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鈴木準 ·株式会社大和総研常務執行役員

衆議院予算委員会公聴会(2025-02-25)での発言

第217回国会 ·第第1号号 ·7,117字
○鈴木公述人 大和総研の鈴木準と申します。  このような機会をいただきまして、大変光栄に存じます。  令和七年度総予算に関する御審議の参考としていただきたく、意見を述べさせていただきます。  まず、経済状況について申し上げます。  配付資料の一ページですが、私どもでちょうど先週金曜日に公表しました経済予測では、実質GDP成長率は暦年ベースで二〇二四年の〇・一%に対し、二五年一・五%、二六年一・一%と予測しております。年度ベースでは、二四年度が〇・七%、二五年度が一・三%、二六年度で同一・一%と見込んでおります。  二ページが需要項目別の内訳などでございますが、民間消費は、賃上げ継続による所得環境の改善や高水準の家計貯蓄などを背景に、緩やかな増加が続くと見通しています。  企業設備投資は、海外経済の不透明さの強まりなどに注意は必要ですが、実質金利がマイナスという緩和的な金融環境が当面継続する中で、コロナ禍などで企業が先送りしてきた更新投資や能力増強投資などが発現すると見ています。  輸出ですが、世界経済の成長などを背景に、財輸出は総じて堅調な推移が続くと見られます。サービス輸出はインバウンド需要の拡大が続くと見込まれます。  三ページにお移りください。  個人消費について少し詳しく見たもので、左図は個人消費の長期的な均衡値の推計結果と実績の実質個人消費です。  均衡値は、コロナ禍の際の給付金で可処分所得が増加した二〇年をピークに二三年まで物価上昇によって低下を続けたのですが、賃上げが加速した二四年に反転しています。二四年十―十二月期の一人当たり実質雇用者報酬は三四半期連続で前年比プラスとなり、二五年一―三月期以降も高水準の賃上げ継続などによってプラス圏で推移する見込みです。  四ページに御覧いただきますように、二二年から二三年に実質賃金が前年割れした背景には、大幅な円安、資源高に伴う交易条件の悪化や労働分配率の低下がありましたが、こうした影響は既に一巡しています。今後、生産性を向上させれば、それが実質賃金の上昇につながるという状況を今迎えていると見ております。  そして、五ページが今年の賃上げの予測です。  人手不足の深刻化などを背景に、春闘では前年に続いて高水準の賃上げ率となる公算が大きく、定昇込みの賃上げ率は予測モデルの推計で四・二%ですが、その他環境を勘案しますと、二四年並みの五%程度、ベースアップ率は三・五%程度と想定しております。  六ページでございますが、GDP統計から計算される一人当たり実質雇用者報酬は、二四年四―六月期に十四半期ぶりにプラス圏へ浮上しますと、十―十二月期には同前年比二%まで加速しました。一人当たり実質雇用者報酬は、二六年度にかけて労働生産性上昇率並みの一%程度で推移すると見ております。  七ページでございますが、名目賃金上昇率がインフレ率を上回っていけるかということで、物価です。  足下でのエネルギー関連の負担軽減策も考慮した上で、CPI総合、緑の線、凡例中の角括弧内でございますが、二四年度、二五年度はいずれも前年比三・一%、二六年度で二%の増加を見込んでいます。  物価の基調をより的確に把握できる、生鮮食品、エネルギーを除くCPI、これは新コアコアCPIと申しますが、これは赤い折れ線、凡例中の丸括弧内でございますが、二四年度二・二%、二五年度二・三%、二六年度二%の見通しです。足下で一部食料品の価格高騰が続いておりますが、そうした動きは徐々に落ち着くと見ております。  他方で、人件費の増加分を販売価格に転嫁する動きは継続しておりますので、賃金と物価の循環的な上昇が定着することで、いよいよ基調的な物価が前年比二%程度で推移すると見込んでおります。  八ページが前半のまとめでございますが、今、長期に続いた賃金と物価が停滞するデフレが、これは人々の社会通念も変わってきたことで、ようやく終わろうとしていると思います。  それとタイミングを合わせ生じている、構造的な人手不足を奇貨とした賃上げ圧力が強まっています。女性や高年齢者の就業率もかなり上昇しましたので、賃上げ圧力が弱まることはないと思います。転職市場にしろ新卒市場にしろ、賃金を上げないとよい人材を雇用できない、こういう経営状況になっております。  しかし、生産性が向上しなければ、賃上げは持続的、構造的なものとして定着いたしません。生産性を向上させる一丁目一番地は、投資をして、一人一人が使える資本を増やすことであります。  この点、日本は、機械や建物といった実物の資本が陳腐化していることに加えまして、ソフトウェア投資や人的な資本の不足に見舞われています。今の時代、生産性を上げる上で、そうした無形の資本が必須かつ有効になっております。  賃上げは労働の値段が上がるということですから、資本の値段が相対的に下がる。今後は、投資を拡大させられるかどうかが焦点ということになります。  また、関連して九ページですが、今、賃上げをしても、社会保険料が増えてしまって可処分所得が増えないという問題が大きい状況です。働き手の手取りを増やす必要があるという点では、社会保障給付全体を捉えた社会保障改革も重要です。  さて、十ページからが財政の話であります。  左図は、OECD加盟各国について、縦軸に示した直近十年間平均のPB、プライマリーバランス赤字GDP比が大きい国ほど、横軸に見る債務残高GDP比が大きいという当然のことを示しております。日本はそれが最も深刻でありまして、多くの国はPBが循環的に推移していますが、日本は恒常的に赤字、あるいは、その循環の位置が平均的に赤字側にあるということであります。  債務が大きければ、当然に利払い費も大きいのが通常の姿でありますが、右図で御覧いただけますように、日本の現在は異常な状況です。周知のとおり、日本では一六年秋から二四年春まで、金融政策の一環として長期金利が低位に操作されてきましたので、債務残高の大きさの割に利払い費が非常に小さい。  利払い費は、過去に計上した赤字を原因とするセカンダリーな赤字です。今後、経済の再生に伴って金利は上昇していきますので、これからはプライマリーの赤字に加えて、セカンダリーな赤字をダブルでマネージしなければならないということになります。  十一ページは、内閣府から示されている中長期試算の直近版です。  半年に一度改定されるこの試算に対しましては、PB黒字化がいつなのかという点が注目されがちで、今回も二五年度の黒字化目標は達成できず二六年度になると言われておりますが、以前は二〇年度までに黒字化させると言っておりましたし、更に遡れば、二〇一一年度までにとも政府は言ってきました。  もちろん、リーマン・ショックやコロナ禍がありましたが、言ったことがずっと実現されませんと、国民はトータルとして政策に全幅の信頼を置くことができない。成長戦略をやるんだと言っても、家計の将来設計や企業経営としてはリスクを取りにくいということが生じます。  そもそも、求められていることは、どこかで一度PBが黒字にタッチすればよいということではなく、高齢化が厳しくなる二〇三〇年代を乗り越えられるような財政構造をつくることでありますので、ある年の、単年度の収支尻だけが問題ということではありません。  また、右の図で、成長移行ケースでは公債等残高GDP比の低下が描かれておりますが、これは、現在発行されている国債の金利が低いからにすぎません。三四年度よりも先を描けば、低下を続けるとはほぼ考えられず、恐らく再び上昇に転じると見るのが一般的だろうと思います。  さらに、十二ページが、これまでと現状に関する私なりの認識であります。  PB赤字の常態化が債務残高の累増を招いてきたわけですが、それは、産業も、地域も、家計も、仮にそれが可能であっても、自ら工夫して自立せずとも済むような経済社会構造をつくってしまっているのではないか。また、現状を続ければ、財政の余力がなくなって、どこかで政府サービスの大幅な削減や大増税、インフレ、大量失業などを招くのではないかという不安や閉塞感をもたらしている。  それは企業経営者も同様で、国の政策が全体として信任できない中では、国内での大胆な投資には踏み切れない。その結果、当然に経済が長期にわたって低迷し、新陳代謝が進みません。経済が好転しませんので、金融は長期に緩和せざるを得ず、経済の血液である金融の機能も低下しました。金利が低ければ、その限りにおいて財政は持続可能であるように見えてしまいますので、財政規模はますます膨張する。このような構造が定着してしまったのではないか。  先行き、この構図が当面は続くかもしれませんが、その間は人々の所得が十分には増えず、しかも深刻なリスクが蓄積し続けます。いずれカタストロフィーが起きれば、想像を絶する負担と混乱を人々にもたらしかねません。  しかし、私は、まだ間に合うと考えておりまして、そうはならないように、必要な改革を歳出歳入の両面で鋭意に進めていけばよいと考えているところです。  十三ページが、持続可能な財政構造を確立する条件です。上段にある恒等式が財政の安定性をチェックする上でしばしば示されますが、仮に名目実効金利、これは政府債務の利回りでありますが、これと名目GDP成長率が等しければ、右辺第一項は消え、第二項だけが残りますので、PBを均衡させれば、債務残高GDP比は上昇しません。別な言い方をしますと、名目実効金利が名目成長率より高ければ、PBを均衡させても債務残高GDP比は上昇するということです。  これはドーマー条件と呼ばれるもので、理論的な議論には踏み込みませんが、左図で実際の関係を見ますと、九〇年代以降のほとんどの時期で、GDP成長率の方が国債の利回りを下回っており、財政安定化のための条件は満たされておりません。もっとも、コロナ禍の時期を除くと、近年は、成長率の方が高い状況になっています。ただ、これは先ほど申し上げたように、今ある国債残高は低金利の下で発行されたものであるということにすぎません。  また、国、地方の債務残高GDP比の水準に応じて高債務状態と低債務状態という二つのグループに分けた、私の同僚の分析によりますと、現在の日本のような高債務状態の場合には、金利の方が高く、ドーマー条件が満たされにくい。その分、PBの黒字化の維持が必要になります。  では、PBの黒字化をどうすれば達成できるのかを考えたのが、十四ページです。  詳細な説明は省略しますが、経済が成長して税収が弾力的に増えるという要素を考慮すると、確かに潜在成長率を引き上げればPBは改善します。ただ、PBは、経済成長率の向上に伴う歳入歳出の変化だけでなく、経済とは直接関係のない高齢化等の要因によっても大きく影響されます。  結論としては、潜在成長率の引上げは必要ですが、それだけでは不十分で、歳出の効率化が不可避という至極当然の結論であります。  歳出の効率化を進められるかどうか、先ほどの内閣府の中長期試算を題材に考えたのが、十五ページ、十六ページです。  十五ページ左上、過去投影ケースでも、社会保障関係費や地方交付税等を名目額ベースである程度増やしていますが、左下、生活水準、これは人口一人当たり名目GDPで、ここでは実質化したベースで見ておりますが、増やしていません。さらに、成長移行ケース、右上、名目額で歳出をかなり増やしますが、右下、生活水準で実質化した社会保障関係費を相当減らすという姿になっています。  何を申し上げたいのかというと、高齢化が一層進展する中で、実質的な歳出を増やさない、ましてや減らすことができるかは、よほど歳出改革への取組が求められる話だということであります。  過去投影ケースではPBが余り黒字化しないが、成長移行ケースではPBが黒字化するというのは、何も経済の想定が楽観的だからではなく、積極的な歳出抑制が暗黙に含まれているからだと思います。経済が成長してもしなくても、歳出改革は不可避であります。  十六ページは、さらに、金利負担を含めてイメージしやすいように名目の実額で整理したものです。  直近の実績値である二三年度を起点に十年後の三四年度の姿を、右の成長移行ケースで御覧いただきますと、一般会計の利払い費は七・四兆円から二十四・六兆円と、十七・二兆円も増加します。  下半分にある中央政府のPB赤字が十八・五兆円から〇・四兆円まで縮小しますが、金利負担が増加するため、財政収支は二十二・五兆円の赤字が十八・六兆円の赤字までの縮小にとどまります。  上半分に戻っていただいて、一般会計の利払い費の増加額十七・二兆円に対し、税収は三十兆円増加します。ここで増税は想定されていませんので、この限りにおいては、経済成長に伴う税収増で利払い費増を賄うことができるように見えます。  しかし、他方で、利払い費以外の政策的経費であるPB対象経費が九兆円しか増えていません。そのGDP比は一七・二%から一三・七%へとかなり実質的な削減が行われており、実態としては相当の歳出削減が前提されています。実質所得が増加し、物価が上昇し、高齢化がますます進む中で、政府の歳出をここまで抑制するには政策的、政治的努力が必要だと考えます。  首尾よく歳出削減が行われなければ、結果的に国債発行を拡大させざるを得ません。また、資金には色がついておりませんが、下半分の中央政府ベースで見て、三四年度にはPBがほぼ均衡する中、財政収支の赤字と純利払いが同規模であるということは、利払い費のほぼ全てが公債発行によって賄われている状態です。  これは、債券市場において何かショックが起きた場合、利払いのための国債発行が更なる利払いを招く、利払いの雪だるまが発生する可能性を高めている状態であることが想像されます。  無用な財政プレミアムの発生を回避するためにも、着実な歳出改革をどう進めるかがまさに課題だと思います。  マクロ的なビューをもう一点、十七ページも御覧ください。  誰かの赤字、借金は誰かの黒字、資産ですので、だから財政赤字は大した問題ではないという議論を時々耳にしますが、二つの意味で賛同できません。  第一に、民間、特に家計の貯蓄は所得を生み出す主体ではない政府に対する債権ではなく、民間企業に対する債権、民間企業の投資に向かわせなければならないということです。  第二に、政府債務問題というのは政府の債務残高と民間の資産残高が両建てで膨脹することであって、国債に対するプライシングを考えれば、両建てでの膨張がいずれ問題にならないはずがないということは歴史が証明していると思います。  ただ、政府の資金不足を節度があるレベルに縮小させるには、企業の設備投資が拡大し、家計の消費が活発化することが同時に実現されなければなりません。企業や家計それぞれに求められることはありますが、政府にも政府として歳出改革に取り組んでいただく必要があります。  社会保障、社会資本整備、地方財政、文教、科学技術など、あらゆる歳出分野の費用対効果を検証しながら改革を進め、同時に、民間委託や官民連携など、民間に委ねた方がよいことは民間に移していくということも重要だと考えます。  具体的に何をすればいいのかについて、本日個別には議論できませんが、十八ページから二十一ページにかけましては、各府省庁が相当の時間をかけて検討され、また、多くの議論の蓄積を踏まえて打ち出されているプログラムであります。やるべきことは既に分かっているということであります。  もちろん、その必要がある事柄については、国会での御議論もいただきながら、自治体や民間の多くの方の御理解をいただきつつ、スピード感を持ってこれらプログラムの事項を進めるということが財政の持続性確保になると考えております。  最後、二十二ページは結びであります。  第一に、経済、財政、社会保障を一体として相互に連携させながら改革を進めることが必要だと思います。  第二に、その改革というのは、教育、学び、就業、結婚、出産、育児など、人々の希望を改革のドライバーとした、ウェルビーイングの高い社会の実現という視点が重要だと考えます。  第三に、歳出改革におきましては、経常的支出が毎年の税収などで着実に賄われるよう改革に取り組むこと、投資的支出に関しては、企業の投資の呼び水にもなるよう、成果を検証しながら歳出歳入を多年度でバランスさせることを基本にすること、社会保障などの移転的支出に関しては、現役世代の負担増を食い止めるために、公的、公共サービスの提供体制の徹底した効率化と、全世代での負担構造の改革を急ぐことの、以上が重要だと考えます。  第四に、全ての歳出についてデータに基づくEBPMを強化し、財政支出の効果を高めるサイクルを確立していただきたいと思います。  以上、私の公述とさせていただきます。御清聴大変ありがとうございました。(拍手)

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