○舟山康江君 国民民主党・新緑風会の舟山康江です。
会派を代表して、石破総理の所信表明演説に対して質問を行います。
さきの衆議院総選挙は、どの政党も過半数に届かない結果となり、表面的には自公政権が継続したものの、連立でもなお過半数に満たない少数与党政権に転じました。
今後は、政府・与党の事前調整で決めたことを野党に追認させるという政策決定は通じません。与野党の熟議を通して、より広い民意を反映する政策決定への変更を国民が支持した結果です。まさに石破総理が所信表明にて石橋湛山元総理の演説を引用し強調したとおりですが、逆に言えば、これまでの政権は、他党の意見を丁寧に聞くこと、可能な限りの幅広い合意形成など、当たり前の過程を怠ってきたことを物語っています。従来の政権の反省点も含めて、今後の政治のあるべき姿に向けた総理の決意をまずお聞きします。
与党過半数割れの原因の一つは、石破総理の政治姿勢が変節したとの疑念を多くの国民が抱いた点です。
総裁選時、勝利目当てに心にもないことを語っていたとは思いません。むしろ本音を訴え、本気で実現しようと意気込んでおられたものと思います。しかし、自民党という組織はそう甘くありませんでした。総理といえども、自民党の中でかじ取りするには様々な意見に配慮せざるを得ず、あえて持論を封印し、そのチャンスをうかがっているんですよね。総裁選での主張を後退させていないことを明言してください。
例えば、駐留に伴う諸問題の解決にも取り組むとは、日米地位協定の改定も視野に入れているのか、お答えください。
総理、安心してください。まさに与党だけでは何も進まない状況の今、野党の力をうまく活用してください。多くの野党、そして国民民主党は、日米地位協定改定や金融所得課税強化、政策活動費廃止を含む政治改革、農業の直接支払拡充など、総理のかねてからの主張に大賛成です。是非一緒に前に進めましょう。
私たち国民民主党は、手取りを増やす、この政策を前面に掲げて総選挙を戦いました。その具体策の一つが基礎控除の拡大、いわゆる百三万円の壁の引上げです。
控除制度は、生活に必要な最低限の生きるためのコストは非課税という根本原則にのっとったもので、現在の課税最低限は、基礎控除四十八万円と給与所得控除五十五万円を合わせて百三万円です。一九九五年までは物価上昇等に合わせて引き上げていましたが、それ以降は放置。この三十年、物価のみならず税金や社会保険料引上げで生きるためのコストが上がる中、控除額が不変では明らかに不合理です。
財務省の国際比較の資料では、今年一月現在の日本の単身者の課税最低限は、日米英独仏の中で最も低い金額です。
総理がこれらを御理解いただき、所信表明でも引上げを明言されたことは率直に評価いたしますが、問題は引上げ額です。
国民民主党は、最低賃金決定の際の考慮要素として、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるようにと明確に示されていることからも、その上昇率に合わせるべきとの観点に立って百七十八万円への引上げを提案していますので、是非総理のリーダーシップで決断いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。税金を集めて使う立場ではなく、税金を納める国民の立場を考えた御答弁をお願いいたします。
あわせて、暫定と言いながら半世紀も続いているガソリン等の暫定税率廃止については、所信の中で、自動車関係諸税全体の見直しの中でではなく、見直しに向けて検討と踏み込んでいますので、まずは先行して決断いただけるものと確信していますが、その決意をお聞かせください。
人づくりこそ国づくり。我が党が結党以来一貫して主張してきたフレーズをまさに直球で総理が所信で使われたことに敬意を表します。
国民民主党は、人への投資として、年五兆円程度の教育国債発行で子育て予算と教育、科学技術予算を倍増すべきと提案し続けてきました。安易な借金を推奨しているわけではありません。まさに教育や子育ては未来への投資であることから、未来からお金を先にお借りして投資をする、そして将来、大きく育った人材から投資分を回収するべき、こういった趣旨です。これこそ人づくりの一丁目一番地と考えますが、総理の見解をお聞かせください。
OECDが九月にまとめた報告書によれば、日本の公財政教育支出の対GDP比は二・九%と、三十五か国のうち二番目に低い水準です。また、大学や専門学校などの高等教育に対する家計負担割合は、比較できる三十か国の中で三番目の高水準です。改めて、総理が表明した公教育の再生とは具体的に何か、総理の問題意識と公的支出増額も含めた解決方向をお聞かせください。
我が国の教育現場での深刻な問題は、授業以外に割かなければならない時間が余りに多い点です。同じくOECDの調査では、教員の労働時間中、授業に充てる時間は僅か三〇%で、平均を大幅に下回ります。実際、現場の先生からは、家庭の問題や心の悩みなど、本来カウンセラーなどの専門家が対応すべき相談も多く、残業を余儀なくされるほか、帰宅後もメールや電話での相談に応じることもあり、気が休まる暇がない、寄り添ってあげたいけどもう限界、こんな悲鳴が聞こえてきます。
専門家の養成や配置、拡充も含めて学校現場の抜本的な改革が必要と考えますが、総理の問題意識をお聞かせください。
総理は、重要政策課題の一つに防災を挙げています。
気候変動の影響も相まって、近年、自然災害が多発する中、時宜を得たもので、私も問題意識を共有しますし、能登半島地震など様々な災害からの復旧復興に与野党の枠を超えて取り組む必要があります。
そういう中で、まず確認したいのは、皆さんの陳情が政府を動かした、自分たちが政府に要望したから激甚指定を受けられたなどの一部の与党議員からの発言です。総理、災害復旧事業は要望の有無で扱いが変わるんでしょうか。
その上で、激甚に指定されるほどの大規模災害でも、被災地の生活となりわい再建に向けた対策パッケージのような手厚い支援策が講じられる場合とそうでない場合に分かれ、被災地での不公平感につながっています。発動基準はあるんでしょうか。今回の総合経済対策でも、「これまでに策定した支援パッケージを踏まえながら、早急かつ柔軟に対応する。」との記載があり、是非前向きな対応をお願いします。
災害時に利用可能な災害復旧事業は、通常の補助事業よりも高い補助率が適用されます。中でも、例えば、河川、道路、港湾、下水道、公園などの公共土木施設ほか、公立学校、公営住宅、児童福祉施設、老人福祉施設など、及び農地や農業用施設については、通常の災害復旧事業でも国庫補助と地方交付税措置により実質的な地元負担は一・五%から二%程度、激甚災害に指定されると〇・六%から〇・八%程度に軽減されます。その理由は公共性が高いからです。
では、鉄道はどうでしょうか。鉄道は公共交通と呼ばれ、まさに公共性が高い施設です。にもかかわらず、災害時でも高率の補助が受けられません。なぜでしょうか。民間事業者だからというのがお決まりの答えですけれども、公共性が高い鉄道の復旧も公共土木施設等と同様の支援を行うべきではないでしょうか。政界きっての鉄道好きである石破総理の見解をお聞かせください。
加えて、そもそも公共交通は採算だけで論ずるべきではありません。
参議院の国民生活・経済及び地方に関する調査会は、本年、中間取りまとめの中で、社会資本としての地域公共交通を維持していくため、国が積極的に役割を果たしていくことが求められるとし、道路と比べ予算配分が極めて少ないことも併せて指摘しました。これは、与野党を超えた共通認識で問題提起したもので、公共交通は公共サービスであるから公共がしっかり責任を持ってサービスを提供していくものであり、目指すものは収益の最大化ではなく、社会全体の利益を最大化することとの参考人意見と併せて、総理にも重く受け止めていただきたいと思います。
現在の公共交通施策は、国の役割をあくまで民間や地域の取組への支援にとどめています。支援ではなく、国が主体的に役割を果たす方向に転換するべきではないですか。
通常の支援が極めて少ない中、平時の維持でさえ大変な過疎地における赤字路線は、一たび被災すればたちまち立ち行かなくなるのは当然です。改めて、鉄道を含む公共交通に関する予算を大胆に増額するべきではないでしょうか。
昨日の御答弁では、法改正し、予算を大幅拡充したとありましたが、令和六年度を含めて当初予算はほぼ毎年減少、前年度補正を合わせても今年度は前年度より減っていること、そもそも交付金を除く令和六年度当初予算ベースで同じく公共事業に分類される道路整備予算の何と六十八分の一程度にとどまっているお寒い状況を付言し、総理にお伺いします。
公共交通関係予算ほどでないにせよ、河川整備の予算も道路予算の四四%程度と極めて少ない現状です。
「地球温暖化に伴う気候変動の影響により、今後さらに大雨や短時間強雨の発生頻度や降水量などが増大することが予測されており、大規模な水災害が発生する懸念が高まります。」、これは、国土交通省作成の河川事業概要にある記述です。
豪雨災害の多くを河川の氾濫がもたらしている現状を鑑みると、河川改修は待ったなしです。令和三年四月改訂の気候変動を踏まえた治水計画のあり方でも、気候変動による将来の降雨量の増加などを考慮した基本高水の設定を提言しています。
計画降雨継続時間での降雨量変化倍率が全国で増える中でも、とりわけ東北地方で高くなることが予想されています。実際、令和に入ってからはどこかで毎年のように甚大な被害が発生している現状を目の当たりにすると、特に東北での河川改修、基本高水の引上げは待ったなしです。今年の豪雨を振り返ると、九州では降水量九百ミリ超を記録いたしました。その一方で、東北では四百ミリ超で記録的大雨と呼ばれ、各地で氾濫が相次ぎ、甚大な被害が生じました。総理、早急に事業に取り組む必要があるんではないでしょうか。
あわせて、多くの河川が土砂の堆積や支障木により氾濫が起こりやすい状況下にあり、改めてしゅんせつ等の緊急事業を拡充するべきと考えますが、総理の認識を伺います。
豪雨災害に接する中で、私は、改めて農地の役割を再認識しています。
少し古い調査ですが、日本学術会議が二〇〇一年に行った試算では、農地の持つ洪水防止、すなわち大雨時における貯水能力の貨幣価値は約三兆五千億円にも及びます。逆に言えば、もし農地がなかったら被害はもっと甚大だったはずです。総理は、このような役割をどのように認識し、どう評価すべきと考えますか。
同じ試算では、ほかにも河川流況安定機能で約一兆五千億円、土砂崩壊防止機能で約五千億円、気候緩和機能や保健休養・やすらぎ機能など、合計八兆円超の効果があるとされています。食料生産の基盤であると同時に、防災・減災のほか、多面的機能を担う農業はまさに我が国安全保障の根幹の一つです。
一方で、残念ながら現状は、農地も、それを利用する農業者も減少、国内生産の増大も実現できず、自給率は下がる一途で、生産基盤の弱体化と農村の疲弊に歯止めが掛かっていません。その理由は、農業では食べていけないからです。まさに手取りを増やす政策を農業でも進める必要があります。
五月に改正された食料・農業・農村基本法では、合理的な価格の形成が規定されました。価格転嫁は業種を超えて必要ですが、法律で強制するものではなく、価格は市場で決まるものです。そもそも現行基本法では、価格形成は市場に任せ、所得の確保は政策に委ねるとの明確な柱があると認識していますが、総理、この基本理念と矛盾はないんでしょうか。
また、前述の農業の多面的役割は、必ずしも価格に反映されるものではない中、各国ともその役割に注目し、直接支払の拡充により再生産可能な所得の確保に向けた施策を講じています。
石破総理は、今年七月のインタビューで、直接所得補償という表現まで使うなど、農業に対する直接支払の必要性に言及されています。まさに決断のときです。改めて所得確保に向けた直接支払に対する総理の見解を伺います。
国民民主党は、生産基盤である農地の維持に向けた食料安全保障基礎支払の導入を提案しています。あわせて、複雑化している現在のいわゆる水活、畑ゲタ、多面的機能支払、環境直払い、中山間直払いなどを再整理し、体系的な直接支払制度に再構築すべきと考えますが、その必要性について総理の見解をお伺いします。加えて、中途半端な見直しに終わった改正基本法を再改正するべきと考えますが、併せて総理の見解をお聞かせください。野党は既に修正案提出しています。
私たち国民民主党は、先月二十日に提出した来年度税制改正に関する要望の一つとして、今年度末までの期限を五年間延長する方向で政府・与党が検討を進めている企業版ふるさと納税による地方創生事業について、企業による寄附によって公平性に疑義が抱かれないように透明性を確保することを求めました。
折しも先月二十二日に、福島県国見町の地域再生計画の認定を国が取り消す事態に至りました。救急車開発事業の原資として企業版ふるさと納税を利用して集められた寄附が救急車の製造の受注を通じて寄附元の企業に還流されていた事案であり、入札を装いながら、実質は受注先企業以外の参入が困難な条件が付されていたことが問題視されました。
寄附額の最大九割の減税を受けられるという手厚い制度ですが、地方創生が目的の制度を悪用して、一部の企業が不当に懐を潤すような事態を見過ごすべきではありません。
内閣府令で禁止されている自治体から寄附法人への経済的見返りの有無について、これまでどのように調査し、把握してきたのか、類似の事案はほかにないのか、また、再発防止に向けて制度運用の見直しも含めてどのように取り組んでいくのか、伊東地方創生担当大臣に伺います。
パレスチナのガザ地区でイスラエル軍とイスラム組織との戦闘が始まってから間もなく一年二か月。パレスチナ側の死者は既に四万人を超え、住民の九割が避難を余儀なくされています。ガザ地区の状況は極めて深刻で、一刻も早い停戦が必要です。
日本は、十一月二十日に国連安保理で提出された停戦と人質解放を求める決議案の共同提案国として積極的な役割を果たしましたが、アメリカの拒否権により否決されました。
総理、日本政府はこの結果をどのように受け止め、今後、国連や他の国際機関を通じてどのように行動していくお考えですか。
ICC、国際刑事裁判所がイスラエルのネタニヤフ首相らに対し人道に対する罪などの容疑で逮捕状を発行しましたが、日本はICC締約国としてこれをどのように評価していますか。
イスラエル議会によるUNRWA活動禁止法の可決は、人道支援活動に深刻な影響を及ぼします。政府はこれに対して深刻な懸念を直ちに表明しましたが、UNRWA活動継続のため、また、ガザ地区の人道危機を軽減するため、総理は具体的にどのような取組をお考えですか。
これまで中東和平において中立的かつ建設的な立場を維持してきた日本の役割は重要です。中東和平に向けての総理のリーダーシップを期待しています。
総理は、所信表明の冒頭と結びに石橋湛山元総理の演説を引用されました。石橋湛山氏を尊敬し、超党派石橋湛山研究会なる議員連盟に所属する私は、自由な言論を重んじ、平和外交を重視し、積極財政による減税を唱えた湛山の思想こそが、時代を超えて我が国の未来を切り開く大きな力になると信じています。
石破総理には、先頭に立って、決してぶれずに湛山の思想を現代に体現いただくことを心から期待申し上げ、質問とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇、拍手〕
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