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渡辺陽平 ·全日本教職員連盟委員長

衆議院文部科学委員会(2025-04-25)での発言

第217回国会 ·第第11号号 ·4,336字
○渡辺参考人 皆様、おはようございます。全日本教職員連盟委員長の渡辺でございます。  中村委員長を始め衆議院文部科学委員会の皆様には、このような意見陳述の機会を設けていただき、誠にありがとうございます。  私たち全日本教職員連盟は、日本全国の教職員が参加する、創立四十二年目を迎えた教職員団体です。教育専門職としての矜持を胸に、日々、子供たちのために教育活動に励んでおります。  私は、現在、休職専従という立場にはございますが、これまでの約二十五年間にわたり、公立の小中学校で教諭として勤務し、学年主任や児童指導主任等の様々な役割を担ってまいりました。今回の給特法改正法案について、実際の学校現場の教師の立場から意見を述べさせていただきます。  初めに、現在の公立の学校現場の状況を御紹介します。  学校現場では、不登校や特別な支援、日本語指導などが必要な児童生徒が増加し、学校や教師が対応する課題が複雑化、困難化しています。また、地域や保護者が学校や教師に求める役割や期待が肥大化し続けています。そして、日本全体の人手不足もある中、教員採用試験の倍率は過去最低を更新しています。さらには、産育休代替者の確保が困難化し、教頭が学級担任をせざるを得ないような教師不足が続いております。  このような学校現場の状況は、持続可能ではありません。教師が生き生きとしていなければ、子供たちも学校が楽しいはずがありません。そのためには、学校における働き方改革と、指導、運営体制の充実、教師の処遇改善を一体的に進める必要があります。  今回の抜本改革について、報道では処遇改善ばかりが取り上げられましたが、この三つの大きな柱で全体として考えていただきたいと思います。  まず、一つ目の柱は、働き方改革についてです。  令和元年の給特法改正により、学校での時間管理が始まりました。それまで、学校にはタイムカードがありませんでした。あれから六年、現在では、日本全国の学校に、タイムカードやICTによる時間管理が当たり前になりました。令和元年の給特法改正につきまして、本当にありがとうございました。  その後、課題も明らかになりました。各教育委員会の取組に大きな差があることです。我々教職員としては、全ての教育委員会に、本気で学校における働き方改革に取り組んでいただきたいと思っております。  今回の法案では、全ての教育委員会に、働き方改革に関する計画の策定、公表と、その実施状況の公表が義務づけられています。これにより、教育委員会は自分事として働き方改革を進めることになります。さらに、これまでの、教育委員会によっては学校、教師が担う三分類が進捗しないことも課題でしたが、教育委員会の計画に三分類が位置づけられれば、現在よりも必ず前進するものと期待しております。  例えば、三分類において、学校徴収金の徴収、管理は学校以外が担うべき業務とされていますが、いまだに半数以上の教育委員会で取組がなされていません。今回の改正により、教師が教師でなければできないことに専念できるよう、このような教育委員会が実施すべき取組について、教育委員会が自ら計画の中に位置づけ、設置者としての方針を示し、実行に移していくことが期待できますので、学校現場としては大変歓迎しているところです。  加えて、働き方改革に向けて、これまで子供たちのために学校、教師が行ってきたことを見直す際に、登下校の子供たちの安全確保を家庭にお願いしたり、学校行事を簡素化したりしようとすると、学校だけでは保護者や地域の方々の十分な御理解をいただくことが難しい場合がございますが、設置者である教育委員会の方針があらかじめ地域に示されていると、学校現場でも関係者との相談が格段にやりやすくなると期待しています。  また、本法案の内容には、予算編成権を持つ首長が参加する総合教育会議や、保護者や地域の方々が参加する学校運営協議会との連携なども含まれています。これにより、地方の教育予算の拡充や、地域の方々の学校における働き方改革への理解増進、協働が期待できます。  次に、二つ目の柱の指導、運営体制の充実についてです。  昨年の財務、文部科学両大臣合意と令和七年度予算の成立に心から感謝を申し上げます。今後四年間での小学校教科担任制の四年生への導入や、中学校の生徒指導担当教師の拡充などの計画的な教職員定数の改善、特に中学校三十五人学級の実現は、我々が長年要望してきたものであり、学校現場は元気をいただきました。  その上で、複雑化、困難化する課題に対応するためには、教師がチームで対応する組織的な学校運営とそのための体制が不可欠です。  現在の学校現場では、不登校支援や特別支援教育などについて、会議を開き、学校全体で対応するようになってきているとはいえ、それぞれの教職員が業務を抱えているため、どうしても担任教師の負担が大きくなります。  しかし、担任教師の中には新卒の教師もおり、そのような対応には不慣れです。そのため、実際に子供たちと向き合う担任を支えるためには、多様な強みを有する教師が学校全体として組織で対応しなければ、これらの課題に適切に対応することはもはや困難になっています。  そのような状況において、本法案に含まれている主務教諭の創設が必要だと考えます。  主務教諭がチームの核として、特定の担当する教育活動について学校内外との連携、調整役となり、学校現場では、不登校支援や特別支援教育などが効果的にチームで実施されるようになります。職として明確化されることにより、担当する教師も、不登校支援や特別支援教育などの取りまとめ役としての業務を円滑に進めることができるようになります。  なお、職の創設により新たな負担が加わるのではないかとの指摘があると伺いますが、新たに学校が担う校務が追加されるわけではありませんので、その指摘は当たらないと思いますし、むしろ、学校の業務をより効率的に行うことが可能になると思います。  また、主務教諭は、給料表上、新たな職として教諭より高い本給になると文部科学省は発表しています。主務教諭の創設により教諭の基本給が下がるおそれがあるという声も一部ありますが、既に昨年の十月には記者会見で文部科学大臣が、新たな職の創設に当たって教諭の給与の引下げは考えていないと明確に表明されています。六級制の実現は、学校で経験を積みながら子供たちへの指導に尽力し続ける教師への社会的評価の表れであり、我々も要望してまいりました。  次に、三つ目の柱は、教師の処遇改善です。  教師の処遇を考える際、まず、教師という仕事について考える必要があります。  我々全日本教職員連盟が考える理想の教師とは、子供、保護者、社会から信頼される教師です。  私の考えでは、信頼される教師とは、三つの要素から成り立っています。  一つ目は、教師であるという矜持を持っている教師です。教師は、子供たちの前で指導する者としてふさわしい人間でありたいと思っております。  二つ目は、学び続ける教師です。子供たちの学びを支えるとともに、自らも高みを目指して学び続け、子供たちのロールモデルになりたいと思っています。  三つ目は、全ての子供たちのためと考えられる教師です。目の前の子供たちのことを第一に考え、深く理解し、その子にとって、その瞬間、最善の支援や指導ができる教師でありたいと願っております。  これらの点は、法的には、教育基本法第九条、「法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。」、また、地方公務員法第三十条、「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」に表れています。  このような教師の仕事を考えると、教師は、目の前の子供たちを少しでも伸ばすために全力を尽くすという使命を帯びています。そして、生徒指導や授業研究等、時間により完成するという性格の業務が少なく、残業かどうかの線引きが非常に難しいです。さらには、子供は一人として同じ存在ではないため、経験は生かしつつも、常に新しい対応を臨機応変に行わなければなりません。  我々現場の教師は、管理職から、あと一時間あれをしなさい、これは今日やらなくてよいから帰りなさいと一つ一つ命令、つまり時間外勤務命令を受ける仕事ではなく、教育専門職として一人一人が裁量の中で、目の前の子供たちのために、教材研究や保護者との面談など、今日どんな仕事をどこまでやるべきかを判断したいと考えています。このような教師の裁量を確保する仕組みこそが給特法の精神であり、教職調整額の仕組みだと考えています。  多くの教師は、子供の成長に関わるすばらしい仕事であることに対し、矜持を持ち、仕事に前向きに取り組んでいます。しかし、矜持だけでは限界が来ており、処遇改善も必要です。先ほどのような教師の仕事の本質を捉えれば、時間外勤務手当化は取るべきではありません。勤務時間の内と外をまとめて捉え、教育専門職としての教師の責任と職務に対して一括して教職調整額を払うという制度が望ましいのです。  我々全日本教職員連盟は、教職調整額の引上げを要望してまいりました。現在、人材確保法の趣旨が形骸化しており、人材確保法の優遇分を回復する必要があります。教師の処遇改善は約五十年ぶりで、是非とも教職調整額の引上げをお願いいたします。  さらに、本法案には、学級担任を想定して、義務教育等教員特別手当を加算する制度改正も含まれています。学校では、学級担任を担うかどうかで業務負担が大きく異なります。保護者からの連絡、相談を始め、学級に関する業務を担うからです。頑張っている教師が報われる処遇改善のために、学級担任への手当の加算が必要です。  このように、本法案は、働き方改革、組織的な学校運営、処遇改善を一体的に進めるために不可欠なものです。本法案の成立は、我々全日本教職員連盟の悲願であり、日本全国の日々子供たちのために全力で頑張っている教師の願いです。国会議員の先生方、学校現場の教職員の声を聞いていただきたいと思います。  結びになりますが、本法案の可決を強く強くお願いいたしまして、私の意見陳述とさせていただきます。  御清聴ありがとうございました。(拍手)

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