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大泉淳一 ·一般社団法人選挙制度実務研究会会長

衆議院政治改革に関する特別委員会(2025-02-20)での発言

第217回国会 ·第第3号号 ·4,298字
○大泉参考人 選挙制度実務研究会の大泉淳一と申します。  本日は、参考人としてお招きいただき、ありがとうございます。  私は、一昨年夏まで第二特別調査室におりましたが、現在は、選挙制度実務研究会において、選管の経験者らとともに、会員の選管からの質疑に答えたり研修を行ったりしている立場におります。  本日は、先ほどから取り上げられている題材を中心にお話をしてまいりたいと思います。  まずは、選挙運動用ポスターについてでございます。ポスター掲示場が公選法に最初に出たのは昭和三十七年で、三十八年からはそこに一枚しか貼れなくなりまして、三十九年に恒久化されて基本的には現在に至っております。  選挙運動用ポスターには、掲示責任者及び印刷者の氏名、住所、これの記載義務はありますが、その他のポスターの記載内容については、刑法、風営法、迷惑行為防止条例などの別制度による規制の対象になるほかは、公選法においては制限は規定されておりません。これは、選挙公報などと同じく決められた枠内ではありますけれども、その中で各候補者が当選を争うために自由に競う場となっていただきたい、そういうことをつくるというような基本的な考え方によっていると思います。  しかし、昨年の都知事選では、この自由さを逆手に取られて、選挙に関係のないポスターを貼る場となってしまいました。これをいかに防ぐべきか。都知事選では風営法や迷惑行為防止条例などにより対処がされましたけれども、公選法でどうすべきか。  例えば、ポスターを見て、百人の人が百人とも選挙に全く関係ないポスターだと認識できればポスターは排除できるんでしょうけれども、だんだん九十九人、九十八人と減っていって、八十人、七十人ぐらいになっていったときに、ポスターの中身によっては価値判断が異なってくる。切り分けが難しくなります。片方で表現の自由というものがございますので、誰がどこまで判断するのかという難しい問題が生じます。  かつて、ポスターの中身について選管が判断し、訂正させたという事例がありました。このポスターは規格オーバーで違反をしていたという点もあったんですけれども、さらに、このポスターに記載したスローガンの内容について市民から苦情があったり、あるいはスローガンに関する事項を所管する市の担当課から善処を求める意見が出されたりしていたために、選管は、スローガンの文言、すなわちポスターの内容についての取消し、修正を求めました。候補者はこれに応じて対応したようですが、これの事件の判決が参考資料にお配りしています一ページ目の判決でございます。  この判決はこうした状況に対し、政見その他の主張に関係するポスターの記載内容について選管がその当否を審査し、その取消し又は修正を命ずるなどのことは、選挙管理委員会が候補者の政見その他の主張そのものに介入、干渉することになり、ひいては選挙の自由公正を害するものであるとして、選挙無効という判断をしました。  この判決は公選法の撤去命令についても言及しておりまして、撤去命令というのは資料の二ページ目に記載しましたけれども、判決では、ポスターの枚数、規格、掲示場所など、撤去命令もポスターの掲示が形式的事項に関する定めに違反する場合になし得るものとされているにすぎないというふうに書いてありまして、このように、最高裁はポスターの内容への選管の関与について極めて限定されるべきと考えているのではないかと思われる節があります。  二番目に、都知事選挙でございましたポスターの枠の不足についてでございます。  これについては、参考資料の三ページ目ですけれども、そこで先日出ました判決を載せております。都選管は掲示場のへりに外周区画というものを設置し、四十九番以降の方については外周区画を割り当てたということで判決が言っておりまして、ある意味エア掲示板みたいなことなんですけれども、これを割り当てたからというようなこと、告示当日にならないと立候補者数が確定しないことなどから、この判決では選挙の公平を害するとまでは言えないと判断しております。  ただ、前例としては、平成七年の参議院選挙では七十六人分の枠を作って立候補者数七十二人という実績もあります。  候補者に公平に戦ってもらうという意味ではちょっと疑問符かなと思います。判決を見て、少しぐらい足りなくてもいい、エア掲示板でいいというようなことに発展することを恐れます。  ただ、判決の結果、選挙のやり直しをしないという点では、それは判決のとおりだと思います。公選法には選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある場合に限り選挙無効となるというふうに規定がありますので、この面から見れば、得票差などを見て、当然だと思います。  次は、二馬力選挙運動について申し上げたいと思います。  自らの当選を目指さずに立候補している候補者がいたかというと、過去にもありました。参考資料四ページに、かつてこんなこともありましたという例を掲げさせていただいております。ただ、今回は、これに加えて他人の選挙を応援することを公言して出てくる候補者が現れました。  これについては、二馬力選挙というのは理屈では許されないことは当然だと思います。それは分かるんですけれども、永田参考人からもありましたとおり、具体的にどの行為が駄目なのか不明な点もあります。  そこで、今の法律でもどういう対応をするかということでございますけれども、さっきの最高裁判決ではないですけれども、形式的に違反していれば取締りは可能と思われます。例えば、A候補を応援すると言ったB候補がAのビラにBの証紙を貼ったとか、こういうことでしたら、形式的に違反しているということは分かると思います。ただ、Bのビラのような体裁を取りながらAを応援しているような、ぎりぎりを追求されるような内容になりますとこれはどう判断するのか。また、証拠が残りにくいものについてもなかなか判断が困難かもしれません。  そもそも二馬力選挙運動というものが具体的にどのような運動を念頭に置いているかということになりますけれども、もしもその候補者が実は当選を私も目指していますと言ったらどうなるのかとか、そういうような話への対処も含めて規制を行うのであれば、具体的な違反事例が分かるようにして立法されるのが対策になるのではないかと思います。  先ほどの最高裁判決によれば、選管による実質判断は難しいということだったんですけれども、判断するのは誰になるのか。例えば、インターネット選挙運動のときにございましたけれども、各党協議会がガイドラインのようなものを作られております。ガイドラインを作られておりまして、そういった方法も参考になるのかなと思います。ただ、そうしたとしても、解釈が分かれるような事例について誰が具体的に当てはめの判断をするかという問題は残ると思います。  それから、SNSの選挙運動についての話もございました。  インターネット選挙運動解禁時の議論、これについては、参考資料の四、三ページ目ですけれども、にも当時の議論をまとめたものを載せました。虚偽事項が流布されたとき等には公選法の虚偽事項公表罪、誹謗中傷などについては刑法の名誉毀損罪、侮辱罪といった、既存の罰則で対応するというのは当時の基本線でございました。  SNSで本当に選挙運動をしたい人を排除することは、これはよくないことでありますけれども、選挙関係の話題で注目を集め、これに対して、先ほど織田参考人からもありましたけれども、お金が動いているというようなことであれば、それにより収益を得るというのであれば、本来の選挙運動からかけ離れているように思います。これをSNSの内容によって迅速に判断するというのは、これも先ほどありましたとおり、なかなか難しいことだと思います。  あえて言えば、公選法の建前からいうと、当選を得又は得しむるための財産上の利益の供与、交付は選挙の公正をゆがめるという意味で買収罪を構成しております。もし先ほどのようなSNS上の金銭授受など真偽不明のものがあるというものが仮に選挙の公正をゆがめるという判断あるいはその証明ができるのであれば、その手法をヒントにして何らかの手だてはできないのかなと思います。この観点からのアプローチであれば、SNSの内容やその是非の判断ということに踏み込まずにやるのがいいんじゃないかと思います。  最後に、品位保持規定についてお話を申し上げます。  現在あるのは、選挙公報と政見放送の品位保持規定がございまして、罰則は、特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をした者に対してのみ適用されます。それ以外については、公序良俗違反になったとしても罰則はかからない。ただ、やはりこれも、先ほど申し上げた百人のうち九十九人が公序良俗違反と判断するような場合ですけれども、八十人、七十人となった場合に、価値判断が違ってきた場合に実質判断しなきゃいけないということになります。  この辺については、政見放送の品位保持規定について、かつてNHKが政見放送の一部を、差別用語ですけれども、これを削除して放送し訴えられたことがありまして、その最高裁判決は参考資料の二ページの二で述べているとおりでございます。賠償請求を棄却しました。削除されたような言動は法的保護に値しないといって賠償を棄却しました。棄却はされましたが、この裁判に要した期間が約七年で、大変な労力を要したものでございます。  ポスターはどうかというと、先ほどの一の判例から見て、選管に内容を審査させるのは判例上なかなか問題があるのではないかというようになると思いますけれども、一方、実効性を持たせようとして行政権などの関与を強めていけば、そのときはいいんだと思います。しかし、時を経て、権限を持った者がこれは使えるといって強権発動したり、そうでなくとも周りの人が忖度して過度に権限を行使するというおそれがあったら、民主主義国家として厳しくなっていくんじゃないかというふうに思います。我が国の戦前とかあるいは一部の諸外国を見ておりますと、民主主義の脆弱性という言葉が浮かばざるを得ません。  最後に、長く制度づくりに携わってきた者としてそういうことを申し上げて、意見を終わりたいと思います。どうもありがとうございます。(拍手)

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