参議院本会議(2025-05-14)での発言
第217回国会
·第第18号号
·3,153字
○国務大臣(伊東良孝君) 田村まみ議員にお答えいたします。
まず、公益通報者保護法の周知、活用が進まない要因として対象法律の範囲があるのではないかとのお尋ねであります。
公益通報者保護法は、食品偽装やリコール隠しなど、国民生活の安全、安心を損なう企業不祥事を端緒として制定されました。このため、消費者保護という観点に重点を置き、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護を直接の目的とする法律を対象法律としております。
消費者庁としては、このような法制定の趣旨や対象法律の範囲も含めて一層の周知啓発を行い、制度の普及と浸透に努めてまいります。
次に、中小企業と発注側企業の取引の適正化のための公益通報の活用についてお尋ねがありました。
消費者庁が実施した行政機関における公益通報者保護法の施行状況調査では、公正取引委員会が令和四年度に受理した外部通報の件数は三十四件で、前年度の十二件よりも増加しています。また、通報の内容は下請法や独占禁止法に関するものであったと承知しております。
これは、下請法や独占禁止法との関係でも公益通報に対する労働者等の理解が進み、公益通報の活用が一定程度進んでいることも要因であると考えております。今後も、一層の周知啓発により、労働者の理解促進に努めてまいります。
次に、中小企業庁の施策の状況に公益通報者保護法の対象範囲の狭さが影響しているのではないかとのお尋ねでありましたが、中小企業庁においては、各都道府県に下請かけこみ寺を設置し、中小企業が抱える取引上のトラブル等について、年間一万件を超える相談を受け付けていると承知しております。また、中小企業の価格交渉、転嫁の状況を把握するため、年二回、三十万社の中小企業を対象として、価格交渉促進月間のアンケート調査を実施していると承知しております。
こうした取組では、中小企業庁は、相談、回答したことが発注事業者に漏れ、報復されないかとの事業者の懸念を払拭し、多くの事業者の声をお聞きできるよう、情報の取扱いに関する丁寧な周知等を行い、取引実態の把握に努めていると承知をしております。
本件につきまして、公益通報者保護法の対象範囲が直接関係するものではないと考えております。
次に、罰則規定のない行為についても公益通報の対象とすべきではないかとのお尋ねをいただきました。
今回の法改正によって、公益通報者の範囲が拡大し、公益通報を理由とする解雇又は懲戒について刑事罰や立証責任の転換が導入される等、公益通報者の保護が大幅に強化されます。このような制度の見直しに相応するものとして、通報対象事実の範囲は刑事罰や過料の対象行為等に限定する必要があると考えております。
次に、従業員三百人以下の事業者による体制整備を義務化することについてお尋ねがありました。
消費者庁の実態調査の結果、常時使用する労働者の数が三百人超の体制整備義務の対象事業者であっても、体制整備の不徹底と実効性の課題が明らかとなりました。こうした中、まずは義務対象の事業者において体制整備の徹底と実効性の向上を図ることが重要と考えます。
常時使用する労働者の数が三百人以下の努力義務の対象事業者には、内部通報制度の重要性について一層の周知啓発を行い、その認識を高めてまいります。
次に、中小企業について、大企業と同じ形ではない手段を検討しつつ、体制整備の義務化を進めるべきではないかとのお尋ねがありました。
議員御指摘のとおり、内部通報窓口の導入支援を行う民間サービス等は少なく、中小企業において体制整備義務への対応のハードルは高いとの意見があるところです。
このため、常時使用する労働者の数が三百人以下の努力義務の対象事業者には、内部通報制度の重要性や導入方法について一層の周知啓発を行い、その認識を高めてまいりたいと思います。その上で、今回の改正後の法の施行状況を踏まえ、引き続き対応を検討してまいります。
次に、中小企業による公益通報の体制整備を効果的に促進するための手段についてお尋ねがありました。
消費者庁は、これまで、常時使用する労働者の数が三百人以下の努力義務対象の事業者の経営者などに対して、内部通報制度の重要性や導入方法について周知を行ってまいりました。
法改正後も引き続きこのような取組を行うとともに、地方公共団体に対して、地方消費者行政強化交付金の活用を促し、地域の事業者に対する制度の周知を図ることなどにより、公益通報者保護制度の普及と浸透に努めてまいります。
次に、内部通報体制整備に対する事業者のインセンティブの向上のための施策についてお尋ねがありました。
内部通報の体制整備につきましては、令和二年の法改正により、常時使用する労働者が三百人超の事業者に対し課されることとなりました。今回の改正では、新たな措置として、当事者指定義務の違反事業者に対する行政措置権限の強化や、労働者等に対する体制の周知義務の明示等を通じて体制整備の徹底と実効性向上を図ることとしています。
また、内部通報体制を適切に整備していない事業者は、不正に関する通報が行政機関や報道機関、SNS等の外部に対して行われることとなり、行政機関からの指導を受けたり、事業者の信頼が低下したりすることが想定されます。体制整備を行い自浄作用を働かせることが企業にとって良いことであるという認識を広めるため、事業者における体制整備のインセンティブが向上するよう一層の周知啓発を行い、制度の普及と浸透に努めてまいります。
次に、濫用的通報の抑止に対する政府の取組についてお尋ねがありました。
事業者の公益通報への適切な対応を阻害したり、風評被害などの損害を生じさせたりする、いわゆる濫用的通報については、まずは、事例を幅広く集め、実態を調査する必要があると考えております。その上で、実態調査結果を踏まえ、公益通報者保護制度の健全な運営を確保する観点から、必要な対策を検討してまいります。
次に、配置転換に対する罰則、立証責任の転換についてお尋ねがありました。
我が国においてはメンバーシップ型雇用が一般的で、配置転換については、適材適所の配置や人材育成の観点から、事業者の広い裁量の下、頻繁に行われており、必ずしも不利益な取扱いとは言えません。また、その態様は様々であり、不利益性は個人の主観や事情に依存する部分が大きく、罰則の対象とすることは困難と考えています。
また、労働法制やその実務において、配置転換については事業者に広い裁量が認められており、権利濫用と認められるためには労働者に相応の立証責任があります。他の労働法制との平仄を踏まえると、公益通報を理由とする場合のみ配置転換の立証責任を事業者に転換することは適当でないと考えているところであります。
次に、行政機関の体制整備についてお尋ねがありました。
国や地方公共団体の行政機関といった、自ら法令遵守を図り、義務を履行することが期待される事業者の体制整備については、その責任は常に国民や住民に対して直接負っていることを踏まえ、消費者庁の行政措置は適用されないこととされています。
一方で、消費者庁では、地方公共団体向けの通報対応に関するガイドラインの策定や、行政機関に対する実態調査の実施等を通じて、地方公共団体の体制整備を促してきたところです。
消費者庁では、引き続き、このような取組を適切に実施してまいります。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣赤澤亮正君登壇、拍手〕