○大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史です。
会派を代表して、公益通報者保護法改正案について質問します。
法案に入る前に、兵庫県齋藤元彦知事の公益通報者保護法をないがしろにする発言について質問します。
公益通報者保護法は、事業者に対し、公益通報者を懲戒処分にするなど不利益な取扱いをすることを禁止しています。公益通報には、組織内の相談窓口などに対して行う内部通報と報道機関などに行う外部通報がありますが、この規定は内部通報、外部通報を問わず守らなければならないものです。
ところが、齋藤知事は、自身のパワハラ行為などをマスコミへ外部通報した西播磨県民局長を特定し、懲戒処分を行いました。知事から、うそ八百、公務員失格など誹謗中傷を受けた県民局長は、その後、死をもって抗議すると自ら命を絶たれました。
齋藤知事は今年三月の記者会見で、公益通報者の保護は内部通報の場合に限られると勝手な解釈を述べ、外部通報した県民局長を懲戒処分にした県の対応は適切であったと主張しました。
齋藤知事は、その後、消費者庁の事務方から法解釈の間違いについて指摘を受けたり、あるいは五月十二日には公益通報者保護制度の研修まで受講したにもかかわらず、全く自身の間違いを理解できず、いまだ一連の対応は適切だったと言い張っています。
そもそも公益通報者保護法の解釈権は所管官庁である消費者庁にあります。公職にある県知事がそれを無視して、間違った解釈を平然と社会に発信し続けていいのでしょうか。しかも、今、国会では公益通報者保護法改正案が審議されている真っ最中です。齋藤知事の発言は、国会の法案審議をも愚弄するものではありませんか。伊東大臣の認識を伺います。
伊東大臣は五月九日の記者会見で、兵庫県に対しては地方自治法に基づく技術的助言しかできない、これ以上の対応に限界があると、齋藤知事の発言をこのまま放置する姿勢を示されました。国会に対し公益通報者保護法の審議をお願いしている立場のあなたがそんな適当な対応でいいのですか。事務方任せにせず、大臣自ら消費者庁の見解を齋藤知事に伝え、誤りを改めるよう求めるべきではありませんか。
今回の改正案は、公益通報を理由とした解雇、懲戒に対する刑事罰の導入など、公益通報者保護を強化する点で、これまでの実効性のない改正に比べ、文字どおり一歩前進と言える内容です。この間の有識者検討会で真剣な議論を重ねてこられた委員の皆さん、そして消費者庁の事務方の皆さんにも敬意を表したいと思います。
しかし、二〇〇四年に初めて公益通報者保護法が制定されてから、もう二十一年になります。二十一年も掛けてたった一歩の前進です。その原因は何か。
最初に公益通報者保護法の制定が議論されたときから、経済界、経団連は、公益通報者の保護は日本を密告社会にしてしまうという的外れなキャンペーンを展開し、法案の骨抜きを図りました。オリンパスの巨額の粉飾決算や東芝の不正会計事件において内部告発者が弾圧されていたことなどを受けて検討が始まった二〇二〇年の法改正も、結局、経済界の抵抗によって実効性のない中身になってしまいました。その結果、これまで裁判において公益通報者保護法を適用して通報者が保護された事例は僅か三件しかありません。この二十一年を振り返ると、公益通報者保護制度の整備が遅れてきた最大の原因は、経済界の抵抗と、それに屈してきた消費者庁の気概のなさにあったのではないでしょうか。
そもそも公益通報者保護制度の整備と経済界、企業の健全な発展は矛盾するものではありません。公益通報者保護制度の確立は、企業の自浄作用を促し、健全な企業風土を培うことになり、企業の中長期的発展を図る上で大きなメリットがあります。
消費者庁がなすべきことは、経済界の顔色を見ながら恐る恐る法改正を進めることではなく、公益通報者を守ることが企業の発展に資することを正面から訴え、むしろ企業の意識改革を促すことではないでしょうか。答弁を求めます。
私は、今まで企業や官庁の不正行為を数多く国会で取り上げてきましたが、そのほとんどは内部告発者から寄せられた情報と事実証拠に基づくものでした。告発された方々に共通していたのは、企業や組織の不正を知り、見て見ぬふりをしたら消費者被害が拡大する、会社も信用を失ってしまう、黙認した自分も人間として駄目になるという思いでした。ごく普通の職業意識や価値観を持った人たちが、社会と会社のため、自らの尊厳を守るために勇気を出して告発に踏み切ったのです。
しかし、多くの内部告発者は、企業や組織から解雇や配置転換、陰湿ないじめなどの報復を受けてきました。今回の改正は一歩前進と評価しますが、本当にこれで公益通報者が保護されるのでしょうか。
法文上の審議は委員会で行うとして、ここでは具体例でお聞きします。
例えば、二〇一二年、大手出版社秋田書店が内部告発した社員を懲戒解雇した事件です。秋田書店は、漫画雑誌の読者プレゼントの景品の数を水増しして発表していました。不正をやめるよう上司に訴えた当時二十八歳の女性社員Aさんに対して、秋田書店は連日、暴言、パワハラ、嫌がらせを繰り返し、とうとうAさんは精神疾患による休職に追い込まれました。さらに、秋田書店は、事もあろうに、Aさんが景品を横領したとでっち上げて、Aさんを懲戒解雇にしました。
Aさんは消費者庁に公益通報を行い、消費者庁は二〇一三年八月、景品表示法違反で秋田書店を処分、措置命令を出しました。この問題は当時の消費者問題特別委員会でも取り上げましたが、消費者庁は景品表示法違反を問うだけで、公益通報者保護法の立場からAさんを救済することはできませんでした。
Aさんは同年九月、解雇撤回と損害賠償を求めて東京地裁に提訴し、二〇一五年十月に和解が成立しましたが、和解金は僅かな金額で、しかも、秋田書店側は、解雇した理由は内部告発したからではないと居直る声明を出しました。
Aさんは、有名私立大学を卒業し、編集者になる夢を抱いて秋田書店に入社をいたしました。不正をただそうとしただけで夢を奪われ、心身まで傷つけられたのです。
今回の改正案では、公益通報を理由とする不利益な取扱いにおいて、通報後一年以内の解雇又は懲戒は公益通報を理由として行われたものと推定する、いわゆる民事上の立証責任の転換が盛り込まれています。
今回の改正案が、もしも当時、既に施行されていれば、Aさんのような事例は保護、救済することはできたのでしょうか。一般論で結構ですが、お答えください。
また、今回の改正で、Aさんのようにパワハラ、暴言、嫌がらせなどによって休職に追い込まれたケースを防ぐことはできるのでしょうか。これも一般論で結構です。お答えください。
現場では公益通報者への報復は今も様々な形で行われています。今回の改正だけでは保護できない事例がまだまだたくさんあります。企業や団体の不正をただすため勇気を持って声を上げた人たちを保護するため、一歩前進で終わらせるわけにはいきません。更に実効性のある改正を求めて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣伊東良孝君登壇、拍手〕
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