○永田参考人 失礼いたします、大変お騒がせをしております兵庫県でございます。兵庫県の選挙管理委員会の委員長を務めております永田秀一と申します。本日は、いろいろとお世話になりますが、どうかよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。
この度、この政治改革に関する特別委員会に出席させていただきまして、私ども地方自治体の選挙管理委員会に対し、このような国政の場におきまして意見を申し述べる機会をお与えいただきましたことにつきまして、誠に光栄であるとともに身の引き締まる思いでございます。本当に本日はどうもありがとうございます。
本日は、昨年執行されました兵庫県知事選挙を受けまして、その管理、執行を担った立場から、現在考えております私どもの問題意識につきまして意見を申し述べさせていただきたいというふうに思います。
さて、先般の兵庫県知事選挙は、昨年、兵庫県庁において発生をしました内部告発文書問題により、前職が県議会から不信任決議を受けて、任期満了を経ることなく急遽執行されることとなったところでございます。選挙に至った経緯も含めまして、告示前から県内外の衆目を集める選挙となり、最終的には投票率が一四・五五ポイント増となるなど、有権者の関心の高さが表れた選挙となりました。
また、選挙期間中にはSNSを中心に、インターネット上で激しい選挙運動が展開をされました。これが投票率の向上に大きな影響を与えた一因と考えられますが、こうしたSNSやインターネットを使った選挙運動が昨今の選挙運動の主役となってきたという印象を強く受けた選挙でございました。
その一方で、候補者が他の候補者の当選に資する選挙運動を行っているとの疑念を抱かせる事案であるとか、支援者による他候補者への誹謗中傷とか真偽不明の情報の拡散などが見られる状況が発生するなど、現行の公職選挙法が想定していないと思われる事象も生じたところでございます。
特に、自らの当選を目的としない候補者による他の候補者の当選に資する選挙運動、いわゆる二馬力選挙というふうに言われておりますが、公職選挙法上問題があるのではないか、こういう御指摘が私どもに数多く寄せられたところでございます。私どもといたしましては、候補者の選挙運動の全てを把握しているものでもないものですから、個別具体的に、どの選挙運動が他の候補者の当選に資する行為となったのか断定することはできません。
しかしながら、ある特定の候補者につきましては、立候補に至った経緯及び選挙期間中の選挙運動の態様を見れば、結果として他の候補者の当選に資するものとなったという見方が多くあったものと考えているところでございます。
現行の公職選挙法では、選挙の公正、候補者間の平等を確保するために、選挙運動期間中に行われる文書図画の配布であるとか掲示その他の選挙運動について一定の規制が行われているところでございます。
そして、選挙運動につきましては、公職選挙法上候補者のみが可能な選挙運動としまして、ポスターの掲示であるとか、あるいは選挙公報、選挙カーの使用、政見放送、街頭演説が規定をされているところでございます。これらは、その規格とともに数量の制限があるところ、仮に二馬力選挙が許容されることとなりますと、こうした数量制限を規定している法の趣旨が没却されて、候補者間の平等を確保できないものとなってしまいます。
公職選挙法第一条におきましては、選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明かつ適正に行われることを確保し、もって民主政治の健全な発達を期することを目的とする、こういう規定をされているところでありますが、二馬力選挙はこうした公職選挙法の趣旨、目的を損なうものである、このように考えているところでございます。
こうした問題意識を踏まえまして、私どもといたしましては、先月十七日に、二馬力選挙について、これを規制するような法の整備を国に求める要望を行ったところでございます。
次に、今回の兵庫県知事選挙におきましてSNS上で誹謗中傷や真偽不明の情報が出回るような状況となったことにつきまして、私たちの問題意識を述べさせていただきたいというふうに思います。
知事選挙におきましては、SNSを中心にインターネット上で激しい選挙運動が展開され、真偽の不確かな情報も含め、様々な情報の拡散が見られました。
こうした状況の中、情報の真実性が容易に判別できず、何を信じて誰に投票すべきか、判断に迷った有権者も少なくなかったというふうに思われます。実際に、私どもに対しては、こうした情報が氾濫し統制が取れない状況について数多くの意見や御批判をいただいたところでございます。
例えば、SNS上の特定の書き込みにつきまして、この書き込みは事実に反する内容であるから選挙管理委員会が指導すべきといったようなことも指摘をいただきました。インターネット上にあふれる候補者等に関する情報について、選挙管理委員会としてファクトチェックを行うことは現実的には困難であるというところでございます。
また、私どもに対し、誹謗中傷や真偽不明の情報について、名誉毀損罪や虚偽事項公表罪に当たらないのかとの問合せも多くいただきました。罰則の適用に関する話ですので、私ども選挙管理委員会ではなく警察の権限の話になりますが、選挙期間中の限られた短い時間の中で事実確認をして名誉毀損罪であるとか虚偽事項公表罪などを認定するというのは警察におきましても対応が困難だったのではないか、このように認識をしているところでございます。
選挙運動におけるSNS利用は効果的な投票を得る手段として活用が進んできたところでございますが、こうしたSNSの利用について一定の規制を設けることは、これまで自由にやれていたプラスの部分の制約にもつながり得るものであります。したがいまして、表現の自由と選挙運動のバランスについて、国会においても広く議論をされるべき問題と考えているところでございます。しかしながら、今回の兵庫県知事選挙においてSNS上で誹謗中傷や真偽不明の情報が出回るような状況になったことにつきましては、私どもとしても重く受け止めているところでございます。選挙運動におけるSNS利用がこれだけ普及している状況においては、これまで以上に有権者が正しい情報に基づき投票先を決定できるような、積極的な環境づくりが求められているのではないかと考えているところでございます。
私ども地方自治体の選挙管理委員会の使命は、長から独立した機関として、公正かつ中立な立場で選挙を管理、執行するというところにございます。
これは、客観的見地から公正中立な選挙の管理、執行が求められるのみならず、有権者に対しましても選挙が不公平に行われたのではないかとの印象を与えることなく、選挙結果について有権者の納得を得ることが求められているのではないかというふうに考えているところでございます。
先般の兵庫県知事選挙におきましては、私どもといたしましては、現行法の範囲内で最大限対応をしてまいりました。しかしながら、選挙後も有権者や各種団体の方々から、選挙結果や選挙における私どもの対応に対して数多くの意見、批判をいただいているという状況にございます。こうした状況を踏まえますと、今回の兵庫県知事選挙で問題となった点につきましては、大変僭越ではありますが、やはり現行法では限界があり、所要の法整備が必要となるのではないか、このように考えているところでございます。
今般の公職選挙法の改正案の附則には、いわゆる二馬力選挙やSNSに関する対応策を念頭に必要な措置が講ぜられるとした規定が盛り込まれているとのことでございますが、私どもといたしましては、是非ともこの法案を一刻も早く成立させていただきたい、そのように要望をする次第でございます。
どうぞ本委員会の委員各位におかれましては私どもの意のあるところをお酌み取りいただきまして、いわゆる二馬力選挙の是正とSNSを活用した選挙運動の改善のために更に御尽力をいただき、また、私ども選挙管理委員会に対しましても今後とも御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。よろしくお願いします。(拍手)
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