○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました環境影響評価法、以下、アセス法の一部を改正する法律案に対し、関係大臣に質問します。
日本の環境影響評価制度は一九七〇年代半ばより検討が始まりましたが、発電所の建設が遅れることを危惧する電力業界や通産省が抵抗したことによって、長年にわたり法の制定が実現しませんでした。公害、環境問題が深刻化し、国民の怒りと運動が高まる中で、ようやく九七年にアセス法が成立しましたが、発電所だけは電気事業法の定めるところによるとして適用除外とされました。さらに、計画段階配慮書が新設された二〇一一年の法改正で、発電所にもアセス法が適用されることとなりましたが、経産省と電力業界は最後まで適用除外とするよう執拗に求め、その結果、アセスの最後の段階、報告書における環境保全措置等の結果の公表が発電所だけ適用除外となっています。
また、放射性物質については、政府は、原子力は公害を発生しないとして、一九六七年に制定された公害対策基本法でも、九三年に制定された環境基本法でも、放射性物質による大気汚染の防止は原子力基本法等で定めるとの適用除外条項が盛り込まれました。東京電力福島第一原発事故後に制定された原子力規制委員会設置法の附則で環境基本法の放射性物質適用除外条項が削除され、二〇一三年にはアセス法においても放射性物質が適用対象となりましたが、供用中の原子力発電所の汚染防止は原子力規制委員会の審査に任されています。
このように、日本の環境影響評価制度において、発電所、とりわけ原子力発電所はアンタッチャブルとされてきたのです。
本改正案の策定の経過を見ても、当初、再生可能エネルギーの拡大が急がれる中、風力発電事業について、効果的、効率的に環境アセスメントを行うことのみが検討されていたにもかかわらず、今年三月になって唐突に、工作物の建て替え事業においてアセスの重要な手続を省略できる建替配慮書が提案され、またしても電気事業連合会の強い要請で、風力発電事業だけではなく、原子力発電所や火力発電所まで適用対象としたことは極めて重大であります。
以上述べた日本の環境影響評価制度の歴史と現状を踏まえて、以下質問します。
まず、個々の事業よりも上位の計画や政策の意思決定段階で環境配慮を行う戦略的環境影響評価制度の導入についてお聞きします。
我が国を除いてほとんどの主要先進国で導入が図られていますが、日本では電力業界の抵抗でいまだに戦略的環境影響評価制度が導入されていません。政府は、温暖化対策推進法に基づき環境配慮が確保された再エネの導入や、環境大臣が海洋環境調査を実施する再エネ海域利用法の取組など、戦略的環境影響評価の趣旨に資する取組を推進するといいます。しかし、それは日本版戦略的アセスと言われるもので、欧米の戦略的環境影響評価制度ではありません。
巨額の公費を投入し、国策事業となっている半導体製造やデータセンターの事業は現在、アセス法の適用対象外ですが、これらの施設は大量の電力、水力を消費し、大量の有機フッ素化合物や温室効果ガスを使用、放出します。こうした個々の事業の上位にある計画や政策の策定を対象とした戦略的環境影響評価制度を今こそ導入すべきではありませんか。環境大臣、お答えください。
次に、原子力発電所のアセスについて伺います。
政府は、原子力発電所の安全性は原子力規制委員会において厳密に審査が行われているといいます。しかし、いわゆる新規制基準によって一〇〇%安全が担保され、重大な環境影響が回避されるわけではありません。日本の環境影響評価制度は原子力規制委員会任せの安全神話に陥っていると言わなければなりません。アセス法では放射性物質が評価項目となっています。ほかの発電所アセスと同様に、原子力発電所もアセス法に基づいた評価をすべきではありませんか。
東京電力福島第一原発事故では、放射性物質の拡散により広大な地域が汚染されました。十四年が経過した今でも二万四千人余りが避難生活を余儀なくされています。原発は、一たび事故を起こせば最悪の環境破壊を招きます。事故は決して起きないという安全神話と決別し、原子力発電所アセスの評価項目に米国の原子力発電所アセスと同様、事故を設定すべきではありませんか。いずれも環境大臣に答弁を求めます。
建て替え事業においてアセスの重要な手続を省略できる建替配慮書を新設することについて伺います。
政府による本改正案の提案説明では、現在行っている事業のアセス報告書にある調査結果を踏まえた環境配慮を反映して建替配慮書を作成するものとしています。しかし、さきに述べたとおり、アセス法で規定している報告書の送付及び公表、環境大臣の意見、経産大臣の意見は、電気事業法第四十六条の二十三により、発電所については適用除外となっています。これでは、現在行われている発電事業の環境保全措置の内容、効果及び不確実性の程度などが全く明らかにされません。こうした電気事業法での特例措置は撤廃すべきではありませんか。経産大臣、お答えください。
横須賀石炭火力発電所では、老朽化などで長期的に計画休止中の発電所をリプレースしました。十年来の休止状態から環境影響が拡大するにもかかわらず、その環境影響の調査、予測、評価を行うことなく、十数年前の高稼働率、高環境負荷の状態と比較して新しい石炭火力発電所が環境影響を低減するとみなされ、アセス手続が簡略化されました。
このように、リプレースによるアセス簡略化が行われている上に、今回、建替配慮書による簡略化が追加されれば、アセス手続の空洞化が起こることが強く懸念されます。火力発電所の建替配慮書で初動のアセス手続を簡略化し、さらには方法書以降の手続までが簡略化されることがないよう、基本的事項で明確に縛りを掛けるべきではありませんか。環境大臣、お答えください。
最後に、近接地での複数事業の乱立による累積的影響について伺います。
政府は、累積的影響に係る技術的な考え方等について検討を進めるといいますが、実際の対策は遅々として進んでいません。北海道北部での風力発電の建設、青森の下北半島、秋田県の男鹿半島など、日本では陸上でも洋上でも風力発電の計画が多く、既設の風車が多々ある地域もあります。このような地域では累積影響評価をしっかりと行う必要があります。本改正案の環境影響評価図書の公開では、累積的影響は回避できません。周辺に複数の案件があれば、事業者に累積的影響評価を義務付けるべきであります。環境大臣の答弁を求めます。
日本共産党は、アセス法の目的に代替案の検討と住民参加を明確に位置付けること、欧米並みの戦略的環境影響評価制度を実施することとともに、原発ゼロの日本を目指し省エネと再エネの促進を図ることを強く求めて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣浅尾慶一郎君登壇、拍手〕
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