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山田秀樹 ·社会医療法人社団健生会理事長

衆議院厚生労働委員会(2025-11-25)での発言

第219回国会 ·第第4号号 ·3,280字
○山田参考人 御紹介いただきました山田です。  発言の機会をいただき、ありがとうございます。  私からは、改正案に示されました医師偏在是正に向けた総合的な対策並びに病床数削減を支援する事業等に関する事項の追加の二点について、再考を求める立場から発言させていただきます。  初めに、医師の地域と診療科による偏在は存在し、対策が必要なことに異論はありません。しかしながら、前提として、医師の絶対数の不足の解消に取り組まなければ、抜本的な偏在対策とはならないと考えます。  資料一から、論点を示します。  一、医師需給推計について。  二〇二九年で医師の需給が均衡するとした推計が独り歩きしていることを懸念します。推計は、年間九百六十時間の過労死水準の時間外労働を許容したものであることをまず確認すべきです。  さらに、二〇一九年厚生労働省調査で、それ以上の時間外労働を行った三七・八%の病院常勤勤務医も九百六十時間以内として補正をしていること、また女性医師比率上昇補正など、様々な要素の正確性に疑問があること、宿日直の労働時間や、欧米では加えられる待機時間を含めないことなどの問題があります。  この十年で四万人以上の医師が増加したと示されますが、内訳は、今後定年を迎える六十歳以上の医師が三万人、働き盛りの四十歳以下の医師増員数は一万人以下となっています。OECD平均の医師数を目指すとすれば、現在のペースで二〇五〇年前後にようやく到達すると予想されます。  二、医師偏在指標について。  政府は、医師の絶対的な充足状況を示すものではなく、あくまで相対的な偏在の状況を表すものであること、数値を絶対的な基準として取り扱うことや機械的な運用を行うことがないよう留意した上で活用する必要があるとしています。しかしながら、医師多数県のように、あたかも医師がどこかに余っているかのような言葉を用いて偏在対策が取られようとしていることは疑問です。  昨年十一月、日本病院会の医師偏在対策等についての提言の中では、現在の医師偏在指標は対象地域に勤務する医師の肌感覚と乖離があると述べられています。医師多数県とされる知事からも、必要な診療科の医師が確保できない地域があり、偏在指標は実情を反映したものとなっていないことが指摘をされています。  三、医師の働き方改革について。  二〇二四年から開始されましたが、宿日直許可を受けた医療機関の急増や、時間外労働の一部を自己研さんに置き換えるなど、様々な矛盾を噴出させるものとなっています。  背景にあるのは、都市部でも問題になっている病院勤務医の不足です。日本病院会が実施された二〇一九年度勤務医不足と医師の働き方改革に関するアンケート調査では、医療機能の維持のために必要な勤務医数が充足していると回答した病院は僅か一〇・四%でした。  日本外科学会の働き方改革に関するアンケート調査では、自己研さんの定義が定まっていないものが四七・五%、本来、業務として認められるべき手術記録作成等が自己研さんに置き換えられ、見せかけの労働時間短縮を図るケースなど、現場の窮状を示す声が寄せられています。医師の過重労働がもたらしかねない過労死リスクや医療の質の低下、特に医療事故の懸念などの弊害は放置されたままです。  二〇一九年三月、医師の働き方改革に関する検討会報告書では、基本認識として、我が国の医療は、医師の自己犠牲的な長時間労働に支えられており、危機的な状況にある、現状を変えて、健康で充実して働き続けることのできる社会を目指していくべきとあります。診療科偏在是正に向けた取組に記された、若手医師から選ばれるための環境づくりや処遇改善、業務負担への配慮、支援等の観点での手厚い評価を、全ての医師を対象に取り組むことが必要です。  医師の働き方改革の原点に立ち返って、医師需給推計と医師偏在対策の是正に向けた総合的な対策パッケージの見直しを行っていただくようお願いするものです。  四、医学部定員の適正化について。  資料二に示します医師不足・医師偏在に対するアンケートでも、八七%が政府の進める医師偏在対策のみでは医師不足は解消しないと考え、医学部定員削減に賛成は三・七%にすぎません。  全国知事会は、医学部臨時定員増の延長、恒久定員の増員を求めています。OECD諸国の中で、日本は、人口当たり医学部卒業生数は最下位のまま何年も推移をしています。コロナ禍の教訓と人口の高齢化に向けて、イギリス、アメリカ、ドイツなど諸外国が医学部定員増員に転じる中で、更にその差が広がると予想されます。今、医学部定員を適正化の名の下に削減する時期ではないと考え、適正化には反対いたします。  次に、病床数削減を支援する事業等に関する事項について意見を述べます。  初めに、基準病床数削減の前提は、国民が安心できる医療供給体制が担保されていることです。基準病床数について、使用する変数の正確性に課題があること、人材確保が困難なゆえに休止している病床、潜在的な医療需要を含めていないため、過小評価されているとの報告があります。また、削減を病院の経営安定を図るための手段とすることに大きな違和感を持ちます。  二〇四〇年まで医療需要は減少しないとされ、さらに、医療の高度化で需要は今以上に喚起される可能性がある中で、今、病床削減を行うことは医療需要を切り捨てることにつながります。当法人急性期病院でも、十一月以降、度々満床となり、入院依頼をお断りする状況が生じています。コロナ禍の大きな教訓として、平時からの医療提供体制の余裕が必要と感じている医療者は多いのではないでしょうか。  支援事業について。  有事のみならず、平時でも感染症の流行があれば、満床で救急車をお断りする事態は毎年のように繰り返されますが、それでも二〇二四年診療報酬改定以降、全国の病院と同様に、当法人でも、二十数年ぶりのこれまでにない赤字を計上しています。  この間、経営破綻の医療機関数は過去最高の件数です。病床削減に対し補助金を出すことは、経営難の病院が手挙げをし、地域の医療需要を無視した削減が行われる可能性を含みます。このことは、地域医療構想調整会議で、医療・介護需要の変化の予測データに基づき、病床機能分化と併せて進めてきた病床必要量検討のプロセスを無視したものです。データに基づかず、過剰な病床削減が起こることになれば、医療提供体制縮小の加速と患者の受療権の侵害が起こると考えます。  病床削減の受皿について。  今後、新たな地域医療構想の中で、かかりつけ医機能、在宅医療、医療・介護連携、人材確保等は議論されることと思いますが、医療以上に介護現場が人材確保困難、経営難で、事業所倒産や訪問介護事業所の撤退が相次ぐなどの状況の中、在宅や施設の受皿の整備は後退しています。  オンライン資格確認、カードリーダー導入がきっかけで開業医が閉院するケースが報告されていますが、医師の高齢化と経営難にあえぐ診療所に電子診療録等DXを約一〇〇%を目指し迫る中で、閉院に至る事態も再び起こることと思います。  病床削減のみ先行させた医療提供体制の変化は、新たな地域医療構想が目指す提供体制全体を見据えた計画の遂行に悪影響を及ぼすものと懸念します。保険あってサービスなしという地域が生じることなく、将来にわたって国民皆保険が維持されますよう取り組んでいただきたいと思います。  最後に、医療機関の経営の安定の根本は、診療報酬の増額です。人材確保のための紹介会社手数料の負担も大きな課題で、メスを入れていただきたいと思います。補正予算での医療・介護分野への支援と、医療界の総意としての次期診療報酬の一〇%以上のプラス改定、また、介護報酬期中改定をお願いして、私の発言を終わります。  ありがとうございました。以上です。(拍手)

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