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吉開多一 ·国士舘大学法学部教授

衆議院法務委員会(2025-04-04)での発言

第217回国会 ·第第8号号 ·2,788字
○吉開参考人 国士舘大学の吉開と申します。  本日は、このように意見を述べる機会をいただきましたことに、まず御礼申し上げます。  私は、平成九年から十七年間、検事として、主に捜査、公判の現場で仕事をしておりました。警察と連携して捜査をしたこともございますし、検察官独自捜査事件の主任として自ら令状請求をした経験もございます。平成二十六年に退官しまして、現職に転じました。元々警察官志望の学生が多い大学であるため、現在は、検事時代の経験を踏まえて、警察官志望の学生を多く指導しながら、刑事訴訟法や刑事政策について研究をしております。  本日は、私の経験した限りではございますが、令状の実務も踏まえながら、情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法改正につき、本法案に賛成の立場から意見を申し上げたいと思います。  今回の改正では、令状について、電磁的記録により発付、執行することが可能になると理解しております。  情報通信技術が極めて高度に発達している現在において、刑事司法だけが取り残されている状態にあります。私が検事を退官してから丸十一年が経過しておりますが、令状の発付を受け執行する方法は、当時と変わりがなく、紙媒体を利用していると承知しております。  令状の発付を受けるには、令状担当裁判官の審査が必要です。令状審査では、それまでに捜査機関が収集した証拠を疎明資料とし、犯罪の嫌疑があることや、強制処分の必要性、相当性などを裁判官に確認してもらわなければなりません。現状では、この疎明資料は紙媒体でなければならないので、書類のデータを作成するだけでは足りず、紙にプリントアウトし、作成者が署名押印し、さらに各ページに割り印をするということをやっております。  犯行場所の状況は、関係する地点の距離を測ったり写真を撮影して、検証調書あるいは実況見分調書を作成することで証拠化されます。特に、殺人事件など重要な事案では、犯行場所について念入りな証拠化が必要になりますので、写真の枚数だけで百枚を超えたり、調書自体が数百ページに及ぶこともあります。そのような場合でも、警察官は、一枚一枚写真を現像し、のりで紙媒体に貼り付けるとともに、写真に割り印をし、さらに各ページにも割り印をして、検証調書あるいは実況見分調書を作成しておりました。  これらは、言うまでもなく、紙媒体の調書の改ざんを防止するために行われているものではありますが、そもそも、当初に作成した書類のデータに改ざん防止措置が講じられるのであれば、そのデータ自体を証拠として利用すれば足りるのですから、現在のやり方は膨大な時間をかけて不要な作業を強いていることになります。  令状審査が紙媒体で行われるため、現状では、捜査機関は作成した疎明資料を裁判官の下に持参しなければなりません。警察署、検察庁と裁判所が離れていたり、交通が渋滞したりしますと、片道の移動だけで一時間以上かかることもあります。さらに、令状が発付されても、今度はそれを持参して戻ってくる時間もかかります。  例えば、路上で違法薬物を使用している疑いがある人がいたり、犯罪に関連する重要な証拠物を所持している疑いのある人を警察官が発見したとします。任意の協力を拒まれた場合、一刻も早く令状の発付を受けなければなりません。しかし、現状では、一部の警察官が先ほどのような紙媒体を作成し、裁判官の下に持参し、令状が発付されて戻ってくるまでの間に、別の警察官がその人物の説得を続けて逃亡を防止するなどの措置を講じるしかありません。最初に疑わしい人物を見つけてから令状が執行されるまでに四、五時間かかることもございます。刑事訴訟法では、こうした留め置きの適法性が論点の一つとなっております。  このときの警察官の対応によっては、違法に留め置いたとして、収集した証拠の証拠能力が否定されることもあります。また、令状審査に時間がかかっている間にその人物に逃亡されてしまうリスクもあります。これでは逃げ得を許すことにもなりかねません。電磁的記録による令状の発付、執行は、特にこうした緊急性を要する事案で有効だと考えられます。  同時に、紙媒体の作成作業などが省略されることで、長時間にわたる留め置きは不要になり、裁判官による令状審査の開始も早くなると予想されます。そして、裁判官が令状請求を却下するのであれば、それ以上に留め置きを正当化することはできなくなりますので、疑われた人の行動の自由を保障することにもつながります。その結果、司法的抑制が更に実効性を増すことも期待されます。  今後の少子高齢化は、警察の現場にも大きな影響を及ぼす可能性があります。警察官志望の学生を指導しておりますと、そもそも厳しい仕事であることもありますが、だんだんと志望者が減少しているように感じております。優秀な人材は争奪戦になっているようにも見受けられます。仮に現場の警察官の数が十分に確保できなくなれば、これまでのやり方を維持することはできなくなるかもしれません。捜査の効率化、円滑化は、社会の安全を守るためにも、引き続き真剣に検討しなければならない課題だと考えております。  なお、捜査の効率化、円滑化が、対象になる人たちの権利を不当に侵害する結果を招くのではないかという御懸念もあるかもしれません。  しかし、電磁的記録により令状の発付を受けるようになっても、裁判官の審査基準が変わるわけではありません。今回の改正で効率化、円滑化されるのは、紙媒体の作成作業と裁判所までの往復に費やす時間を省くことだと考えられます。そして、これらは、省くことに合理的な理由があると言えます。  また、証拠物やデータは、実務では客観的証拠と言われるものになります。客観的証拠をできる限り収集し、十分に分析した上で捜査を進めていくことは、供述に依存しない、適正な捜査を実現するためにも重要だと言うことができます。  さらに、検察官が起訴をして刑事裁判になった場合、証拠物やデータは公判前整理手続における証拠開示の対象になり、被告人、弁護人もその内容を確認することができます。最近では、開示されるデータが膨大な量になるため公判前整理手続に時間がかかっているという話も耳にしますが、客観的証拠は被告人、弁護人の防御権を守るためにも必要だと言うことができます。  対象になる人たちの権利を不当に侵害しないように、憲法によって保障された令状主義の要件や手続を捜査機関に遵守させつつ、証拠物やデータを押収させることは、捜査の適正化を図り、被告人、弁護人の防御権を確保する上でも重要な意義を持つと考えます。  私の意見は以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)

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