○小田原委員 それでは、法案に関する質問をさせていただきたいと思います。
事業性融資の推進等に関する法律案でありますが、私自身は大歓迎。もう今から三十八年前になりますが、富士銀行の江戸川橋支店に入行をしたとき、やはり、私の直接の取引先ではありませんけれども、取引先が資金繰りに詰まって夜逃げをされた事案がありました。誰だって夜逃げしたくて夜逃げしたわけではありませんし、その担当者は、それから一か月ぐらい、もう本当に大変な御苦労をされて、資金回収の手当てをしたり、その損金処理の手当てをしたりということでありました。そういったことは世の中からなくなってほしいと思う気持ちは、恐らく皆同じでありましょう。
ただ、当時から、代表取締役の個人保証をもらわなくても、また、お住まいの不動産を担保に取らなくても、できる融資はありました。僕たちが当時、融資の基本として一番初めに手をつけるのは、手形の割引、それから運転資金ですね、売掛金と在庫の金額を足して、買掛金の金額を差っ引いた、その金額までは無担保で貸してもいいだろうというイロハを学びました。
ただ、それは、企業価値というよりは、割引手形というのは、手形・小切手法上、裏書人に順次、不払いが起こったときに遡求ができるから、別のルールを盾に貸してもよかろう、したがって、裏書人が信用できそうなところかというところが手形割引の最大のポイントというか、基礎の基礎でありました。
同時に、当時はバブルの前夜であったこともあって、手形を持っているということは売上げがあったということでありますから、その売上金を銀行に差し上げたとしても、金利を差っ引かれたとしても、まだうまみがある、すなわち、商売の利ざやの幅が大きかった時代だからこそ、手形の割引ができた。今はもう約束手形そのものが消滅しますから、そういうことにはならないわけですけれども、いずれにせよ、手形割引も運転資金もキャッシュフローであって、企業価値とは関係ないところでありました。
ここ、一本目の布石なのであります。
それから二年後、三十六年前、私は、富士銀行の当時ワールド・トレード・センターにあったニューヨーク支店に赴任になりました。一九八九年の一月ですけれども、そのとき、金融界の一番大きな話題は、KKRによるRJRナビスコの買収でありました。そのつなぎ資金に、日本の銀行、当時は大手二十一行と言っていた頃でありますが、それぞれ数百億円ずつ融資をするという事案が一番ホットな話題で、事務方の、案件に関係ない先輩方も、LBOとは何ぞやということを語れないと格好悪いみたいな雰囲気がある頃でありました。
利ざやは二五〇ベーシスポイント、物すごくうまみのある貸出しでありましたが、その買収したお金の返済資金は何なんですかとアメリカ人の課長代理に聞いたら、彼女は、ゼイ・イシュー・ボンズと言ったんですね。債券を発行して返すんだと。要するに、今死語になりましたけれども、ジャンク債をSPCが発行して、それで日本の銀行につなぎ資金を返す。
これまた、当時入社二年目、三年目の若手行員でありました。融資の基本でやっちゃいけない三つのことのうちの一つが、ほかから借金して貸金を返済する、そういう客には貸してはいけませんというふうに習いました。それが、エリートたちが集まる国際金融の一番最高、富士銀行の中では最高峰のニューヨーク支店が扱う花形案件が、債券を発行して借金を返すということにも大変驚きました。当然、ノンリコースローン、担保はありません。
私は、不動産金融の係に回されました。隣にプロジェクトファイナンスの係がありました。二つともノンリコース、担保は取りません。しかし、両方とも、企業価値を計算したというよりは、キャッシュフローを計算して、返済能力があるというようなことをしていました。まだまだ、商業銀行という言い方が正しいかどうかは別として、銀行法上の銀行が企業価値を算定して、それに基づいて担保価値を設定して、その範囲内でお金を貸すという世界はありませんでした。
今般、よく目利き目利きというふうにおっしゃいますけれども、企業価値を算定して、その範囲内で担保を設定するということであります。大歓迎でありますが、果たしてそんなことをできる人がいるのかどうか。
僕は前職で、ちょっと職業替えをして、MAのアドバイザーをやったり、IPOをしたり、政府の持っている民営化の案件の引受けをしたりという仕事をして、そのときは確かに企業価値は算定しました。しかし、現実の銀行の支店や営業部の取引先の中で、例えばディスカウントキャッシュフローを計算する、モデルをつくるのはそんなに難しくありませんが、これから八年間一律で七%売上げが成長するなんというきれいな会社が世の中にあるか。また、そういったモデルを回したとして、判こを押す課長さんや融資担当の役員はそれを信じるかどうか。
さらには、例えばディスカウントキャッシュフローを回したとしても、その割引率が、大体、リスクフリーレートで国債にするわけですが、一%を切っているような割引率で割り引き返すと、ほんのちょっとだけ割引率を変更すると、価値がばんと上がったり、だんと下がったりします。したがって、割引率の恣意性みたいなのを、多分、担当者と上司が対立する現場があちこちで出ると思います。
事ほどさように、企業価値を融資する側が算定するというのは、実は余りインセンティブというか、よっぽど利ざやを稼げる案件でもない限りは難しいんじゃないか。そんなことをして銀行は何の得があるんだという話にはなりやしないかということが疑問なんでありますが、これもまた事務方で結構でありますので、そういう企業価値を算定する人材がどこにどれだけいるという前提なのか、教えてください。
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