○参考人(深草亜悠美君) 認定NPO法人FoEJapanの深草亜悠美と申します。
本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
FoEJapan、フレンズ・オブ・ジ・アースの略ですが、FoEJapanは一九八〇年に日本で活動を開始した国際環境NGOです。世界七十三か国に加盟団体を持つFoEインターナショナルのメンバーでもあります。FoEJapanは、気候変動や原子力、火力等のエネルギー問題、開発金融、森林保全等の問題に日本で四十年以上取り組んできました。私自身は、化石燃料や原子力の問題、特にそれらの事業に対する公的支援の問題について取り組んできました。
本日は、日本の温暖化対策についての見解を述べさせていただければと思います。さきの二名の参考人の方のお話とかぶるところもあるかと思いますが、御容赦いただければと思います。
御存じのように、気候危機は年々深刻さを増しています。世界気象機関は、二〇二三年は観測史上最も暑く、産業革命期と比べ一・四五度以上平均気温が高かったと発表しました。今世界が目指す気温上昇を一・五度に抑えるというパリ協定の目標を守るために残された炭素予算というのは、残り僅かです。先ほどからも、削減が圧倒的に足りていないというお話がありました。現在各国が掲げている目標を実行したとしても一・五度を超える温度上昇につながり、日本を含め目標の強化が必要です。
二〇二三年に発表されたIPCCのレポートでは、一・五度目標を達成するためには、一九年度比で二〇三〇年までに世界の温室効果ガスの四三%を、三五年までに六〇%を削減する必要があるとしています。日本政府の削減目標は二〇三〇年に一三年度比で四六%ですが、一九年度比に換算すると三七%削減となり、グローバルな削減指標と照らし合わせても不十分な目標です。国内のNGOや市民団体、若者団体等は、気候変動に対する日本の歴史的責任の大きさ等を鑑み、二〇三〇年の削減目標を一九年比で六〇%以上削減に強化すべきであると主張しています。
また、IPCCによりますと、世界の既存の、また計画中の化石燃料インフラを想定年数稼働するだけでも、一・五度を超える温室効果ガスが排出されてしまうと試算しています。そのため、特に新しい化石燃料事業を行う余地は残されていないということが言えると思います。
また、先ほど山岸参考人からもありましたが、昨年、二〇二三年度のCOP28において、全ての化石燃料からの脱却ということが合意されました。また、今年のG7気候・エネルギー・環境相会合では、対策を取らない石炭火力発電は二〇三〇年代前半に全廃するとコミットされました。
化石燃料に依存する社会から早急に転換し、省エネルギーや再生可能エネルギーへの置き換えを進めていく必要がありますが、日本国内では、非効率石炭火力以外の石炭火力発電の廃止ですとか脱化石燃料の議論が行われていません。
ここで、カーボンニュートラルやネットゼロについての問題点、懸念点について触れたいと思います。
日本政府を含め、パリ協定の達成のため、カーボンニュートラルやネットゼロを目指す国や企業が増加しています。温室効果ガスの排出を完全にゼロに抑えることは現実的に難しいため、排出せざるを得なかった分と同じ量を吸収若しくは除去することで差引きゼロを目指すということですが、翻って考えてみますと、吸収量や除去量を確保できれば、その分追加的に排出してもいいという考え方につながる危険性があります。実際、排出削減量ですとか削減経路が曖昧なネットゼロ宣言は、グリーンウオッシュであると問題視されています。
このような背景もあり、例えば、二〇二二年、国連事務総長のイニシアチブの下で専門家グループによる報告書が発表されておりまして、企業等、非国家主体によるネットゼロ宣言の信頼性や透明性を確保するために、国際的な定義の統一や各国でのルールの整備の必要性を指摘しています。
また、ネットゼロを考える上では時間軸も重要です。排出された温室効果ガスはしばらく大気中にとどまる性質があるため、なるべく早く絶対的な排出量を削減することが重要となります。二〇五〇年の断面でネットゼロを達成しているというわけではなく、二〇三〇年までに、この十年でいかに削減を深掘りできるかが重要です。
日本政府は、NDC達成のため、JCMを通じて二〇三〇年までの累積で一億トン程度、CO2換算で一億トン程度の国際的な排出削減、吸収量の確保を目標とするとされているかと思います。累計の、累積の目標なので単純には比較できませんが、規模感としては年間、日本の年間排出量の約一割に当たる量かと思います。
繰り返しになりますが、気候変動対策のためには、ネットではなくいかに炭素の絶対量の排出が深掘りできるかが重要であると考えます。二国間クレジットや市場メカニズムの活用は、国内での削減にはつながりません。むしろ、購入したクレジットによって更なる排出を許してしまうものです。オフセット・クレジットに多額の投資を行い、また削減目標の達成をオフセットに頼るということは、排出量を減らさないばかりか、真に有効な対策を遅らせてしまいます。
環境省資料によりますと、既存のプロジェクトによる累積削減量は約二千三百万トンCO2とお示しがありました。もし今後六年で累積一億トンの目標を達成するとなると、大型の排出削減事業や吸収事業、事業の急増が起きるのではないかということを懸念しています。
京都議定書の下で、国際的な炭素取引システムであるクリーン開発メカニズム、CDMが実施されました。CDMが、事業が認められるためには、実際に削減が行われていること、追加的な削減であること、削減に永続性があること、環境十全性が担保されていることなどが条件となりました。
二〇一六年の欧州委員会の報告書によりますと、CDMの下で行われたプロジェクトの四分の三が追加的な排出削減に結び付いておらず、追加的な削減につながっていたのは全体のたった二%であったと指摘されています。この結論に至った背景の一つとしては、CDMで実施された多くの再生可能エネルギー事業は、クレジットがなかったとしても、市場における再エネの需要拡大等を背景に、いずれにしろ実施される事業であった見込みが高いということでした。
また、オフセット事業が地域社会や環境に悪影響を及ぼしていることを示す調査というのも増えています。
二〇二三年の調査によりますと、世界最大手のクレジット認証機関、ベラが販売したオフセットの九〇%以上が無価値であったということが明らかになっています。調査によれば、ベラが認証した熱帯林に関するオフセットプログラムの大部分が森林破壊防止につながっていなかったということでした。また、このとき調査された事業のうち、少なくとも一つで重大な人権侵害も報告されていました。
また、日経新聞の二〇二二年の調査報道でも、カーボンオフセットの問題について指摘しています。クレジットと組み合わせたCO2フリーLNG、二酸化炭素実質排出ゼロを銘打つ液化天然ガスというのが取引されていますが、このときに使われたクレジットで実際の削減量より過大に発行した疑いがある事業のクレジットが使われていたとのことです。その他の問題事例については、配付のレジュメを御覧いただければと思います。
これらの例からは、国際的な炭素市場におけるクレジットの追加性や確実性、環境十全性を確実に担保するということが現実的にはこれまで困難であったということが見て取れます。むしろ、質が担保されていないクレジットが出回ることによって排出削減対策を遅らせるだけではなく、社会や環境への影響、また気候変動の加速がしていくと思われます。
また、繰り返しになりますが、国の削減目標達成のためにクレジットを活用するとなると非常に多くのクレジットが必要となり、事業の急激な増加や大型化が予想されます。
これまでCDMや民間のクレジット市場で扱われているのは、省エネ技術の導入や再生可能エネルギー事業によって創出されたクレジット、森林破壊や土地劣化防止、植林による吸収源事業というのが主要な事業であったかと思います。
一方、現在、国連パリ協定六条の下、また日本のJCMにおいても、炭素回収、貯留、CCSや、CCSと組み合わせたバイオエネルギー発電、BECCS、また空気から直接CO2を回収する直接空気回収技術、DAC等、新たな技術によるクレジットを認めるかどうかが議論されていると理解しています。CDMではCCS認められていたと思いますが、実際の案件はゼロではなかったかと思います。
日本政府が二〇二三年に策定したCCS長期ロードマップでも、JCM、二国間クレジット制度におけるCCSを含むプロジェクトの組成やCCS由来の国際的なクレジット制度の立ち上げを支援するとしていますが、このCCSですが、世界的に見ても成功例や実現例は非常に少なく、またコストも非常に高く、技術的な困難も伴います。
また、二〇二四年五月にCCS事業法が日本国内で成立しておりますが、個別の環境アセスメントの欠如やモニタリング基準の曖昧さなど、懸念が残る内容となっております。国内におけるCCS事業の安全性の担保も見通せない中で、海外でのCCS事業をクレジット化するための議論は時期尚早であると考えます。
また、炭素除去の議論においては、またCCSも同じく回収したCO2を貯留するということで、CO2が大気から持続的に隔離されていることが定義上重要となります。この持続的にということなんですけれども、国連の議論では、この長さとして、一案として、少なくとも二百年や三百年というような意見も出ております。このような長期にわたり隔離された炭素の維持を担保できる法制度というのは非常に困難であると思います。また、貯留が行われるホスト国がこれを行うためには相当のリソースを要することが議論の一つともなっております。今後、JCMであれ、JCM外の日本が国内で発生したCO2を海外に輸出して貯留する場合であれ、長期のモニタリングと賠償責任というのが問題になるかと思います。
まとめますと、繰り返しになりますが、やはり絶対的な削減というのが足りていない状況です。
オフセット等、どうしても削減できない部分ということが前提となるかと思いますが、日本国内では、化石燃料のフェーズアウトはおろか、石炭火力のフェーズアウトというのも遅れています。また、一部ではCO2が悪者で化石燃料ではないというような声もあるというふうに聞いていますが、CCSやDACなどの技術はいまだ十分開発されておらず、数少ないCCSの実施例を見ても、多くは石油の増産に使われる若しくは回収率が非常に低いという現実があります。大気に排出された炭素を回収するコストというのは非常に高価です。
また、水素、アンモニア等の燃料も注目されておりますけれども、また衆議院の方の議論では、こういったものもJCMの対象から排除するものではないという答弁だったかと理解しておりますが、輸入や化石燃料由来のものが多く、グリーンな水素、アンモニアの拡大にはそもそも再生可能エネルギーの拡大が鍵となります。
また、化石燃料サプライチェーンの風下だけを見るのではなく、全体を見ると、上流での採掘による環境や社会への影響というのも重要です、重大です。化石燃料を掘り出さないということが重要であると考えます。
また、日本からの技術支援というのは非常に重要だと思います。しかし、これをオフセットに使うかどうかは別だと思います。また、現在、気候資金ですとか途上国への資金支援、技術支援というのも非常に必要であることは確かです。ただ、それは、パリ協定では先進国による途上国の支援の義務として書かれています。日本政府は、資金支援、技術支援をオフセットのために行うのではなく、途上国の支援のために、かつ追加的に、また、途上国の債務問題というのも深刻ですので、債務を増加させない形で行う必要があると考えています。
私からは以上になります。ありがとうございました。
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○参考人(深草亜悠美君) ありがとうございます。
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2024-06-06 · 参議院環境委員会
○参考人(深草亜悠美君) 御質問ありがとうございます。
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2024-06-06 · 参議院環境委員会
○参考人(深草亜悠美君) 御質問ありがとうございます。
今、山岸参考人がおっしゃられたことに同意で、今、全ての国がNDCを提出して、削減義務、削減をやっていかないといけないわけ…
API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=深草亜悠美
MCP: search_diet_speeches(speaker="深草亜悠美")