○國重委員 中道改革連合の國重徹です。
本日は、参議院の選挙制度における合区問題への対応について意見を申し上げます。
二〇一五年の公職選挙法改正により、翌二〇一六年の参議院選挙から、鳥取、島根の合区と徳島、高知の合区が導入されました。この合区制度については、対象県の方々から自分たちの県から直接代表を送り出せないことへの不満や懸念の声が上がってきたことなどを背景に、特に参議院において熱心な議論がなされてきました。
こうした中で、多様な民意、とりわけ地方の声を国政に反映させるべきといった観点から、多くの会派が合区は解消すべきと主張されていると承知しています。また、全国的な一票の格差解消を行うに当たり、特定の一部人口少数県にそのしわ寄せをもたらしている点を重大な問題とする指摘もあります。
選挙権は極めて重要な憲法上の権利であり、その実効的な行使は国民主権の核心です。このような観点から、合区解消に向けた議論は必要です。
しかし、合区解消に向け直ちに憲法改正の議論をすべきかといえば、そうではありません。現在の選挙制度を前提とするのではなく、まずは、参議院の選挙制度についてどのような制度が望ましいのか、そのあるべき姿についての議論の積み重ねが合区解消に向けた出発点になります。その検討を踏まえた上で、あるべき姿を実現するための手段として、法律改正で対応できるのか、それとも憲法改正が必要なのかが次に検討されることになります。
そして、参議院の選挙制度の在り方を検討するに当たって重要になるのは、投票価値の平等の実現をいかに図るかということです。もっとも、最高裁は、令和五年十月十八日の大法廷判決において、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものと述べています。このように、投票価値の平等は、他の考慮要素との調和の中で実現していくべきものであります。
そのような考慮要素の一つが二院制です。
同じ令和五年十月十八日の大法廷判決において、最高裁も、憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は、それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって、国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあると解されると指摘しています。二院制を採用した趣旨に鑑みて、衆議院と参議院の役割分担をどのように考えるか、また、その役割分担を踏まえて、それぞれの院に期待されている役割を最大化するためにはどのような選挙制度が望ましいのかという議論が必要です。
この検討における重要な論点として、上智大学の上田健介教授の、権限と組織の相関関係についての指摘を紹介したいと思います。
上田教授は、本年四月二十二日の参議院憲法審査会において、大石眞教授がつとに指摘されるとおり、権限と組織は相関関係にあると考えられますと述べられた上で、二院制を取る欧州諸国、イタリアの元老院やイギリスの貴族院、さらにフランスの元老院などの例を取り上げ、両院の権限が対等であれば、第二院の民主的正統性、すなわち投票価値の平等は強く求められ、非対等であるならば、この要請はかなり弱まるということです、この論理は普遍的なものであり、日本でも妥当すると考えますと発言されています。
その上で、上田教授は、我が国においても、参議院が今後法案等の決定案件に際し衆議院の判断に譲歩するような運用を取るならば、自制を取るならば、投票価値の平等の要請は弱まるのではないかと指摘されています。
さらに、地域代表という要素を持ち込めば、権限を弱めなくても投票価値の平等の要請は弱まるという考えについて一言申し上げますと切り出された上で、日本における現状の都道府県の権限、国との関係を前提にする限り、投票価値の平等の要請が弱まるというのは難しいと考えますとも述べられています。
こうした問題意識は、東京大学の宍戸常寿教授が論文「「憲法改革」としての立法プロセスへの地方の参画」において、参議院を地方の府として位置づけることは、両院制の改革として一つの合理性ある提案である、ただし、都道府県選挙区制を維持しさえすればよいというものではなくて、参議院の権限や意思決定手続の見直しとセットでなければ首尾一貫したものとは言えず、投票価値の平等を後退させるだけの合理性もないと述べられていることと軌を一にします。
また、最高裁判決では、参議院の役割が増大していること、衆議院と参議院が同質的な選挙制度となっていることが指摘されています。
こうした最高裁の指摘も踏まえると、権限と組織の相関関係は、今後の議論において十分に考慮しなければならない重要な論点であると私は考えます。
さらに、参議院の選挙制度の在り方は、参議院の緊急集会とも関わります。衆議院が解散されている間、国に緊急の必要があるときに参議院の緊急集会が開かれるのは、参議院が暫定的に国会機能を補完するためです。その権限行使の正当性は、参議院議員もまた、特定地域の意思や利益に法的に拘束された代表ではなく、全国民を代表する国会議員として選ばれているという憲法上の理解によって基礎づけられていると考えます。仮に、参議院を憲法上、都道府県代表としての性格をより強く帯びる院として再構成するのであれば、統治機構の根幹に関わる緊急集会における権限などについても併せて検討しなければなりません。
以上述べたとおり、合区の解消は重要な課題ですが、その前提として、まずは参議院の選挙制度を検討する必要があります。その上で、その検討に当たっては、投票価値の平等や二院制、両院の役割分担に加え、参議院の権限と組織の相関関係、さらには緊急集会の在り方といった憲法上の重要な論点について体系的に議論を深める必要があることを申し上げ、本日の私の発言といたします。
國重徹 の他の発言
2026-06-18 · 衆議院憲法審査会
○國重委員 中道改革連合の國重徹です。
我が党の憲法九条に関する基本的な考え方を申し上げます。
まず、私たち中道改革連合は、憲法九条一項、二項を将来にわたって堅持します。日…
2026-06-18 · 衆議院憲法審査会
○國重委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
日…
2026-05-21 · 衆議院憲法審査会
○國重委員 中道改革連合の國重徹です。
前回の審査会で、私は主として次のことを述べました。選挙権は極めて重要な憲法上の権利であり、その実効的な行使は国民主権の核心である。だから…
2026-05-14 · 衆議院憲法審査会
○國重委員 中道改革連合の國重徹です。
緊急事態条項のイメージ案とその説明によって、本審査会におけるこれまでの議論が相当程度可視化をされました。憲法審査会事務局及び法制局の御尽…
2026-04-23 · 衆議院憲法審査会
○國重委員 中道改革連合の國重徹です。
緊急時における国会機能の維持は、統治機構の根幹に関わる重要なテーマである一方、要件や制度設計に関して詰めるべき論点も少なくありません。私…
2026-04-16 · 衆議院憲法審査会
○國重委員 中道改革連合の國重徹です。
前回の審査会では、まず私たち中道改革連合の理念と憲法に対する考え方、そして憲法論議に臨む基本姿勢を申し述べました。具体的には、主として、…
2026-04-14 · 衆議院法務委員会
○國重委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
裁…
2026-04-14 · 衆議院法務委員会
○國重委員 これまでなかった新たな事務手続が導入されるわけですから、現場においては大なり小なりいろいろな混乱とか不具合が生じると思います。そういったものを軽減する体制とか取組という…
API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=國重徹
MCP: search_diet_speeches(speaker="國重徹")