○国務大臣(鈴木馨祐君) 打越さく良議員にお答え申し上げます。
まず、電磁的記録提供命令の創設に当たっての国民の権利の保護についてのお尋ねがありました。
本法律案においては、捜査機関による電磁的記録提供命令について、必ず裁判官の発する令状によることとしており、捜査機関が提供を命ずることができる電磁的記録は、制度上、裁判官が被疑事件等との関連性を認めて令状に記載、記録したものに限定されることとなっている上、その命令に対しては、不服申立てをすることができることとしております。
したがいまして、本法律案には国民の権利を保護する規定が欠けているとの御指摘は当たらないと考えております。
次に、電磁的記録提供命令に関する通知や不服申立ての権利の保障についてお尋ねがありました。
本法律案においては、捜査機関が電磁的記録提供命令により電磁的記録の提供を受けた場合に、当該電磁的記録に記録された情報の主体に提供の事実等を通知することとはしておりません。
現行刑事訴訟法においても、捜査機関が差押え等により被処分者以外の者に関する情報を取得した場合に、その者に通知することとはされていませんが、一般的に、そのことをもって差押え等に対する不服申立ての機会の保障が不十分であるとは考えられていないものと認識をしております。そのため、本法律案においては、そのような通知の仕組みを設けていないことに問題があるとは考えておりません。
次に、電磁的記録提供命令等に対する不服申立ての意義についてお尋ねがありました。
電磁的記録提供命令や電磁的記録に係る記録媒体の押収が違法であるとして取り消された場合、捜査機関においては、提供させた電磁的記録や押収した電磁的記録媒体について、被処分者への返還に応じることとなると考えております。
したがいまして、電磁的記録提供命令等に対する不服申立てについて、救済としての意味がなく、不服申立てをする動機がないといった御指摘は当たらないものと考えております。
次に、電磁的記録提供命令等が取り消された場合における電磁的記録の消去についてお尋ねがありました。
現行刑事訴訟法の下では、捜査機関が証拠を押収した場合に、その押収処分が事後的に取り消されたとしても、当該証拠の複製等を廃棄、消去することとはされておらず、直ちに裁判において証拠として利用することができなくなることともされておりません。
こうした我が国の刑事法の基本的な考え方に照らしますと、電磁的記録提供命令等が取り消された場合であっても、それにより得られた電磁的記録について、証拠としての使用が直ちに否定をされるというものではありません。
また、捜査や公判に必要なものとして作成、取得された書類は、刑事訴訟法や刑事確定訴訟記録法等により、捜査中から事件終結後に至るまで、刑事手続の適正かつ円滑な遂行のためにありのまま保管、保存されるべきものであり、それが現行制度の基本的な考え方であります。
したがいまして、御指摘のような規定を設けることは、我が国における刑事法の基本的な考え方と整合されないものであり、相当でないと考えております。
次に、捜査機関が取得した電磁的記録に含まれる個人情報の不適正な利用の禁止についてお尋ねがありました。
捜査機関においては、一般に、個人情報を含め、捜査の過程で取得した情報について、刑事訴訟法、刑事確定訴訟記録法といった法令等の規定や趣旨に従い、適正に取り扱っているものと承知をしております。
その上で、法務省といたしましても、捜査機関が取得をした電磁的記録に含まれる個人情報が不適正に利用されることのないようにすることは重要であると認識をしておりまして、そのために必要な事項については、規程や通達等によって周知徹底してまいります。
次に、捜査機関による個人情報の取扱いを独立性のある機関が監督する制度についてお尋ねがありました。
先ほど申し上げましたとおり、捜査機関においては、一般に、個人情報を含め、捜査の過程で取得した情報について、法令等の規定や趣旨に従い、適正に取り扱っているものと承知をしております。
他方で、捜査機関による個人情報の取扱いを監督するに当たっては、個々の情報と被疑事件等との関連性の有無、程度や被疑者等の防御上の必要性の有無、程度を、それらが捜査の進展や争点等に応じて変化する可能性等も考慮しながら適時的確に判断して対処することが求められることになりますが、実際に捜査を行っていない外部の機関がそのような判断を適切に行うことは、一般に考えて極めて困難であると考えられます。
したがいまして、御指摘のような監督制度については合理性に疑問があるものと考えております。
次に、電磁的記録提供命令の運用に関する周知についてお尋ねがありました。
電磁的記録提供命令は、既に存在している電磁的記録の提供を命ずるものにとどまり、供述を求めるものではないため、自己負罪拒否特権と抵触するものではありません。
もっとも、電磁的記録提供命令をするに当たっては、捜査当局において、同命令が御指摘のようにロックの解除方法等の供述を強要するものでないことを含む制度内容の正しい理解を前提としつつ、必要に応じて供述を強要するものでないことを相手方に教示をするなど、その権利を不当に侵害することがないように適正な運用がなされる必要があると考えております。
本法律案が改正法として成立をした場合には、法務省といたしましても、捜査機関に対して、通達等により制度内容や運用上の留意事項を周知をしてまいります。
次に、被疑者、被告人の権利保護の重要性についてのお尋ねがありました。
刑事手続が適正に機能するためには、被疑者、被告人の権利が適切に保障されることが必要であり、弁護人による援助を受ける権利は、被疑者、被告人が自らに保障された権利を実効的に行使する上で重要な役割を果たしていると認識をしております。
次に、いわゆるオンライン接見の制度化についてお尋ねがありました。
オンライン接見については、例えば弁護人の端末を用いて行う場合、弁護人以外の者による弁護人への成り済ましや、接見が認められていない第三者の同席等の防止が困難であると指摘をされており、オンライン接見一般を被疑者等の権利として位置付けて制度化することは相当でないと考えております。
他方で、法務省においては、実務的な運用上の措置としてオンラインによる外部交通を実施をしてきたところであり、現在、弾力的にその実施を拡大していくべく、日本弁護士連合会及び関係機関との間で協議を実施をしており、各地域の実情に応じて順次拡大することとしております。
このようなオンライン接見、オンラインによる外部交通について具体的なスケジュール等をお示しすることは困難でありますが、必要性の高い地域においては迅速に環境整備を行うことが必要であると考えており、今後も関係機関等と協議をし、一層その取組を加速してまいります。
次に、被疑者等と弁護人等との間のオンラインの方法による電磁的記録の授受の保障についてお尋ねがありました。
電磁的記録の授受や閲覧を身体拘束中の被疑者等の権利として位置付けることについては、法制審議会で議論がなされたものの、授受や閲覧に用いる機器について被疑者等がこれを破壊するなどして自傷他害行為に用いる可能性があるほか、不正な通信等の防止のための設備が必要となる、また、電磁的記録の検査のため刑事施設等の業務全体が圧迫されかねないなどの問題点が指摘をされ、答申に盛り込まれなかったものと承知をしております。
このような議論等を踏まえますと、電磁的記録の授受や閲覧を身体拘束中の被疑者等の権利として位置付けることは相当でないと考えております。
最後に、身体拘束中の被疑者等と弁護人等の間において電子化された証拠書類の授受を可能とする設備を整備する上での課題を解決する道筋についてお尋ねがありました。
先ほど申し上げましたとおり、身体拘束中の被疑者等による電磁的記録の授受や閲覧を権利として位置付けることについては、法制審議会の議論において、授受や閲覧に用いる機器について被疑者等がこれを破壊するなどして自傷他害行為に用いる可能性があるなどの問題点が指摘をされ、答申に盛り込まれなかったものと承知をしております。
電磁的記録の授受や閲覧に用いる機器については、こうした課題があり、直ちに解決の道筋を示すことは困難でありますが、弁護人等から身体拘束中の被疑者等に対し電子化した証拠書類を記録した記録媒体が送付され、それが刑事裁判の遂行上必要不可欠と認められる場合などにおいて、被疑者等による自傷他害行為のおそれを含む施設の規律及び秩序の維持や管理運営上の支障について、個別具体的な事情を踏まえて慎重に検討の上、支障の程度が小さいと考えられるときには、裁量的にその閲覧を一時的に認める余地はあるものと考えております。
このような裁量的な取扱いは、個別具体的な事情を踏まえて検討、判断することとなりますが、可能な範囲で被告人の防御権にも配慮した対応がなされるよう、引き続き、設備の整備上の課題を含め、運用上の検討を行ってまいります。(拍手)
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