○稲田委員 今大臣から、証拠開示などについて動き始めている、そして議論が進んでいるというお言葉を聞きました。期待をしたいと思います。
ただ、法的安定性ということに関しましては、再審請求というのは無実の人を救済するというのが目的ですから、そこで法的安定性ということを言うと、それはまさしく有罪判決の維持ということになって、私は法の趣旨に反してくるのではないかと思います。
刑訴法の四百四十五条において、再審開始事由の有無の判断が必要と認められるときは事実の取調べができるということが規定をされています。これだけです、規定は。ということは、ルールがない、まさしく、取調べをするのが必要かどうか、裁判所の広い裁量が認められているということです。
再審請求者には、証人尋問や検証などの事実の調べや証拠開示を請求する権利はありません。法務省は、裁判所は柔軟かつ適正な対応をしているとおっしゃるんですけれども、袴田事件の再審請求において証拠が開示されたのは二〇一〇年以降、つまり、死刑確定から三十年以上、一つの証拠の開示も許されなかったんです。これで柔軟で適正な対応と言えるんでしょうか。死刑確定から三十年以上、弁護人が繰り返し行った証拠開示請求を検察官も裁判所も無視し続けることができるということ自体が、私は、法の不備、手続保障がなされていないということだと思います。
もう一つ例を挙げます。
二〇二〇年に再審無罪が確定した湖東事件では、第二次再審の即時抗告審まで一点の証拠開示も実現せず、再審公判で多数の証拠が開示され、捜査機関が隠していた無罪を裏づける証拠が明らかになって、無罪判決が言い渡されました。
逮捕時に二十四歳であった女性は、無罪判決が出たときには四十歳。その間、刑の執行がなされて満期で出所になる三十七歳まで拘束を、服役しておられました。一体、誰が責任を取るんでしょうか。有罪判決を受けて服役をした当事者とその家族のお苦しみに思いを致さなければならないと思います。
無罪判決後、大西裁判官は異例の説諭を行い、逮捕から十五年以上たって初めて開示された証拠もありました、取調べや証拠開示など、一つでも適正に行われていれば、本件は逮捕、起訴されることもなかったかもしれません、十五年余り、さぞつらく苦しい思いをしてきたと思います、もう西山さんはうそをつく必要はありません、これまで裁判を通して支えてくれる人に出会ったと思います、これからは自分自身を大切に生きてもらいたいです、今日がその第一歩になっていることを願っていますと結んだ裁判官の目は赤く、言葉を詰まらせていたといいます。私も、涙なくしてこのくだりを読むことはできませんでした。
不当な捜査と証拠隠しで女性の二十四歳から四十歳までの人生を葬り去るようなことがあってはなりませんし、私は、これを個別の事件だといって片づけることができないんです。刑事司法の在り方に対する重大な問題提起です。再審手続において証拠開示のルールのないこと自体が問題だと思います。
さらに、検察官が不服の申立て、抗告を申し立てていることが再審請求審を長引かせています。
資料一を示しますが、ほぼ機械的にと言ってもいいほど、検察官の抗告、特別抗告がなされているわけであります。しかも、再審公判になって、そして無罪になれば、検察官は全く控訴していません。それだけでなくて、再審公判になると、今度は立証すらしないという事件も多くあるわけであります。これでは、再審公判が何のためにあるのか分からない。
もう一つ、資料二を示します。これによりますと、欧米では、再審開始に対する検察官の上訴ができないとしている国が多いです。できるとしている韓国でも、マニュアルを作って慎重に行うようにしているわけでございます。
私は、検察官の抗告について何らかの制限が必要だと思いますが、大臣の見解を伺います。
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