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井上哲士 ·日本共産党

参議院本会議(2025-05-28)での発言

第217回国会 ·第第22号号 ·3,081字
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  会派を代表して、日本学術会議法案に対し、坂井大臣に質問します。  まず指摘しなければならないことは、二〇二〇年十月、当時の菅総理が会員候補者六名の任命を拒否した問題です。  総理大臣による任命が形式的であることは、国会で答弁され、確定した法解釈です。にもかかわらず、政府は、内部の勝手な検討で、国会にも示さず、推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと解釈を一方的に変更し、六名の任命を拒否しました。  解釈変更に関し、日本学術会議事務局と内閣法制局との間で行われた検討過程を示す文書の黒塗り部分の開示は、内閣委員会での理事会協議事項となったまま、実現していません。一方、東京地裁は十六日、不開示部分の内容は、内閣総理大臣による会員の任命権ないし任命拒否権の限界を考えるに当たり有用な資料だとし、開示を命令する判決を下しました。  不開示部分には、任命拒否できる場合の判断基準、要件等が記載されていると推察され、本法案で総理大臣が監事、学術会議評価委員、新法人設立時の会長職務代行者、設立委員の指名や委任を行う場合の基本となる考え方と密接に結び付くものであり、不開示のまま法案の審議に入ることは許されません。政府は直ちに控訴を取り下げ、開示するべきです。  現行の学術会議法の解釈を勝手に変更し、違法な任命拒否を行いながら、その経過も理由も明らかにしない政府に本法案を提出する資格はないのではありませんか。答弁を求めます。  大臣は、衆議院で、特定なイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員は、今度の法案の中で解任できると驚くべき答弁をしました。優れた研究又は業績があるとして選ばれた会員を政治信条を理由に解任するなど、極めて重大です。ここに、気に入らない科学者は排除するという政府の本音が現れているのではありませんか。この答弁は即刻撤回すべきです。  安保法制が強行された二〇一五年を機に、政府は軍需産業振興に大きくかじを切りました。その年に防衛装備庁が発足し、大学等に研究を委託する安全保障技術研究推進制度がつくられました。それに対し、政府による研究への介入を指摘し、慎重な判断を求めたのが二〇一七年の学術会議の「軍事的安全保障研究に関する声明」です。以降、政府は学術会議への介入を強め、二〇二〇年の任命拒否の上、本法案が提出されました。  本法案は、学術を軍事に動員し、短期的で実用的な経済的利益の獲得に貢献させるため、学術会議から独立性、自主性、自律性を奪い、時の政権の意に沿う別組織につくり替える学術会議解体法案にほかならないことは明らかではありませんか。答弁を求めます。  このことは、本法案が現行法にある前文を削除していることに如実に示されています。  前文は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、我が国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と協力して学術の進歩に寄与することを使命とすることをうたっています。学術会議法は、戦前の政府が学術を政治に従属させ、学術の側も戦争遂行に加担したとの痛苦の反省の上に、国内の科学者の手で法案要綱が起草され、国会による審議を経て成立したものです。前文の科学者の総意の下にとの文言は、学術会議の独立性、自主性、自律性のよりどころにほかなりません。  大臣は、現行法の理念は本法案に引き継がれていると言いますが、科学者の総意は法案のどこに引き継がれているのですか。  四月十五日の学術会議の総会決議は、学術会議の合意もないまま、科学者の代表により起草された現行法を廃止し、日本学術会議の理念や組織の骨格を定める内容の法案を政府が提出したことは遺憾と言わざるを得ないと厳しく批判しています。学術会議の同意もない法案を提出すること自体が、科学者の総意を否定するあからさまな政治介入ではありませんか。  別に法律の定めるところにより内閣府に置かれる特別の機関とされてきた学術会議は、本法案により、その組織及び運営に関する事務が内閣府の所掌事務に位置付けられ、政府の監督の下に置かれます。さらに、法案は、運営助言委員会、日本学術会議評価委員会、監事、選定助言委員会など、学術会議の組織、運営、財務、会員選考に幾重にも政府や学術会議外の者が介入する仕組みを定めています。政府はこの法案が学術会議の独立性、自律性を高めるものと言いますが、管理、監督の仕組みをこれだけ張り巡らせて、なぜ独立性、自律性が高まると言えるのですか。  学術会議は、これらの仕組みが、近視眼的な利害に左右されない独立した自由な学術の営みを代表するアカデミーの活動を阻害するもので、到底受け入れられないと表明しています。そのような法案をなぜ押し付けるのですか。政府は、学術会議の活動を阻害したいのですか。お答えください。  総理大臣任命の監事及び評価委員会の設置、中期目標、中期計画の法定、次期以降の会員選考への特別な方法の導入、選定助言委員会の設置という学術会議が到底受け入れられないとした五つの内容について、政府はどう対応したのですか。その結果、学術会議の懸念は完全に払拭されたのですか。  その国の学者、科学者を代表して、社会と政府に対し科学的見地から助言を行い、学術の国際活動に参加し、世界的にも連携して世界の学術と社会の発展に貢献するナショナルアカデミーの役割は、政府からの独立が確保されてこそ発揮されるものです。学術会議が政府から自立した存在であるということが国際的な信用を得ることにもつながっている、他国のアカデミアは、学術会議の意見を日本政府の意向を反映した意見ではなく中立的な意見として聞いてくれる、それを政府が管理してしまったらアカデミアとしての信用は失墜してしまう、この指摘をどう受け止めるのですか。  学術会議という科学者コミュニティーへの政府の介入は、学問の自由を乱暴に踏みにじるものです。思想、信条、表現の自由などとは異なり、学問の自由は、個々の科学者の研究、発表、教授の自由の保障に加え、科学者の相互批判と検討を可能とする科学者集団の自律的な規律があってこそ保障されます。  大臣は、本法案が学術会議の会員である者が個人として有している学問の自由に影響を及ぼすものではないと答弁していますが、科学者コミュニティーには学問の自由の保障は及ばないのですか。お答えください。  会員の選任は、学術会議の自主性、自律性の要です。ところが、法案は、会員以外の科学者から学術会議総会が選任する選定助言委員会を設置し、会員の選定方針に意見を述べるとしています。会員候補者選定委員会の諮問に応じてなら、個別の会員選考に意見を述べることは否定されていません。  学術的な業績を審査し、優れた科学者を選考することは、その分野に通じた科学者以外には困難です。だから、現会員が次期会員を選任するコオプテーション方式は、世界のアカデミーで採用されている標準的な会員選考方式となっています。五人から七人という少数の選定助言委員会委員の意見が会員選考に反映される仕組みは、コオプテーション方式とは相入れないのではないですか。  学術を軍事に動員し、目先の経済的利益の獲得に貢献させるため、学術会議を解体する本法案は廃案以外にありません。  以上を述べ、質問とします。(拍手)    〔国務大臣坂井学君登壇、拍手〕

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