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小島勇人 ·一般社団法人選挙制度実務研究会理事長/総務省管理執行アドバイザー

参議院憲法審査会(2025-05-07)での発言

第217回国会 ·第第3号号 ·5,570字
○参考人(小島勇人君) 一般社団法人選挙制度実務研究会理事長の小島勇人でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  本日は、このような憲法審査に係る大変重要な場で御説明の機会をいただきましたことに感謝申し上げる次第でございます。  私は、これまで、総務省選挙部の御要請により、平成二十八年の参議院議員通常選挙を控えて発災した熊本地震、昨年一月の能登半島地震、豪雨災害の被災地に総務省選挙部の担当の方とともに現地に赴き、状況を把握し、選挙の執行に向けた助言等を実施してまいりました。  本日は、とりわけ象徴的とも言えます、私が川崎市選挙管理委員会事務局長として体験いたしました平成二十三年の東日本大震災における支援の状況につきまして御説明をさせていただきたいと思います。  本日の御説明に関連する資料につきましては、お手元に御配付のとおりでございますが、資料一、都道府県選管連合会発行の「選挙」という月刊誌に掲載いたしました、私が事務局長を務めておりました川崎市選挙管理委員会事務局が行った陸前高田市への選挙支援の記録でございます。資料二は、被災地への人的支援に当たっての留意点をまとめたものでございます。資料三は、主な当時の新聞記事でございます。  私は、これから御説明申し上げます東日本大震災における岩手県陸前高田市へ、その年の九月まで延期されました岩手県知事選挙、同県議会議員選挙、陸前高田市議会議員選挙の事前準備と選挙の執行支援のほか、福島第一原発の事故に伴って福島県会津美里町に避難しておりました楢葉町への投票事務、開票事務などにつきまして、都道府県選挙管理委員会連合会に協力をして支援を行いました。  御案内のとおり、千年に一度と言われるような、東北地方から関東地方を含めた広域にわたり大津波等により未曽有の被害をもたらした東日本大震災には、原発の事故のものも含みますけれども、平成二十三年三月十一日に発災したことは記憶に新しいと思います。発災の当時、私たちは、目前に迫った四月十日の統一地方選挙を一か月後に控えて、市区選挙管理委員会ともその執行準備を急ピッチで進めていました。  発災直後より、統一地方選挙の執行について、市民その他いろいろな方面から選挙管理委員会に向けられた意見、苦情、サジェスチョンは、被災地の大変な状況を見たときに復興復旧を最優先とすべきではないかというような意見を多く私たち川崎でも受けたところでございます。  いろいろな意見、苦情等を受けながらも、私たち川崎市選挙管理委員会としては、とにかく目前に迫った自らの四月十日の選挙を無事やり遂げて、その上で、恐らく平成七年の阪神・淡路大震災当時のように延期になるだろう被災地の選挙としても支援をどうしてもしていこうと、そういう強い機運が高まっていたところでございます。  仮に、統一地方選挙全体が延長になりますと、これ全国が延長になるわけですので支援ができないということになるわけでございますが、何としても私たちは四月十日には終えたいと、そういう一心で選挙の執行を準備して加速していったところでございます。  そのような中、総務省選挙部では、四月十日及び二十四日に執行される統一地方選挙について、これも迅速な対応であったと思いますが、被災地の復旧復興に全国から派遣された自衛隊の隊員の方々、警察官、消防官の方々の不在者投票の事務に関する支援について、総務省での対応に当たるため、川崎市から不在者投票事務に精通した人員を派遣を行ったところでございます。  これと並行して、延期された被災地での選挙に係る選挙執行支援に関するスキームをどのようにすべきかという検討に入ったという報に接しました。その後、総務省から、過去の災害等で既に行われていた大きいスキームで市町村職員を被災地の市町村に派遣しているものを参考にして選管職員を派遣できないか、この場合は派遣元は指定都市選挙管理委員会連合会では対応できるのか、対応できるとした場合、その窓口は指定都市選管連合会が適当なのかどうかという種々な意見を求められまして、その過程で具体的な支援事務の内容について俎上に上るという状況になってきました。  また、指定都市選管連合会においても、各都市の委員長ないし委員の集まる会議におきまして、被災地選管より支援要請があったときは積極的に支援していこうという申合せを行ったということでございます。  以上の要請がありまして、岩手県、宮城県、福島県の被災団体、自治体における統一地方選挙について臨時特例法が制定されまして、平成二十三年九月二十二日までの期限で延期が可能になったということでございます。  これに伴い、岩手県は、県内の被災自治体と協議、調整を行った結果、大津波等による被害が特に甚大であった陸前高田市と大槌町について、選挙事務に精通した他都市職員による選挙執行計画の段階から長期支援があれば、県知事、県議会議員選挙の選挙とともに地元の自治体選挙も執行することが可能であるという判断をしまして、総務省選挙部に対しまして、これらの二つの自治体への応援要請の派遣について要請が行われたということでございます。この要請を受けた総務省から、都道府県連合会、指定都市選管連合会等に派遣の打診がなされたということでございます。  既に私ども川崎市としては必ず支援に行くという意思を表明しておりましたので、総務省の動き等を含めて、直ちに市長、副市長、市選挙管理委員会に経緯や状況を説明して、その上で、陸前高田市への選挙事務に係る人的支援として、平成二十三年六月二十七日から九月二十二日までの約三か月間、選挙事務に精通した市職員、選管事務職員を四人ずつ二週間交代で派遣することに決定をいたしました。  私自身も五回にわたり現地入りしましたけれども、その際、当時の総務省選挙部の管理課で担当しておりました、現在熊本県知事をやっておる木村敬氏も何回か一緒に現地へ入ったということでございます。当時の川崎市長は自治省出身の阿部孝夫氏でしたが、この市長への説明の際、市長から、できることは何でもやってくださいと、金の心配しなくていいと、そういうお言葉をいただきました。市長からいただきましたそのお言葉により、心置きなく、心配なく、何の心配もなくですね、支援に邁進することができたということでございます。こういった場面での派遣元のトップの心意気、非常に重要であると私は当事者として感じたということでございます。  また、その後の要請に基づき、平成二十三年九月二日から同月十二日までの間、具体の執行に当たって、私ども川崎市の区選挙管理委員会から七人の職員を派遣をしたということでございます。  当時の陸前高田市の執行体制でございますけれども、総務部長兼総務課長が充てられている選管事務局長がおります。そして、総務課の課長補佐が充てられている事務局次長の役割の事務局長補佐と、それから専任の選挙係長さんが一人いて、その係長が選挙執行事務のおおむね全ての部分をコーディネートしながら、十数人の選管併任の職員をマネジメントして選挙を執行していたということでございます。併任の方々は、グループごとに担当する分野を持ちながら、責任感を持って仕事に当たっていたということでございます。  平成二十三年六月から現地に入った川崎市職員、法律知識、それからこれまでの豊富な実務経験を基に、陸前高田市の選挙係長を補佐しながら、併任職員のそれぞれの分野の事務のサポートを含め、側面から補佐をしたということでございます。  大きく基本的な仕事は、とにかく全ての書類、物品はなくなっています。全てなくなっています。ですから、紙の書類は辛うじて委員さんが保管したのありましたけれども、まずそういった選挙執行に必要な書類のデータ化、それが最優先ということで、もう日々、派遣した職員はパソコンに向かってデータの復興に努めたということでございます。  それからもう一つは、陸前高田市では三つ一遍の選挙の執行って初めてです。知事選挙、県議会議員選挙、市議会議員選挙、これ三つの選挙をやるということは初めての経験であったということでございます。川崎市ではもう当たり前で、四つ一遍も五つ一遍もやっているわけですけれども、地方に行きますと、二つの選挙はともかく、三つ、四つというのはなかなか経験がないということでございました。  それからもう一つは、いろいろ復興しなければいけないものがありました。失権者名簿の復旧、他都市への照会、それから船員の選挙人名簿登録証明書の発行、不在者投票施設への周知、各証票の作成と選挙公報の事前審査、立候補届出関係書類の事前審査、そういったものがありました。  これらに加えて特に重要だったのは、期日前投票システム、当日投票システムを三選挙同時執行に使えるように改修する作業がございました。これらのシステムは従前、陸前高田市の職員が開発したものを使っておりましたけれども、開発された職員の方は残念なことに津波でお亡くなりになりました。そして、細かいシステムのことを知っている職員は誰もいない状況になりました。そして、これ、システム業者で担当していたSEさんもお亡くなりになりました。  このシステムにつきましても、本市から、川崎市から派遣した職員の一人がシステムを担当しており、かなり詳しかったことから、何とか使えるように実は改修して、期日前投票、当日投票に無事使うことができたということでございます。こういう派遣のときに、選挙関係等のシステムの知識を有する職員の派遣が不可欠であると、そういうふうに痛感したということでございます。  それから、併任の職員の方が担当せずに選挙係長が直接担当する候補者関係、立候補届出受理関係の事務ありましたけれども、これらの事務は全面的に本市の派遣職員からサポートして行いました。それから、執行経費の計算、必要物品の手配、そういったものを全てやらさせていただきました。  それから、お手元に資料二というのがございまして、被災地への選挙執行事務支援に係る人的支援の留意点というのを整理してございます。細かいことここでは御説明いたしませんけれども、いずれにしても、現地へ行って主体はどこかということになりますと、主体はあくまでも現地の選管職員です。ですから、あくまでサポートに努めるということ。あくまでもよその、ちょっと例えは悪いですけれども、よそのおうちに行ってお仕事するわけですから、勝手にたんすを開けたり戸棚を開けることできません。いずれにしても、そういった現地との意思疎通、それからある意味での信頼関係、そういったものが必要になるということでございます。  細かいことはここに書いてございます。この資料は、私が今までの経験を整理したものです。ですから、大変これから参考にしていただければいいかなというふうに思っているところでございます。  いずれにしても、派遣する側も派遣を受ける側も初めてのことということになりますので、相互の協力、信頼関係の構築、言わば二人三脚によって、また総務省の的確かつ丁寧な助言等により、この陸前高田への支援は無事終えることができたということでございます。  冒頭述べましたけれども、千年に一度とも言われるような大震災、大津波により、選挙執行に必要な人、物に関する全てのものを失った被災地陸前高田市で、同市選管事務局と川崎市選管事務局と二人三脚で成し遂げた選挙の実行ということでございまして、本市の側からできるだけ詳しく記録として必要な資料を含めて残し、今後あるかないか、また、ないかもしれない、あるかもしれない、こういう事態に対処するため、幾ばくかでも全国の選管事務局諸兄の参考となればと思い整理したものが資料一ということでございます。  資料一には実は三と四の続編がございまして、毎日何をしたかという記録、行って、毎日、三か月間毎日何をしたのかということの記録を全部資料として残してあるということでございます。  最後に申し上げたいのは、支援に当たって、意識の高い選挙事務にたけた人材の育成、それから、このためには、支援する側となり得る全国の市町村選管の組織とマンパワーの充実を図る、そして、市町村選管、これも大変重要なことだと思うんですが、市町村選管への技術的助言をする都道府県選管の現場実務に対する理解、こういったものが必須であるというふうに思うわけでございます。  地震等の災害の時期、場所、被害の状況は千差万別でございます。固定したマニュアルの策定はなかなか難しいと思いますけれども、先ほど来、うちの会長の方からも御説明がありましたとおり、公職選挙法、災害時の管理執行に関する選挙人名簿の再調製の問題ですとか、繰延べ投票、繰延べ開票、繰延べ選挙会、繰延べ選挙分会、ポスター掲示場を設置しない場合、政見放送や経歴放送を中止する場合、選挙公報の発行を中止する場合など種々な規定がございます。このほかにもたくさんあるわけでございます。  いずれにしても、大規模災害等における選挙の執行に係る政府、都道府県選管、市区町村選管の連携による協力体制と、民主主義の根幹である選挙の管理執行に精通した人材の継続した育成が是非とも必要であろうというふうに思っております。  東日本大震災による被災地陸前高田市における選挙区の管理執行事務への人的支援につきましては以上であります。

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