○福田参考人 御紹介をいただきました、日本弁護士連合会、日弁連ですが、憲法問題対策本部という、これは一つの委員会でございますが、その委員をしている弁護士の福田と申します。
御審議いただいている日本学術会議法案、そしてこれに関連する問題について、日弁連の見解を中心に、法的な観点から意見を述べさせていただきたいと思います。ちなみに、日弁連は、この学術会議法案については反対の会長声明を発しております。
本日、資料として、参考人のレジュメと、それから日本学術会議問題に関する日弁連の会長声明四件、そして意見書を一件提出させていただいておりますので、適宜御参照いただきたいと思います。
私の方からは、最初に私の意見の趣旨、概要を申し上げ、大きい二番目として本法案の内容上の問題点、大きい三番目として本法案の立法事実が欠如しているのではないかという問題について述べたいと思います。
まず、私どもの意見の趣旨、概要でございます。
本法案の最大の、そして最も基本的な問題は、ナショナルアカデミーとしての日本学術会議、この核心を成す独立性、自律性が損なわれることになるのではないかという点にございます。それは、憲法二十三条が保障する学問の自由に対する脅威でもあると思います。
このことを、主に二つの点から指摘しておきたいと思います。
一つは、本法案自体の内容の問題で、特に新法人の会員人事と業務運営の両面において、その独立性、自律性を制約し、阻害する幾重もの仕組みを設けようとしていること、また、ナショナルアカデミーとしての世界標準である会員選任に関するコオプテーション方式を、特に新法人発足に際して基本的に排除をし、これまでの学術会議との連続性を遮断しているということが指摘できると存じます。
もう一つは、立法事実に関する点です。周知のように、内閣総理大臣は、二〇二〇年十月、学術会議の会員改選に際して、学術会議が推薦をした会員候補者のうち六名の任命を拒否されました。しかし、政府は、その意思決定の根拠、理由についての説明責任を果たさないまま、逆に、学術会議の方に問題があるかのようにおっしゃり、例えば、学術会議に対して政府等と問題意識や時間軸を共有することを求めるなど、その在り方を問題にして、今回の法人化法案に至っております。しかし、この過程は、全体として法的正義を欠くのではないかと考えております。
また、政府は、本法案の立法理由として学術会議の独立性を徹底するためとしておられますが、これまでの学術会議は、私どもは十分に独立性を維持してきている、そう評価することができ、さきの任命拒否や本法案による法人化こそ、その独立性を侵害するものではないかと考えております。
大きい二番目として、本法案の内容上の問題点を簡単に指摘させていただきます。
まず、本法案は、独立性、自律性を制約する幾つもの機関を設置することとしております。
新法人には、全て会員等以外の外部の者で構成をされる、一つ、選定助言委員会、二つ、運営助言委員会、三つ、監事、四つ、日本学術会議評価委員会、この各機関が設置をされ、監事と評価委員会は総理大臣が任命し、評価委員会は内閣府に置かれます。
監事や評価委員会はほかの立法例に倣ったものと思われますけれども、これに加えて、余り他に立法例を見ない選定助言委員会や運営助言委員会を加え、幾重にも新法人の運営や会員人事を制約し、チェックをする、こういうことになっております。
しかし、元々、学術会議という二百人以上で構成される民主的なボトムアップの合議体、外部、特に政治権力からの自立と独立が格別に求められる、そういうナショナルアカデミーとしての科学者集団に、独立行政法人や特殊法人のトップダウン的な政府による監督システムを持ち込む、それ自体が適切性がどうなのかという疑問を感じます。
それらは、政府から独立して行うべき業務の自立した運営を阻害し、また、組織の独立性を担保する会員人事の自律性を損なうということになって、その独立性、自律性が由来する憲法二十三条の学問の自由をも脅かすものと考えます。
次に、会員の選考、選任に関する自律性の阻害と連続性の遮断です。
本法案によれば、新法人の会員の選任は、選定助言委員会の意見を聞いた上で作成される選定方針に従い、会員候補者選定委員会が、会員のほか、多様な関係者からの推薦に基づいて、多様な実績のある科学者を含める等の配慮の下で選定すべきことが法定されております。これらは、法律によって会員選定における自律的な判断を制約するものでありまして、これまで会員の推薦を基本に、学術会議が自ら基準を定めて会員候補者を選定してきたコオプテーション方式を制約するものと言えます。
しかし、さらに問題なのは、新法人発足に当たって、特別な会員選定方法が取られ、ここではコオプテーション方式は基本的に排除をされているということです。すなわち、特別な候補者選考委員会なるものが設置をされ、その委員は内閣総理大臣が指定する者と協議の上で決定することとされ、かつ、会員以外の者で構成できるようになっております。そして、会員候補者についての現行会員の推薦権はこれを否定されています。
加えて、新法人発足三年後の会員選任です。ここでは、通常の会員候補者選定委員会ではなく、発足に際して設置された、先ほどの候補者選考委員会の委員のうちから会員候補者選定委員会委員を選任するということに規定されておりまして、発足時と同じメンバーが三年後にも会員の選定に当たるものとされております。そして、承継会員は再任されないとされておりますから、この三年後の会員選任に参加できません。
以上のようなこの法案の会員選考、選定規定は、現在の学術会議会員を新法人の会員の選任手続から殊更に排除をする異例なものと言わざるを得ないのでありまして、学術会議の会員人事の自律性を否定するものであり、かつ、これまで政府から独立して科学的助言を行ってきた従来の学術会議との連続性を遮断するものと言わなければならないと存じます。
大きい三番目、立法事実の欠如について申し上げます。
政府によりますと、本法案は、学術会議の独立性を徹底させ、あるいはその機能の強化のために独立性、自律性を抜本的に高めるため、国とは別の法人にするのだ、こう説明されております。
しかし、私の見るところ、これまでの学術会議は、十分に政府から独立して活動をしてきているのではないかと思われます。それは、例えば、先ほど申し上げた会員任命拒否に対して、学術会議がその理由の説明と速やかな任命を求め続けていること、それ自体から明らかでございますし、典型的には、防衛装備庁が進める安全保障技術研究推進制度への慎重な対応を求めた二〇一七年三月の軍事的安全保障研究に関する声明に表れております。そして、二〇二一年四月二十二日の「学術会議のより良い役割発揮に向けて」との総会の決議で明らかにしたナショナルアカデミーの五要件、この確保を政府に対して要求をし続け、本法案の国会提出に対しても、本年四月十五日の総会において、これを非常に残念だとし、五要件及び懸念事項の全てを充足、払拭した法案への修正を求めていることにも見られるとおりであります。
本法案の立法目的の中心に位置づけられている独立性の徹底は、立法事実たり得ないのではないかというふうに考えます。
そして、二〇二〇年の会員任命拒否との関係です。
先ほど申し上げた任命拒否は、任命制が導入されて以降四十年近くにわたって、総理大臣の任命は形式的な任命にすぎず、学術会議から推薦された候補者の任命を拒否をすることはしないという定着した政府解釈を覆すものでありました。そこで任命拒否をされた六名は、総理大臣によって、優れた研究又は業績がある科学者であることを否定され、かつ、国会、国民に対して責任を負うことができない者と位置づけられました。しかし、これほど科学者としての人格を傷つける任命拒否の具体的理由は明らかにされないまま、現在まで参っております。
日弁連は、この任命拒否が学術会議の独立性と自律性を違法に侵害するものであり、その独立性と自律性を基礎づけている学問の自由を脅かすものであるということ、そして国民主権に由来をする行政の公正、透明性の原則及び説明責任の原則に背反するということを指摘してまいりました。
学術会議の独立性を違法に侵害した任命拒否についての政府自身の責任を放置をしたまま、逆に、学術会議の方に問題があるから、これを廃止して新たな法人にしようとする本法案については、本末転倒であり、法的正義に反するものと言わざるを得ないというふうに考えます。
以上です。(拍手)
福田護 の他の発言
2025-05-07 · 衆議院内閣委員会
○福田参考人 御質問についてお答えしたいと思います。
学問の自由、憲法二十三条、これは一般的には、研究の自由、発表の自由、そして教授の自由というふうに三つほど挙げられることが一…
2025-05-07 · 衆議院内閣委員会
○福田参考人 御質問ありがとうございます。
今の御質問の趣旨としましては、法文で、法律にそういういろいろな制約が書かれている、要件が書かれている、そのこと自体の影響がどうなのか…
2025-05-07 · 衆議院内閣委員会
○福田参考人 先ほど申し上げましたとおりなんですが、やはりこれは、四つの機関も設けて、そして、それぞれの立場から、会員選考、運営、そして運営については監事と運営助言委員会と両方です…
2025-05-07 · 衆議院内閣委員会
○福田参考人 先ほど意見陳述でも申し上げましたが、私どもといたしましては、この法案の内容による法人化というのは、これは反対というふうに考えております。
それは、繰り返しになりま…
2025-05-07 · 衆議院内閣委員会
○福田参考人 御質問ありがとうございます。
冒頭に私の方から参考人意見として申し上げたところに、基本的には申し述べたとおりなのですが、二〇二〇年の会員任命拒否の問題、これは政府…
2025-05-07 · 衆議院内閣委員会
○福田参考人 御質問ありがとうございます。
事務局職員の充実とか、それから、そういうものも含めて国際的に通用する、そういう独立性、そして人権の保障も含めた学問の提言、こういった…
2025-05-07 · 衆議院内閣委員会
○福田参考人 学問の自由については、先ほどちょっと申し上げましたけれども、やはり科学者集団として、そこの規律に従って議論が進められる、その自由というのが根幹になければならないだろう…
2025-05-07 · 衆議院内閣委員会
○福田参考人 私は、科学の分野について、特に自然科学の分野については全くの素人でございまして、御質問に対する判断能力は基本的には持ち合わせていないというふうにお答えせざるを得ないの…
API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=福田護
MCP: search_diet_speeches(speaker="福田護")