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栗原潤 ·長野県農業試験場研究企画・知的財産部長

参議院農林水産委員会(2026-07-14)での発言

第221回国会 ·第第15号号 ·5,145字
○参考人(栗原潤君) 長野県農業試験場の栗原と申します。本日は、このような貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。  私ども研究企画・知的財産部は、五つの農業関係試験場の研究活動の進行管理や予算管理、研究員の育成を担当するとともに、農業分野の知的財産の管理を行っております。  早速ですが、本日は、長野県の果樹品種の育成から種苗生産について、あわせて、育成者権の保護強化による知的財産の管理、活用の状況について、その方針と課題について説明いたします。  次のページを御覧ください。  初めに、長野県における果樹の生産状況です。リンゴ、ブドウ、桃、日本梨では生産量が全国で五位以内となっておりまして、本県の南北に長い地形を利用しながら多様な品目を栽培しております。  右の図を御覧ください。  残念ながら、果樹園の面積はやや減少傾向で、特に生産者の減少は顕著でございます。一方で、一経営体当たりの栽培面積は増加する状況にあります。このため、規模拡大のための省力化が必要な状況になっております。  次のページを御覧ください。  まず、果樹の生産振興体制をお話しします。  長野県では、県庁の園芸畜産課で生産振興を担当しております。私たち農業試験場は須坂市にありまして、育成品種の知的財産の管理、活用、海外ライセンスを行っております。同じキャンパスに果樹試験場がありまして、リンゴ、ブドウ、桃の育種のほか、栽培技術の開発をしております。また、県の南部、高森町にあります南信農業試験場では、日本梨の育種と栽培技術の開発を行っています。  一方の生産振興と種苗生産と供給についてです。  農業試験場では、育成された品種を長野県原種センターに許諾いたします。原種センターは、この品種の苗木生産に用いる原穂木を苗木生産者、すなわちJA全農長野と長野県果樹種苗協会の会員に供給、販売しています。JAと協会の会員は、苗木を生産し、生産者へ販売いたします。また、ここには図示しておりませんが、各品種に応じた栽培技術の開発を試験場が、その普及指導を各地域の農業農村支援センターがそれぞれに担うといった研究と普及の一体的な体制を取っているところでございます。  次のページを御覧ください。  当県の育成品種のうち、県内で産地が形成されるまで栽培を県内に限定とし、その後、栽培を全国に拡大している品種の例といたしまして、左からリンゴのシナノスイート、シナノゴールド、ブドウのナガノパープル、桃のなつっこなどがございます。果樹の場合は品種登録後六年間を基本として県内限定としておりますが、県内限定を解除して全国へ栽培を拡大することによりまして、流通量を拡大、品種の認知度が向上するというメリットがございます。  なお、稲、麦、それから大豆について補足いたしますと、稲では酒造好適米、いわゆる酒米でございますが、美山錦ですとか、大麦ではファイバースノウ、小麦のゆめかおり、大豆のエンレイなどですね、これらについても全国で普及をしてきております。  次のページを御覧ください。  近年、気候変動に対応する品種の早期の育成というものが求められているところです。当県におきましては、新品種の目指す特性といたしましては、順に申し上げますけれども、リンゴでは、温暖化条件でも着色や貯蔵性が優れ、生産性の高い品種、異常気象による降雨が頻発する中でも病気の発生が少ない品種、それから摘果作業を省力化して労働力不足に対応する品種などが求められる。ブドウでは、皮ごと食べられること、それから開花期などの時期をずらすことで作業分散につなげたり、ブドウを無核化、種なしにするために掛かる労力を省力化できる遺伝的に無核性の品種。桃では、七から八月の需要期に出荷できること、それから輸出などに向く輸送性の良さ、こちらも異常気象下でも病害の発生が少ない品種。このように、品目ごとに目指す品種特性がございますけれども、温暖化対策などの気候変動対策ですとか、省力化、労力分散が共通する課題でございます。  次のページを御覧ください。  この品種開発におきましては、今後、先端技術に期待をするところでございます。優良品種の早期育成のためには、現在もですが、DNAマーカーの利用が有効でございます。ですが、この技術の開発というのは非常に労力が掛かります。県単独での開発というのは非常に困難な状況ですので、農研機構や大学との連携を期待しているところでございます。  また、ゲノム情報ですとかAIなどを活用した育種技術が開発されますと、近年、研究経験の少ない職員ですとか異動が短いスパンで行われる状況の中で、育種担当者として必要な知識や経験が理論的に得られて、人材育成にプラスになるのではと考えておりますので、期待しております。  次のページを御覧ください。  次に、苗木供給の課題についてです。  生産現場では、新品種や新技術の導入の初期に苗木不足を起こす事例が見られます。例えば、本県育成のブドウ、クイーンルージュの販売当初は生産希望者が多くて集中したために種苗が不足したことがありますが、一時的なもので翌年には解消されております。また、リンゴでは、高密植栽培という苗木を非常に高密度で植え付ける効率的な栽培方法の導入に当たりまして、実をならせるための枝がより多く付いたフェザー苗というものが必要でありますが、これが導入当初は不足しておりましたが、種苗供給体制を県、それから関係機関、それから種苗業者が一体となって整備をしております。  また、果樹の安定生産におきましては、台木の利用がとても重要です。リンゴでは農研機構の開発した台木を活用しておりますが、桃、梨では種から台木を作るために台木が不均一となってしまいまして、苗木の生育や品質がそろわないという課題があります。このため、リンゴと同様に、農研機構による台木の新品種ですとか新たな栽培技術の開発が必要ではないかと考えております。  また、登録品種の種苗がフリマサイトなどで転売されることにより、品質の劣化した苗が流通したり、それから許諾を受けない増殖による権利侵害が発生するなど、危機的な状況にございます。今回の種苗法改正を含めて、これらを防ぐためのルールが必要ではないかと考えております。  次のページに参ります。  次に、侵害対応の重要性と取組状況についてでございます。  当県の育成したブドウの品種、ナガノパープルについて、県の許諾なく種苗を増殖してフリマサイトで販売したことによりまして、県外在住の二名が種苗法違反で書類送検、罰金の刑事罰が科せられた事例がございます。  これに対しまして、本県では、農林水産省の委託事業を活用しまして、長野県農産物権利侵害マニュアルを令和五年に策定いたしました。加えまして、当部では、インターネット上での権利侵害の監視を常に行っております。また、新品種につきましては、DNA鑑定による品種識別技術の開発を併せて行います。都道府県の知的財産担当が参画いたします、育成品種などの無断栽培に関する情報収集で連携する場として、農産物知的財産保護ネットワークというものがございます。これを通じて情報共有したり、また、国などとも連携、情報共有をしているところでございます。  残念ながら、こうした取組をしておりましても侵害事例は後を絶たない状況です。このため、広く知的財産権を理解していただくことが重要と考えておりまして、当部では種苗法の遵守などに関する啓発活動を実施しておるところです。  次のページを御覧ください。  この権利保護と生産振興の両立を図る近年の本県の事例といたしまして、ブドウ品種、長果G11、これ商標名でクイーンルージュでございますけれども、これを紹介させていただきます。  本県果樹試験場で育成しました種なしで皮ごと食べられる大粒の赤系のブドウでございます。本品種を本県ではシャインマスカット、ナガノパープルに並ぶ主力品種に位置付けまして、有利販売による持続的な生産により、県民益を持続、維持していきたいと考えております。  シャインマスカットが海外へ流出し、無断で生産、販売されたことから、本品種の海外や他産地への種苗の流出を防止するとともに、海外輸出を視野に知的財産権保護を強化しています。このため、品種登録により育成者権を保護し、商標登録により商品の名称を保護しております。栽培には県との許諾契約を結ぶ必要がありまして、遵守事項といたしまして、苗木、剪定枝の譲渡禁止、苗木、剪定枝を海外へ持ち出さないこと、盗難が起きないよう剪定枝は粉砕するなど、適切に処分をすることとしております。  次のページを御覧ください。  育成者権の存続期間の延長の意義につきまして、近年は、従来の品種に比べまして、高度な高温耐性ですとか病害虫抵抗性というものが求められておりますので、品種開発に係るコストは増加しております。一方で、新しい品種が市場に出回りますと、第三者によって比較的容易に増殖されやすいものだと認識しております。新たな品種育成に向ける私たちの意欲を高めるためにも、育成者権の保護が重要と考えております。  開発した品種を品種登録や商標登録して、ライセンスして収益を得て、さらに、有益な新品種の開発につなげるためにも、存続期間の延長は望ましいと考えております。育成者権が存続していれば、海外から輸入された場合にも差止めが可能ですので、国内の農業者を守ることにもつながると考えます。また、事例は少ないですが、公的機関で海外ライセンスを行う場合には相当の時間が掛かりますので、ライセンスを進める上でも、育成者権の存続期間の延長は有効ではないかと考えております。  次に、実際の活用事例を紹介いたします。  当県では、平成二十年に信州農産物知的財産活性化戦略を策定しています。この戦略では、緑色の創造で新品種や新技術を開発し、青色の保護で新品種は育成者権、商標、新技術は特許権で保護、さらには活用で権利を許諾してということで、知的創造サイクルの活性化を目指しております。  この事例として、品種のシナノゴールドの海外展開について紹介いたします。シナノゴールドは県で育成しましたが、これが創造に当たります。これを品種登録して保護し、YELLOという名称を商標登録して保護しております。  次のページを御覧ください。  県では、イタリアの生産者団体と大規模商業栽培のためのライセンス契約を締結いたしました。これは県として初めての取組です。平成二十八年から段階的に許諾を拡大してまいりました。契約は、ゴールドというものが、シナノゴールドが広く世界に販売されることにより長野県の認知度と長野県育成品種の優秀さを広めるため、イタリアのリンゴ生産者団体と契約いたしました。  次のページを御覧ください。契約の内容になります。  栽培の許諾は、南チロルの生産者団体とそのメンバーの五か国、五社、販売地域は世界的に広がっております。ただし、日本には、長野県が権利を独占しておるために、日本には輸入できません。それから、許諾使用料が苗木と果実の販売実績に応じて県に支払われています。  次のページを御覧ください。  この許諾料を創造、すなわち新たな品種育成につなげました。令和元年度から特別研究プロジェクトを立ち上げまして、問題となっておりましたリンゴ黒星病について、DNAマーカーを利用した抵抗性品種育成の加速化を図り、この許諾料を充てました。非常に良いマーカーの利用をしまして、リンゴ黒星病に強くて、着色が良くて、食味の良い新しいリンゴ長果36を育成いたしました。これによりまして、育成期間を五年間ほど短縮いたしまして、品種保護、活用、それから、この許諾料を資金としまして創造につなげたという知的創造サイクルを回しました。  最後になります。最後のページですが、この海外ライセンスの課題でございます。  当県、全く経験のない取組でしたので、十年以上掛かりました。この理由としましては、やはり県では意思決定に時間が掛かったり、相手の信頼調査ですとか、委託先をどこにするか、それから言語、言葉の壁もありましたので、このように多くの課題がありましたので、今後は、国に立ち上げていただいた育成者権管理機関に期待をしております。  説明は以上です。ありがとうございました。

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○参考人(栗原潤君) ありがとうございます。  先生おっしゃるとおりで、このバランスを取り続けるということが非常に重要だと私たちも自覚しております。  やはり、例えば米ですとか…
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