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橘幸信 ·衆議院法制局長

衆議院憲法審査会(2024-05-30)での発言

第213回国会 ·第第8号号 ·6,582字
○橘法制局長 衆議院法制局の橘でございます。  御指示によりまして、国民投票広報協議会その他国民投票法の諸問題について御報告をさせていただきます。  まず、お手元配付の資料一枚目の資料目次を御覧願います。  この資料目次にありますとおり、本日御報告申し上げます事項は、大きく三つの論点にわたっております。  まず最初に、多くの先生方にとっては周知の事項かとは存じますが、総論として、国民投票広報協議会に関する基本的事項について御報告申し上げます。  二つ目は、そのことを前提として、国民投票広報協議会に関連する国会法規の全体像について御報告申し上げ、国会法や憲法改正国民投票法に定められている事項のほかに、広報協議会規程といった法形式の下に細目的事項を定める必要があることを御理解いただければと存じます。  三番目に、以上の広報協議会に関する事項以外に、これまで本審査会で議論となってきた国民投票法に関する主な論点について、分類、整理をして御報告を申し上げたいと思います。  それでは、目次をおめくりいただきまして、資料1の、国民投票広報協議会の国民投票の手続上の位置づけを御覧ください。  憲法改正原案が衆参両院で総議員の三分の二以上の多数で議決されますと、憲法改正原案は憲法改正案となり、両院議長はこの憲法改正案を官報で公示いたします。これによって、憲法第九十六条に定める憲法改正の発議が国民に対してなされることになるわけです。  この憲法改正の発議が行われますと、衆参両院は速やかに、投票期日を定める議決をいたします。同時に、国会に国民投票広報協議会を設けることとされております。  この広報協議会は、憲法改正を発議した国会自身によって設置される公的機関であり、国民に対する周知、広報を担うものです。国民投票の周知、広報の期間は六十日から百八十日、すなわち二か月から六か月という間で設定されますから、一般の選挙運動の期間と比べてはるかに長期間の広報活動を担うことになるわけです。  他方、この国民投票運動期間における、その他の主体による国民投票運動は原則自由であり、一つ、公務員や教育者の地位利用による運動や組織的多数人買収といった悪質な行為の禁止や、二つ、期日前投票が開始される投票日前二週間に限っての国民投票運動のための放送CMの禁止などのような、必要最小限度の規制のみが定められています。  発議前の国会での議論は丁寧に、そして発議後の賛否の運動は国民誰でも自由にというのが現在の国会法及び国民投票法の基本哲学とされてきたところですが、国民投票広報協議会の制度は、この発議後の自由な国民投票運動が正確な情報と賛否の意見双方を踏まえた熟議のプロセスとなるように、憲法改正を発議した国会自らが情報提供活動を行うものとして制度設計されたものでございます。  次に、資料2を御覧ください。  この資料は、国民投票広報協議会の組織と所掌事務を簡潔にまとめたものです。  まず、広報協議会の組織及び議事手続についてですが、資料の左側にあるように、広報協議会は、憲法改正発議時の衆参議員各々十名、合計二十名から構成されます。その選任に当たっては、他の委員会等と同様に、数が大きな力を持つ国会の機関として、基本的には、各議院における各会派の所属議員数の比率により委員が割り当てられることとされています。  しかし、憲法改正に反対の会派から一人も委員が選任されないこととなるときには、この原則に対する重大な例外として、当該反対会派からも委員を選任するよう配慮すべきこととされております。ここには、憲法論議においては少数の反対意見にも十分に配慮すべきとの思想が表れていると言うことができます。  また、両院にまたがった特別の機関であることに鑑みて、その議事手続における定足数は、例えば裁判官訴追委員会などと同様に、衆参それぞれ七人以上の出席が必要とされるほか、議決も出席委員の三分の二以上の特別多数で行うこととされているなど、加重されたものとなっております。  次に、この資料右側の所掌事務についてですが、国民投票には四つの事務が掲げられております。  一つ目は、国民投票公報の原稿作成、二つ目は、投票所に掲示する憲法改正案の要旨の作成、三つ目として、広報協議会が自ら行ったり、また政党などに割り振って公費負担で行わせることとされている放送CMや新聞広告に関する事務があります。そして四つ目として、以上個別に掲げられている三つの事務以外の憲法改正案の広報に関するありとあらゆる事務がバスケットクローズとして掲げられております。この第四のカテゴリーには、例えば、ホームページやインターネットにおける広報活動、さらには説明会、すなわちタウンミーティングによる周知、広報活動などが入るかと存じます。  この広報協議会による周知、広報活動の重要な特徴として、二つのことが指摘できます。一つは、法律の明文規定によって、憲法改正案について客観的、中立的に、かつ国民に分かりやすいような説明をするように求められていることです。二つ目は、憲法改正案に対する賛成意見、反対意見の分量、スペース、放送時間は完全に同等、平等でなければならないとされていることです。  この二つ目の特徴は、極めて重要な事柄です。三分の二どころかそれ以上の圧倒的多数の賛成で憲法改正が発議された場合であっても、国民に対する周知、広報の場面においては、そのような国会での賛否の意見比率にかかわらず、完全に賛否イーブンで広報活動を行い、国民の意思形成に中立的であることが求められているからです。  実は、この点については、国民投票法制定時に、賛否の所属議員数の比率によるべきとの反対意見も大変に根強くございました。しかし、与野党の責任者の先生方の粘り強い議論の結果、主権者国民の判断は、賛否いずれにも偏らずにフラットなベースラインからスタートして、熟議を経た上で判断してもらうべきとの発想から、このような制度となったところです。  なお、この広報協議会には、その運営及び広報に関する事務を補佐するための、専門の国民投票広報協議会事務局が設けられることとなっております。  次に、資料3を御覧ください。  この資料は、広報協議会に関する国会法規の全体像を鳥瞰したものです。この表から御理解いただけますように、広報協議会に関する国会法規は三層構造になっております。  まず、その組織の設置と委員、会長などの最重要項目については、国会に関する基本法、すなわち憲法附属法規でもある国会法に規定されております。その上で、その他の重要事項については、この国会法で別に法律で定めるとして委ねられたところの、憲法改正国民投票法で規定することとされており、同法においては、組織に関する事項と、所掌事務に関する事項、そして事務局の組織に関する事項が定められております。この概要については、ただいま資料2に基づいて御報告したとおりです。  そして三つ目、三層目として、この国会法と国民投票法に定められている事項以外の細目的事項に関する定めとして、広報協議会規程、放送や新聞広告等に関する広報実施規程、そして事務局規程といった三種類の規程の整備が予定されています。  これらの諸規程は、両院議長協議決定といった法形式で定められることになっております。この両院議長協議決定という法形式は、国会独自の法形式であり、一般に、両院議長が両院の議院運営委員会やその理事会に諮って定めることとされているものです。比喩的に言えば、法律の下で内閣が定める政令に当たるようなものと言えましょうか。  そこで定めるべき事項の概要はこの表に掲げてあるとおりですが、広報協議会の組織に関する広報協議会規程や、事務局の組織に関する事務局規程については、現在及び過去に存在した両院にまたがった機関である、例えば、国会事故調に関する衆参両院の議運の合同協議会規程や、党首討論実施の場となっている衆参の国家基本政策委員会の合同審査会、これの根拠になっている常任委員会合同審査会規程、これら既存の諸規程などを参考にしたもので、ほとんどは事務的な事項と言えるかと思います。  したがって、この規程整備における課題は、真ん中にある放送、新聞広告などの広報実施規程ということになるかと思われます。そこで定めるべき事項の内容については、前例となるものがないので今後先生方において詰めていただく必要がありますが、幾つかの論点があるように思われます。  まず、どの程度詳細なものとしてこの両院議長協議決定を定めておくのか、すなわち、この両院議長協議決定では基本的な枠組みのみ定め、具体的な事項はその都度、その時々の広報協議会が定めるものとするのかどうか、また、現行の国民投票法には具体的に掲げられていないインターネット広告やタウンミーティングなどの規定も盛り込むのかどうかなどが議論となり得るかと思われます。  なお、右下に付記しておきましたように、事務局規程との関係では、国会職員法や国会職員育児休業法などの関連規定の改正も必要となってまいりますが、これは技術的な事柄と言えます。  次の参照条文のページを飛ばして、最後に、以上御説明してまいりました国民投票広報協議会以外の国民投票法に関する主な論点について御報告申し上げたいと存じます。  資料4を御覧ください。  国民投票法に関して議論すべき主な論点については、令和三年の国民投票法の改正、いわゆる七項目案の附則四条で論点整理の方向性が示されておりますので、これに沿って分類、整理をして御報告を申し上げたいと思います。  まず、三年前のこの改正法の検討条項では、改正法施行の日から三年を目途に検討し、必要な措置を講ずるように定められているところでございます。その目途とされている期限が今年の九月に到来することを、あらかじめ付言しておきたいと思います。  その上で、この検討条項では、検討項目は大きく二つの事項に整理されております。  まず一つ目は、附則四条第一号に掲げられている、投票環境を整備するための事項です。七項目案では、共通投票所の設置や洋上投票の対象拡大、投票所に入ることができる子供の範囲の拡大など七項目の措置が講じられたわけですが、しかし、その後も公職選挙法では、日々、投票環境向上のための措置が続々と講じられており、国民投票法においても同様の措置を講ずることをこの条項は想定していたものでございます。  既に二年前の四月に自民、維新、公明、有志の四会派から共同提案されている、いわゆる三項目案は、この七項目案に引き続くもので、これに関する措置を講じようとするものです。三項目とは、開票立会人の選任規定の整備、投票立会人の選任要件の緩和、ラジオによる広報放送にFM放送を追加する措置など技術的な措置が盛り込まれているところです。公職選挙法においては既に措置されている事項でございます。  さて、もう一つの論点が、附則四条の第二号に掲げられている、国民投票の公平公正を確保するための事項です。この論点については、二〇〇七年の国民投票法制定後、今日まで約十七年間の間に、投票を取り巻く環境変化は著しいものがございます。これを背景に、本審査会においても、先生方から実に様々な御議論がなされてきているところです。四つに分けて分類、整理して御報告申し上げます。  一つは、放送CM及びネットCMに関する事項です。  まず、放送CMに関しては、先ほども述べました、期日前投票が始まる投票日前二週間の禁止だけでは不十分なのではないか、より実効的な何らかの法規制を導入する必要があるのではないかという御意見が一方にございます。他方では、できるだけ自由にとの立法当初の基本哲学を大事にしつつ、民放連の自主規制に加えて、広告の主な出し手である自分たち政党による自主的取組で対応するのが、自由な国民投票運動と公平公正な国民投票確保のバランスを取るための最適解ではないかとの御意見もあります。  さらに、今や質、量とも放送CMを凌駕するに至っているネットCMについても、御議論がなされてきております。これについては、何らかの法規制を導入すべきという御意見と、ネットCMの出稿の仕組みの複雑さなどに鑑みると法規制は困難ではないか、それぞれの事業者に対して自主的取組を要請するにとどまるのが妥当ではないかといった御意見が述べられているところです。  二つ目は、国民投票の公平公正が資金量の多寡によってゆがめられることのないように、国民投票運動のために支出される資金に関する規制の是非とその実効性確保に関する論点です。  これについては、まず事前規制として、一団体当たりの支出金額の上限設定や外国人からの寄附禁止の措置を設けたり、また事後規制として、国民投票運動期間終了後に一定の団体に対して収支報告書の提出を義務づけるなどの法規制が提案されています。他方、これに対しては、その実効性に関して幾つかの問題点が指摘されているほか、できるだけ自由にといった国民投票法の基本哲学に照らして消極的な発言も述べられているところです。  三つ目は、ネットCMに限らず、ネット空間で行われる憲法改正国民投票に関連した表現行為全般に関する論点です。  特にフェイクニュース対策については、多くの委員の先生方から御発言がなされてきております。例えば、国民投票運動として行われる賛否の意見の表明については、一つ、その表現者の名称について表示義務を課すべきではないか、二つ、ネットの適正利用に関する努力義務を設けたりすることも必要ではないか、このような案が提案されてございます。また、これに対しては、そもそも、そのようなフェイクニュースが民主主義のプロセスに問題を与えているのは国民投票の場面に限らない、国政、地方の選挙も含めた幅広い議論が必要であり、必ずしも本審査会のみの議論で済ませることができるものではないのではないかといった御指摘もなされているところです。  最後に、四つ目の論点として掲げましたのは、以上の三つの方策と重なり合いながら、本日前半で申し上げた、国民投票広報協議会による公的な広報活動、すなわち、客観的、中立的で、かつ賛否平等が法的に担保されている広報活動を充実強化することの必要性及び重要性についてです。  具体的には、まず、1として、第一の論点整理で申し上げましたネットCM、そして、第三の論点整理で申し上げましたネット一般の表現行為に関して、それぞれが国民投票に関連して行われる場合には、その適正利用のためのガイドラインを広報協議会が作成することが必要ではないか、このような御意見が唱えられております。  また、2としては、ネットにおける検索結果を表示する際に、公的な機関である広報協議会による情報発信を優先的に表示してもらうよう検索事業者に要請するなどの措置が唱えられております。  さらに、3として、先ほども申し上げましたフェイクニュース対策の一環であるファクトチェック対策についても、その取組を強化すべきとの観点から、これに広報協議会が何らかの形で関与することができないかといった観点からの御議論がなされているところです。例えば、一方では、諸外国の事例などを踏まえて、広報協議会が自らファクトチェックを行うべきであるとの主張がなされています。他方では、広報協議会も公的な機関であり、言論市場に公権力が介入するとの批判を招かないようにするためには、民間のファクトチェック団体との連携を図るといった手法にとどめることが適切ではないかといった御主張もなされているところです。  以上、大変に駆け足になってしまいましたが、国民投票広報協議会と、その他の国民投票法に関する主な論点について御報告をさせていただきました。ありがとうございました。

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