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柴愼一 ·立憲民主・社民・無所属

参議院本会議(2025-03-31)での発言

第217回国会 ·第第9号号 ·2,991字
○柴愼一君 立憲民主・社民・無所属の柴です、柴愼一です。  私は、会派を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論いたします。  反対する第一の理由は、所得税の年収の壁対策に関わる一連の改正内容です。  まず、政府原案で基礎控除と給与所得控除の最低保障額を十万円ずつ引き上げた点について、政府はその理由を、物価が上昇すると実質的な税負担が増えるという課題に対応するものとしています。これは、最低限度の生活費には課税しないとの基礎控除の趣旨に基づき、物価高による最低限度の生活費の上昇に対応したものと言及しない、論点をずらしていると言えるものです。実質的な税負担の増加を理由としているにもかかわらず、引上げ額の根拠を、実質的な税負担額の増加分ではなく、消費者物価指数などの動向としており、引上げ額設定の論理が破綻しています。  さらに、与党修正案は、昨年十二月の自民党、公明党、国民民主党の三党合意に基づく協議において、課税最低限を百七十八万円に近づけるために基礎控除に年収に応じた四区分を設け、かつ時限措置とするなど、複雑極まる制度となりました。  最低限度の生活費に対しては課税しないという基礎控除の趣旨からすれば、そこに年収に応じた細かい区分、しかも時限でそれを設けることは、基礎控除の趣旨をないがしろにするものであるとともに、各企業の給与会計実務に携わる方々の事務負担やシステム改修などのコストが増大する観点からも、大きな問題が生じる懸念があります。  加えて、与党修正案では、年収二百万円を超えるラインを境に新たな壁が生じます。高所得層の減税額が大きくならないよう、おおむね二万円の減税額とするために複雑な制度設計となり、これなら二万円の定額減税とすればよかったと言えます。  今般の百三万円の年収の壁議論の論点の一つであった大学生の働き控えの問題は、特定親族特別控除の創設により対応が図られたことから、基礎控除の見直しの議論は、基礎控除とはどうあるべきか、何を基準とすべきかなどの本質論であるべきでしたが、予算成立に向けた政党間協議をまとめるための妥協案、苦肉の策となりました。このことで、税制の基本原則、公平、中立、簡素が大きくゆがめられた結果である本改正案を容認することはできません。  与党の修正により追加された附則第八十一条では、所得税の抜本的な改革に係る措置、「我が国の経済社会の構造変化を踏まえ、各種所得の課税の在り方及び人的控除をはじめとする各種控除の在り方の見直しを含む所得税の抜本的な改革について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるもの」とされています。今後、このことに基づき抜本的な改革についての検討が行われることとなりますが、政府・与党内の議論にとどまらず、熟議と公開の下、国会での開かれた議論が行われることを強く求めます。  反対する第二の理由は、物価高に苦しむ国民生活に対して税制による支援が不十分な点です。  これまで政府は、ガソリンに対する補助金を段階的に縮小してきています。いまだに高値のまま推移するガソリン価格は生活を直撃し、国民は価格低減に直結する暫定税率廃止を強く求めています。  三党合意によっていわゆるガソリンの暫定税率を廃止することが確認されているにもかかわらず、今日まで衆参における委員会質疑でその具体策が示されることは一切ありませんでした。ガソリン高を事実上放置する政府・与党の姿勢は容認できるものではありません。  そんな委員会での議論を積み重ねてきたにもかかわらず、石破総理が予算成立後に燃料費高騰対策の検討について触れたとする報道は、委員会での真剣な審議をないがしろにするものであり、厳しく指摘したいと思います。  反対する第三の理由は、法人課税の見直しが不十分な点です。  巨額の租税特別措置が、明確な効果が見られないまま惰性で続けられています。我が党が衆議院で提出した修正案の内容に基づき、租特の適用企業名を公表して、その有効性を早急に確認すべきです。  また、今次春闘交渉における大手の満額回答が相次ぐ中で、大企業に恩恵が偏る賃上げ促進税制は廃止し、それにより生み出された財源で、価格転嫁が進まず経営に苦しむ中小企業の賃上げに今こそ実効ある支援策を講じるべきです。価格転嫁や適正取引を促す措置をより一層推進する施策や、赤字企業などへの補助金政策の導入に関する検討も含めて、政府の対応には中小企業を支援する観点が弱過ぎます。  反対する第四の理由は、規模ありき、四十三兆円の防衛費確保のための税制措置は到底認められないからです。取りやすいところから取るというたばこ増税も含め、防衛増税は撤回するべきです。  石破総理は、今国会冒頭の施政方針演説において、かつて国家が主導した強い日本、企業が主導した豊かな日本、加えてこれからは一人一人が主導する楽しい日本を目指していきたいと述べられました。楽しい日本という言葉の選択はどうかと思う面もありますが、国家や企業などの視点から、一人一人の存在、生活に着目して政策を講じていくことには強く共感するものです。  政府が掲げる賃上げと投資が牽引する成長型経済に向けた好循環を実現できるかの転換点である今年こそ、税制の抜本改革が必要であったはずです。  しかし、本税制改正案には、そんな楽しい日本を実現するための具体策が何ら示されていません。税制には社会構造を変える大きな力があります。失われた三十年に終止符を打ち、アベノミクスによって積み上がった巨額の内部留保や金融資産などの果実を働く者や中小企業に還元させる税制を創設することこそが、政治に求められています。  政治と金、自民党と金の問題、裏金問題で政治に対する信頼が大きく揺らぎ、信頼回復に向けた様々な取組が進められています。昨年に引き続き、今国会でも政治の信頼回復が大きなテーマであるはずです。  そのような中、石破総理による十万円の商品券配付問題が発覚しました。石破総理は、法的な問題はないと強弁しますが、石破総理の言い訳一つ一つが政治資金規正法の実効性を失わせるものであり、極めて重大な問題です。  鈴木法務大臣が法務省職員の労をねぎらうために月餅を配った問題で、石破総理は鈴木大臣を厳重注意しましたが、総理自身や国会議員は特別との意識があったのでしょうか。  派閥裏金問題では、裏金を受け取った議員に対し納税を求めない税務当局に対して厳しい批判が沸き起こりました。国民は一円たりとも徴税逃れ、申告漏れを許されません。加えて、多くの国民が食料品、ガソリン等の物価高に苦しみ、政府による支援も不十分であるさなかに、与党政治家の国民との金銭感覚の大きなギャップが明らかになりました。そうした政府・与党が税制を担い、国民に税の負担をお願いする資格はないと言わざるを得ません。  以上から、本改正案は、物価高に苦しむ国民生活を支援する措置が不十分であり、大きな時代の転換点に当たる税制改正の内容としても不十分であることをもって明確に反対することを表明し、私の討論とさせていただきます。  御清聴ありがとうございました。(拍手)

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