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福留朗裕 ·一般社団法人全国銀行協会会長/株式会社三井住友銀行頭取CEO

衆議院財務金融委員会(2024-05-14)での発言

第213回国会 ·第第21号号 ·3,728字
○福留参考人 おはようございます。  この四月から全国銀行協会の会長を務めております三井住友銀行の福留でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。  先生方におかれましては、日頃より銀行界に対し格別の御指導、御理解を賜り、この場をかりまして御礼申し上げます。  また、この度は、事業性融資の推進等に関する法律案について、私ども銀行界の意見を述べる貴重な機会を頂戴いたしまして、重ねて感謝を申し上げます。  現在審議されております法律案では、事業性融資、すなわち、不動産担保や経営者保証によらず、事業の実態や将来性に着目した融資の推進に向け、無形資産を含めた事業全体を担保とする企業価値担保権が創設されることとされております。  私ども銀行界としましては、企業価値担保権は、今までの保全の在り方を補完あるいは代替する有効な選択肢であり、銀行においては資金供給手段を、事業者においては資金調達手段を広げる一助になり得るものとして期待しているところであります。  我々が想定する企業価値担保権の意義について、まず、大局的な視点から見た意義をちょっと御説明したいと思います。  初めに、事業性融資を取り巻く状況として、我が国の経済環境を見てみますと、ポストコロナにおいて緩やかな経済回復が進んでおり、特に大企業においては、人手不足に対応するための省人化、省力化投資のほか、GXやサプライチェーン強靱化に関連した投資需要が旺盛であり、銀行による資金供給も大きく拡大しております。  先行きにつきましても、直近の日銀短観によれば、今年度の設備投資計画は一九九〇年以来の高い伸びとなるなど、まさに失われた三十年が終わりつつあり、我が国がデフレからの完全脱却と再成長に向けて動き始めた。日頃、私も毎日のように様々な企業の経営者、トップとお話をさせていただいておりますが、まさにそういうときが来ているという実感が私にもございます。  こうした中、中堅・中小企業金融については、コロナ禍における資金繰り最優先のフェーズから、新規開業や、既存事業とは異なる新事業、新分野に進出することで経営刷新を図る、いわゆる第二創業、そして事業承継向けの成長資金も含めた多種多様な調達ニーズが生まれるフェーズへとシフトしつつあると見ております。  銀行界は、そうしたニーズに対し、リスクテイク能力を拡大し、経済の血液である資金を隅々まで送り届けることが強く求められるというふうに認識しております。企業価値担保権は、まさにそうした、いわゆる絶好のタイミングでその創設が検討されているところであります。  並行して、銀行界では、不動産担保や経営者の個人保証に依存しない、事業性に着目した融資を推進してまいりました。  二〇一三年九月に、金融庁より金融モニタリング基本方針が公表され、事業性評価に係るモニタリングが開始されました。全銀協としては、同年十二月に、日本商工会議所とともに経営者保証に関するガイドラインを策定し、お客様から個人保証をいただく際の自主ルールを設定しております。また、二〇二二年の十二月に政府より公表された経営者保証改革プログラムを受け、経営者保証ガイドラインの運用徹底を改めて図っているところであります。  直近二〇二三年度上期の民間金融機関の新規融資に占める無保証融資の割合は四六・七%と、前年対比で約一三ポイント上昇、ガイドラインの適用が本格的に始まった二〇一五年対比では約三五ポイントの上昇となっており、着実に取組が進んでいるというふうに思っております。  このように、銀行界では事業性融資の推進に取り組んでまいりましたが、不動産担保あるいは経営者保証によらずに融資することが困難なケースがあることも事実であります。更に一歩踏み込んだリスクテイクを行うためには、在庫などの動産を担保として活用することも検討されているところでありますが、有形資産に乏しい事業者においては有効な解決策とはならず、今回審議されております企業価値担保権はその解決策になる可能性があると見ております。  このように、大局的な視点から見れば、タイミングの面においても、そして、これまで十分にカバーされていなかった空白地帯を埋めるという機能の面においても、企業価値担保権の創設は大きな意義があるというふうに認識しております。  続いて、より具体的な視点から、銀行界として想定する、企業価値担保権の位置づけや活用方法について御説明いたします。  まず、我が国の産業構造を見ますと、時代の変遷とともに徐々に変化しており、二〇二一年の経済センサスによりますと、全産業に占める非製造業の割合は、企業数ベースでは七八・二%、売上高ベースでは六九・五%に達しています。  特にスタートアップはそうした傾向が強く、東京商工会議所によれば、二〇二二年時点の非製造業の割合が約九割となっており、その多くは必ずしも有形資産に恵まれた事業者ではないと見ております。  また、日本企業の九九%を占める中小企業では経営者の高齢化が進んでおり、中小企業庁によりますと、七十歳以上の経営者のうち約三割が後継者不在となっております。このように、事業承継問題が深刻化している中、経営者の親族や従業員、役員以外の第三者が事業を承継する第三者承継も一つの解決策と考えております。  中小企業基盤整備機構によれば、同機構が関与した第三者承継は二〇二二年度に過去最高の千六百八十一件に達しているとのことですが、今後より拡大させる上では、経営者保証がネックの一つになるという声も聞かれます。  企業価値担保権は、こうしたスタートアップ向けや事業承継時の御融資において有用な選択肢になり得、ひいては我が国のイノベーションの加速や中堅・中小企業における生産性向上につながるのではないかと考えております。  有望なスタートアップが次々に生まれ、経済を牽引するまで成長するケースが続出している米国においては、企業価値担保権と似通った全資産担保を活用する融資慣行が定着しております。日米のスタートアップ市場に見られる差の背景の一つには、こうした担保制度及び融資慣行の違いもあるのではないかというふうに見ております。  また、銀行の視点から見ますと、企業価値担保権を用いた御融資においては、借り手企業における事業の発展が銀行にとっての担保価値を向上させることになります。そのため、銀行サイドには、絶えず変動する事業の実態を継続的に把握するとともに、経営上の課題などに対して具体的な解決策や実行支援を行う、いわゆる伴走支援に我々のリソースを投入することに経済合理性が生まれます。それにより、業況が悪化する局面を含め、借り手に対してよりプロアクティブに効果的な支援を行うことが可能になるなど、銀行として本来あるべき姿を追求する上でも、有用な融資の取組になり得るのではないかというふうに考えております。  このように、企業価値担保権は、様々な面で大きな意義があると考えられる一方、全く新しい取組であることから、官民が協力し、準備すべきことも多いと認識しております。  例えば、この新たな枠組みを有効に機能させ、銀行の融資慣行に根づかせていくためには、法整備だけではなく、企業価値の評価を客観的、安定的に行うための手法の確立など、実務レベルの準備を進めていく必要があると考えております。こうした実務上の論点については、法案の成立後、施行までの期間に、金融庁を中心に議論していくものと認識しております。全銀協といたしましても、積極的に議論に参加していきたいというふうに考えております。  また、我々銀行には、この制度を利用する立場として、企業価値担保権の設定、期中管理、実行に関する内部体制を整備する必要があるほか、何よりも、お客様の事業内容を理解し、その将来性を見極める目利き力をこれまで以上に磨いていく必要があります。  本法案には、事業者や金融機関の取組を支援する事業性融資推進支援機関について認定制度を導入することなどが盛り込まれていると認識しております。こうした支援機関も活用しつつ、時間はかかるかもしれませんが、体制整備にしっかりと取り組んでまいります。  以上、簡単ではございますが、銀行界の意見をお伝えいたしました。  冒頭で申し上げましたとおり、足下の日本経済には、賃金、消費、企業業績の好循環の芽が見られます。物価や金利の上昇、大幅な賃上げ、GXなど、至るところでパラダイムシフトが起きつつあり、我が国はまさに、失われた三十年、そしてデフレからの完全脱却に向けた分水嶺にある、正念場にあるというふうに見ております。  銀行界としては、企業価値担保権を活用しつつ、主要な資金供給者として日本の再成長を下支えし、日本経済に好循環が定着することに貢献してまいる所存でございます。  改めまして、本日は発言の機会をいただきまして、御礼を申し上げます。  私からは以上です。(拍手)

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2024-05-14 · 衆議院財務金融委員会
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