○参考人(山岸尚之君) ありがとうございます。
WWFジャパン、世界自然保護基金ジャパンの自然保護室長をしております山岸と申します。
本日は、議員の皆様方のお忙しいスケジュールの中で、このような場で意見を述べさせていただく機会いただきましたこと、誠にありがとうございます。
WWFは、一九六一年に設立されまして、現在では百か国以上で世界の自然保護、環境保護をやっている団体でございます。私はその日本オフィスに所属をして、個人的な話でいいますと、過去二十年間、この表紙にあります国連のような会議に出席をし、国内の政策についてもつぶさに見守って提言をさせていただいた立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、おめくりいただきまして、目次でございます。
今回の法改正の二つのポイントである、主要ポイントである二国間クレジット、そして再エネの促進区域のお話についてまず意見を述べさせていただきまして、その後に、三番目として全般、そしてその他の論点について意見を述べさせていただきたいと思います。簡潔になるべくいきたいと思っております。
では、もう一枚おめくりいただきまして、スライドの三枚目でございます。
まず、二国間クレジット、JCMに関する意見です。
これにつきましては、ここに二点、意見を書いてございますが、私がここで申し上げたいことは、国際的な潮流を踏まえて、先生方としては、この後、世界がどのように行くのかというその文脈の中でこのJCMの在り方ということを是非お考えいただきたいということでございます。今回の法改正そのものは、JCMが、ありていに言えば、効率的にやっていけるようにというところに重きがあると思います。それ自体は大きな問題はないとは思います。ただ、方向性として是非この二点は御検討いただきたいというのがございます。
一つ目が、二国間クレジット制度の実施を強化していくに当たっては、途上国における化石燃料の使用の温存であったりとか増加、特に石炭火力発電所の増加にはつながらないように重々配慮をしていただきたいというのが一つ目のポイントです。
二つ目は、世界的に削減量が足りていない状況を鑑みて、JCMを活用した場合に、国内の削減量と相殺される、いわゆる業界用語でオフセットと呼ばれるような仕組みにならないように今後はNDCの中で位置付けていっていただきたいというのが二つ目の意見です。
これら二つについて、もうちょっとだけ解説をさせていただきたいと思います。
まず、おめくりいただきまして、スライドの四枚目、御覧ください。ちょっとややこしい資料で大変恐縮ですが、ここでひとつ、COP28、昨年の国連の気候変動会議がどんな結果を出したのかということを振り返っておきたいと思います。
昨年のCOP28の前までに、既にCOP27までの段階で、まず一番上にCOP27の決定の話が書いてございますけれども、石炭火力発電所については段階的に削減をしていくということが合意をされています。排出削減対策が講じられていないというただし書は付いていますが、基本的に石炭火力については減らしていきましょうねという方向性が国際社会の百九十か国以上のコンセンサスとして合意がされているというのがポイントです。
昨年のCOP28では何をしようとしたのかといいますと、これを石炭という分野だけではなくて、化石燃料全般に広げられるかどうか、そして、削減という言葉ではなくて、いずれは廃止というところまで持っていけるかどうかがかなり大きなポイントでした。
この二つ、かなり大変な決定になります。なので、当然ながら異論はたくさん出ました。ましてや昨年のCOPが開催された地はUAE、アラブ首長国連邦ということで、産油国ですのでなおさら反対の声も強かったということがあります。
それらを何とか妥協を見出して出されたのが一番下の、やや分かりにくい表現なんですけれども、化石燃料から、二〇五〇年ネットゼロを達成するために、転換をしていくという表現が使われました。これ、日本語ではなかなか伝わりにくいんですが、トランジショニング・アウエー・フロムという英語が使われてございます。日本語ですと通常、このトランジションという言葉は移行というふうに訳されてしまいますが、それだけだと、ここのアウエーという言葉に含まれたその英語の万感の思いというものがなかなか訳出されないという部分があります。つまり、化石燃料からはアウエー、立ち去っていくのだという、国際社会としてぎりぎりのところで合意をされた決別の意思というものがここで発表されたということになります。
これを受けて、各種報道であったり、あるいは国連事務局そのものが化石燃料時代の終わりの始まりというような表現をプレスリリース等では発表していたのを御記憶の方もいらっしゃるかと思います。これが国際社会としての流れでございます。ですので、先ほどの第一の意見で述べさせていただきましたように、JCMがこれからを見据えて何に貢献していくのかというのであれば、この流れに是非貢献をしていただきたいということがございます。
そして、ちょっともう一枚おめくりいただきまして、スライドの五枚目でございます。
実は、このCOP28の決定につきましては、パリ協定の下でのグローバルストックテークと呼ばれる、ちょっとややこしい名前の仕組みの中で出された結論でございます。このグローバルストックテークというのは、パリ協定自体の中に含まれている五年ごとの世界全体の進捗を見直す仕組みでございます。それで、世界全体の進捗を二〇二三年のグローバルストックテークという取組の中で見直しをして、その結論として、やっぱり世界はこの方向でいくべきだよねという結論で、先ほどの化石燃料との決別宣言があるというふうに捉えていただきたいと思います。
そして、パリ協定では、実は、このグローバルストックテークという五年ごとの見直しの仕組みは、明確に次の各国の削減目標に対するインプットとして位置付けられているという点も大事です。日本政府も含め、各国の政府は来年までに新しい次の削減目標を提出することになってございます。実際、その議論というのが、そろそろ環境省さん、そして経産省さんの下で始まるということが分かってございます。この議論に対するインプットとして、先ほどの化石燃料から徐々にシフトしていきますよということが明確に位置付けられたと。だから、それを達成するための手段として位置付けられるJCMというのは当然その流れをくむべきだということがまず申し上げたい国際的な文脈でございます。
加えて、次のページ、スライド六枚目に行っていただきたいんですけれども、このJCMのNDCの中での位置付けについてももう一つ御意見申し上げたいと思います。
現在、JCMのNDCの中での位置付けはやや特殊でございます。左側に表がありまして、その一番下に二国間クレジット制度(JCM)の位置付けというものが書いてございます。この中でちょっと注目をしていただきたいのは最後の一文、適切にカウントするという一文です。要するに、JCMは、日本の削減目標の中で適切にカウントするとは言っていますが、この上の表の中に含まれるような具体的な数字は入ってございません。ということで、現在では国内の削減目標に対して数字としては見込んでいないけれども、いずれは適切にカウントしていこうかなという意思が示されているというやや曖昧な位置付けでございます。
先ほど高村参考人からの御意見にもありましたとおり、世界的には削減量が全く足りていないという状況がございます。普通、このまんま国内の削減目標の中にJCMを組み入れるというふうにしてしまいますと、ありていに言いますと、途上国で一トン削減した分、日本国内では一トン削減しなくてもいいという仕組みになってしまいます。これですと、国際的な貢献にはつながりません。
なので、今後NDCを議論する際には、国内の削減目標とは別で、もしJCMを活用したいのであれば、国際的な貢献の枠の中に入れますよというふうにしていただく方がよいのではないかという御意見を二つ目の意見として述べさせていただきたいと思います。
続きまして、ちょっと時間が限られておりますので足早でございますが、次のスライド七枚目に行かせていただきます。再エネ促進区域に関連しての意見でございます。
再エネの推進、昨今のソーラーパネルに関して様々な報道があるとおり、再エネを促進をしなければいけないのは、脱炭素社会構築にあっては必需品といいますか必須でございますけれども、同時に、慎重にやらなければいけないという非常に難しい課題を抱えている分野でございます。促進区域を設定していく、そしてそれが都道府県と市町村が協力してやっていけるという今回の温対法の改正案については、それ自体は良いものではございますが、他方でここについては注意をしていただきたいというのが今回の意見の趣旨でございます。
まず、二〇二二年に世界的に生物多様性を守るための世界枠組みが合意されました。これに日本もしっかりと貢献していくということが、やはり先生方も御議論の中であったとおり、コミットがされてございます。ですので、一方でやはり生物多様性に対する配慮もしっかりしていきますよということはどこかにちゃんと入れておいていただきたいというのが一つ。
そして、やはり地域が反発するのは地域のためになっていないという部分もございますので、そこの地域の理解を得るということも非常に大事であると。
加えて、この促進区域、先ほど高村先生の資料にもございましたが、制度としてはできているけれども、三十二自治体、市町村でしかまだつくられていない。だから、都道府県とも協力をしつつ、しっかりと推進していけるようにしていきたいというのが多分今回の改正の趣旨であるのかと思いますけれども、他方で、やっていけないのは一つ理由がありまして、やはり何らかの支援が必要だということだと思います。その支援も、太陽光パネルなり風車なり地熱なり、そういったものを設定するために直接お金が必要だということももちろんあるかと思いますが、それ以外にも、じゃ、地域にどうやって利益が落ちてくるのか、ベネフィットがあるのかということを検討しようにも、じゃ、検討するために皆さんのお時間をいただかなければいけないとか、あるいは専門家にお願いをしてちょっと検討しなければいけないとか、いろいろな形で費用が掛かってきます。そういったことを何とかサポートしていけるように、地域にベネフィットを落とすためにも支援が必要なのではないかというのが二つ目の意見でございます。
それをもう少し具体的に書きましたのがスライドの八枚目でございます。
もちろん、何でもかんでもお金を出せばいいということではございません。先ほど申し上げたように、生物多様性に対する配慮があるとか、なるべく事業化がしっかりしそうなものであるとか、あるいは、いろいろ検討したけど難しいねという最後の手段としての支援といったような形で、いろいろ条件を付けていく必要はあるとは思いますけれども、それでもやはり、促進区域の設定を更に数を増やしていくためには、やはりこうした支援も必要なのではないかというのが私どもの意見でございます。
そして、最後の方に移っていきたいと思いますが、駆け足で申し訳ございません、スライドの九枚目でございます。
今回、主な多分改正案のポイントとしては先ほど申し上げたJCMとそして促進区域の部分かなと思いますけれども、それ以外にも言及されている部分、分野として、温室効果ガスの削減につながるような製品やサービスの普及についても頑張りましょうというようなことが今回の温対法の改正の中では含まれてございます。
これは、これ自体ももちろん大事なことですが、他方で国際社会に目を転じてみますと、昨今ですと、いわゆるグリーンウオッシュに対する目が一段と厳しくなってきております。これは、やはり消費者の皆様の関心も高くなってきているということが背景にはございます。やはりスーパーに行っていろんな表示がされていると、カーボンニュートラルかもしれないし、これは削減ゼロ、CO2ゼロとかといろんな表示があって、どれを選ぶのが一番正しいのかがよく分からないという消費者の声がやはりあると。そして、企業さんもいろいろな主張をするけれども、それが本当に正しいのかどうかが分からないという状況を受けて、各国、特に日本が意識すべきEUであったりアメリカであったりにおいても、こうした、どういう広告がされるのか、どういう企業さんの主張がされるのかに関しての規制の準備がそれぞれ進んでございます。ですから、こういったものをしっかりと動向としては押さえ、何となれば、製品を作る側は日本市場向けだけに作っているとは限りませんので、そういった企業さんにとって二度手間にならないためにも、こうしたことが必要です。
これは、ほかの分野、情報開示等の分野でもそうでして、目下議論になっている、企業さんが温暖化対策に関する情報を開示するときの国際基準の設定があり、それと温対法との間での整合性なんということも少し課題にはなっていたりとかはします。そういったことを、企業さんからしてみると、日本のためだけに作って報告しなくちゃいけなくて、EUのために報告しなきゃいけなくなってとなると大変になってしまいますので、その辺を意識した制度設計というものが、連携をしながらやっていくことが必要かというふうに思ってございます。
これが、最後に近い、最後から二番目の御意見で、最後の御意見の方に参ってまいりたいと思います。
これは、温対法全般に関する、今回の法改正では必ずしも対象になってございませんが、是非取り入れていただきたいポイントとして二点、最後に述べさせていただきたいと思います。
一つ目は、生物多様性そして脱炭素、そしてもう一つだけ挙げるとすれば、循環型社会の構築、サーキュラーエコノミーの構築、この三つに関しては国際的に同時並行で相乗効果を出しながら取り組んでいく分野だというのは、かなり国際常識にもなりつつあります。この間のG7の宣言文なんかもそういう章立てで書かれていたりとかするので、この分野は、時にはローカルの分野では対立してしまう分野もあるかもしれないけど、総じては必ずこの三つを同時並行でやっていこうというのは、かなり国際的には一大潮流になっているかと思います。
その中にあって、例えば地球温暖化対策推進法という法律を文言検索したときに、生物多様性という言葉が出てこないとか、それから、日本政府も生物多様性に対しては貢献しますと言っている中で、ネイチャーポジティブの言葉も出てこないとかという状況はちょっと寂しいのではないかというふうに思います。
まさに、やっぱり法目的に入っているからこそ配慮ができる部分もあったりとかすると思いますので、是非その点についても今後御検討いただけると幸いですというのが一番目のポイントで、二番目は、最終的には基本法としてこの温暖化対策に関する法律というものを上げていっていただきたいなと思っております。
温室効果ガスの削減目標、例えばカーボンプライシングなんかの議論が今後始まっていきますが、なぜそれが必要かというと、それは温暖化対策のために必要なので、こちらの法律の中できちんとした位置付けがないと、そのために、削減目標が、あるいはそのカーボンプライシングが安過ぎるとなったときに、それを強調する法理がないということになってしまいます。そこは是非今後改善していっていただきたいな、せめて位置付けていただきたいなというのが最後の意見でございます。
済みません、時間を超過しまして。ありがとうございました。
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