○柴田巧君 日本維新の会の柴田巧です。
私は、会派を代表して、サイバー安全保障関連二法案について、賛成の立場から討論をいたします。
サイバー空間における他国等による攻撃の脅威は、我が国においても急速に高まっています。昨年末には、組織的なサイバー攻撃による被害が相次いで確認をされました。金融機関ではインターネットバンキングの送金機能等に障害の発生が確認をされ、航空会社においては五便の欠航、七十一便に遅れが出るなどの被害が出たことは記憶に新しいところです。
このように、国民生活がサイバー攻撃によって脅かされる事態が実際に目の前で起きている今、重要インフラに対するサイバー攻撃をいかに未然に防ぎ、国民の大切な情報をいかに守るかは、国家の存亡に関わる事態と言っても過言ではありません。そういう中、本法律案は、我が党がかねてから強く早期提出を求めてきた能動的サイバー防御を実現する法案と理解をしています。
本法案では、通信当事者の同意によらない場合であっても、重要なインフラ機能がサイバー攻撃によって損なわれることを防ぐ高い公益性があることなどの場合に限って、公共の福祉の観点から、通信の秘密の保障の例外として情報の取得、分析できるものとなっています。
当然ながら、このような措置が憲法の保障する国民の権利と自由を不当に制限することのないよう、政府原案においても、第六十一条において、サイバー通信情報監理委員会は、「毎年、内閣総理大臣を経由して国会に対し所掌事務の処理状況を報告するとともに、その概要を公表しなければならない。」とされていました。
しかし、条文上に具体的な項目が明記、明示されていなかったため、我が党は、この規定は曖昧で不十分であるとみなし、条文に国会への報告が必要な項目を具体的に列挙して明記する修正案を衆議院審議の際、各党に提案をいたしました。最終的に、我が党が提案した当該事項の承認件数やその概要という案に与野党の意見がまとまったことから、与野党六会派の共同で修正に至ったものです。これを受けて、通信の秘密の保障や国会による民主的統制が担保されることになり、賛成するに十分な理由となりました。
それでも、まだ課題は残っています。
まずは、内内通信が分析対象から外れたことです。
本法案では、分析の対象となる情報は、日本を経由して伝送される外国から外国への通信、外外通信のほか、外国から日本への通信である外内通信、そして、日本から外国への通信、内外通信となっており、国内の通信、内内通信は外れています。
政府の説明では、サイバー攻撃のうち九九%以上が海外からの発信によるものという理由からですが、仮に一%未満であっても、サイバー攻撃の可能性を残したことになります。サイバー攻撃が日々進化していることを考えると、法律上全ての芽を取り除けるようにしておく必要があることを強く指摘をしておきます。
第二に、政府全体のインテリジェンス能力をいかに高めるかも課題です。
本法案では、情報共有・対策のための官民協議会の設置について定められており、官民の協議会におけるセキュリティークリアランス制度の活用による官民の情報連携や情報管理が重要になってきます。
また、同盟国、同志国との情報連携も重要であると考えられますが、それらの国とギブ・アンド・テークの関係を構築するには、内閣サイバーセキュリティセンターを発展的に改組して設置するとされる新しい司令塔を始めとした関係部局職員のインテリジェンス能力の向上が欠かせないのではないでしょうか。
やはり政府に高い分析能力がなければ、サイバーセキュリティの向上はありません。具体的にどのようにインテリジェンス能力を高めていくのか、これもまた今後の重要な課題であります。
第三は、人材の確保と育成です。
サイバーセキュリティは、何といってもマンパワーに支えられています。サイバー攻撃の巧妙化、高度化に対応していくには、専門的な知識と高い技能を有する人材の育成、確保が不可欠です。しかし、戦略的かつ計画的な人材育成・確保プログラムが推進されているとは言えません。
自衛隊のサイバー専門部隊は令和九年度までに四千人規模を目指すとの目標が掲げられていますが、三万人とも言われる中国のサイバー攻撃部隊と比較すると、圧倒的に少ないのが現状です。これに関連して、吉田圭秀統合幕僚長は本年二月の記者会見で、日本のサイバー防衛能力の現状について、攻撃側の能力が日々向上し、我々が今のままでは対応できるとは認識していない旨の発言を行っています。
したがって、サイバーセキュリティを万全にするには、アクセス・無害化措置に係る人材を始め、警察や防衛省・自衛隊のサイバー人材を質、量共に充実させるなど、人材面の課題解決を図ることが急務であることを申し上げておきます。
第四は、官民連携をいかに強化するかです。
改めて言うまでもなく、官のみ、民のみでサイバーセキュリティを確保することは極めて困難です。このため、サイバー攻撃による業務継続性への影響を極力減じ、社会全体の強靱性を高め、対処能力を向上させて、国民の生命、財産等を守るためには、政府機関はもとより、民間企業等との連携を強化することが強く求められます。
そのため、法案成立後、下位法令等の策定に向け、民間とのコミュニケーションの緊密化を図り、サイバーセキュリティに関する背景や、経済安全保障推進法や国家安全保障戦略との関連性について、中小企業を含む全ての事業者への丁寧かつ分かりやすい説明を行っていくことが不可欠であります。また、協力する事業者の負担を軽減するために、インシデント報告の一元化、簡素化、通信情報を提供するための費用負担などのインセンティブを設けることも重要なことです。
とにかく、官民連携が能動的サイバー防御の鍵を握るとの認識の下、その強化策の具体化を急ぐべきだと指摘をしておきます。
第五に、海底ケーブルの防護強化です。
我が国の外国との通信の九九%は海底ケーブルです。ゆえに、国をまたいで大量のデータが流通する現代社会、経済において、海底ケーブルは必要不可欠なインフラとなっています。房総半島や志摩半島には海底ケーブルの陸揚げ局が集中し、国際通信の結節点になっているため、政府はこれらの地に通信情報を収集するための大規模な施設を設けることを検討している旨の報道もあります。
ところが、昨今、バルト海や台湾周辺で海底ケーブルの切断が相次いでいます。しかも、単なる事故ではなくて、意図的な切断が行われているのではないかと専門家から指摘されています。もし海底ケーブルが切断されれば、国民生活や経済活動に大きな影響を与えるとともに、能動的サイバー防御に支障を来すことにもなります。
それゆえ、海底ケーブル切断を、我が国にとっても安全保障上の深刻な脅威と見て対応を急ぐ必要があります。本法案成立を機に、政府挙げて監視などのケーブル防護強化を図るとともに、欧米や台湾などとも連携をして法規制を含む国際的な取組を進めることが極めて重要であることを申し上げておきます。
終わりに、本法案は、国家におけるサイバー安全保障に不可欠な最小限の法整備に着手したにすぎません。サイバー攻撃は、今後ますます高度化、巧妙化、頻発化していくことが予想されます。日本維新の会はこれからも、国民の生命と財産を真に守れる政策を積極的に提案し、実現していく決意であることをここに明確に申し上げ、賛成討論といたします。
ありがとうございました。(拍手)
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