○浅野委員 国民民主党の浅野哲です。
本日は、国民投票をめぐる諸問題について発言します。
憲法改正の議論を実質的に前進させるためには、その土台となる国民投票法の整備が不可欠です。改正の是非以前に、手続の公正性と実効性を確保することは与野党を問わず共通の責務です。本審査会において今国会で具体的な立法成果を上げるべきとの立場から、以下三点申し上げます。
第一に、投票環境整備についてです。
公職選挙法では既に実現済みの、開票立会人の選任に係る規定の整備、選任要件の緩和、FM放送への対応の三項目については、国民投票法においても早急に法制化すべきです。この三項目は、各会派の間で大きな異論のない、合意可能な論点であります。投票に参加しやすい環境を整えることは、国民主権の実質化そのものです。賛否両論あるほかの論点の議論を待つ必要はなく、合意できるところから直ちに法制化すべきであります。今国会中に法案を提出し、審議を開始することを強く求めます。
第二に、インターネット広告規制についてです。
現行の国民投票法は、テレビ、ラジオについては投票日前十四日間の有料広告を制限しています。しかし、インターネット広告には同等の規制が存在しません。二〇〇七年の法制定時にはSNSは未普及であり、この空白は当時想定外の問題でした。今や情報環境の主戦場はネット空間に移っており、この空白を放置することは許されません。
昨年の英国、EU、ドイツ調査議員団も、この問題を中心テーマとして調査を行いました。英国では、二〇二二年の選挙法改正により、デジタルインプリント表示義務、すなわち広告主の氏名と住所の明示制度が導入されました。EUでは、政治広告の透明化及びターゲティングに関する規則、TTPAにより、政治広告である旨、広告主の明示、ターゲティング技術の使用の有無の開示が義務づけられており、ティックトックは既に有料政治広告の掲載を中止し、グーグルやメタも同様の方針を決定しました。
これらに共通するのは、広告の内容そのものを規制するのではなく、誰が何の目的で発信しているかを国民が判断できるよう透明性を確保するという考え方であり、表現の自由と正面から衝突するものではありません。
加えて、平和博桜美林大学教授が指摘するとおり、マイクロターゲティングは特定の個人にだけ異なるメッセージを届けるため、社会から遮られた、見えない拡散となります。
この問題に対応するため、掲載広告を一定期間保存し誰もが検証できる広告ライブラリーの法整備が急務です。EUでは政治広告の長期保存と公開が制度として義務づけられていますが、日本には法令上の規定がなく、グーグルやティックトック、Xも、日本の制度に基づく政治広告専用のライブラリーは提供しておりません。
広告主表示の義務づけと広告ライブラリーの法制化、そしてターゲティング技術の利用規制について、今国会での具体的な法制化作業に着手することを求めるものです。
第三に、フェイクニュース対策と表現の自由の両立についてです。
鳥海不二夫東京大学教授の研究によれば、偽情報は、正しい情報に対して、深さ、規模、速度、到達人数の全てで上回り、一旦偽情報コミュニティーに入ったユーザーはほぼ脱出することができず、訂正するほど誤認識に固執するバックファイア効果も確認されています。事後ファクトチェックには構造的限界があり、だからこそ、事前の制度整備が不可欠です。
英国、EU、ドイツの調査で三か所に共通していたのは、国家はコンテンツの内容の正しさに直接介入しないという原則です。ドイツでは、国家が介入すると、その時々の政権政党が何をどのように報道してよいかを決めることになりかねないとの懸念が示されました。この原則は日本においても共有されるべきものです。
この原則を前提に、具体策を二点申し上げます。
まず、広報協議会には、プレバンキング、すなわち予測される偽情報への事前の免疫形成機能を持たせるべきです。ウクライナでは、偽動画拡散の二週間前に予防的注意喚起を行い、混乱を抑制しました。発議前から準備できる現実的な対策であります。
次に、民間ファクトチェック機関への独立性を担保した公的支援制度の整備です。EUモデルに倣い、国家が真偽判定に直接関与せず、団体の独立性を守りながら、持続可能な支援の仕組みを構築すべきだと考えます。広報協議会との一体化は避けつつも、ファクトチェック結果を啓発活動に生かす連携の枠組みは構築可能です。
最後に、衆議院法制局に伺います。
現行の国民投票法第百五条において規定されているテレビ、ラジオ広告の規制、すなわち投票日前十四日間の有料広告の制限をインターネット広告に適用又は準用するとした場合、現行の法体系上どのような立法技術上の課題が生じるか、法制局の見解をお聞かせください。
私からは以上です。
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