○石垣のりこ君 立憲民主・社民・無所属会派の石垣のりこです。
会派を代表して、政府提出の日本学術会議法案に反対の立場から討論をいたします。
本法案が衆議院で可決された三日後の五月十六日、日本学術会議の会員任命の在り方の法解釈に関する行政文書について、東京地方裁判所は、政府に文書を全面開示するよう命じる判決を言い渡しました。
政府は、本法案、新しい学術会議法案と現行の学術会議法の法解釈をめぐる問題は関係がないと主張していますが、詭弁を弄するにも程がありましょう。日本学術会議が今後政府による干渉を受けずに独立した組織として運営される上で、政府がどのような考えの下で六名の会員の選別を行い任命拒否に至ったのかを明らかにせずに、特殊法人という独立した組織形態になるから政府が干渉することはないなどというのは、片腹痛いへ理屈であります。
公文書管理法において公文書を保存する目的は、国及び独立行政法人等の有する諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることです。
公文書管理法第四条において、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、文書の作成を義務付けてもいます。つまり、意思決定に至る過程を検証するためにも、未成熟な記載も含めて公開することが公文書管理法の目的にかなうのではないでしょうか。
東京地裁の判決でも、学術会議の会員の任命権に関わる法解釈の変更について、検討の過程を公にすることで得られる公益性は極めて大きいと指摘されています。しかしながら、政府は情報公開法第五条第五号の規定を持ち出して、未成熟な記載があり、開示すると誤解や混乱を招くおそれがあるという、裁判所に一蹴された主張を繰り返すばかりでした。
記載された内容が情報公開法の不開示事由に当たり、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあると主張するのは、公開されると政府にとって不都合な真実が明らかになることを恐れているからではありませんか。
仮に政府の御主張どおり、不当に国民の間に混乱を生じさせる可能性があるとしても、それでもなお、国権の最高機関であり、三権分立によって行政監視の責務を負う国会、とりわけ国民の代表である国会議員に対しては、黒塗り部分を開示する義務が政府にはあるはずです。
ゆえに、我が会派から、委員会を非公開にすることと併せて、黒塗り部分を開示した文書を内閣委員会所属議員に提出し、審議せよと求めましたが、政府・与党は一顧だにしませんでした。国民主権、議会制民主主義が余りにも軽んじられていることに危機感を覚えます。
政府はまた、当該訴訟について控訴し、係争中であることも開示を拒否する理由としていますが、そうであるならば、裁判結果が出るまで審議を中断し、裁判結果が出てから判決を踏まえて審議を再開すべきであり、採決を行うなどもってのほかであります。
六名の会員任命拒否の理由説明並びに黒塗り文書を全面開示しないまま、政府から新たな学術会議法の提出など、厚顔無恥も甚だしいと言わざるを得ません。その上、採決を行ったことに強く抗議し、以下、法案の問題点を申し述べます。
日本学術会議が我が国の科学者の内外に対する代表機関であるためには、当然ながら、学問の自由が保障されていること、自主性、独立性が必要不可欠であることは言うまでもありません。
政府はこれまで、法人化により学術会議の独立性が高まると説明するのみでありました。法案に独立性を明記しないのも、当たり前のことだから記載する必要がないとしてきました。しかしながら、特殊法人として政府から組織を独立させることと、運営面で政府から独立して意思決定を行うこととは似て非なるものであります。確かに会計上お財布は独立することになりますが、運営面において独立するとは言えず、むしろ年度ごとに政府からの補助金を確保する必要が出ることから、かえって政府の意向を忖度せざるを得なくなり、むしろ独立性が低下してしまうのではないかと懸念をしております。
私たち立憲会派は、日本学術会議が確保を求めていたナショナルアカデミーとして満たすべき五要件のうち、政府提出法案では充足していなかった国家財政支出による安定した財政基盤、活動面での政府からの独立、会員選考における自主性、独立性の三要件も充足するよう、政府提出法案に記載されていなかった独立性を明記し、選定助言委員会の規定を削除するなどの修正案を提出しましたが、残念ながら、賛成少数で否決されてしまいました。
また、この法案の重大な問題として、学術会議の会員の意向が無視されているということが挙げられます。
法案提出に至るまでのプロセスについて、政府は学術会議に丁寧に説明してきたと言っています。しかし、実態は、日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会においては、日本学術会議の光石衛会長は正規のメンバーではない陪席者としての参加であり、光石会長も衆議院の審議で対等な関係ではなかったと答弁しています。
この答弁については不可解なことに、参議院内閣委員会で私が質問した際には、自由に発言はできたと変わっており、政府による干渉や、干渉がないまでも政府への忖度があったのではないかと考えざるを得ず、審議の過程でもこのようなことが起こるようでは、この法案が成立した後、学術会議の独立性が保てるのか、疑問を抱かざるを得ません。
有識者懇談会での対応を考えても、学術会議と十分にコミュニケーションを取って、学術会議側の懸念事項を一つ一つ解消していこうという姿勢ははなからなく、結論ありきで物事が進められてきたことがうかがわれます。
坂井大臣は、学術会議は本案に反対ではないとの答弁を繰り返していますが、日本学術会議は四月十五日の総会において、法案の修正を求める決議を百二名の賛成多数で可決しています。日本学術会議が、総意として提出された法案の修正を求めるという異常事態の中で法案の審議が始まったのです。この事実だけでも学術会議の意見をないがしろにしていることは明らかですが、その後の対応は輪を掛けてひどいものでした。
坂井大臣は六月五日の我が党石川大我委員の質問に対して、学術会議から会いたいという意向がなかったこともあったので行きませんでしたが、意向があるということであれば、お伺いをしてお話を伺いたいと答弁しました。この答弁を受けて、学術会議の会員有志が賛同者を募り、会員四十五名の連名による意見交換を求める要望書をお渡ししましたが、坂井大臣は学術会議の正式な意向ではないなどと答弁し、日程調整をするまでもなく、その日のうちに採決が行われたのであります。学術会議の会員の声を無視し、会員の皆様のこれまでの貢献に対して一切敬意を払わない姿勢に強く憤りを覚えます。
さらには、衆参の審議の過程で坂井大臣から驚くべき見解が示されました。特定のイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員は学術会議が解任できると答弁したのです。これは、思想、信条の自由や学問の自由を脅かし、政治的介入の余地をつくるものであり、この答弁自体が政治的介入そのものと考えます。坂井大臣は仕組みを説明したものなどと強弁しましたが、特定のイデオロギーや党派的な主張を理由の一つとして解任できるとなったら、憲法が保障する思想、信条の自由を大きく損なうことになるのは明らかです。憲法遵守義務を負う国務大臣の発言として許されるものではなく、坂井大臣には猛省を促し、改めて発言の撤回を求めます。
ここで、議場の皆様におかれましては、一九四九年の日本学術会議の第一回総会で述べられた言葉を思い起こしていただきたいと思います。「われわれは、これまでわが国の科学者がとりきたつた態度について強く反省し、今後は、科学が文化国家ないし平和国家の基礎であるという確信の下に、わが国の平和的復興と人類の福祉増進のために貢献せんことを誓うものである。」とうたった日本学術会議の発足に当たっての科学者としての決意表明であります。
我が国の平和的発展と人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と連携し、学術の進歩に寄与する組織として日本学術会議が継続するためには、本法案を成立させてはなりません。熟議の府、良識の府であるこの参議院の議場に集う議員各位におかれましては、賢明なる御判断をいただきますようお願いを申し上げ、日本学術会議法案に断固反対の討論といたします。(拍手)
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