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石橋通宏 ·立憲民主・社民

参議院本会議(2024-05-24)での発言

第213回国会 ·第第21号号 ·5,273字
○石橋通宏君 立憲民主党の石橋通宏です。  会派を代表し、ただいま議題となりました法律案につき、岸田総理及び小泉法務大臣に質問します。  初めに、岸田総理に問います。  歴代自民党政権は、なぜ、現代の奴隷制度、人身売買と国際的に強く批判されてきた外国人技能実習制度を今の今まで抜本改革をせず、問題を先送りにし、労働法令違反や人権侵害などの問題を深刻化させてきたのでしょうか。その政府の不作為によってこれまで人権侵害の犠牲になってきた多くの技能実習生に対して、真摯に謝罪する気持ちはあるのでしょうか。あるのであれば、まず謝罪してほしい。御答弁ください。  実際、技能実習制度の下では多くの実習生が人権侵害や労働法令違反の被害に遭ってきました。  二〇一六年の技能実習法審議の際、私たちは既に技能実習制度の制度的、構造的な問題を指摘し、びほう策では問題解決はできず、抜本改革をすべきだと強く訴えました。しかし、自公政権は、適正化を図るから大丈夫だと言い張り、実効性に乏しい改善策の下で技能実習生の受入れ枠を拡大させたのです。案の定、技能実習生に対する深刻な人権侵害はなくならないばかりか拡大し、失踪者は年九千人にまで増え、絶望して自ら命を絶つ実習生まで出てしまいました。  夢と希望を持って日本に来てくれた若者が失望して帰国し、絶望して命を絶つような制度で、日本が選ばれる国になれるはずがありません。外国人労働者を労働者として保護せず、期間限定の使い捨てにするような制度では、深刻な人手不足に苦しむ地方や産業分野を支えてくれる若者たちを受け入れることはできないのです。  総理、今回の法案提出に当たって、政府は技能実習制度の構造的、根源的な問題は何だと分析されたのですか。そして、政府は、育成就労制度によってそれらの問題を完全解決し、失踪者も自殺者ももう決して出さないと約束ができるのでしょうか。お答えください。  しかし、極めて残念ながら、私たちには今回の政府案が現行制度の抜本改革になっているとは到底思えません。以下、政府案の重大な問題点を具体的に指摘し、質問します。  政府案は、制度の名称が育成就労制度に変わるだけで、送り出し国側の送り出し機関が、日本側のこれも名前を変えただけの監理支援機関と連携して育成就労希望者を日本に送り込み、育成就労計画の下で育成するという基本構造は全く変わりません。  総理、育成就労制度は技能実習制度の単なる看板の掛け替えであり、これでは構造的な問題は解決できないとの批判にどう答えるのでしょうか。また、そもそも育成就労制度の下で日本に来る外国人は一体、権利が保障された労働者なのですか、それともこれまでの実習生と変わらない育成就労生なのですか。御説明ください。  政府案は、現行制度の最も根源的な問題とされている送り出し国側及び日本側双方での民間団体、ブローカーの介在をそのまま制度として残しています。民間団体、ブローカーは、必ずもうけを出そうとします。もうけがなければ運営できないし、制度に関わるメリットがないからです。では、総理、育成就労制度の下で、送り出し機関や監理支援機関は一体誰から収入、利益を得るのでしょうか。  先日の参議院厚生労働委員会での私の質問に対し、法務大臣政務官が明確に、送り出し機関や監理支援機関は現行制度と同様に育成就労生や雇主からお金をもらって運営するのだと答弁しました。つまり、技能実習制度と全く変わらない制度であることを政府自身が認めているのです。全く改革になっていないじゃないですか。  政府が労働者保護の責任を放棄し、労働を民間の市場経済、競争原理に委ねれば、労働者からの搾取や権利の侵害が起こることは歴史が私たちに教えてくれています。  しかし、この三十年、歴代自公政権は、技能実習制度を国際貢献策だとごまかして責任を民間に丸投げし、技能実習生の権利侵害や搾取を放置してきたのです。その失敗を真摯に反省しているのであれば、日本での就労を希望する労働者が手数料や事前研修費用などと称して多額の支払を求められ、借金、債務を背負うことを明確に禁止すべきです。総理、御答弁ください。  また、労働者が多額の借金を背負わされて債務奴隷のように扱われることを防止する本気の決意があるのなら、この制度の下で日本で就労する際に掛かる諸費用を全て日本側が負担する制度に改革すべきです。なぜそうしないのか、法務大臣、御答弁ください。  現行制度では、技能実習生が借金、債務に縛られ、実習先も自由に変更できない制約がある中で、待遇改善を求めたり、自らの権利を行使しようとした実習生が監理団体によって強制帰国させられるという最悪の人権侵害が横行してきました。このような強制帰国は明確に禁止すべきだと考えますが、総理の見解をお示しください。  同様に、労働者の当然の権利である恋愛や結婚、出産の自由も侵害され続けてきました。妊娠したら堕胎を強要され、強制帰国になる。それを避けるために、妊娠の事実を誰にも相談できず、黙って一人で赤ちゃんを産み、亡くなってしまった赤ちゃんを自ら弔ったばかりに、不当にも死体遺棄罪で起訴された実習生もいます。最高裁では無罪になりましたが、このような深刻な人権侵害問題が起こってきた不幸な事実を私たちは決して忘れてはなりません。  育成就労法案第四十八条二項には、育成就労関係者は、育成就労外国人等の外出その他の私生活の自由を不当に制限してはならないと規定されていますが、恋愛や妊娠、出産及び育児の自由は当然に保障されるという理解でよいか、法務大臣、確認を願います。  政府がこれまでの反省に立ち、外国人を正しく労働者として受け入れ、保護する制度を構築しようとするのであれば、国内労働者と同等の権利を保障し、制限は極めて限定的にする制度でなければなりません。  ところが、政府案では、特定技能一号も含めると最長八年間もの間、家族帯同の自由が制限され、家族からの切離しが強制されます。総理、これは人権侵害ではないのか、なぜ政府・与党は家族帯同を認めないのか、認めたくないのか、御説明ください。  また、技能実習制度で転籍の自由が制限されていたことが人権侵害だと批判されてきたにもかかわらず、育成就労制度でも、現行制度よりは緩和されているとはいえ、結局は自民党内での法案審査の過程で要件が厳しくなり、分野によっては最長二年まで転籍が認められない制度になっています。  制度上、監理支援機関が労働者の転籍を適切に支援せず、現実的にはほとんど転籍ができない可能性があることも含め、労働者の権利が大きく制限され続ける問題をどう正当化するのか、岸田総理、お答えください。  今回の政府案は、技能実習制度の抜本改革どころか、現行制度から人権尊重の観点でむしろ後退させる深刻な問題が二つも含まれています。その一つが、技能実習制度では認められていなかった派遣労働について、農業、漁業分野で法律ではなく省令で分野を決めて解禁することです。  入管庁によれば、育成就労生を受け入れる事業主が派遣元事業者としての許可を取得し、派遣法上、派遣元事業者に課せられた責務を果たしつつ派遣事業を営む制度だとのことですが、経験のない中小零細事業主に適正な派遣事業の運営など不可能です。  派遣事業を営めば、マージンを取って利潤を得ることになります。派遣労働を可能にすることで育成就労生が二重三重の搾取の犠牲になる可能性があり、派遣元と派遣先の雇用主責任の押し付け合いなど、派遣労働のマイナス影響の実害を受けることになります。派遣期間中の賃金は民民の派遣契約に委ねられ、日払い賃金制すら可能だというのは全くとんでもない話です。  派遣は絶対に認めるべきではなく、撤回すべきです。岸田総理の答弁を求めます。  深刻な問題のもう一つは、永住権の剥奪を可能にするという、国際人権法を踏みにじる暴挙としか言えない条項を盛り込んできたことです。  政府案の永住権剥奪要件がひどいのは、公租公課滞納で取消しされる可能性があることだけでなく、法文上、軽微な義務違反、それが無過失であっても永住権を剥奪できる制度になっていることです。何十年も掛けてようやく得た永住許可が在留カードの不携帯などの軽微な義務違反で取り消されるのは人権侵害としか言いようがありません。  しかも、この暴論はそもそもの有識者会議の提案には含まれておらず、自民党内の審査において、育成就労で永住者が増えたら大変だという一部議員の主張で突如盛り込まれたと伝えられています。極めて深刻な差別主義、排外主義であり、強く非難されてしかるべき暴論です。  公租公課の滞納だろうが、軽微な義務違反だろうが、日本人であろうが、外国人であろうが、同じ法で平等に裁けばいいだけの話です。外国人に対してだけ生活基盤となる永住権を剥奪する正当な理由はどこにもありません。これは、自民党、公明党が、永住外国人を同じ生活者であり、同じ人として見ていない証左であり、所詮、育成就労生を共生社会の担い手、支え手として受け入れるつもりなどないことの証明なのではないでしょうか。  この暴挙によって、永住外国人の安心が奪われるだけでなく、間違いなく差別や偏見を助長します。こんな人権侵害を許せば、育成就労だけではなく、高度人材を含めて、日本はますます選ばれない国に成り下がります。  岸田総理、まずは永住者に謝罪した上で、この永住権剥奪条項は断固削除、撤回すべきです。明確に御答弁ください。  立憲民主党は、衆議院の審議に際し、対案として外国人労働者安心就労法案を提出しました。  私たちは、この議員立法の検討に三年以上掛け、技能実習制度の問題点を徹底的に洗い出し、韓国を始め諸外国の制度を研究して、さらには技能実習制度の被害当事者、弁護団、支援団体の皆さんと真摯な協議を積み重ね、国際人権法に準拠し、外国人労働者を労働者として受け入れて保護し、生活者としての安心を確保する制度を提案しました。  ブローカーの介在を排除するために公的な雇用許可制度とし、労働者が多額の借金を抱えて日本に来るような問題をなくし、就労開始から二年後には転籍、転職の自由や家族帯同の自由も認める、高いレベルで人権を保障した制度であり、担い手不足に悩む地方や産業分野により多くの外国人労働者が中長期に定着し、活躍してくれることを支援する制度です。  総理、私たちの安心就労法案こそ、地方にとっても、産業界にとっても、そして日本の未来にとっても必要な制度だと思われませんか。十年後に政府の育成就労制度は大失敗だったと批判される前に、私たちの案をベースにして制度設計を一からやり直しませんか。御答弁ください。  一九九〇年代以降、この三十年余り、歴代自公政権の失政によって、日本では非正規雇用が拡大し、常態化して、先進国で唯一賃金が上がらない国に成り下がり、直近の岸田政権下でも何と二十四か月連続して実質賃金が下落を続けています。もはや一人当たりGDPは世界三十四位、国際競争力は三十五位、幸福度ランキングは直近で世界五十一位に成り下がってしまったのです。  異常な円安にも岸田政権が無策を続ける中で、日本に来ても稼げない、仕送りもできない、その上、差別や偏見にさらされる。だったら、もっと高賃金で安心して活躍ができる他の国に行きたいと思うアジアの若者が増えていくのは、残念ながら当然のことです。  人口減少が加速し、担い手、支え手不足が深刻化する中で、外国人労働者が日本に来てくれなくなったら、もはや経済も地域社会も福祉も農林漁業も維持できません。それでもなお政府・与党の皆さんは、国際的に間違いなく人権侵害と非難される制度改悪をこのまま進めようとするのですか。  未来への責任を果たすつもりがあるのか、あるのであれば、その具体的なビジョンを含め、総理、説明ください。  最後に、総理、今政治がやるべきは、外国人労働者を労働者として受け入れ、権利を保護し、生活者としての安心と安全を確保することです。日本が好きで、日本に来て長期に滞在して頑張ってみたい、家族を迎え、子供を授かり、日本社会、経済の担い手として活躍したいと思ってくれる外国の若者たちが安心して長期に在留し、希望を持って活躍してもらえる国づくりをしなければ、日本の未来はありません。  自公政権にその責任を、責務を担う気がないのであれば、私たち立憲民主党がその役割を責任持って担っていきますので、さっさと政権から下野していただくことをお願い申し上げ、私の代表質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕

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