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稲田朋美 ·自由民主党・無所属の会

衆議院憲法審査会(2024-05-23)での発言

第213回国会 ·第第7号号 ·1,886字
○稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。  緊急事態条項について、本審査会での討議の状況を振り返りますと、昨年の臨時国会までに総計三十三回、延べ二百七十九人の委員による発言、そして討議がなされております。既に十分な討議がなされ、昨年の臨時国会の終わりに、中谷筆頭幹事から、具体的な条文案の起草のための機関を本審査会につくることが提案され、今国会においても、同様の提案が多くの委員からなされております。  論点整理についても、前々回の審査会、令和六年五月九日において中谷筆頭理事から詳細に説明がなされましたし、前回も船田幹事から、自民党たたき台素案からの主な変更点を提示いただいたところです。  まず、本審査会では、緊急事態においても国会機能を維持することが必要であるとの観点から、選挙実施が困難な事態に任期延長できるように改正するための議論がなされ、論点整理が行われました。  論点は既にほとんど出尽くしており、例えば広範性、すなわち、選挙の一体性が害されるほどの広範な地域において選挙が困難な事態についての具体的な基準は選挙延期の法律において定めることや、七十日を超えて選挙が困難な事態という長期性の要件についての考え方を始めとする議員任期の特例の枠組みのほか、議員任期延長中については内閣不信任決議を禁止しないこと、また閉会禁止、解散禁止についても異論がないと思います。  既に、緊急事態における議員の任期延長についての議論は尽くされ、機は熟しています。反対のための反対ではなく、早急に条文起草に入り、具体的な条文案を基に議論を行うべきです。  以下、緊急事態条項全般についての意見を申し述べます。  まず、日本国憲法は占領下に制定され、そもそも主権のなかった日本に、主権に基づく緊急権を認めておりません。  当時、日本政府は、緊急事態条項の創設を主張いたしました。衆議院の解散等の国会召集ができない場合で、特に緊急の必要があるときに、国会の事後承認を条件として、国会による法律の制定、予算の議決に代わる、政府による閣令の制定を可能とする規定を憲法に設けることを主張したのです。しかし、GHQに拒否されたため、妥協して、参議院の緊急集会のみ規定されました。そういう意味では、主権回復後に緊急事態条項を定めるべきでありました。  そもそも、緊急事態における国家緊急権とは、芦部信喜先生によりますと、戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置を取る権限のことです。  憲法は国家権力を縛るものであり、それこそが立憲主義であるという考え方がありますが、国家の存立なくして憲法は効力を持ち得ないし、国家が消滅すれば憲法も終わる、そうだとすれば、国家の存続が危うくなっている事態において国家緊急権を認めることは、立憲主義の前提としての国家の存立を維持するために必要です。  緊急事態条項を論ずる場合、政府による緊急対応措置ができるようにしておくことと、議会によって民主的統制を可能にしていくことは必須です。通常の立法手続では対応が困難な場合、事後の国会承認を条件に、臨時で必要な政令を作ることや緊急財政処分ができるようにすべきです。どのような場合にどのような手続で緊急事態条項を発動するかを憲法に定め、その濫用の危険がないように、国会による関与を定めることが立憲主義からの要請だと思います。  また、事前に想定できる緊急事態への対応は、法律で定め、委任命令の対象範囲を具体的に指定することが可能です。しかし、あらかじめ想定できない緊急事態への対応については、事前の立法では対応できないので、一時的に緊急政令制定権を内閣に与える憲法条項を定め、国会の関与についても憲法上規定する必要があります。  さらに、緊急時における人権の制約については公共の福祉の解釈で対応するという考えは、その内容が曖昧ゆえに、かえって立憲主義に違反するおそれがあります。緊急時における基本的人権の制約についての考え方も憲法に明記することが望ましいと考えます。  いずれにしても、緊急事態対応における議会のチェックは極めて重要であり、そのためにも、緊急時の国会機能維持のための議員任期延長を可能にする憲法改正は早急に行うべきであり、この点に限定した条文策定作業を早急に行い、その上で、緊急事態措置についての議論を深めるべきと考えます。  以上です。

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