○中野参考人 丸の内総合法律事務所の中野明安と申します。本日は、意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。
私は、今先生方にも出ましたけれども、法制審議会区分所有法制部会、以下、部会と申し上げます、この部会に幹事として参加しておりました。ちなみに、幹事の立場ですが、幹事とは、発言はできるが決議には参加できないという立場でございました。その席で、私は、マンションの共用部分に係る修補に代わる損害賠償請求権は、区分所有権の売買等において元の所有権者から新しい所有権者に当然承継される、以後は当然承継案と申し上げます、このような形で改正することが実質的に妥当であり、それは実務的にも必要な改正であること、その改正は理論的にも耐え得るものだということを意見として述べました。
なお、私が述べた意見は、一弁護士としての個人的な意見ではございません。私の意見の大部分は、この問題に関する日弁連や多数の単位弁護士会の意見書に基づいたものです。この点は是非御承知おきいただきたいと思います。
今般、改正法案が当然承継案を含まない内容で部会から答申されております。なぜそのような法案が提出されたのか、その経緯を御説明させていただきます。
まず、部会では、共用部分の瑕疵、不具合等による損害賠償請求権は、区分所有者に分属するのか、性質上不可分なのか等が議論されました。分属とは、損害賠償請求権が個々の区分所有権者にそれぞれに帰属するという考え方であり、区分所有者が個々に行使できるという考え方となります。
この点については、私は、損害賠償請求権は性質上不可分であると考え、意見を述べました。このように考える根拠は、この損害賠償請求権は共用部分の瑕疵に対する瑕疵修補に代わるものであるから、瑕疵修補請求はマンション管理組合による総会決議によって一体となって請求するものです、その瑕疵修補請求に代わる損害賠償請求なので、性質上不可分だというふうに考えたものでございます。
次に、損害賠償請求権の行使は誰ができるのかということについて、事務局案では、損害賠償請求権は損害発生時の所有者に帰属するものだから、区分所有権、専有部分の譲渡により当然には移転しないという考え方が示されておりましたので、その点については、区分所有権の譲渡により損害賠償請求権も当然に移転するという当然承継案が合理的である、そのように立法することが必要であるという意見を述べました。
本日、資料として部会議事録を提出しております。部会でどのような議論がなされてきたかを示すものでございます。
まず、損害賠償請求権の帰属についてですが、金銭請求権については分属して帰属するという考えが示されておりましたので、私は、性質上不可分と考えるべきという意見を述べ、その性質上不可分と考えることについて、著名な民法学者の文献からも、そういうふうに考えても、それがかえって適切だというような意見を述べております。
これは議事録、お手元にございますその議事録のページ数でいいますと十四ページ以降のところなんですが、大要は次のように記載されています。
我妻栄先生ほかの先生方は、当然分割債権であるというような考え方は必ずしも正しくない。我妻栄先生は、分割債権であると考えることは、その長所も否定できないだろうが、その適用範囲に慎重な制限を加えないで漫然と多数当事者の債権関係の原則とすることは不都合な結果を生じることを免れない。星野英一先生も、個々の場合に応じ、できるだけ不可分債権等と解することが妥当であるという説が有力で、基本的にそれが妥当だと考える。さらに、潮見佳男先生は、可分か不可分かについては、どちらが原則ということではなくて、並列して、どちらがいいかフィフティー・フィフティーで考えて判断された方がよいというようなことを述べておられることを私は御説明をし、性質上不可分と考えることに理論的な問題はないという意見を述べました。
また、損害賠償請求権が新所有者に当然承継させることが立法上必要であるということについても、時間をかけ、意見を述べさせていただきました。そして、この意見については、法務省の御担当者から、そのように考えることが適切な場面があると認めていただきました。
これも、議事録十六ページ以降ですが、ちょっとそのまま述べますと、一つの場面とか、ある一事例を取り出したときには、このように共用部分等に係る請求権、これを専有部分の譲渡に伴って移転させると、こういう制度がうまくはまる場面もあるかもしれないというところは、場合によってはあり得るかもしれないですとされました。ただ、それを法律で決めてしまうという点については、そこは難しいのではないかとの意見が述べられたというふうに議事録になっております。
すなわち、当然承継案が具体的に妥当する場面があることをお認めいただきながら、一方で、具体的な例が示されることなく、単に難しいのではないかという抽象的な意見が表明され、事務局案が維持され、今回の改正案となったものです。
議論の最終局面、第十六回議事録にも記載されております。この点も、大要、以下のとおり、やり取りがなされた記録が残っています。これも、議事録でいいますと二十四ページ以降ですね、今日はお手元で一冊にまとめられていますが、通しページでいいますと九ページ、佐久間部会長の御発言です。
中野さんの意見はもう十分伺っておりますし、皆さんにも伝わっていることと存じます。少し飛ばします。中野さんが御意見をこれだけずっと披露されてきたわけですし、ペーパーも出ているわけですから、今後もこの議論があったという事実は消えないと思っております。立法に踏み切れるかというと、それは立法には踏み切れないというのが事務局案です。恐らく、ここで中野さんのおっしゃるとおりに立法すべきであるという具体的提案が出てこないということは、多くの方が、事務局案で積極的にいいとまではおっしゃらないかもしれませんが、やむを得ないのではないかという程度には思っておられるのではないかと存じます。こういうような言い回しで御説明をされておられます。
もう一つ言っていたのが、中野さんの意見は恐らくみんな理解はしていて、それには全面的には賛同できないということではないでしょうか、このような御発言もありました。私から疑問を呈しました。そうでしょうかというふうに申し上げたところ、まあ、僕がそうですとはちょっと言えませんけれども、大変拙い進行で申し訳ないですけれども、中野さんの意見に対する同調意見は、これまでも、今日に限らず、ずっと促し、求めてきたところ、当然承継かどうかという議論はもうこの辺りでと思っております、中野さんには不本意でいらっしゃると思いますけれども、よろしく云々、このような形で議論がなされたという点でございます。
部会でも、改正案だと修繕費用の不足を招くという実際上の不都合については、ある程度御理解は得られたものと思いますが、当然承継案が部会で否定された最大の理由は、損害賠償請求権は金銭債権だから旧区分所有者に分割して帰属するという民法理論にこだわったためであると考えます。
もう一点、申し上げます。
全会一致で当然承継説が否定されたなどとも言われているように聞き及びますが、先ほど申し上げましたとおり、私は、当然承継案を意見として維持しております。ただ、私は幹事であり、意見は述べられるが決議には参加できないという立場でありました。
さらに、実は、部会の休憩中に、ある熱心に議論に参加されている委員に御挨拶をしたところ、次のように言われました。中野さんの議論していることは正直私にはよく理解できていない、このように言われました。ここは個人的な見解ですが、部会の委員のうち、民法学者と弁護士以外は、民法理論に関する共有の議論は、もろもろの制約もあり、十分に御理解できなかったのではないかと心配しております。決して、部会で改正案の根拠とされた民法理論を理解して改正案に賛成したというわけではないと考えます。
今回、資料として、中間試案についてのパブリックコメントの取りまとめも提出いたしました。本件論点に関するコメントも多く記載されております。一つ御紹介すれば、全国マンション管理組合連合会からは、請求権が分属するとか、個々に処分が可能というような建前に拘泥するべきではない、共用部分等に係る請求権が団体に帰属するという理解を前提にした立法がされるべきというふうに、意見がパブコメに出ております。さらに、ここは非常に重要です。技術的な立法で管理者等の一元行使を認めたかのような体裁をつくり、運用した際には結局全額の行使ができないことになりかねない立法をするのであれば、そんな立法はしない方がよいとまで言われています。その他も真摯なコメントが多く寄せられています。
部会では、佐久間部会長を始め、委員、幹事の先生方及び事務局の皆様による真摯な、また熱心な議論がなされており、その御尽力には深く敬意を表するものですが、しかし、本件論点に関する限り、やや様相が異なっております。本件論点の議論の時間はございましたが、事務局案の修正がなされることはありませんでした。本件論点について、部会委員が内容をしっかり理解し、パブコメを読み込み、実質的な審議がなされなかったのではないかと思っております。
最後になります。
今回の改正は、民法の改正ではなく、特別法である区分所有法の改正である以上、民法理論にこだわって、修繕費用の不足という現実の問題を解消できない改正案を採用するべきではありません。日弁連の意見書には、改正案は民法理論に拘泥するものであって支持できない旨が明確に記載されています。これが私個人の意見ではなく、全国の弁護士の意見であることを国会議員の先生方には是非とも御理解していただきたいと思います。
国会においては、本件論点について再考いただくことを是非ともお願いしたいと申し述べ、私の意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
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先ほど意見陳述の中でも述べました。我々は、先ほど申しましたが、民法理論に拘泥すべきではないという、日弁連、ほかの単位会、多くの単位会からそ…
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