○梅村みずほ君 日本維新の会の梅村みずほです。
私は、会派を代表し、ただいま議題となりました情報処理の促進に関する法律及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案について、経済産業大臣に質問いたします。
グローバリズムはほぼ死んだ、自由貿易もほぼ死んだ、多くの人がまた復活すると願っているが、私はそうなるとは思わない。この言葉は、二〇二二年十二月六日に、世界市場を独走する半導体ファウンドリー、TSMCの創業者であるモリス・チャン氏から発せられたものです。バイデン大統領も列席するアメリカ・アリゾナ工場開設式典、このおめでたいはずの場での発言の二か月前には、アメリカ政府から中国に対する極めて厳格な、まるでWTOを物ともしない半導体関連製品の輸出管理規制が発表されています。
今でこそトランプ関税が全世界を震撼させていますが、その実、WTOと整合しない対外政策はバイデン政権時から既に行われていたことなのです。
アメリカのベストセラー作家であるクリス・ミラー氏が著書「半導体戦争」にて半導体は世界経済だけでなく軍事バランスの行方も左右すると指摘するように、まさに米中が半導体という戦略物資をめぐる覇権争いを展開する中、アメリカの政策が中国の半導体産業を苦しめ続ければ地政学的に台湾有事のリスクが高まると指摘する声もあり、日本も独自のサプライチェーン強靱化へ向けて半導体産業に力を入れていくことは当然の流れであります。
今回の法案と世界の軍事バランスについて、関連性はあるでしょうか。また、台湾有事によって中国がTSMCの工場停止や供給停止の手段を取った場合、世界経済全体に大きな混乱と打撃がもたらされるものと想定しますが、本法案と台湾有事との関連性をお答えください。加えて、万一の場合、TSMC熊本工場にはどのような影響があると想定されているか、お伺いいたします。
いずれにしても、ロジック半導体のパイロットラインは機動的にパワー半導体用に転用することはできず、現状でディール外交のカードを持たない日本が二ナノの最先端半導体を持つことは大きな意味もあろうかと思います。翻って、世界的サプライチェーンの停止を想定した際に、今力を入れるべきは果たしてそこなのかどうかは意見が分かれるところでしょう。
むしろ、半導体製造の千を超える工程で重要な役割を果たし、我が国が高いシェアを誇るコータ・デベロッパや熱処理装置、洗浄装置などの高精度な半導体製造装置、又はシリコンウエハー、レジスト、高純度薬液等の優れた半導体部素材に集中的な投資を行い、各国の対日依存度を高めることこそ、国家としての現実的かつ持続可能な戦略ではないでしょうか。
政府は、この分野における国際競争力をどのように位置付け、どのような戦略を講じようとしているのか、伺います。
特に、波長十三・五ナノの極端紫外線を使用した露光装置の登場によって、オランダASMLに圧倒的シェアを許してきた露光装置市場を取り戻すため、何らかの仕掛けが必要と考えますが、いかがでしょうか。
一九八〇年代には世界を席巻した日の丸半導体がその影もなく凋落してから久しい今、政府は、本法案にて創業間もないラピダス株式会社を新たなテクノロジー産業隆盛の旗手と狙いを定め、巨額の投資を設計しました。現状、ラピダスへの民間出資額は七十三億円にとどまり、その規模は本当に国家の威信と日本の産業競争力復活の命運を懸けた一大事業を担うにふさわしいものであるのかといぶかしむほど消極的です。
政府として、このように出資が伸び悩む理由をどのように分析しておられるのでしょうか。また、将来的に民間が出資に値すると判断するためには、どのような要素や環境整備が必要だとお考えでしょうか。お尋ねいたします。
ファイナンスについて伺います。
政府は、令和七年度から十二年度にかけて公債を発行し、エネルギー対策特別会計から資金を繰り入れる形で財源を確保するというスキームを取るとしています。しかし、このスキームは、ややもすれば、平成十八年の行政改革推進法や平成十九年の特別会計法で示された特会縮減の趣旨と逆行する可能性があります。
政府は、この点について、どのように法令上の整合性を担保しておられるのでしょうか。事実上の財政の抜け道になっているのではありませんか。資金を好きなときに好きなように使いたい役所の都合で財政を複雑化、肥大化させるような仕組みになっているとは思いませんか。御見解をお伺いいたします。
本法案では、IPA、独立行政法人情報処理推進機構の業務に情報処理分野の人材育成が追加されます。しかし、IPAは人材育成の専門機関ではありません。人材派遣会社を通じた外注により多額の委託費が抜き取られるような、言わば利権構造に陥るリスクも見え隠れします。
真に人材の能力を育成し、適材適所で働けるようにするために、政府としてどのような評価・監督・フォローアップ体制を考えておられるのですか。まさか特定の人材派遣会社をもうけさせるために一部事業を丸投げするということになりはしないでしょうか。お答えください。
また、IPAは本来、金融審査の専門機関でもありません。本法では、IPAの新たな業務に高度な情報処理設備を導入する会社に対して必要な資金に係る社債や借入れに係る債務の保証を追加するとしていますが、大丈夫でしょうか。債務保証という重い責任を担わせるに当たり、その適正性の判断基準や審査体制、また不良債権リスクへの備えはどうなっているのか、明確な説明を求めます。
続いて、熊本におけるTSMC進出の例から質問いたします。
優秀な人材がTSMC関連事業者に流れる一方で、一部中小の地元事業者は人材難に苦しみ、賃金上昇による人件費増加が経営を圧迫していると聞きます。雇用が促進され、地域全体で賃金が上昇することは本来好ましいことではありますが、急激な変化は周辺の民間サービスを圧迫していく可能性もはらんでいます。ラピダスが拠点とする千歳の周辺でもそうした状況が起こり得ると考えますが、政府として地域経済のバランスにどのように配慮し支援していくのか、お伺いいたします。
税と社会保障が重くのしかかり、働いてもなかなか豊かさを感じられない国民の生活と、今回投じられるラピダスに対する莫大な政府支援や債務保証、税優遇を照らせば、決してこの国家的プロジェクトに失敗は許されず、ラピダス及びその経営陣に課せられる覚悟と責任は極めて重いものでなくてはなりません。
仮に結果が伴わなかった場合、関係者はどのように責任を取る体制となっているのか。政府として、どこまでその点を見越してチェック機能を働かせるおつもりでしょうか。また、経営陣には資金の使途やプロジェクトの進捗を明確に報告する責任があると考えますが、現時点でどのような情報開示体制が整っているのか、お尋ねいたします。
最後に、経済発展の主力は民間の活力であり、行政アシストはあくまで最小限であることを理想とする中、巨額の血税投資を受けるラピダス株式会社は国民一人一人から株主のような存在として結果を求められるでしょう。国会も事業の進捗を常に注視しています。その余りに重過ぎる期待を背負いながらも、やるのであればこのプロジェクトは何としても成功を収めねばなりません。
物事を成し遂げる信念と執念を持ち、不屈の精神で何度でも立ち向かい、人生をささげ、魂をささげ、己の使命と仕事に挑み続けた先に道が開かれる。テクノロジー産業であれ、政治家であれ、いつの時代もそうして日本は技術や制度を革新させ、価値や希望を生み出し、社会を豊かにしてきました。
経済停滞や安全保障リスクを始め、この国に満ち満ちる不安と諦めに突破口を見出してほしい。子供たちに誇れる活力と成長力にあふれる日本を取り戻してほしい。この法案にも、我々政治家にも通底する国民の希求に思いを致し、身を引き締め、必ずやそれに応えんと背筋を伸ばして、私の質問を終了いたします。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣武藤容治君登壇、拍手〕
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