○駒村参考人 慶應義塾大学の駒村康平でございます。
こういう機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
お手元に、少し厚い資料でございますが、用意させていただきました。後半の方では、少し私の論考も補足のためにつけておりますが、おおむね最初の十四ページで御説明したいと思います。
今日お話ししたい内容はこの「構成」というところで、年金制度を評価するに当たっての評価基準、改革の評価基準、それから、現行の年金制度改革で大きな課題になっている基礎年金の給付水準の問題、この底上げをめぐる政策の選択肢、それに関わる三つの壁というものをお話しさせていただきたいと思います。本体資料と参考資料もつけさせていただきました。
では、三ページを見ていただければと思います。年金制度の評価軸というのは、まず、持続可能であるのかどうかということでございます。財政的に持続可能かどうか。さらに、給付水準が年金としてふさわしいレベルを保障しているのかどうか。それから、働き方や家族はその時代とともに変化をしていきますので、社会経済等の変化に対する対応力、こういったものが重要かと思います。
高齢化が進む中で、この一番と二番のバランスはかなり際どい状態になってきていることは事実でありますが、しかしながら、まだ破綻をするとか若い人が年金をもらえないとかというような緊急事態になっているわけではなく、調整をしながら何とか維持できるというふうに考えております。三番は、不断の改革が必要になってくるということでございます。
では、四ページの方に移りたいと思います。今回の年金財政検証で大きな課題になったのが、当初、二〇〇四年にこの改革、現行年金制度ができたときには、二〇二三年にはマクロ経済スライドが停止して、厚生年金の報酬比例部分と基礎年金は、相似形で、同じ比率で下がっていくということが想定されていました。基礎年金のウェートが六で報酬比例部分の方が四、四対六のバランスのまま小さくなってくる。
ところが、現行を財政検証をしたところ、マクロ経済スライドが非常に長期に利いて、特に基礎年金については長期に利いていって、このバランスが五対五まで変化してしまう。要するに、基礎年金の方がいびつになって小さくなるということが判明した。これは年金の、特に国民年金のデフレ調整能力に課題があったということになります。
そこで、このまま放置しておくと、二〇四〇年にリタイアをする氷河期世代を直撃するルートに入ってきていますので、この直撃を回避するために、積立金を活用して早めに基礎年金へのマクロ経済スライドを終了させるということで、それで四対六のバランスを確保できるということになります。
エッセンスを言うと、報酬比例部分を少し薄くして、基礎年金という下の方に渡す。上半身のエネルギーを少し下半身に、栄養の方に回す、こういうことでございます。
さて、五ページの方に行きますと、基礎年金が仮に放置して下がるとどうなるかということになりますけれども、生活保護が最低生活保障を握る要石だということになれば、基礎年金というのは、それを支える、その上に立つ心柱のような状態になっているということで、生活保護の前で、ほとんどの方が基礎年金を持っていますねと、障害、遺族、老齢、全て基礎年金でまず押さえた上でセーフティーネットが出てくるということになりますが、基礎年金の給付水準三割低下を放置すると、障害基礎年金、遺族基礎年金、共に全て下がってしまうということになってしまうわけです。
また、基礎年金が、あるいは年金が地域にどういう影響を与えているのかというのを見ますと、六ページの方の下段に出ていますけれども、高齢化が進む地域であればあるほど、地域経済に占める年金のウェートが大きいということで、地方であればあるほど、年金の給付引下げは大きな影響を受けるということも確認できるということです。
七ページ目の方に入りたいと思います。これは、基礎年金を縦に取って、横に年齢を取って、六十五歳から以前にもらうと繰上げ受給、遅くもらうと繰下げ受給ということになりまして、現行水準が三六・二%、所得代替率がある。これが何もしなければ二五・五まで下がるということで、三割下がることになりますけれども、この一〇・七%ポイントの下がり方をどう補っていくのかということで、四十五年加入だとこれは四%回復できる、二百万人適用だと一・七%回復できる、二百万人プラス四十五年加入で五・七%の回復ができるということで、部分的な回復しかできないわけですけれども、マクロ経済スライドの短期化によって七・七%まで回復できるということで、短縮と二百万人の適用拡大で合計九・四%まで回復できるので、おおむね、一〇・七%のかなりの低下分は回復できる、こういうふうに思います。
ただ、これについて三つの壁があります。一つは、積立金の流用ではないかという誤解であります。これは、国民年金は徴収の口座でありまして、国民年金の中で一号、二号、三号という形で徴収される。給付の口座が基礎年金でありますので、この案は、徴収の口座である国民年金に厚生年金からお金を入れるという話ではなくて、給付の口座である基礎年金に、国民共通の基礎年金に積立金を一部入れるということでございますので、流用には当たらないと判断をしております。それから、切替えの時期に一時期、氷河期世代よりも上の世代がやや年金が沈む時期がある、これをどういうふうに対応するか。それから、年金の給付水準を引き上げると国庫負担が必要になってくるということをどう解いていくのかということがあろうかと思います。
九ページ目には、この誤解というところを少し詳しく書いておるところでございますけれども、国民年金イコール基礎年金イコール自営業年金という誤解がどうもあるようでございますけれども、下の方の十ページにありますように、基礎年金というのは、人生の様々なキャリアの中でためてきた年金の口座にお金を入れるということを今回意図していますので、一〇〇%一号の人がいるわけでもないし、一〇〇%二号の人がたくさんいるわけでもない。それぞれ極端な自営業と極端なサラリーマンというのは少数派で、ほとんどの方が、厚生年金と国民年金の時代があった、組み合わされたキャリアを持っている。このキャリアを持った人たちがつくった束が基礎年金という勘定になって、そこにお金を入れるということでございますので、決して流用には当たらないと思います。
それから、十一ページでございますけれども、氷河期世代のことを世代ガチャとも言うこともございますけれども、意図せずに、あと、御本人たちの御責任でもないにもかかわらず、非常に厳しい現役時代を過ごして、恐らく年金もかなり厳しいものになってくるのではないか。これが三割下がってくるということは、生活保護の増加も含めて厳しいことが予想される。そうなるならば、やはり、上の世代で余裕のある世代が、氷河期世代より以降の世代のために、少し我慢をしていくというのも社会のあるべき姿ではないか、不幸な世代を、社会でそのリスクを分散するということも年金の役割ではないか、こういうふうに思っておりますので、非常に下がる方がいればケアをした方がいいだろうとは思います。
最後に、十三ページでございますけれども、年金制度改革というのは、手堅い前提で、タイミングを逸しない改革が必要である。政治的な理由で改革の重要な部分が延期される、対応できないということになりましたら、世代間の負担と調整が失敗して、年金への信頼を失ってくる。これこそが高齢化以上に賦課方式の年金の危機ということでございますので、この辺を私は、先生、皆様ですね、この適切な議論をやっていただきたいなと思っております。
短期的な、情動的な方にどうしてもSNSなどを見ていると話が行ってしまう傾向もありますけれども、先生方におかれましては、長期的な視点から、根拠に基づいて、論理的で実行可能な選択肢を議論していただきたいと思います。
まとめて言いますと、やはりこの底上げというのは必要かつ早急に対応すべき政策テーマだと思っております。
以上で、私の最初の説明とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
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本日は、こういう機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
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