○伊藤孝恵君 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。
私は、会派を代表し、給特法等の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論を行います。
このような法律を国が定めるということは恥であり罪である。参考人から発せられた鋭角な言葉に憤慨して席を立ち、議事録修正を求めた議員がいました。分からないでもありません。立法府は、衆議院における修正を経て、一定の前進をさせたはずです。させたはずですが、まだまだ足りないということです。
以下、本法案の審議を通じて浮き彫りになった課題について申し述べます。
まず、政府の対話姿勢について指摘します。
法案審議では、将来的な給特法の廃止を含む抜本的な見直しについての質問が相次ぎました。しかしながら、政府は検討する可能性すらついぞ認めませんでした。
また、教員の正確な勤務実態の把握なしに適切な対策を講じることは不可能ですが、多くの質疑者がこれまで実施してきた教員勤務実態調査を継続すべき理由を幾ら挙げても、かたくなに否定をしました。まるで、そこには越えてはいけない一線があるかのようでした。
対話は、議論を通じて自らの意見を変える可能性のある者の間でしか成立しません。本法案は重要広範議案であり、数字の上での審議時間は積み上がりましたが、言論の府における対話についてはむなしいものだったと言わざるを得ません。
では、一体何について対話を深めるべきだったのか。
一つは、公立学校の教員に国立、私立学校の教員と同様の労働基準法を全面適用すべきなのか、それとも、給特法を維持し、教職調整額を支給する代わりに残業代は支払わないとする現状の仕組みを維持するべきなのか、どちらが良質な教育者を学校現場に迎え入れ、働き続けてもらえるのかという根本的な問いです。
参考人質疑では興味深いやり取りがありました。本法案の基となる中教審の答申をまとめた中核メンバーの一人が、給特法に表現された教員像には専門職、聖職者、労働者という三つの側面があるものの、現状を直視すれば聖職者の部分を早急に削除するべきだと述べられました。聖職者性を削ったら、残るは専門職と労働者という二面です。一般の労働者と何ら変わりません。
国立、私立学校の教員には労働基準法が全面適用されているにもかかわらず、公立学校の教員だけなぜ給特法なのか。この問いに対する参考人の答えは、放課後に先生が子供たちと遊んでくれるといった部分の聖職者性は大事にしたいというもので、到底腑に落ちるものではありませんでした。
中教審の議論は一年以上にわたって行われ、その後、法案提出に向けた文部科学省内での検討も半年近く行われましたが、公立学校の教員にも労働基準法を全面適用すべきか否かを議論した形跡はありません。もとより、これらについては論者によって大きく立場が異なり、神学論争になりがちです。しかし、この問いを回避して、教職調整額を数年掛けて一〇%に引き上げたとしても、結局、学校現場に内在する課題を先送りしたにすぎません。
学習指導要領の記載内容は肥大化し、過去二十年で教科書のページ数は、小学校で三倍近く、中学校は二倍近くに膨れ上がっています。教員や学校に対して義務を課した法律は過去十年で二十本を数え、教員にはこれらの法律への対応も求められています。
給特法制定時には前提となっていた、教員が自発性、創造性を発揮できるような職場とは程遠い環境になってしまったことが誰の目にも明らかであるのに、半世紀以上前の法律を維持し続ける合理的理由はあるのか。もはや合理性はないとするならば、どのように変えていくべきなのか。熟議が必要なのはまさにこの点です。
給特法を維持すべき、すなわち教員に残業代を支給すべきでない理由として頻繁に挙げられる政府答弁に、教師は高度専門職だからという口上があります。確かに、高度専門職と言われる研究者や大学教員、弁護士などは、高い裁量性が確保されており、残業代が支給されない場合もあります。
他方、学校現場はどうでしょうか。給特法制定時と大きく様変わりした教室内の景色や課題、保護者の言い分。きゅうきゅうとした学校現場において、研究者や大学教員、弁護士などと同等の裁量労働環境が公立学校の教員に確保されているとは到底思えません。高度専門職の五文字は、残業代回避の五文字に置き換わっています。
本法案では、施行後二年を目途とした検討条項が置かれていますが、危機的な学校現場の現状を鑑みれば、今すぐにでも給特法の在り方について対話を開始すべきです。それこそが、令和元年の給特法改正の際に、当時の萩生田文部科学大臣が約束し、本法案でも積み残された宿題、すなわち抜本的な見直しを果たす唯一の方法です。
最後に、子供に関わる予算の総額を抜本的に拡充する必要性について指摘します。
石破総理は六月五日の文教科学委員会で、教員の処遇改善のためにほかの文部科学省予算を削るというような連関関係にはないと明言されました。連関関係にはないのだから、教員の処遇改善のための予算は純増ということです。大変心強い答弁です。この際、毎年度五兆円前後で停滞する文部科学省予算も増加させていくとともに、例えば、こども未来戦略に基づいて今年度から対象が拡充された高等教育の修学支援金制度のように、予算はこども家庭庁計上、執行は文部科学省といったスキーム例も増やしていく必要があります。
質疑の中で、教職員の働き方改革のトップランナーとして福岡県古賀市の事例を紹介しました。六時間授業の見直しや夏休み等の短縮、水泳授業の民間委託など、教員の負担軽減策を次々と実行している古賀市では、精神疾患による休職者は大きく減り、採用試験を受ける学生も増えたといいます。
六時間目をやめることは、先生、子供たち双方に時間的、体力的、精神的に余裕を生みますが、ここで忘れてはいけないのがアフタースクールの存在です。
ここには、こども家庭庁管轄の学童、いわゆる放課後児童クラブと、文科省管轄の放課後子ども教室のように、こども家庭庁と文科省の省庁縦割り問題が残っています。これらを解消し、学校施設を活用した統合アフタースクールを実施できれば、教員の負担軽減や学校運営にもメリットをもたらす事例が確認をされています。
学校に常駐する大人を増やすことが必要です。チーム学校の掛け声の下、政府は教員以外のスタッフを増やすとしておりますが、週に数回、決められた時間だけに学校に来る雇用形態では、教員にとっても子供たちにとってもゲストの域を出ません。
もとい、子供には、親でもない、先生でもない大人にだからこそ話せることがあるそうです。学校を子供と教員だけの閉じた場にせず、多様な専門スタッフ、地域クラブ活動の担い手、アフタースクールの職員、地域住民など、多くの大人が常駐する開かれた場にしていく必要があります。
恥も罪ものみ込んで、私たちは、子供たち、そして子供たちの学びや育ちに伴走する教職員を支えねばなりません。こども家庭庁と文部科学省が協力し、子供に関わる予算の総額を最大化する知恵を絞る、血眼になって探す。学校現場同様、省庁もまた自組織に閉じない努力の必要性を指摘して、私の討論を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
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