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相原道子 ·横浜市立大学名誉教授・学長室顧問/国際医療福祉大学学事顧問

参議院内閣委員会(2025-06-03)での発言

第217回国会 ·第第19号号 ·3,820字
○参考人(相原道子君) 有識者懇談会の委員並びに会員選考等ワーキング・グループの主査を務めた者といたしまして、意見を述べさせていただきます。  ちなみに、私のバックグラウンドは医学部でして、学長を務めております間に、公立大学協会の副会長、会長を務めさせていただきました。  まず、本法案は、懇談会の最終報告書を十分に意識し、それを勘案した上で立案されたものと認識しております。  論点を明確にするために、内容を三つに分けて説明いたします。一つ目は、法人化することの必要性と、それにより何が変わるかについて、二つ目は、法案についての学術会議の懸念事項について、三つ目は、法律制定に当たり重視していただきたい点についてです。  まず、一つ目の法人化することの必要性についてですが、今、学術会議が社会から求められているのは、これまでの活動、すなわち我が国の学術、科学を発展させるための活動に加えて、我が国を含む世界の課題解決を目指した学術活動と考えます。これは学術会議でも大いに認識されていることと思います。更に加えて、学術研究における我が国の国際競争力や発信力の強化も重要です。  それらの活動のためには、学術会議の機能強化を是非とも進める必要があります。しかし、現在のような政府機関のままでは制約が多く、機能の強化には限界があります。そこで、学術会議がもっと自由に幅広く活動できるようにするためには、国とは別の組織とすることが必要と考えます。  実際に法人化することにより何が変わるかですが、一つは、独立性と自律性が高まることです。一番は、政府の会員任命権がなくなり、制度的に学術会議自身で会員を決めることができるようになります。  また、外部から資金を自由に獲得できるようになり、財源の多様化を進めることができます。それによって、基盤的な経費は国からの補助金で賄うにしても、国の予算に縛られることなく活動の幅を広げることができるようになります。また、外国人も会員になれるなど、法人化することにより組織としての自由度が高くなります。そして、何より、提言をする際に、場合によっては政府の方針と違った提言を政府の機関がするという矛盾がなくなります。  もう一つの変化は、我が国を代表するナショナルアカデミーとして国際的プレゼンスが向上することです。これは国にとってもとても重要なことと考えます。G7各国のナショナルアカデミーは国とは独立した機関であり、政府の機関である今の学術会議は、G7各国から見て、その政治的独立性に疑問が持たれるものと考えます。政府から独立することによって、諸外国と同等の独立性を有するナショナルアカデミーとして国際的に認められること、そして、それによって我が国の学術界から国際的な発信力が高まることが期待されます。  次に、二つ目の法案についての学術会議の懸念についてです。  学術会議が提唱する五要件が守られないのではないかという懸念についてですが、五要件そのものは学術会議の見解であり、有識者懇談会でも疑問や意見が述べられました。ただ、指摘されている五要件の項目はいずれも大事なことだとは思いますし、そういう前提で申し上げれば、五要件はこの法案でも守られていると考えます。  一つ目の学術的に国を代表する機関としての地位や二つ目のそのための公的資格の付与については、法案に我が国の科学者の内外に対する代表機関としてと明記されていますし、また、政府に勧告することができると、その権限を法律で規定しています。これは単に学術的、科学的知見に基づいた客観的な助言、提言を政府や社会に提供するにとどまらず、政府に勧告できる組織であることが法律で示されていることになります。  三つ目の国家財政支出による安定した財政基盤については、業務を遂行するための財源としての財政措置が継続されることは記載されています。ただし、活動をより活発化させるためには、財源の多様化による自主財源の獲得の努力は今後必須と考えます。  四つ目の活動面の政府からの独立については、先ほども申し上げましたように、政府機関でなくなることによって強化され、法案には学術会議の自主性、自律性に常に配慮しなければならないと明記されています。また、特殊法人であることによって、他の法人のような国による目標の指示や計画の認可は行われませんので、自由に目標や計画を立てることができるようになります。  五つ目の会員選考における自主性、独立性については、政府機関ではなくなることによって政府の会員任命権がなくなり、これも先ほど申し上げましたように、制度的に学術会議自身で会員を決めることができるようになります。  ここで、懸念事項の四番目と五番目にある独立性や自律性について、もう少し詳しく述べたいと思います。  まず、総理大臣が任命する監事を置くことについてですが、監事は、学術会議が自身で立てた計画や、ルールどおりに適正に業務が執行されているのかを見るのが役割です。つまり、組織の内容そのものの価値、つまりこの活動はいまいちだとか、どうなんでしょうねみたいなことを審査するものではなく、活動の独立性が損なわれるものではありません。また、国費が投入される以上、監事を置くことは当然です。その際、監査される側が選んだ監事でないことは必須と考えます。  続いて、評価委員会を置くことについてですが、その主な役割は、学術会議が自ら行った自己点検評価について審査し意見を述べることです。学術会議は今でも自己点検評価を行っていると聞いていますので、新たに膨大な事務作業が発生するとは思われませんが、ただし、過大な業務負担にならないような配慮は必要と思います。また、評価委員会の意見は拘束力を持つものではありません。重要なのは、外部の視点が入ることによって自分たちの評価の在り方を再考する機会が得られるということです。これは、閉じられた組織から外に開かれた組織になる第一歩であると考えます。  次に、会員選考における選定助言委員会の設置についてです。  選定助言委員会の役割は、より幅広い視点でオープンな会員選考をするための方法を助言することです。よって、会員の個別な選考に関与するものではありません。例えば、学術の動向や社会の情勢などに詳しい委員から、中長期的な視点で学術を発展させるためには、どのような領域から、どういう方法で会員を選ぶのが適切なのかといった意見が聞くことができるようになります。これは学術会議にとってとても有用なシステムと思います。  そもそもなぜこのような委員会が必要かというと、外部の意見を聞くことによって、会員の学術分野の固定化を阻み、より発展性のある組織にするためです。また、助言委員会の委員は総会が選任し、会長が任命しますので、学術会議自身が意見を聞きたいと思う人を選ぶことができるわけです。よって、会員選考の自律性を損なうものではないと考えます。  もう一つの助言委員会である運営助言委員会ですが、その設置によって会長は、学術会議の運営や活動を充実させていくための助言を外部から得ることができるようになります。例えば、経済情勢や研究成果の社会活用に詳しい専門家や、経営や広報の専門家などからアドバイスを受けることができるようになります。これは、学者である会員だけではカバーし切れない部分を補い、会長の活動を助け、組織としての強化に役立つと考えます。また、選定助言委員会同様、委員は学術会議が選任し、会長が任命しますし、あくまで助言のための委員会であって、自律を損なうものではないと考えます。  続いて、法の制定に当たり重視していただきたいことについて述べさせていただきます。  新法は、学術会議を我が国が世界に誇れるナショナルアカデミーに発展させるためのものでなければなりません。そのためには、独立性に加えて、外部に開かれた学術会議になるための仕組みづくりが必要です。同時に、学術会議が自律的に機能強化の取組を続けていけるよう、様々な観点からサポートする法であることが重要です。法定は大枠にとどめ、詳細は学術会議の内部規則に任せるなど、学術会議の自由で伸びやかな発展を可能とする新法であることを強く望んでおります。  最後に、懇談会の委員と会員選考等ワーキング・グループ主査を務めました感想を一言述べたいと思います。  懇談会並びにワーキング・グループでは、委員の間の意見交換だけでなく、学術会議の会長、副会長の皆様と活発な意見交換がなされたことはとても良かったと思っております。そういう時間を持つことによって、互いの気付きや歩み寄りも多くあったと思います。そして、それぞれの立場や視点は異なっても共に目指したものは、報告書のタイトルにもある世界最高のナショナルアカデミーです。ひたすらそれに向けて熱心に議論し、多大な労力を費やしてくださいました参加者の皆様に心から敬意を表したいと思います。  なお、懇談会の最終報告書には法案には記載されていない提案等が多数入っていますので、新たな学術会議の会員に選ばれる皆様には、是非とも参考にしていただきたいと思っています。  以上で私の発言を終わります。

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