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北神圭朗 ·有志の会

衆議院憲法審査会(2025-12-04)での発言

第219回国会 ·第第3号号 ·2,308字
○北神委員 有志の会の北神圭朗です。  私からは、国民投票における偽情報対策と表現の自由との関係について申し述べたいと思います。そのために、諸外国における外国勢力による介入への対応事例を示し、その背後にある考え方を浮き彫りにし、最後に、国民投票広報協議会が偽情報に対して、あえてファクトチェックという言葉は使いませんが、事実を示す行為について論じたいと思います。  言うまでもなく、表現の自由が極めて重要なのは、個人の自己実現のみならず、選挙など、民主的な意思決定の健全性を守るために自由な情報に基づく対話が不可欠だからであります。その前提には、公の場で自由に議論することにより必ず真理が虚偽に勝ち、最も合理的な結論に到達するという、信念までいかなくても強い期待があるからだと思います。  しかし、一方で、巨大プラットフォーマーの運営するSNS等により、この前提、この信仰、この期待が圧倒的な情報量を前にして危機に瀕している現実にも目を向ける必要があります。本当に真理が虚偽に勝っているのか、合理的な結論に至っているのか。実際、各国の多くは、自分たちの選挙等が外国勢力に操作されていることを認め、これに対策を打ってきています。その際、偽情報を通じた外国勢力の介入を国家安全保障の問題として捉えた上で、表現の自由を尊重しつつも一定の制限をかけているように見受けられます。  例えば、米国では、二〇一八年九月に、連邦レベルの選挙における外国政府等の干渉に対して制裁を課す大統領令が発出されています。選挙結果が出てから四十五日以内に、偽情報の発信など、当該選挙に干渉があったかどうかを国家情報長官が調査し、その後四十五日以内に司法長官と国土安全保障長官が制裁発動の是非を判断することになっています。制裁対象者は米国内の資産が凍結され、米国人との取引が禁止されます。  また、英国では、二〇二三年七月に制定された国家安全保障法において初めて外国干渉という犯罪が設けられました。これにより、投票や言論の自由といった民主主義に不可欠な基本的権利を妨害する行為が違法となりました。同法第十六条は、外国勢力が関与する選挙犯罪に対して、通常の刑罰ではなく、起訴状による正式裁判という重たい刑罰を適用することを規定しています。  カナダやオーストラリアにおいては、外国勢力による選挙過程を妨害する試みを阻止するため、警察、諜報機関、外務省などがメンバーとなったタスクフォースを組織しています。  さらに、フランスでは、二〇一八年に情報操作との闘いに関する法律を制定しています。これは、選挙の公正性を確保し、外国だけではなく国内勢力による情報操作をも抑止することを目的に、選挙期間における偽情報の拡散防止制度及び即時停止制度を整備するものです。事例が公表されていないので適用例の数はよく分かりませんが、法律上、虚偽情報の拡散に対して裁判所が差止め命令を出すことが可能となっており、選挙中という期間に限って表現の自由を平時より制限できる内容となっています。  なお、偽情報対策とは直接関係ありませんが、国家安全保障上、選挙をどのように位置づけているのかという観点から、もう一つだけ米国の例を挙げます。  米国では、国土安全保障省という役所が、元々、重点的に保全する対象として、軍事産業基盤や金融サービス、政府施設等、十六分野を重要インフラとして指定しています。それが二〇一七年には選挙そのものを重要インフラに指定したのです。これにより、同省は、要請があった場合、選挙管理当局に対してサイバーセキュリティー支援等を優先的に提供できるようになりました。  我が国では、そもそも選挙に対するこういった発想が希薄のように思います。  これら諸外国の背景にある考えを総括すれば、確かに、公正な選挙を確保するために、表現の自由は議論等を通じて合理的な結論を導き出す極めて重要な基本的権利ではある。しかし、特に外国勢力からの偽情報は、その敵対的な意図とSNS等の圧倒的拡散量によって本来の国民の声をもあるいは左右し、あるいはかき消し、ひいては投票結果をゆがめることもあり得る。したがって、外国勢力による偽情報の流布を一定制限することは、逆説的に国民の表現の自由並びに健全な民主主義過程という極めて重要な公共の利益を外国から守るという安全保障上の要請である。こうした考え方から、表現の自由を制限する際に用いられる明白かつ現在の危険の基準を十分に満たしていると考えているのではないでしょうか。  これは、寛容な社会を守るためには、不寛容な、寛容でない人たちに対しては寛容であってはならないというカール・ポッパーの逆説をほうふつとさせる論理展開です。  最後に、こうしたことからいえば、国民投票広報協議会が外国からの偽情報に対して客観的事実を指摘することは表現の自由との関係からも十分許されるのではないかと考えます。  というのも、今申し上げたとおり、諸外国の事例では、刑罰や差止め命令といった規制でさえ表現の自由と民主主義を守るという安全保障上の観点から一定の正当化がなされています。そうであるならば、削除や罰則を伴わず、あくまで客観的事実の提示にとどまる活動は、より穏やかな手段として一層許容される余地が大きいと考えられるからであります。  いずれにせよ、今後も本審査会で、諸外国の事例を踏まえ、偽情報対策について安全保障の観点からも検討を加えるべきであることを訴えて、発言を終わります。     ―――――――――――――

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