く保育施設がなくなってしまうという、そういった新たな問題も生じております。
それについては、ちょっと次のページの五ページ目に、海外ではどうやってやっているかということを少し調べてみたんですけれども、例えばニュージーランドなどでは、どこに住んでいても確実に質の高い保育が受けられるようにしなければいけないという、そういう考え方ですので、例えば国立の通信制保育制度がもうかなり前から普及したりですとか、あとは、むしろその孤立した地域の保育というのはよりコストが掛かるので、そこに補助を手厚くしてそこの施設がなくなったりしないようにするということをやっておりました。
日本の場合は、むしろ物価の高い東京に補助金は手厚くなっていて、保育士も東京の方が賃金が高いということでどんどん地方から東京に流れていって、保育士も確保できない、子供も少ないということで、今地方ではかなり大変な状況になっておりますので、そういった検討も必要だと思っております。
それから、保育のもう一つの問題は質の問題でして、この質の低下については、バスの中で置き去りにされたとか、つい昨年度末にも保育園でうつ伏せ寝で子供が死亡したというような報道もありましたけれども、本当に量を増やす、してきた中で質がかなり危ない状況になっていますので、そこをどうやって向上させていくかの議論を急速に加速しなければいけないと思います。
大きくここで、海外の制度で日本にないものとして三つ挙げてございますが、一つは、保育の質を評価する。国の機関が全部の園を評価して、その情報をホームページなどで全部公開していって、それによってその保育の質を見える化するということが日本でもできないかということ。
それから、配置基準については、ようやく七十五年ぶりですか、に保育者一人が見る子供の数を三十人から二十五人にしたということなんですけれども、まだ全然足りないということです。配置基準については、少し後の方でヨーロッパのことなども紹介してございますけれども、例えばヨーロッパで、まあもちろん実現はしていないまでも、望ましい本来あるべき配置基準としては三歳から五歳で十人、十対一ということで、一人で見るのは十人ぐらいまでということをヨーロッパなどでは目指しているわけですので、今後も配置基準の更なる見直し、そこをしないと、保育者もとてもそういう大人数を見るような環境では働けないということで、保育士不足も解消されないと思います。
それから、先ほどもお話ありました親の働き方の見直しは保育の観点からも非常に重要な課題でして、今は、日本の制度は親の労働時間に合わせて保育を全部手当てするということですので、時間も延びる、休日も保育をするということですので、保育の現場からすると、どんどん保育者の労働時間が延びていくということになっています。
それについては、少し、二ページ目で、国際比較で保育者の仕事時間も比較した表もあります、図表もありますけれども、これを見ましても、やはり日本の保育者の労働時間は長いですし、さらに、若い保育者にその負担が掛かっているというデータなどもあります。そして、保育者がやはり満足して働けていない状況の中では、保育の質が上がってくるというのは非常に難しいことかなと思っております。
そして、次の、これはヨーロッパの状況についても、少し先ほどの配置基準の問題も御紹介したんですけれども、本当に質が悪いサービスというのは子供にもまた社会にももうとにかく悪影響が及ぶので、保育のことを考える場合には質をセットで、質を優先すべきだという考え方が二〇一九年のそういうEUの理事会勧告などでも出されているところです。
質が良いというのは、先ほどの配置基準の問題もありますけれども、とにかく家族とパートナーシップで信頼関係を築きながらやるということですとか、インクルーシブな障害のある子を分離しないという考え方、またその子供の権利をということを軸に一人一人の子供に合わせて保育を提供していくこと、また保育者が、労働環境としても、振り返りをする、保護者と関わる、あるいは他の専門家や同僚といろいろ話し合いながら進めていくというそういった時間も必要だという、そこまでが保育の質という考え方が今、EUの方では議論されているということです。
親の働き方については、今育児休業の方は大分進んできていると思いますけれども、その後のところも非常に重要、保育との関係では重要でして、ヨーロッパなどでは、先ほど奥山さんからもお話ありましたように、子供のいる人だけではなくて、子供のいる人、いない人も共に柔軟な働き方を請求するフレキシブルワーキングということの権利などの保障も進みつつありますので、そういったところまで踏み込む必要があると思っております。
三点目に、放課後児童クラブの問題も指摘させていただきます。
保育が足りないといった子供たちが今、学童保育の、放課後児童クラブの年齢に上がってきていまして、非常にスタッフの不足、またその労働環境も保育士と同じように賃金水準が低いとか、またその質の問題も、大規模化していて子供の活動が制約されている、また小学生の保育の方も長時間化している、インクルーシブになっていないという同じような問題が今噴出しているところです。
これについては、ちょっと保育と違いますのは、学校と放課後児童クラブの関係というところで、各国が解決しようという動きがあるわけでして、例えば、学校の校長先生が学校の教員も管理するし放課後児童クラブの責任者でもあるという、そういうやり方で連携を図るですとか、あとはその勤務体制も、放課後児童クラブで働いて午前中は学校で働くというような形で、フルタイムの仕事にして処遇を上げていくですとか、そういったいろんな工夫がありますし、あと、これまで学童クラブにつきましてはどうしても親が働くための受皿的な議論が多かったわけですけれども、子供のためにどうあるべきかという議論をする必要があり、そうなってきますと、学校と放課後児童クラブの対等な協力関係などをもっと進めるべきではないかと思っております。
その後に、いじめが増えている、また小学校でも不登校が増えているというグラフも御紹介しておりますが、乳幼児期だけではなく小学生についても問題が多いと思っております。
そして最後、四点目ですけれども、親支援の在り方について、今般、妊産婦の支援について少しいろいろ進んできたなというところなんですけれども、こちらについても、まだまだそういう国際水準の伴走型支援と比べますと足りていないところが多いかなと思っております。
例えば、ニュージーランドですと、出産した後にそのマイ支援センターに基本的には全員が登録できるようになっていまして、そこが健診をしたり、あと、その人のいろいろ、それこそ仕事だとか保育園どうやって選ぶかとか、とにかくいろいろな問題に全て対応するというような体制をつくっています。それには、とにかく子育てというのは過酷な仕事であるので、親には良い情報と支援者が絶対に必要、子供や親は非常にそれぞれ多様なので、その都度必要な情報がどこにあるかが分からないということになるわけですので、そういう多様な価値観ですとか、子供の状況も多様であるということを前提に伴走型支援の制度の構築が必要ではないかと思っています。
あと、最後ですけれども、子ども・子育て支援というと、何かお金の給付、保育とかそういったところに、そこは重要ではあるんですけれども、生活者としては、ちょっと子供と一緒に出かける場所があるかとか、子供が楽しく遊べる場所があるかということが非常に生活の質に大きく影響している、そこの部分を海外ではかなり力を入れているということで幾つか事例紹介しておりますけれども、そういう遊び場をつくる、それも安全に遊べるとか、あと、海外ですと、園庭ですとか校庭なども、教育のためだけではなくて、緑と遊びの場に改造して交流や楽しみの場所に使っていく。北欧ですと、図書館なども、子供がコンピューターゲームができたりですとか、親もベビーカーで図書館に行くと、コーヒーを飲みながら本を読んで、おしゃべりも飲食もできるという、そういった場所が公共で保障されていますので、お金を出してどこか遠くに遊びに行くというそういう使い方ではなくて、公共の場の充実というところも課題が大きいと思っております。
最後、少子化対策について、先ほど権丈先生からもお話ありましたが、私は、やはり少子化が深刻だからやるということは、確かに女性だとか若い人にとって余り気持ちがいいかというとそうではないということもありますし、確かにヨーロッパなどを見ていますと、子供と親の幸せのために政府はこういうことをやりますという、そういうことを前面に出していることが非常に目に付いていまして、ちょうど今年、先月、四月で子どもの権利条約批准三十周年ということでもありますので、ここは全ての子供と親の幸せを目標に制度を見直すということで、今後もこういった対策を加速していく必要があるというふうに思っております。
以上です。
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○参考人(池本美香君) 先ほども申し上げたように、コミッショナーがなぜか実現しないまま進んでいると。子どもの権利条約の批准国には、これ三点セットで、子供専門の省庁と基本法とコミッシ…
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