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植村洋司 ·全国連合小学校長会顧問

参議院文教科学委員会(2025-05-27)での発言

第217回国会 ·第第9号号 ·3,585字
○参考人(植村洋司君) 失礼いたします。全国連合小学校長会顧問の植村でございます。二年間、会長職として中央教育審議会委員を務めさせていただきました。本日は、貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。  私は、教職三十八年間、小学校の教員などとして勤めてまいりました。行政経験を経て、校長としては二校十年間の経験があります。本日は、これまで長年勤務してきた小学校の教員そして校長という立場から、今回の法案について、僣越ではありますが、意見を述べさせていただきます。  それでは、資料に従いましてお話を進めさせていただきます。  まず、初めにということで、二点お話しします。  一点目は、答申の副題についてでございます。  ここに重要なキーワードが込められております。三つあります。一、全ての子供たちへのより良い教育の実現を目指すということ、二、教師は学びの専門職であるということ、三、今大事なことは働きやすさと働きがいの両立であるということでございます。  二点目は、教師の立場、また校長の立場から、教職の魅力について話します。  教育は、教師と子供たちとの全人的な触れ合いの中で、人格の完成を目指して、一人一人の子供たちの可能性を引き出し、成長を促すという深遠な営みです。教育は子供たちの未来を育むもの、未来への投資です。子供の可能性は無限大であり、その可能性の開花を支援するのが教師の仕事です。そのプロセスは山あり谷あり、子供たちとの葛藤の日々であり、汗と涙の毎日でございます。それでも、子供たちの成長を目の当たりにでき、成長を実感できるすばらしい職です。苦労も多いですけれども、その分、いや、それ以上にやりがいに満ちた仕事であると考えております。  それでは、二、主な内容の(1)について話します。  答申のポイントを簡潔に言えば、目的は全ての子供たちへのより良い教育の実現であり、教師の働きやすさと働きがいの両立です。そのために大事なことは、三つの柱を一体的、総合的に推進するということです。  まず一点目の柱、学校における働き方改革の加速化について述べます。  ①、課題。教育委員会、学校、教師の間で取組状況や意識に差があるということです。その解消のために、②、教育委員会と学校が果たす役割を明確にすることが必要です。  具体的には、教育委員会としては、学校における働き方改革の実効性を向上させるための実施計画の策定や実施状況の公表が必要です。このことは、教育委員会自身が取り組むべきことについて明確となり、地域、保護者の理解や協力を得ることにもつながります。特に大事なことは、③、取組状況の見える化とPDCAサイクルを構築することです。教育委員会においては、学校、教師が担う業務に係る三分類をより精緻に明確化し、取組状況を数値等で見える化することが必要です。学校としては、教育委員会の指導助言の下、学校、教師が担う業務に係る三分類を徹底するなど、具体的に実行力を発揮していくことが大事です。  また、PDCAサイクルをしっかりと機能させることも急務です。教育委員会がリーダーシップを発揮して、学校に全て任せるのではなく、自分事として働き方改革の実施計画を定め、取組を実施し、その実施状況を公表し、改善につなげていくことが必要です。教育委員会と学校が連携し、令和十一年度までに教師の平均の時間外在校等時間を月三十時間程度に縮減することを目標に、国、教育委員会、学校が、それぞれの権限と責任に基づき取り組むことが必要だと考えます。さらに、学校現場において教師の負担が大きいのが保護者対応です。過剰な苦情や不当な要求等の難しい事案について、行政の責任で対応する体制の構築が急務です。また、教師のメンタルヘルス対策も急務でございます。  次に、二点目の柱、学校の指導、運営体制の充実について述べます。  ①、課題は、チーム学校を実現するための組織的、機動的なマネジメント体制の更なる構築です。また、教師の持ち授業時数が特に小学校において多いことも大きな課題です。  ②、主務教諭の必要性。新たな職として主務教諭を創設する仕組みは意義があると考えます。東京都においては平成二十一年度から主任教諭制度が導入されており、一事例としてお話をさせていただきます。  東京都の主任教諭は、学校運営上の重要な役割を担い、主幹教諭の補佐、人材育成も担っています。校長の立場から現場の声を拾うと、次のようなことが挙げられます。教諭にとっては、八年目に主任教諭選考を受験し合格することがキャリアアップの明確な目標となり、道しるべとなっている、このタイミングは、教師として一定の仕事を覚え、若手のサポートもできる良い時期であり、モチベーションアップにつながる、組織としても主任教諭に○○主任という役割を与え、更なる力量アップにつながる、あわせて経営参画意識を高め、ひいては管理職候補者育成にもつながるなどです。  あわせて、給料表上に新たな級を創設し、処遇改善と結び付けることは、その職務と責任に見合った適切な処遇を図るために意義があります。各種手当にも反映すると伺っております。ただし、職務給の観点からは教諭の職務に変更ありませんので、現在の教諭の給与を引き下げられることがないように国庫負担上の適切な措置をお願いいたします。  ③、教職員の定数改善と支援スタッフの配置拡充の必要性について述べます。  定数改善については、小学校では教科担任制の充実が急務です。また、中学校三十五人学級について、小学校で成果を上げていることから、指導の連続性、継続性からもその実現は不可欠です。支援スタッフの配置拡充は、特に副校長、教頭の事務負担の軽減のために不可欠です。  最後に、三点目の柱、教師の処遇改善について述べます。  ①、課題は、人材確保法の趣旨を踏まえた処遇が確保されていないということです。  具体的には、人材確保法の完成時、昭和五十五年には一般行政職との優遇分が約七%だったにもかかわらず、直近は一%にも満たない状況にあると承知しております。教師の業務の多様化、複雑化、困難化が増大する中、約七%の優遇分の確保は必要です。  次に、②、教師の職務の特殊性について述べます。  教職の性質は全人格的なものであり、教師は目の前の子供たちに臨機応変に対応しなければならず、教師自身の自発性、創造性に委ねるべき部分が大きいと考えています。例えば、授業準備や教材研究等の教師の業務が、どこまでが職務で、どこからが職務でないのかを精緻に切り分けて考えることは困難です。ここに一般行政職等とは異なる教職の職務の特殊性があると言えます。職務の内外を精緻に切り分けて考えることは極めて困難です。  以上を踏まえまして、③、給特法の意義と必要性について述べます。  結論から申し上げますと、教師の職務の特殊性を踏まえ、勤務時間の内外を包括的に評価し、その処遇として教職調整額を本給相当として支給する仕組みは、現在においても合理性を有していると考えます。  仮に給特法を廃止し、時間外勤務手当化した場合には、どのような業務を時間外勤務として認めるのかという問題が生じます。もし概念上は切り分けられたとしても、教師の個別具体の業務について管理職が日々、毎日、一人一人の業務について適切に判断することは実務上現実的ではないと考えます。また、学校現場の実情を踏まえ、効率よく正規の時間内に仕事を終わらせると時間外勤務手当が支給されず、それができなければ時間外勤務手当が支給されるとなれば、教師間で不公平感が生じます。  したがって、人材確保法を堅持し、その趣旨を踏まえた処遇改善を進めていくことが大事であると考えます。具体的には、昭和五十五年当時の一般公務員との優遇分約七%を確保すること、結果として教職調整額の率は少なくとも一〇%以上とすることが必要であると考えます。  なお、基本的な考え方として、単に処遇改善すればよいということではなく、学校における働き方改革の更なる加速化を引き続きしっかりと進め、実現しつつ、処遇改善もしっかりと実現し、セットで一体的に進めていくことが大事であると考えております。  終わりに、本法案の実現により、学びを通して人が成長する教育という営みそのものに対するリスペクトがおのずと生まれる社会であることを期待いたします。  結びに、現在、未来の全ての子供たちへのより良い教育の実現のために、国民の皆様からの御理解と御支援を心からお願いいたします。  以上でございます。御清聴、誠にありがとうございました。

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