○参考人(浜田真樹君) 浜田でございます。着席のままで失礼いたします。
お手元に資料をお配りしておりますので、御参照くださいますようにお願いをいたします。
大阪で弁護士をしておりまして、今で二十二年目になっております。この間、多く子供に関わる事案を扱ってまいりました。今日は、そのような立場からこの今回の家族法改正について意見を述べたいと思います。
資料三ページを御覧ください。
親権には、権利の側面と義務の側面があると言われております。ただ、親と子の関係について言えば、親は子の養育等に関する義務を負っているという側面こそが重視されるべきと考えております。
今回の改正法案でも、八百十七条の二で子の人格を尊重するとの文言が入るとともに、八百十八条では従前の子供は親の親権に服するという表現がなくなっておりまして、こういった点からも、子供の利益、権利を重視すべき方向性が打ち出されるものと理解をしております。
資料四ページを御覧ください。
一般の通常のときにおいても子供の利益というのは大切なものでありますが、親と親との紛争が生じたときにはその要請は一層強まるものであります。言うまでもなく、父母間の紛争は子供にとっては全く望まないものであるからであります。
父母間の紛争について、多くの子供さんが悲しかったとかショックだったと思っていたということが今までの数々の調査でも確認をされております。加えて、親同士の紛争はあくまで親同士のものであって、子供はただ巻き込まれる立場なんだということを強調して申し上げておきたいと思います。
親権の義務性という観点に着目をいたしますと、離婚によって親権が一方のみになるということは、子供にとってみれば義務を果たす人が一人減るということでもあります。共に暮らすことがなくなるというのは致し方ないといたしましても、親は二人とも引き続き子供のことを考え、養育に対して責任を負担する人であってほしいと考えます。
つまり、私の意見では、離婚後の非監護、監護していない方の親御さんは、養育をして、失礼、養育費を支払い、お子さんと面会交流を行うだけでは足りないんであります。これらに加えて、子供にとっての重要な決定に責任を持って関与し、お子さんから相談があれば真摯に応じ、お子さんから説明を求められれば丁寧に回答しというような作業を離婚後であっても行ってほしいと考えております。
資料五ページを御覧ください。
このような発想に基づけば、離婚後の親権についてはできるだけ共同親権が広く認められるべきということになるものと思います。今回の法案では離婚後の共同親権が原則だというわけではないと理解をしておりますが、離婚後の共同親権はお子さんの利益のために必要なものであると考えます。
加えて、親権制限審判などと比較をいたしますと、協議離婚によって簡単に一方の親が親権を失うことの方がむしろ奇異にも見えるところであります。
私は、児童相談所の仕事などで親権停止審判や親権喪失審判も取り扱ってまいりました。いずれも、裁判所に認容を受けるためのハードルはかなり高いところがございます。それは、子供にとって親権者の存在が重要であるからであろうと思います。そうであれば、子供の利益のために共同親権ということが考えられるべきではないかということであります。
もちろん、単独親権を望む声があることや、実際問題として単独親権の方が良いと思われるケースがあることも承知をしております。この観点で改正法案を見ますと、裁判離婚において裁判所がいかなる基準に基づいて共同親権か単独親権かを決めるのか、条文から直ちには読み取れないということを若干心配をしております。
弁護士として相談を受ける立場からいいますと、このままでは、裁判所がそのケースについてどういった判断をしそうかといういわゆる予測可能性の観点がまだまだ低く、したがいまして、離婚するかどうか、そしてまた、その場合にどのような手続を選択すべきかについて十分な法的アドバイスができないおそれがあるものと考えます。これは、法曹、法律家にとっての問題というよりか、離婚を考える当事者にとって大きな問題となり得るところだと危惧をしております。
そこで、国におかれては、この改正法の施行に先立って、裁判所がいかなる基準に基づいて、またいかなる考え方に基づいて判断をするのか、その指針などを明確にしていただくよう希望したいところでございます。
資料六ページを御覧ください。
共同親権の場合、日常の行為であれば単独行使が可能とされております。この日常の行為の範囲については、ある程度広くなるものと解釈をいたしませんと、子供さんの利益が害されるおそれがあるものと思います。
このような場面において、このような場面について、児童福祉法では、例えば子供さんが児童養護施設などに入所しているときには、監護及び教育に関して施設長が必要な措置をとることができるという条文がございます。そして、親権者はこれを不当に妨げてはならないとされております。これは、実際に子供を監護している側にある程度の裁量がないと子供のためになる判断や活動ができないという発想の下に作られているものと評価できると思います。これと同様に考えられるべきではないかと考えます。
日常行為以外で親権行使者について協議が調わない場合、家庭裁判所が親権行使者を決定するとされております。まず、この決定は迅速に行われる必要が極めて高いところです。例えばどの学校を受験するのか、例えば第二志望に先に合格しちゃったけれども入学手続をするのかどうか、入学金を払うのかどうかといったところ、例えばですが、判断すべき時間が極めて限定的になるということが多いと考えております。
こういった場面で急迫の事情ありと言えれば親権の単独行使ができることとされておりますが、ここでの課題は、この急迫の事情ありと当たるか否かをまず判断するのは親御さん本人だということであります。無論、裁判になるかもしれませんが、それは事後的な話であります。そうしますと、この急迫の事情ありと言えるかどうかについて、一般の市民にとっても分かりやすい明確な判断基準が示される必要が極めて高いものと考えます。
資料七ページを御覧ください。
ここまで親と親の意見が合致しない場面を見てまいりましたが、その際に子供の意見がどう扱われるかについてであります。
親権行使も離婚後の親権者の指定もすべからく子供のためであると考えますと、その内容を決するに当たっては子供自身が意見を言う機会が与えられるべきと考えます。これは、子どもの権利条約で定められました意見表明権の発現場面であり、家事事件手続法でも、子の意思を把握して、子の意思を考慮すべきものと定めているところであります。
児童福祉法でいいますと、令和四年の改正で意見聴取等措置、意見表明等支援事業という規定が入りました。いずれも、児童相談所等が行う措置に当たって子供が意見を言う機会をきちんと保障しようというものであります。
また、意見を聞くためには、その前提として、子供さんに対して十分な説明がなされなければなりません。これがないと、お子さんも意見表明のしようがありません。しかし、実際のところ、特に家庭裁判所の手続に入ってからは、子供さんに十分な説明を行って、その上で子供の意見を十分に聞くということはそんなに簡単なことではありません。
そこで、そのために利用できる制度として、子供の手続代理人について御紹介を差し上げます。
資料八ページを御覧ください。
定義と制度概要はそこに書いたとおりでございます。離婚や親権者の指定、面会交流など子供に影響のある事件類型において利用が可能でございます。これらの手続に子供が関与する場合に弁護士が子供の手続代理人としてサポートを行うという制度です。
資料九ページを御覧ください。
具体的なサポートのありようもそこに書いたとおりでございますが、子供のために主張、立証を行うとか、子供に情報を提供してその意思決定を援助し、子供の利益にかなう解決がなされるような働きかけも行います。
日弁連では、最高裁判所と協議を行った上で、子供の手続代理人が有用と思われる事案の類型というペーパーをまとめております。平成二十七年のことでございまして、ここに記載された類型は裁判所の目から見ても有用と言えるものであるということをまず指摘しておきたいと思います。
資料十ページを御覧ください。
この制度に対しては、よく、家庭裁判所には調査官がいるので子供の意思等はそこで十分把握できているんだというような指摘もなされるところです。ただ、それでは十分ではないと思います。子供の手続代理人は、家庭裁判所調査官と対立したり役割が重複するような存在ではなくて、役割を分担しながら、協働、共に働く協働を築くことができるものであると考えます。
特に私が強調したいのは、子供の手続代理人であれば子供に対して十分な説明を行うことができるという点であります。先ほども触れましたとおり、十分な説明は子供さんの意思形成、意思表明の前提として大変重要でありますが、家庭裁判所調査官は中立のお立場であり、また職責上もこういった観点の活動は困難であります。実際の事例でも、弁護士は、放課後とか週末とかを含めてお子さんと会ったり、またLINEなどのSNSでやり取りをして何度も交流を持ち、その中で信頼関係を形成して、その上で意思決定、意見表明などの支援を行っております。
資料十一ページを御覧ください。
この制度の課題は、利用件数が極めて少ないというところであります。家事事件手続法制定から十年以上が経過をしておりますが、今もなお、そもそも制度の存在すら広く知られているとは言い難いところがございます。
加えて、報酬の問題もあります。裁判所が選任する、その意味で国選と言ってよろしいかと思いますが、そういう方法もありますが、子供の手続代理人の報酬が公費、公から支出されることはありません。実際には、お父さん、お母さんの双方で分担をいただくということが多くなっております。
さらに、お子さん自らが自分に代理人を付けたいんだという場合でも、法テラスの民事法律扶助制度は利用することができません。このため、お父さん、お母さんから報酬支払の協力が得られない場合には、日弁連が行っている法律援助事業を利用することになります。
しかし、お子さんにとって大変重要な制度であり、結局は離婚等の家族紛争の解決全体にとっても有益な活動であるものですので、この手続代理人についても民事法律扶助制度を利用できるような制度改正を期待しております。
続けて、十二ページを御覧ください。
裁判所側の体制整備も大変重要だと考えます。家庭裁判所の事件数や業務は大きく増えておりますが、裁判官は余り増えておらず、調査官に至ってはほぼ増員がありません。また、全国の裁判所の支部や出張所では、裁判官や調査官が常駐していないところも多数ございます。
そうなると、その地域の住民は、仕事を休み、小さな子を連れて遠方の裁判所まで出向かないとというような事態も生じます。住まいからなるべく近い裁判所で裁判を受けることができる、このことは、裁判を受ける権利の実質的保障の観点からも重要なことであると考えます。
さらに、お子さんに関することでいいますと、お子さんに関する調査を行ったり試行面会を行ったりする児童室などと呼ばれる施設がありますが、家庭裁判所支部の約半数には設けられておりません。こういった点も充実させることが不可欠であると考えます。
資料十三ページを御覧ください。
裁判所の問題だけではなくて、私どもを始めといたします弁護士の関与も一層広がっていくべきものだと考えます。今でもその関与は十分ではないと言わざるを得ませんが、今回の改正法によって親権行使者の指定の事件などが新設されることになりまして、こういった中では、弁護士がその専門的知見を生かして活動することが必要不可欠であるものと考えます。
資料十四ページを御覧ください。
私の意見は、父母の紛争と親子関係とは一旦切り離して別のものだと考えてくださいということであります。ただ、これは、実はそれなりに大きな意識の変革を求めることになるやもしれません。
また、その点以外のところでも、離婚をするに当たって考えなければならないことはたくさんあります。そうであるのに、私どもを始め、私ども弁護士を始めとするような専門家へのアクセスは必ずしも十分とは言えません。
そこで、離婚を考える全ての当事者に対して情報提供をする機会が設けられるべきと考えます。これは、親ガイダンスとか離婚後養育講座などと言われるものでありまして、法制審家族法制部会でも一時期導入が議論をされておりました。今回、それを受講すべきことが義務になるというようなことにはなりませんでしたが、子供を持つ親御さん双方にとって有益なツールとなるものだと考えますので、是非広まってほしいと考えております。
最後に、資料十五ページを御覧ください。
今日触れてきたような考え方からいたしますと、そもそもこの親権という用語そのものを変えてしまってはいかがかという御提案でございます。ここに記載をいたしました六つほど、新たな用語として御提示を差し上げております。これは、法制審議会家族法制部会の中間試案に対するパブリックコメントの際に、私も所属いたします日弁連の子どもの権利委員会の有志で新たな用語として考えてみたものでございます。今回の改正法案には入ることはなかったですけれども、これから先、将来に向けての議論の参考になればと思ってあえて記載をさせていただきました。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
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