衆議院本会議(2025-04-15)での発言
第217回国会
·第第20号号
·3,130字
○国務大臣(伊東良孝君) 阿部弘樹議員への御答弁の前に、先ほど、尾辻かな子議員への答弁の中で、報奨金制度につきまして、これを間違えて、奨学金と発言いたしました。正しくは報奨金でありますため、訂正させていただきます。よろしくお願いを申し上げます。
それでは、阿部弘樹議員にお答えいたします。
まず、令和二年の法改正の効果や課題についてお尋ねがありました。
消費者庁の実態調査結果によりますと、法改正の施行後、より多くの事業者で窓口の設置等内部通報制度の導入が進み、公益通報者保護制度の認知度が向上するなどの効果が認められております。
その一方で、従事者指定の義務を履行していない事業者が一定程度存在すること、また、多くの事業者において内部通報窓口の利用は限定的であることなど、事業者の体制整備の不徹底や実効性に課題があり、このような課題に適切に対応していく必要があります。
次に、公益通報窓口の設置の義務化が通報者の不安や心配を解消できるのか、具体的な対策についてのお尋ねがありました。
令和二年の法改正で、事業者内の公益通報に対応する、事業者の指定義務や、あるいは従事者の守秘義務が規定をされました。
このような措置は、通報したことが上司等に共有されてしまうのではないかといった通報者の不安や心配の解消につながるものです。
さらに、今回の法改正では、従事者指定義務の違反に対する命令権や命令違反時の刑事罰を規定しており、不正を通報することを検討している労働者の不安払拭に努めてまいります。
次に、社外の者が通報すべき不正を行った場合の対応についてでありますが、公益通報者保護法では、取引先事業者との請負契約等に基づいて事業を行う事業者の労働者が、当該取引先事業者の不正について、当該取引先事業者や行政機関又は報道機関等に通報する場合、一定の要件を満たせば保護をされます。
こうした点も含めて、制度の普及、浸透に努めてまいりたいと思います。
次に、消費者庁における民間と官公庁に対する対応の違いと、官公庁の不正事案に対する見解についてお尋ねがありました。
本改正案では、公益通報をしたことを理由として解雇又は懲戒をした者に対する刑事罰を導入することとしており、これについては、民間の事業者でそのような意思決定をした者のみならず、国及び地方公共団体において同様の意思決定をした者も対象となります。
また、官公庁の不正事案につきましては、消費者担当大臣としてのコメントは差し控えるところでありますが、消費者庁としては、国や地方公共団体も含め、制度の普及、浸透に努めてまいります。
次に、体制整備義務の対象となる事業者の範囲の拡大、及び中小企業への政府の対応方針や支援策についてお尋ねがありました。
消費者庁の実態調査等の結果、従業員数三百人を超える義務対象事業者であっても体制整備の不徹底と実効性の課題が明らかとなっており、まずは、義務対象事業者の体制整備の徹底、そして実効性向上を図ることが重要であると考えております。
従業員数三百人以下の事業者には、法律上、体制整備の努力義務がありませんが、公益通報の件数が少なく、対応のノウハウを蓄積することは難しいとの指摘があるところであります。
このため、消費者庁では、これまで、中小規模事業者などに対し、制度の重要性や導入方法について周知を行ってまいりました。法改正後も、引き続き、制度の普及、浸透に努めてまいります。
次に、従事者指定義務に関する消費者庁の権限強化や組織体制についてのお尋ねがありました。
事業者に対する消費者庁の行政措置は、外部からの情報提供のほか、様々な端緒情報を基に実施しております。
消費者庁では、今年度に法執行のための新たな定員や予算を確保しており、引き続き、法執行体制の強化に取り組んでまいります。
次に、求職者等による公益通報に対する見解及び公益通報者の周辺の方々に対する配慮についてお尋ねがありました。
求職者等による公益通報や通報を理由とする不利益な取扱い及び公益通報者の周辺の方々の状況につきましては、その実態が明らかではないことから、その状況を注視してまいりたいと考えております。
次に、通報者探索への罰則を設けない理由についてのお尋ねでありますが、今回の改正法案では、公益通報者を探索して、公益通報をしたことを理由とする解雇又は懲戒を行った法人及び個人を罰則の対象としております。
一方、不利益な取扱いには至らない、探索行為自体に罰則を科した場合には、事業者による正当な調査を阻害する要因になり得るなどの懸念もあり、慎重に検討する必要があると考えております。
次に、虚偽通報に対する対策についてのお尋ねでありますが、公益通報者保護法では、通報が結果として真実でない場合であっても、通報が公益通報に該当し、法の保護要件を満たしている場合には不利益な取扱いが禁止されています。
一方、虚偽だと知って行う通報など、いわゆる濫用的通報については、まずは、事例を幅広く集め、実態を調査する必要があると考えております。
その上で、実態調査結果を踏まえ、公益通報者保護制度の健全な運営を確保する観点から、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。
次に、公益通報の妨害行為とならない正当な理由の具体的内容及び労働者と事業者の理解促進を図る方法についてお尋ねがありました。
公益通報の妨害行為とならない正当な理由の具体例としては、労働者に対し、不正行為について、特段の根拠なく報道機関や取引先などに通報しないよう文書又は口頭で求めることが考えられます。
また、正当な理由について、労働者と事業者の双方が十分に理解できるよう、例えば、消費者庁の逐条解説やウェブサイト上のQアンドA等により解釈の明確化を図ってまいります。
次に、政府が把握している配置転換や退職勧奨やハラスメントを含む報復の実態、これを刑事罰の対象から外している理由についてお尋ねがありました。
裁判例の中には、不利益な取扱いが通報を理由とするものと認定された事案のうち、配置転換や嫌がらせに関するものもあると承知をいたしております。
刑事罰につきましては、一般論として、犯罪の構成要件は明白で、また、対象となる行為は罰則に値するものでなければなりません。御指摘の配置転換や退職勧奨、ハラスメントの様態は様々であり、不利益の有無や程度は個人の主観や事情に依存する部分が大きく、不利益であることが客観的に明確ではないため、罰則の対象とすることは困難と考えております。
次に、公益通報のための資料の収集、持ち出し行為の民事免責、導入しなかった理由、今後の取組についてのお尋ねであります。
労働者等が公益通報のために必要であると自ら判断して事業者の内部資料を収集し持ち出すことは、個人情報や営業機密などに関する事業者の情報管理や組織秩序に悪影響を及ぼす懸念があります。
裁判所においては、通報に伴う資料持ち出し行為を事由とする懲戒処分を無効としたものが見受けられますが、通報との関連性や通報者の動機、行為の様態、影響等を総合的に勘案したものと承知をしております。
このため、公益通報を理由とする資料収集、持ち出し行為を、一定の要件の下、免責する規定を設けることは現状困難と考えており、事案ごとに事情を総合勘案の上、判断することが妥当と考えております。
以上でございます。(拍手)