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高橋雅英 ·公益財団法人中東調査会主任研究員

参議院資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会(2026-03-11)での発言

第221回国会 ·第第1号号 ·4,512字
○参考人(高橋雅英君) 中東調査会で湾岸地域を研究しております高橋雅英と申します。本日はよろしくお願いいたします。(資料映写)  私の報告の演題としましては、日本のエネルギー安全保障と中東情勢ということで、御承知のとおり、現在、イランの情勢が急変しておりまして、タンカーが通るホルムズ海峡が事実上封鎖に陥っております。そうした中で、日本の今後エネルギーの調達先の多角化といったところについて説明していきたいと思います。  まず、日本のエネルギー政策全般について説明します。  一番、原発事故以後の日本の電力供給について。  日本の電力政策にとって大きな転換点となったのは、二〇一一年三月十一日の福島第一原発事故でした。事故前、日本の原子力発電の規模というものは、アメリカ、フランスに次ぐ世界第三位でありました。稼働中の原子炉は五十四基、また原子力の発電量は二百八十八・二テラワット時、総発電量の二五%に相当しました。しかし、事故後、全ての原子炉が順次停止することになりました。それが、従来、定期検査というものが原発、原子力発電所には課されておりまして、電力事業法に基づき、十三か月ごとに一回停止をして、その後、運転を再開するという流れでしたが、従前は、この定期検査というのは形式的なところもありまして、一度停止した後すぐ稼働はできたんですが、この原発事故以後、この安全基準のところが厳格化されたことによって、一時点検中の原子炉が稼働できないというような状況に陥りました。  その後、二〇一三年に、一二年九月に原子力規制委員会が設立されまして、原発の再稼働に関しましては新たな安全基準をクリアすることが条件になりました。また、住民の健康と安全を確保する観点から、立地自治体、受入れの地方自治体の承認を取る必要が生じるようになったため、なかなか原発全体が再稼働が遅れていった状況となりました。  その後、二〇一五年度以降、西日本を中心に段階的に原発が再開しました。特に関西電力管区であったり九州電力管区といったところでは、大部分の原子炉が再開いたしました。ただ、東日本の東京電力を始め東日本管区では、なかなか再開ができないというような状況が続きました。そうした中、この発電量というのは、原子力の発電量というのは、二〇一五年以降、一〇%以下を切っております。その部分、天然ガスであったり石炭火力への依存度がどんどん増しているような状況です。  こうした中、現在、原子炉を再稼働に向けて各自治体や電力会社が進めておりますが、廃炉と運転期間の延長といった問題も指摘できるかと思います。先ほど言及したとおり、稼働中の原子炉は震災前に五十四基ありましたが、そのうち二十一基は再稼働されることなく廃炉となりました。また、稼働可能な現在の三十三基のうち十四基というものは、一九七〇年代であったり八〇年代に建造されたものであるので、運転年数が四十年を超えております。現在、老朽化した原子炉というのは、経済産業大臣の承認の下、六十年運転可能というような制度が二〇二三年に導入されておりますが、いずれにしても、この原子炉の老朽化という問題は避けられません。こういった観点から、たとえ現在停止中の原子炉を全て段階的に再稼働させたとしても、原子力の発電電力量というのは二〇一〇年の水準にまで回復させることは不可能となっております。  こうした中、火力発電所の重要性というものが増していると。原子力の稼働率が大幅に低下したことで、石炭火力であったりガス火力への依存が顕著となっていると。二〇二四年度の発電比率でいいますと、石炭火力が総発電の二八・五%、ガス火力が三一・八%ということで、この二つの火力発電所だけで六〇%を占めております。  こうした中、当面の間、火力発電への依存が続くというふうに私は見ております。その背景としましては、原発の新設事業が本格的に進展する可能性が低いというところが指摘できます。現在、原発、三基ほど新設事業が進んでおりますが、先ほど御指摘したとおり、運転期間の延長の問題で、いずれは老朽化した原子炉は廃炉しなきゃいけないというと、この三基では十分に賄えないというところです。  また、太陽光発電の普及というものは進んでおりますが、やはり晴天の日中にしか稼働できない、また発電量の調整が難しいというような制約があるため、主力電源になる可能性は低いと考えております。このため、将来的な電力の安定供給を見据えて火力発電を一定程度維持していくことが求められます。  そうした中、火力発電用の燃料というものはオーストラリアや東南アジア諸国、アメリカ等から安定的に調達できる見通しです。従来、LNG、液化天然ガスの輸入でも中東依存度は非常に高かった部分がありましたが、二〇一四年の二八%、輸入量では二千五百万トンから、昨年、二五年の輸入量は大体七百三十七万トン、全体で一一%まで低下しております。こうした中、アメリカでは今LNGの大増産が続いておりますので、中東のこうした情勢緊迫化でホルムズ海峡が封鎖された際も、オーストラリアやアメリカ、また東南アジアから安定的に輸入していくことが可能となっております。  こうした中、発電部門の方はある程度エネルギー調達の見通しが立っておりますが、燃料部門の方に関しては引き続き原油をいかに調達するかというところが課題となっております。  今、中東に依存する日本の石油調達ということで、この中東依存度が顕著に高まったのが二〇二二年二月のウクライナ侵攻以降です。ロシアによるウクライナ侵攻を受けまして、日本も欧米主導の経済制裁に従い、ロシア産原油を買い控えております。そのため、原油輸入の中東依存度は、二〇一九年に八五%であったものが、ウクライナ戦争以降の二三年に九五%まで高まり、昨年も九四%という高水準で推移しております。  こうしたこの原油調達先の多角化というのが長年の課題でした。第一次石油危機、一九七三年の後、日本は中国やインドネシアから原油を調達しました。ただ、中国、インドネシアが経済発展するとともに、なかなか輸出に原油を回せなくなり、自国で消費するようなことになって、日本は新たな調達先を探し、そしてロシアからの調達を模索しました。二〇〇〇年代からロシア産原油の調達を進めておりましたが、御指摘したとおり、ウクライナ戦争のようなことが起きてロシアからの調達先確保というのも現在難しくなっております。  一方で、プロパンやブタン、都市ガスではない家庭用の燃料の材料となるこの液化石油ガスのLPGに関しましては、脱中東依存を達成しております。それに大きく貢献したのがアメリカの石油、天然ガスの大増産です。  こうした現状の中、ここ数日のイラン情勢の緊迫化を受けまして、日本の石油調達の課題というのが表面化してきました。その大きな原因としましては、ホルムズ海峡の通航不可、それに伴う原油価格の上昇というところが指摘できます。  現在、多くの船舶がホルムズ海峡の航行を控えております。これは、実際イランがホルムズ海峡に機雷を設置したわけではないのですが、イランによる船舶への威嚇であったり、また海運保険会社が海上保険の価格を引き上げたり、また戦争プレミアム特約を引受けを拒否したりするような状況になりまして、実質、船舶が保険なしではこの海峡を通れないような状況になっております。そういう状況の下、今多くの船舶がこちらの海峡を航行できないとなっております。  ホルムズ海峡というのは、大量の石油やLNGが日々通過する世界でも有数な海峡となっております。二〇二四年時には石油が日量二千二十万バレル、これは世界の消費量の二〇%に相当します。  一方で、海峡を迂回できる石油供給ルートというのは限られております。こちらの地図で示したとおり、現在三つの原油パイプラインが通っております。サウジアラビアの東側から西側紅海に抜ける東西原油パイプライン、またUAEの中部の石油地帯からホルムズ海峡のインド洋側に位置するフジャイラ港に抜けるパイプライン、またイランもホルムズ海峡のインド洋側に位置するこのジャースク原油パイプラインというものを敷設しております。  ただ一方で、この輸送能力を見てみますと、サウジが五百から七百万バレル、UAEも百五十から百八十万バレルということで、ホルムズ海峡を通過する全ての石油というものはこのパイプラインで代替することは不可能となっております。こうした状況を受けまして、原油価格が現在上昇しているというような状況です。  また、ここが大きな問題となっているのですが、イランが湾岸諸国のエネルギー施設も標的にし始めたと。当初、イスラエル、アメリカの奇襲攻撃を受けまして、湾岸諸国にある米軍基地というものをターゲットにするというような見通しでありましたが、軍事施設に加えまして、現在、エネルギーインフラにも攻撃を行っていると。サウジ東部の製油所であったりUAE東部の石油貯蔵タンクなども攻撃を受けております。  また、カタールでは、LNGに関連するインフラ施設が攻撃を受けまして、LNG生産が停止する事態に陥りました。カタールは、アメリカ、オーストラリアと並んで世界有数のLNG輸出国です。日本は、カタール産のLNGというのは総輸入量で五%ですので大容量ではないものの、カタールのLNGが世界ガス市場に流れなければ需給バランスが崩れて価格が高騰してしまうというような状況です。  こうした中、日本への影響です。政府によれば、石油備蓄というものが国家備蓄、民間備蓄合わせて二百五十四日分あるということで、燃料不足が直ちに生じないというような見通しを示しております。一方で、この海峡封鎖が長期化すれば、原油価格の高騰による景気後退や買いだめを通じた社会不安の拡大が懸念されます。  現在、イランへの攻撃は現在進行形で続いておりまして、出口が見えないような状況です。そうした中、ホルムズ海峡というのが現在まだ封鎖されて十日程度しかたっておりませんが、これが一か月続くと、この絶対量、輸入量が減ってしまうというような状況で、日本はどんどん備蓄を放出せざるを得ないような状況になり得ると思います。  こうした、この中東依存度が高かった要因でこうしたエネルギー混乱が起きているというところを踏まえますと、今般のイラン情勢の急変を契機に、ホルムズ海峡を迂回する原油調達先を早急に確保し多角化政策を推進していくことが重要だというふうに私は考えております。特に、このホルムズ海峡を迂回する原油調達先の候補先としましては、アメリカであったりカナダ、また中南米の国々、東南アジアの国々といったところから輸入量を増やしていくことで中東依存度を段階的に下げるというのが早急の課題かと考えております。  以上、私の報告となります。ありがとうございました。

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