○浅野委員 国民民主党の浅野哲です。
本日は、緊急事態条項のイメージ案について、具体的な論点を幾つか挙げ、それらに対する意見を申し述べます。
第一に、参議院の緊急集会の射程、期間についてです。
緊急集会は、衆議院解散後、総選挙を経て特別会が召集されるまでの間、参議院が暫定的に国会機能を補う重要な制度です。しかし、あくまで一時的、限定的、暫定的な制度です。憲法五十四条一項は、解散から総選挙まで四十日以内、総選挙から国会召集まで三十日以内、合わせて最大七十日の衆議院不在を想定しています。
ここで、いわゆる四十日説は、総選挙までの期間を重視する点で理解できますが、新しい衆議院が活動を開始するまでの空白をどう埋めるかという課題が残ることから、射程範囲としては十分とは言えません。他方、七十日超過説は、大規模災害等への対応として理解できる点もありますが、二院制による民主的正統性の発揮、衆議院優越の趣旨との関係を踏まえれば、参議院単独で国会機能を担う状態は最小限度とするよう努めるのが妥当と考えます。
したがって、緊急集会の権能範囲は、七十日程度を基本とするいわゆる七十日説が制度趣旨に沿うものと考えます。
第二に、緊急政令、緊急財政処分との関係です。
日本国憲法の制定過程を振り返れば、いわゆる三月二日案、松本案七十六条には、国会召集が不能で、公共の安全保持のため特に緊急の必要がある場合に、内閣が事後に国会の賛同を得ることを条件として法律又は予算に代わる閣令を制定できる構想がありました。しかし、先ほど新藤筆頭幹事がおっしゃられたとおり、現行憲法では、内閣に包括的な緊急立法権を与える仕組みを採用しておりません。非常時であっても議会的統制を残す制度を選択し、参議院の緊急集会を設置しました。
この歴史の判断を踏まえれば、緊急事態において最初に考えるべきことは、内閣の権能拡大ではなく、国会機能をどこまで維持できるのか、その限界を明らかにすることこそ先決と考えております。
また、今ほど阿部委員がおっしゃったとおり、緊急事態と非常事態の差を踏まえながら議論を行うに当たっても、やはり、国会機能をどこまで維持できるか、その限界を見極めてからでなければ、立憲的統制が取られた上での緊急政令の権能範囲の決定というのは難しいのではないかというふうに考えております。
参議院の緊急集会、選挙困難事態における議員任期延長は、いずれも国会機能を維持するための制度であり、一方、緊急政令、緊急財政処分は、内閣に法律や予算に代わる権限を与える制度です。同じ緊急事態条項でも憲法上の意味、意義は異なり、まずは国会機能維持の方策とその限界を明らかにすることが優先すべきであることを重ねて申し上げます。
第三に、選挙困難事態認定における国会承認の議決要件についてです。
この要件としては、過半数ではなく、各議院の三分の二以上の承認を要件とすることが望ましいと考えます。選挙困難事態の認定は、選挙の延期や議員任期の延長につながり、議員の身分に関わる重要な意思決定となります。過半数で足りるとすれば、時の与党の判断で選挙延期や任期延長が可能になる制度だと受け止められかねません。緊急時こそ、権力を持つ側の自己延命と疑われない制度設計が必要です。三分の二であれば、一定の野党も含めた合意が必要となり、国会の総意に近い判断を示す民主的正統性の要件になると考えます。
最後に、今後の議論の進め方についてです。
九条など各党間で方針が大きく異なる論点は、中長期的に議論を深めるべき課題です。一方で、合意可能性があり、時間的制約のある論点については、議論を発散させず、優先順位をつけて進める必要があります。その観点から、参議院の合区問題についても、緊急事態条項の議論がまとまった後、本審査会でも議論すべきと考えます。
昨日の参議院憲法審査会では、一票の格差と合区問題について各政党の見解が表明されました。国勢調査の速報が今月末に公表される見通しであり、二〇二八年の参議院通常選挙までに合区問題を解決するならば今年中に改正原案をまとめる必要があることを申し上げ、発言を終わります。
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REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=浅野哲
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