○参考人(川嶋四郎君) 同志社大学法学部教授の川嶋四郎でございます。
連携会員を二期六年務めた後、任命拒否があった第二十五期から会員になり、その期に法学委員会の副委員長を、そして今期、二十六期に法学委員会の委員長を拝命しております。
専門は民事訴訟法で、紛争解決プロセスの公正な在り方について研究をしてまいっております。
この度は、全国民を代表する良識の府の皆様方の前でこのような貴重な陳述の機会を与えていただき、心から御礼を申し上げます。
今日は、一会員として、また第一部法学委員会の委員長として、日本学術会議総会決議の内容である法案修正を求めるためにやってまいりました。すなわち、ナショナルアカデミーの五要件全てを充足し、会長声明で示した五懸念を払拭する、その法案の内容に修正をしていただくためにここに参りました。そのことを皆さんに強くお願いしたいと思っております。私は、この修正の決議と申しますのは、日本学術会議の総会における言わば科学的助言の一種と考えております。
さて、七十六年前、私たちの先輩科学者は、戦争の惨禍のまだ消えないここ東京で、日本国憲法が志向する自由で民主的な文化国家、平和国家を科学を用いて創造的に構築するという崇高な使命を持って、科学者の総意の下に現在の日本学術会議を創設いたしました。現在の私たちは、独立した日本学術会議制度の存亡の危機に直面しており、ナショナルアカデミーの五要件を完備した現在の日本学術会議が永続できるか否かの試練を受けております。
日本学術会議は、四月に行われた総会で、私たちが提出した決議案を多数で可決しました。その背景には、法案に対する大きな危惧がありました。法案が通れば、ナショナルアカデミーとしての五要件を堅持している現在の日本学術会議が政府従属的な疑似ナショナルアカデミー、えせナショナルアカデミーに変容してしまうこの絶体絶命の瀬戸際で総会で何らの意思決定もしなければ、法案をそのまま学術会議は受け入れたとみなされ、後世に多大な禍根を残すことになると。しかし、それは、政治に左右されず、科学者の良心に従って純粋に知の探求を行う使命を持ったナショナルアカデミーに対する国民の信頼を裏切ることになると、私たちはそう考えたからであります。
私は、三つの点について陳述をさせていただきたいと思います。
まず一点目は、法案作成、提出プロセスの問題点の指摘でございます。
当初、私は期待をしておりました。岸田内閣のときに一旦作成されたさきの法案が結局国会不提出となったときに、その理由を聞かれた後藤担当大臣は、学術会議の理解が得られなかったからと語りました。それゆえ、次に法案が提出されるとしても、私たちの理解を得る努力がなされるであろうと期待していたからであります。さきの法案の提出の前には、笹川内閣府総合政策推進室長自ら総会に出席して丁寧な説明を行ってくださいまして、質疑にお答えいただきました、質問にお答えいただきました。非常に勇気ある行動だと、私は心から尊敬をしておりました。
それに対して今回は、そもそもプロセスが適切ではございません。当事者である光石会長、懇談会の正規のメンバーではありませんでした。出席することは要請はされましたけれども、対等な立場で話すことはできなかったと国会で陳述しております。内閣府担当者は会長が参加したと言っておりますけれども、正規のメンバーではなく、意思決定にも加われず、懇談会の議事録からは、発言の機会はあっても聞きおかれただけと、そういう印象を私は持ちました。そして、最終報告書は、日本学術会議の意見なんかを両論併記した形で記したというようなこともほとんどありませんでした。私は、会長をその参加者と呼ぶのは虚偽に近いと思います。
さらに、この間、私が非常に気になったのは、総会などで会長の口から、日本学術会議が廃止になるよりはという言葉が何度か出たことです。会長は、法案を受け入れなければ日本学術会議は廃止になるという強い圧力を受けていたのでしょうか。
また、国会の速記録を読んでいるとき、担当大臣、内閣府担当者の話は、ごまかしあるいは虚偽とさえ言える話が多いことに気付きました。
例えば、日本学術会議は法人化には反対していないと言われましたが、私たちは五要件を具備した法人化には反対しないという立場で、両者の間には大きな違いがあります。また、日本学術会議は法案に反対していないと言われましたけど、法案に反対しているからこそ総会で決議を可決したわけでございます。さらに、驚くべきことに、大臣や内閣府担当者は、法案は五要件を押さえている、あるいは結果的に押さえた設計になっているというつもりでおりますなどと言っておられますが、私には全く理解できません。ここにおける押さえるという意味がしっかり確保して盛り込んでいるということなら、それは当たっていない、つもりと言われても結果的にそうなっていない。だから修正を求めているわけでございます。
良識の府の皆さん、真実を理解してほしいのです。これでは国会を舞台とした言葉遊びにすぎません。官僚主導の法案作成の問題点が顕在化しているとも言えるでしょう。何しろ、作成した本人である内閣府担当者がこんがらがると認めているのですから、今こそ、政治の主導によって、シンプルで五要件を充足した法案に改めていただきたいと思います。
世界最高のナショナルアカデミーをつくるという言葉も出ました。一瞬、悪い冗談かなというふうに思いました。法案にあるナショナルアカデミーの形態は、先進主要国のナショナルアカデミーと比較しますと、権力統制の下におけるえせナショナルアカデミーにすぎません。中国、ロシア型のナショナルアカデミーと言ってもよいかもしれません。
内閣府担当者は、今回の法案がベストなものだと言っておられます。そこには学問や学術会議に対する愛や敬意の片りんさえ感じられないのは私だけでしょうか。ある専門分野や組織の法を作るとき、私は、法技術だけではなく、愛が必要だと思います。今回の例でいえば、日本の学問世界への愛、日本学術会議への愛、愛に基づく立案担当者の情熱が不可欠だと思います。しかし、今回の法案からは愛を全く感じません。私は、科学者、法学者として、科学や学術に対する愛や敬意の感じられない立案担当者の起草した法案をそのまま受け入れることはできません。
次に、パネルを用いて説明をさせていただきます。(資料提示)
まず、この資料一を御覧ください。
会員選考に政治が介入しているのは中国やロシアのナショナルアカデミーだけであって、米、英、独、仏といった主要先進国のナショナルアカデミーの会員選考には政治は介入しておりません。また後で述べます。
次に、政府は、法人化の根拠として、海外のナショナルアカデミーの中で予算全額を国から支出してもらっているところはないと主張しています。確かにそうです。しかし、先進国のナショナルアカデミーを見ると、ドイツは予算の九一%、イギリスは八五%から国から拠出金をもらっています。その額も、一方では二十一億、一方では百九十八億でございます。公的資金の割合が比較的低いアメリカ合衆国でさえも四五%で、しかも二百六十億円という桁違いの金額です。先ほど上山先生のお話では、その倍ぐらい現在ではあるということでした。
これに対して、日本学術会議の予算は九億程度です。いかに脆弱な存在であることか。さらに、法案のように公的支出が補助金になれば、必要性と裁量性に基づいて算出されるために、予算の見通しは全く立ちません。現在の九億という金額さえ確保できる保証はありません。
次、資料二を御覧ください。
坂井大臣は、必要最低限のルールを法律上定め、詳細については学術会議が自律的に定めることができると言っておられます。しかし、この一覧表を見ていただく限り、内部の規則制定権の余地は一番下の二行、いわゆる猫の額ですね。これで自主、自律、独立などと言えるんでしょうか。さらに、法律の中だけではなく、政令、内閣府の府令の中にも、独立性を毀損しかねない規定が幾つも組み込まれる可能性があります。アリの一穴、トロイの木馬という比喩で示すことができると思います。
次、資料三を御覧ください。
これは、法案が考えている新日本学術会議が四面楚歌の中で活動しなければならないことを示したものでございます。星印は現在の学術会議には存在しないシステムでございますが、オレンジ色、星印の付いた四つのシステムでございますが、外部者から成り、活動に目を光らせることになります。法案が可決されれば、新しい日本学術会議は、日々、外部の目を気にしつつ、四面楚歌の中で活動や会員選考をしなければなりません。特に、活動面を見ると、監事の職務範囲が広過ぎて科学的助言の内容にまで及ぶ可能性があるほか、評価委員会の評価は補助金の額に反映されることになるでしょう。
その上、日本学術会議の会員は、解任請求、損害賠償請求、罰則の付加、是正請求等、現在ほとんど存在しないような威嚇規定の下に置かれています。このようなえせナショナルアカデミーの会員を引き受ける人がいるのでしょうか。私は非常に心配です。これは国益を損ないます。それを私、断言することができます。
次に、最後の資料四を御覧ください。
法案によりますと、ここに書いております水色の、現在のコオプテーションの方式で選ばれた人たちというのは、完全にダイダイ色の新たな特別の方式で選任された人たちに入れ替わります。これによって、完全な、異質なえせナショナルアカデミーというものが二〇二九年十月に誕生することになります。
次に、衆議院でなされた十一項目における附帯決議の含意についてお話をしたいと思います。
そもそも、衆議院でなされた十一項目の附帯決議は、いずれも法案の骨格部分に関わり、本質的な構成要素に瑕疵があることを象徴しております。確かに多くの法案に附帯決議付きますけれども、それは、附帯決議を付けてでも、まさにその法案を国民のために通す必要性、緊急性があるということを示しているんです。ところが、今回の法案にはそういうものはございません。修正していただければと思います。
私たち科学者が後世に残さなければならないのは、自由で民主的な文化国家、平和国家を科学的知見で下支えできる学術会議です。このために、五要件を完備した学術会議は存続させなければなりません。その成否が今ここにいらっしゃる皆さんの双肩に懸かっているわけでございます。大切なことは、純粋な科学者の科学者による、つまり御用学者じゃなく、科学者の科学者による全国民、人類社会のための日本学術会議がこの日本の地上から消え去らない、このことでございます。そのために、日本学術会議は法案の修正を強く求めております。
最後に、ルソーの社会契約論のメッセージを皆様方にお伝えできればと思います。
もろもろの国民に適する社会についての最上の法を見付けるためには、優れた知性が必要であります。その知性は、人間の全ての情熱をよく知っていて、しかもそのいずれにも動かされず、私たちの性質を知り抜いていながら、それと何らのつながりも持たず、自らの幸福が私たちから独立したものでありながら、それにもかかわらず私たちの幸福のために心を砕き、最後に、時代の進歩のかなたに光栄を用意しながらも、一つの世紀において働き、後の世紀において楽しむことができる、そういう知性でなければならない。
我らと我らの子孫のために、学問の自由がもたらす恵沢を確保し続けることができるように、良識の府の皆様方の知性がここで発揮されることを心から期待をいたしております。
ありがとうございました。
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2025-06-03 · 参議院内閣委員会
○参考人(川嶋四郎君) どうも御質問ありがとうございます。
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この東…
2025-06-03 · 参議院内閣委員会
○参考人(川嶋四郎君) 御質問ありがとうございます。
率直に言いまして、日本学術会議、これまで七十六年の歴史の中で本当に様々な貢献ができてきたのではないかと私は考えております。…
API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=川嶋四郎
MCP: search_diet_speeches(speaker="川嶋四郎")