○国務大臣(あべ俊子君) 水野委員にお答えいたします。
まず、修学支援法の対象についてお尋ねがありました。
今回の制度改正は、急速な少子化への対策が喫緊の課題である中、高等教育費の負担を理由として理想の子供の数を持てない状況を払拭することを目指したものであり、財源が限られている中、大学等が提供する教育役務等の対価としての性質を持つ授業料、入学金の減免を優先することとしたものです。
また、令和六年度から、中間所得層の世帯のうち、特に負担軽減の必要性が高い多子世帯や私立理工農系の学部等に通う学生等に支援の対象を拡大し、支援の崖の緩和を図ったところですが、この拡充は住民税非課税世帯に準ずる世帯への支援であり、現行法の範疇にあるため、法改正を行わなかったものです。
一方で、今回の制度改正は、多子世帯について所得制限なく支援を行うものであり、住民税非課税世帯に準ずる世帯への支援とは言えないことから、法改正が必要となるものです。
次に、教育コストの負担の在り方についてお尋ねがありました。
高等教育は、学生等のみならず、社会全体、便益をもたらすものであり、その費用負担については、高等教育の成果を受益する主体がそれぞれ負担することが適切と考えていますが、その負担割合については、公財政や家計の状況とともに、背後にある社会観、教育観、既存の制度に大きく左右されるため、様々な考え方があるところです。
このことは本年二月の中央教育審議会の答申においても指摘されており、高等教育に係る費用の分担については、関係者の理解を得ながら、個人負担と公財政支援の適正なバランスを追求していくことが必要と考えております。
次に、収入要件の判定基準についてお尋ねがありました。
高校卒業後、高等教育機関に進学した学生は定職に就いておらず、高等教育に係る学費については親が負担しているケースが多いことを踏まえ、家庭における年収により支援の判定を行っています。このことは、大学等に係る修学費について、学生本人でなく家計において負担するものであるという世帯が八割程度いることを踏まえれば、一定の合理性があるものと考えております。
次に、収入要件の判定について、学部段階と大学院段階で扱いが異なることについてお尋ねがありました。
日本学生支援機構の奨学金について、学部段階の支援においては、先ほど述べたとおり、学生本人の年収で判定することとした場合、高校卒業後、高等教育機関に入学した学生は定職に就いていない方がほとんどであり、保護者の家計に依拠していることから、学生本人のみでなく、保護者の収入を含めて判定することとしております。
一方で、大学院生については、保護者の家計から独立性が高いことや、優秀な学生が家計負担を理由に大学院進学を断念しないようにするため、本人の収入で審査を行っております。
次に、給付型奨学金の拡充と民間奨学金の促進についてお尋ねがありました。
我が国における奨学金は、制度創設時から貸与型により支援を行ってきたところですが、平成二十九年度に初めての給付型奨学金を創設し、令和二年度に高等教育の修学支援新制度の導入により、給付型奨学金について支援対象を拡充してきました。
高等教育費の更なる負担軽減、支援の拡充については、まずは多子世帯への授業料等減免の拡充を着実に実施に移し、その効果を見定めながら、論点を整理した上で十分な検討を行いつつ、取り組んでまいります。
また、民間による高等教育費の負担軽減として、企業等による貸与型奨学金の返還支援は、奨学金返還の負担軽減の一つの方策として重要であると考えています。引き続き、企業等による代理返還制度を利用した場合の税制上のメリット等について大学や企業等に対して情報提供する等、周知広報に努めてまいります。
次に、子供の数が三人以上からの多子世帯を支援することの合理性についてお尋ねがありました。
今回の制度改正は、高等教育費の負担を理由として理想の子供の数を持てない状況を払拭することを目指すものであり、三人以上を同時に扶養している期間が最も経済的な負担が重い状況であることから、財源が限られている中、負担が集中している期間の世帯を優先して支援することとしたものでございます。
次に、制度設計の論拠となるデータについてお尋ねがありました。
国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査において、夫婦が結婚後十五年を経過すると追加出生がほとんど見られなくなることから、結婚維持期間十五年から十九年の夫婦の平均出生子供数を完結出生子ども数としているものと承知しています。
今回の制度改正において、少子化対策として有効な手段を検討する上で、夫婦の持つ子供数の理想と実際を比較するという観点から同調査を基に検討を行ったものであり、これは、客観的な情報、データや事実を用いることにより、政策評価の客観的かつ厳格な実施の確保を図るとするEBPMの趣旨に沿うものであるというふうに考えています。
次に、子供の数が二人以下の世帯への支援についてお尋ねがありました。
大学の授業料など高等教育費については、子供が二人以下の世帯も支援すべきとの声も承知しておりますが、政府としては、まず制度を着実に実施に移し、その上で、教育の機会均等や少子化対策の観点からその効果を見定めつつ、引き続き高等教育費の負担軽減に取り組んでまいります。
次に、本制度の財源についてお尋ねがありました。
本制度は、制度として確立された少子化に対処するための施策の一つとして、消費税の収入を活用して財源を確保しております。今回の制度改正においてもこの枠組みの中で実施することとしており、希望者が全員支援を受けられる態勢を整えておくため、今回の多子世帯の対象を拡大しても対応可能なように、令和七年度予算案についても十分な予算を準備、確保しております。
その上で、本制度が恒久的な財源の下で安定的に実施できるよう定めているものであり、消費税を財源とする規定を見直すことは現時点では考えておりません。
次に、教育予算の拡充についてお尋ねがありました。
OECDのデータによれば、我が国の公財政教育支出は二〇二一年度で対一般政府総支出比七・一%であり、OECD平均一〇%と比べて低いことは事実であります。
教育は、子供たちの未来をつくる上で重要な役割を担うものであり、我が国の成長の源泉ともなる重要なものであると認識をしています。文部科学省としては、引き続き、必要な教育予算を着実に確保し、未来への投資である教育施策の推進に取り組んでまいります。
次に、支援の対象となる世帯年収の見直しについてお尋ねがありました。
令和二年度から低所得者世帯の学生等を対象として開始した高等教育の修学支援新制度では、今年度から、負担軽減の必要性の高い多子世帯や私立理工農系の学生等を中間層へ対象を拡大し、経済的に困難な家庭への支援の充実を努めてきたところです。
この上で、今般の制度改正は、子育てや教育費により理想の子供の数、理想の数の子供が持てない状況が子供三人以上を理想とする夫婦で特に顕著であり、この状況を払拭するため、こども未来戦略に基づき、喫緊の課題である高等教育費の負担軽減のため実施するものです。
御指摘の世帯年収の見直しについては、文部科学省としては、まず本法案による制度改正を着実に実施に移し、その効果を見定めながら、更なる負担軽減、支援の拡充についても論点を整理した上で、十分な検討を行いつつ取り組んでまいります。
次に、修学支援の要件についてお尋ねがありました。
高等教育の修学支援新制度は、大学等の経営が継続的かつ安定的に行われることを確認するため、一定の教育や経営に関する機関要件を満たす大学等を対象機関としています。
機関要件については、大学等の経営困難から学生等を保護する観点から、令和六年四月より、収容定員の充足率の要件を満たさない学校については制度の対象外とする見直しを行ったところです。
一方、この枠組みは維持しつつも、中央教育審議会における高等教育へのアクセス確保の議論も踏まえ、地域の経済社会にとって不可欠な専門人材の育成に貢献している大学等へ配慮する観点から機関要件の見直しを行うこととしており、現在、省令改正の準備を進めています。
次に、対象機関の取消しを猶予する要件や判断の手順についてお尋ねがありました。
大学等の機関要件の見直しについては、地域の経済社会において重要な役割を担う専門的な知識、また技術を有する人材の養成を行う大学等への進学を希望する学生等への配慮を行う観点から、同一県内で代替進学先を確保することが困難な場合には確認取消しを猶予することを検討しています。
この手続は、各大学等からの申請に基づき、文部科学大臣が省令等で定める要件を満たしていると認める場合には対象機関の確認取消しを猶予する仕組みとなっており、詳細は省令改正後速やかにお示しすることを考えています。
次に、高等教育の規模適正化に関する方針と手段についてお尋ねがありました。
今後の高等教育施策においては、大学等の規模の適正化に向け、再編・統合の推進、縮小や撤退への取組に対する支援を行うとともに、地理的・社会経済的観点からアクセス確保策を講じ、教育研究の質を高めることが必要と考えています。
そのため、夏頃をめどに十年程度の工程を政策パッケージとして示し、地方における質の高い教育の実現を含め、速やかに具体的方策の実行に取り組んでまいります。
次に、地域社会全体で教育、人材育成を行う環境整備についてお尋ねがありました。
先月取りまとめられました中央教育審議会の答申においては、公財政支援や個人・保護者負担だけではなく、社会からの投資、支援の重要性についても提言いただきました。
また、現在、関係省庁とも連携して、産業界が伴走した人材育成の在り方についても、地方創生の観点も重視し、その必要な分野も含めて検討しているところです。
文部科学省としては、地方の大学における地域を支える人材育成やイノベーション創出、さらには学生の学びが、国からの財政支援はもとより、地域の企業との共同研究や寄附講座、寄附金、企業等による奨学金の代理返還等の多様な財源に支えられ、一層豊かなものとなるような仕組みを構築してまいります。
次に、学費値上げの撤回のための予算措置についてお尋ねがありました。
文部科学省としては、経済的な理由で学生が学びを諦めるということがないようにすべきと考えております。このため、機関支援と個人支援の両者を組み合わせながら予算確保に取り組むことが重要であると考えており、令和七年度予算案について、国立大学法人運営費交付金などの基盤的経費、また、低所得者世帯や多子世帯の学生等の授業料、入学金の無償化などに必要な予算を計上しております。
引き続き、高等教育費の負担軽減に取り組むとともに、大学の実情を把握しながら、各大学が安定的、継続的に人材の育成や教育研究を実施できるよう支援してまいります。
次に、大学等運営費交付金の増額についてお尋ねがありました。
大学等の運営費交付金などについて、昨今の人件費や物価の高騰などを踏まえ、国立大学法人については、令和七年度当初予算案について一兆七百八十四億円計上するとともに、令和六年度補正予算において、設備の更新等として昨年度補正予算の約一・五倍となる百八十億円を確保し、両者を合わせて支援することとしております。
また、国立高等専門学校については、令和七年度当初予算案について、高専教育の充実のため、対前年度一億円増となる六百三十億円を計上するとともに、令和六年度補正予算において八十三億円を確保しています。
文部科学省としては、引き続き、大学等、教育研究環境の充実に取り組んでまいります。
次に、貸与型奨学金の返還負担軽減についてお尋ねがありました。
貸与型奨学金の返還については、様々な御事情により返還が困難な方に対してきめ細かい対応が必要と考えており、返還の猶予や月々の返還額を減額する制度等により負担軽減を図っているところです。
返還免除制度の拡充、有利子奨学金の利子分の免除、また、返還額を所得控除の対象とすることについては、既に返還を完了した方との公平性の観点や、経済困難にもかかわらず奨学金の貸与を受けずに大学等を卒業した方との公平性の観点などから慎重な検討が必要と考えています。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕
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